「和の国」のかたち: 日本人への遺言PARTII

  • 李白社
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本棚登録 : 27
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198643430

作品紹介・あらすじ

戦後一貫して日本人の在り方に対して苦言・忠告・提案をしてきた保守論客の巨頭による「これだけは伝えたい」第2弾。第1章 日本人の覚悟ートランプが大統領になっても日本のやることは決まっている 第2章 皇統、かくあるべし! 第3章 まだ抜けきれない刷り込まれた属国根性(WGIP)を退治する 第4章 道徳の回復

感想・レビュー・書評

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  • 本日の書評は「「和の国」のかたち」副題として「日本人への遺言PartII」となっています。

    著者は日下公人氏とこの間、お亡くなりになりました渡部昇一氏の対談である。

    本書は5分割になっており、この書評ブログでは、第一章を中心に紹介していく。

    まず第一章「日本人は覚悟を決めよ!」であり、トランプ大統領についてお二方が豊富な知見を披露されている。

    まず、両氏ともトランプ大統領の誕生はアメリカの行き過ぎた「ポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい言葉)」にあるとされている。

    例えば、key man→key person、fireman→fire fighter、business man→business person等である。

    渡部氏よると、「アメリカ人は、お上品なのはあまり得意でない。元来が下世話で陽気な人たちであると。だからヒラリーやオバマのような”エリート政治”に飽きた国民が、トランプ氏に自分たちと同じような人間を見て、それがトランプ氏の支持を広げていった」という。

    日下氏も「ツイッターでトランプ氏はヒラリーに随分酷い書き込みをした。例えば「夫を満足させられないくせに、なぜアメリカを満足させられると思っているか」」と。

    両氏とも”隠れトランプ”は想像以上に多かった。アメリカ人はポリティカル・コレクトネスの世界に風穴を開けてくれるのではないか?とりわけインテリ階級にもそのような有権者が多かったのではないか?と語る。

    日本でも”ヒラリー有利”の情報に騙されたのは、日本のメディアが4つか5つのアメリカのメディアからのみニュース・ソースを仕入れてなかったからだという。例えばウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ABC、CBS、NBCなどだ。

    日本は上記のメディアにかなりの額を払い込んでいる。そのため日本の新聞記者は安心してそのような情報(ヒラリー有利)を”孫引き”してくるというのだ。

    日下氏は言う「(昨今の)グローバリズムはそもそも勝ち組の政策だから、それを推進すればするほど、格差が広がり、貧困層や失業者を増やすことになります。げんに、アメリカでは「1対99」という抗議の声が上がり(1%の国民がアメリカの99%の資産を持っているということ)、だから国民の間に不満が充満していたわけです。」

    「そういうなかで、ヒラリーさんは出馬第一声で、「みんなが大学に行けるような社会にする。そのためには奨学金も出しましょう」といいました。だけど「いかにもお嬢さんらしい発想だ」と評され、どうもウケはよくなかったようです。」

    日下氏はつまり、アメリカ人は「奨学金より、がっつり食わせろ」、「がっちりした仕事がなければどうしようもないじゃねえか」とか「それだったらトランプの方が頼もしいよ」と思ったとのことだ。

    この後、アメリカのグローバリズムについて興味深い議論に移るが、詳しくは本書を読んで欲しい。

    その一環として「BIS規制(1988年)」に議論は飛ぶ。

    銀行員なら、みな知っていると思うが、知らない人の為に解説する。BIS規制とは国際決済銀行の規制のことで、金融機関に対して国際的な業務をする銀行(つまり自国以外の海外支店を持つ銀行)に8%の自己資本比率を、自国のみで業務をする銀行に4%の自己資本比率を持つよう求めた規制である。

    当時銀行員だった日下氏は、頭取のとことへ言って「BIS規制なんてちゃんちゃらおかしい、無視しろ」とのアドバイスをしたが、頭取は「日下君、そういうけどね、きみね大蔵省(現財務省)からいわれたら日本の銀行は弱いんだ。大蔵省のいうことは、みな聞かなきゃいけないんだよ」

    日下氏によるとBIS規制で日本の銀行が得したことは無く、大蔵省(現財務省)を通せば日本の金融は動かせると見破られたのが大損害だったとのことだ。

    日下節はまだ続く。「イタリアの小さな銀行の頭取が怒ってテレビに出演して「おれの銀行は1%ほど自己資本が足りないが、それは俺のこの顔で補ってくれ」」と言ったそうだ。日下氏は、この話を聞いて勤めていた銀行の頭取に「あなたの顔はなかなかいい顔だから、1%くらいは、イケますよ」と言ったそうだ。(まあ、なしのつぶてだったそうだが)

    次に議論はトランプ氏の日本の「核武装」の話に飛ぶ。

    「米国で最も影響力のあるジャーナリスト五十人」のなかに選ばれたチャールズ・クラウトハマー(コラムニスト)は「日本に核開発を促すべきだ」という意見を述べ続けているという。

    2009年のフォックス・テレビの討論番組では次のような意見を述べている。

    「クリントン、ブッシュ、そして今のオバマと、われわれは十五年にわたって北朝鮮と交渉を続けてきたが、もうゲームオーバーだ。我々にとってはただの失敗でなく屈辱であった。(中略)北朝鮮は核兵器保有国となったのだ。それを解決するには、国連決議など忘れてしまえ、六か国協議など忘れてしまえ、我々が必要なのはアクションなのである。」

    「そして、アクション・ナンバーワンは「核武装国家ジャパン」だ。日本が核武装をすることで、北朝鮮の同盟国である中国の態度は一変し、中国に(北朝鮮に対する)外交政策の変更を促すメッセージを送ることになる。そうしないことには何も変わらない。「核武装ジャパン」の誕生以外に手はないのである。」

    渡部氏は次にこう提唱する。「新々日米安保条約」の締結が必要だ。つまり日本とアメリカが核をシェアすることだ。

    げんに、ドイツはNATOでアメリカと核シェアリングをしている。

    核シェアリングというのは、有事の際、普段は駐留アメリカ軍が保有している核兵器を必要に応じて、配備国へ譲り渡し、使用する権限を与えるシステムだ。

    現在、米国と核シェアリングしているNATO加盟国はドイツの他に、ベルギー、イタリア、オランダ、トルコの総計五か国がある。

    ここで日下氏は「自主防衛を急げ!」で国際政治アナリストの伊藤貫氏の提唱していた「ミニマム・ディテランス(最小限の自主的な核抑止力)」を紹介する。

    伊藤氏「日本にとって必要な「ミニマム・ディテランス」は潜水艦に搭載しておく二百基程度の巡航核ミサイルだけです。現在、16隻ある海自の潜水艦の数をもう少し増やして、それらにそれぞれ少量の巡航核ミサイルを搭載しておけば、それで日本の核抑止力として十分機能します。複数の潜水艦に搭載された核ミサイルを一挙に破壊するのは不可能だからです。アメリカ海軍だって無理です。」

    「どの国も、対日攻撃に対する報復としてたった数発の核弾頭が飛んでくる可能性を考えただけで、やる気をなくしていきます。核兵器は、実際の戦争で使うための兵器でなく、敵国からの攻撃を抑止するための兵器です。」

    とこのように碩学のお二方は、老体にムチ打って日本に対して有益な提言をこれほどかというまで行っている。第一章の若干を抜き出しただけだが、このブログで興味を持たれた方はぜひ本書を手に取って頂きたい。

    第一章:日本人は覚悟を決めよ!
    第二章:日本の時代がやって来る
    第三章:皇統はかくあるべし
    第四章:「WGIP」の呪縛を解け!
    第五章:道徳の回復が急がれる

  • 皇室のお后は千年以上藤原家から出ていたが、美智子妃が恋愛結婚されたので、その伝統が途切れた、と言う事実はあまり知られていない情報ではないか。こういう話が20年前には毎週、日曜日朝「新世紀歓談」でTV放送されていた。いまはそういう情報はネットに移っているので、TVしか見ない人は情報弱者になってしまうだろう。後書きが2017年1月なので、文字通り、渡部先生の遺言である。ファンは、本書にて先生が最期まで平常心のまま、クリアな思考を維持されていることを確認できる。

  • 2017/11/07:読了
     普通

  • 以前、フジテレビにて武村健一氏の「世相を斬る」という番組がありまして(1992年3月で終了)たった30分ですが、日本の新聞やテレビでは述べられていない、でも重要だと武村氏が感じた内容を解説する番組がありました。

    一人で話し続ける日もあれば、ゲストを呼んで対談・鼎談することもありました。3人で話す鼎談で記憶に残っているゲストとして、この本の共著である、日下氏と渡部氏のお話しが面白かったのを覚えています。

    従って社会人になった1989年あたりから、彼らの本をよく読んできました。私も今ではだいぶベテランの社会人になってきましたが、今になってもこの本のお二人の本を読むこと、気づかされることが多くあってためになる読書をさせてもらっています。そういう彼らもお年を召されてきたようで、本のタイトルに「日本人への遺言」と書かれています。

    いつまでもお元気で本を書き続けてほしいとは思いますが、そろそろ引退の時期になってきたのかもしれません。彼らの主張は基本的には「日本にはまだ底力がある、こうすればまだまだ大丈夫」という考え方です。彼らの考え方の基本を理解して、私も後輩や子供たちにそのエッセンスを伝えることができればなと思ってこの本を読みました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本が情報を得ているアメリカのメディアは、新聞なら、ウォールストリートジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、テレビでは、ABC、CBS、NBC(p18)

    ・ユダヤ的精神とは、EUの柱と同じで、1)国境を低くしたり無くす、2)人々の移動を自由にし、バックグランドは問わずに能力だけで評価する、3)何事も契約を重んじる(p25)

    ・富裕層が集まる「金持ち村」は、通勤にも便利なニュータウンにあって、ゲーテッド・コミュニティと言われている。全米には2000か所ある、警察・消防を除くすべての業務を民間委託しコストカットする(p28、29)

    ・アメリカ経済を支えているのは、金融業とサービス業、サービス業は外国に持ち出せないから比重が大きいだけで新たな富を生み出しているわけではない(p32)

    ・反グローバリズムの動きが目に付くようになったのは、二年ぐらい前から。タックスヘイブンを利用した課税逃れ対策を強化した(p34)

    ・今後のアメリカを分析するには、1)グローバリズムの終焉が見えてきた、2)反ユダヤ思想の甦りがある(p43)

    ・ドル札はFRBが発行しているが、そのFRBはアメリカ政府にドルを貸し付けて、35%の利息を取っている。アメリカがイギリスの植民地だったとき、イギリスが紙幣を独自に刷ることを禁じた。禁じておいて、イギリスはアメリカに通貨を貸し付けて利息を取り続けた(p46)

    ・リンカーンは南北戦争のために政府紙幣を発行(グリーンバック紙幣)してから暗殺(1865)、ベトナム戦争のために合衆国紙幣を発行させることにしてから、ケネディも暗殺(1963)され回収されている(p47)

    ・日銀のマイナス金利は、銀行が要らないという意味、金融機関が日銀に持っている当座預金のうち任意で預けている額は手数料を取るということ、これは日銀以外の金融機関は必要ないということ(p48)

    ・日本が負担している米軍の駐留経費は年間5800億円、米軍再編経費を含めると7600億円、全駐留費に占める日本の負担率は54%であり、韓国・ドイツよりずっと高い(p52)

    ・現在、米国と核シェアリングしているNATO諸国は、ドイツ・ベルギー・イタリア・オランダ・トルコがある、有事の際には駐留アメリカ軍が保有している核兵器を必要に応じて配備国へ譲り渡し、使用する権限を与えるシステム(p56)

    ・日本にとって必要な「ミニマム・ディテランス(最小限の自主的核抑止力)」とは、潜水艦(16隻)に搭載しておく200基程度の巡航核ミサイルのみ(p57)

    ・日本の場合は、立法府(議会)の多数党が行政府(政治)を握るので、立法+行政と司法の「二権分立」であるが、アメリカは三権分立であり、行政府と立法府は無関係。だから大統領がいくら約束(慰安婦問題はテーブルに載せない)といっても、議会が出してしまったら止めようがない(p67)

    ・歴史に「IF」は無いと言われるが、「IF」の話をたくさん展開できる人は拡散思考に秀でている、その逆が絞り込み思考である(p71)

    ・幸魂(さちみたま)とは、戦争で死んだら「かわいそう」となるが、戦死して靖国神社にお祀りされると、永遠にお参りしてもらえる。だから「幸魂」となる(p86)

    ・1648年、30年戦争(カトリックとプロテスタントで繰り広げられた戦争)を終わらせるために「ウェストファリア条約」と呼ばれる取り決めが、ミュンスターとオスナブリユックで結ばれた。文明国間で結ばれた国際条約の第一号である(p87)

    ・戦争で宗教が問題になったのは、ヒトラーのユダヤ人迫害と、占領下にある日本に対してマッカーサー司令部が出した「神道指令」である、「靖国神社には口を出さないようにしてください」というのは、欧米先進国の政治家であれば、ウェストファリア条約の精神とわかる(p89)

    ・チャーチルが掲げたスローガンは、遠隔封鎖で、近距離封鎖はしないと宣言した。ということは地中海艦隊も廃止した(p101)

    ・昭和天皇が政治に口を出したのは2回のみ、一回目は226事件、二回目は終戦のとき(p123)

    ・大化の改新以来、宮廷の女性はほぼ全員が藤原家の出身、藤原一族は、天皇から「娘をほしい」と言われたら絶対に文句を言わないという伝統を1000年以上続けていたが、美智子さんが皇室に入られたので、宮廷に仕えていた女性たちは皆辞めてしまった、そして皇太子殿下の結婚が難しくなった(p131)

    ・天皇と公家は貧乏であろうと金持ちであろうと血統が重要とされる、大名や商家とも異なる(p137)

    ・いまの皇居は豪華だがもともとは徳川家のもの、天皇に取って代わろうという人間はいなかった、あえて探せば、蘇我蝦夷と入鹿の父子、僧・道鏡、足利三代将軍・義満(p147)

    ・2014年に、高円宮家の典子女王と、出雲大社の権宮司の千家国麿が結婚したこと、これは古事記に書かれている、アマテラスの系統と、オオクニヌシの系統との結婚であった。(p150)

    ・皇統は「畑」(女性)ではなく、「種」(男性)によって維持されるのが原則とされてきた。種には永続性や連続性がイメージされるが、畑は植えるものにより違ったものが育つので、永続性や連続性は崩れる(p152)

    ・9カ国条約は期限のない条約であったから無効、条約を結んだとき、そこにはソ連が入っていなかった。中国自身、日本製品をボイコットするなど、9カ国条約の約束を守っていなかった(p177)

    ・人間扱いされていない欧米の子供たちは、日本の漫画やアニメを見ると救われる、そこに日本のアニメの人気の秘密がある(p204)

    2017年7月17日作成

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著者プロフィール



「2006年 『人生後半に読むべき本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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