- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198641993
作品紹介・あらすじ
古き佳き時代の遊郭の面影を残す伝説の歓楽街、大阪・飛田新地。営業許可がおりて一〇〇年となる今年、大きな変革が訪れた。全国の観光地、商業施設を訪れて大枚をはたく中国人たちの「爆買い」が欲望の矛先をこの街に向けたのだ。言葉の壁、嗜好の異なる「遊び」の仕方と対峙することになった遊郭と女性たち、そして節目の年を迎えたこの街はどう変わるのか――。元遊郭経営者で、飛田に女性を紹介するスカウトマンを務めた著者が描く知られざる実態。
感想・レビュー・書評
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この本を書店の店頭で見かけ、飛田新地と増加する中国人観光客というテーマに惹かれ購入。シークレットな部分の多い街なだけに、こうした内部の人によるルポは貴重だと思う。飛田新地の料亭の経営に関して具体的な金額を含めて記されているのは興味深い。
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著者の飛田シリーズ第三弾。今回は飛田から引退していた著者が「料亭」の共同管理者として復活し、また引退するまでの模様を描いている。
今回の話の中心は、売り上げが落ち込んでいる飛田を外国人観光客(主として中国人)を取り込むことによって上向きにできないかと著者があれこれ模索するところである。
あと、元国際線CAが自分で事業を始めるための資金稼ぎとして飛田で働くようになった、という話も元CAの頭の良さと目的のためにはどんな手段も厭わない、ある種の冷徹さが感じられ、大層面白かった。
ところで、本書には飛田もNHKの番組で紹介されたとの記述があったが、その件は全く知らなかったので見逃していた。残念。
NHKは以前にも「ブラタモリ」(旧シリーズ)で吉原を取り上げていたことがあったので、飛田を取り上げてても不思議ではないが、まさかNHKで飛田や吉原が取り上げられるとは、隔世の感がある。
吉原についても同様な感じの本が出ているのだろうか。
ちょっと探して読んでみたい気になった。 -
384.6
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善悪は表面に見えていることだけで判断できないんやと。生きるって難しいし、楽しいわけがない。でもいいんやって、みんな一生懸命生きている。
そんなこんなでなにわの街には色んなこと、もの、ひとが凝縮されている。 -
なかなか興味深く読ませてもらいました。一度行ってみたいですな。
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104-9-9
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「飛田新地」という名前は、近年、急速にその意味を変えつつある。かつては、写真撮影したら「刺される」なんていう噂がまことしやかに流れ、魑魅魍魎が跋扈するエリアだった。しかし、フリーライターの井上理津子によるノンフィクション『さいごの色街 飛田』が大ヒットを記録し、ついに『探検バクモン』(NHK)でテレビカメラがこの街を映し出し、ネットには遊郭の内部を隠し撮りした映像が勝手にアップロードされるなど、飛田を巡る状況は大きく変わりつつある。
そんな飛田新地で、10年にわたって店を構えていた人物が杉坂圭介氏。これまで、長年にわたって飛田を見てきた彼が、3作目となる著書『飛田を目指す者』(徳間書店)を上梓した。「メイン」と呼ばれる若い女の子たちが集うエリアに店を経営していた彼は、スカウトを経て、今度は熟女たちが並ぶ「妖怪通り」に舞い戻った。増える中国人観光客、日本人客の減少、そして妖怪通りの若年齢化……。今年、100周年を迎える飛田新地はどんな変化が起こっているのだろうか?
杉坂 今回の取材は写真撮影NGでお願いします。取材テープも絶対に外部には漏らさないでくださいね。
ーやっぱり、飛田新地を書くのはリスクがあるんですね……。
杉坂圭介(以下、杉坂) バレたら飛田にいられなくなってしまいます(苦笑)。飛田の裏側を描いた第一作目『飛田で生きる』(徳間書店)を出した時は、街中で「杉坂って誰や!!」と、捜索されたんですよ。
ー怖すぎます! そんなリスクを冒して、出版された最新作『飛田を目指す者』は、中国人観光客の台頭を中心に、飛田の現在が描かれていますね。
杉坂 『飛田で生きる』で僕が見た飛田の裏側を書いたので、次は飛田で働く女の子の視点から『飛田の子』(徳間書店)を書きました。今年は、飛田が今の場所で営業許可を得て100周年であり、近年の中国人観光客ブームをはじめとする、飛田の今を描いているんです。
ー100周年!? そんなに古い歴史があるんですね。
杉坂 そうなんです。だから、飛田の街でも、各町会ごとに垂れ幕をつくって街を盛り上げています。また、私設消防団をつくったり、災害用の備蓄倉庫をつくったりして、災害に強い街を目指しているんです。
ー魑魅魍魎が跋扈するイメージの強い「飛田」とは思えないほど、地域の絆が強いんですね。
杉坂 20年前までは、経営者同士でも喧嘩が絶えなかったんですが、今は仲良くほのぼのと取り組んでいます。経営者だけでなく、呼びこみのおばちゃんが参加して、消防研修やAEDの講習会が開催されているんです。
ー風俗街の話ではなく、まるで町内会の話を聞いているみたいです(笑)。
杉坂 いまだに、借金のカタに撮られた女性が働くというイメージが根強いんですがそんなことはありません! 昔は大門があり、後ろは土手で逃げられない街でしたが、今は全くオープンな街に変わっています。働く女の子たちも、借金のためではなく、自分で事業を展開するための資金稼ぎなど、明確な目標を持っている人も多いですね。元CAや、医学部生、国立大学の卒業生も飛田で働いています。
ーそ、そんな意識高い系の美女がっ!?
杉坂 それに、かつては「妖怪通り」と呼ばれ、40〜50代の女性ばかりだったエリアも若返りが進み、30代の女性が多くなっています。今では「妖怪」ではなく「姉系通り」と呼ばれるようになりつつあります。若さこそありませんが、サービスがいいので、若い男性でも姉系通りを使う人が増えているんですよ。
ー飛田の通りをめぐっても地殻変動が起きているんですね。しかし、本書には、飛田にも押し寄せる不況の波も赤裸々に綴られています。
杉坂 お客さんはどんどん減っていて、10〜15年前の半分程度の売上でしょう。かつては、1店舗で月1000万円以上を稼ぐこともざらにありましたが、今ではそんなお店は数えるほど……。風俗が多様化している一方、風俗に行かない草食男子も増えています。飛田の中でも熾烈な生き残り合戦が勃発しています。ただし、安売りの価格競争ではなく、15分11000円の基準はほとんどの店が守っています。
ー値段ではなく質によるサービス合戦ですね。
杉坂 ですから、僕の店では、中国の観光客を積極的に受け入れました。ここ2〜3年、急激に中国人観光客の利用者が増えていたんです。日本の女性は外国人から評判がいいですからね。
ー女の子たちは外国人の接客は嫌がらないのでしょうか?
杉坂 嫌がる女の子も多いです。知り合いのお店でマナーを守らない中国人がいて、女の子が出勤拒否になったケースもあります。避妊具を外したり、無理矢理襲ったり、女の子の身体に噛みつくといったケースも耳にしています。
ーすごい性癖ですね(笑)
杉坂 中国人には噛みつきフェチの人が多いらしいですよ(笑)。日本人はあまり思い切った行動はしませんが、外国人は、旅先ということもあり、マナーが悪いケースも一部あります。ただ、基本的には言葉の問題でギクシャクするだけで、仕事的にはほとんど問題ありません。
ー苦労のかいあって、杉坂さんは当初月200万円の売上だった熟女店をわずか半年で月500万円の売上に導いています。ビジネスとしても大成功ですね。
杉坂 飛田は超保守的な街で、中国人観光客に対して組合としては取り組んでいませんでした。そういう意味では、すき間を狙いやすい街なんです。うちの場合は、おばちゃんや女の子を教育し、英語のメニューや注意事項をつくりました。おばちゃんは英語を喋るのは無理ですからね(笑)。お客さんには、英語の紙を渡すだけで理解してもらえるように工夫したんです。
ーしかし、中国のバブルが終わり、爆買ブームも終了しました。今後、飛田にはどのような波がやってくるのでしょうか?
杉坂 今のところ……次のブームは見えてこないですね。組合では、消防団や避難訓練などで飛田の知名度をあげ、コンサートを企画するなど、イメージの向上を目指しています。悪いイメージを払拭することで、今後に結びつけようと考えているようですね。
ーただ、綺麗な街になると、猥雑な魅力がなくなってしまうのでは……?
杉坂 好き勝手にやっていては、沖縄の真栄原や川崎の堀之内のように摘発される危険性があるんです。あべのハルカスが誕生する頃、実際に「飛田を潰す」という話も出ていました。今後は、「飛田を残すべき」と一般の人からも言われるような街を目指していくべきでしょう。あまり知られていない話ですが、飛田は反社、半グレの人々が一切関わっていないクリーンな街なんです。
ー男性に愛される飛田新地から、地域に愛される飛田新地へ。次の100年も期待しています!