眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.70
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本棚登録 : 407
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198643454

作品紹介・あらすじ

手が好きなので、あなたの手を見せてください!――不思議なノリで盛り上がる、深夜の掲示板。そこに集う人々は、日々積み重なっていく小さな違和感に、窮屈さを覚えていた。ほんとの俺ってなんだ――「小鳥の爪先」女という性になじめない――「あざが薄れるころ」不安や醜さが免除されている子はずるい――「マリアを愛する」社会の約束事を無視するなんて――「鮮やかな熱病」俺はいつも取り繕ってばかりだな――「真夜中のストーリー」連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり彩瀬さん、連作短編が巧いなぁと改めて思った。
    様々な世代の男女がそれぞれにコンプレックスを抱え、周囲に受け入れられない息苦しさを感じながら日々をやり過ごしている。
    彩瀬さん独特の湿度を持った文章が、柔らかく時に鋭く心の裏側を抉る。まさに「眠れない夜」は本当の自分が現れるとき。はみ出してしまった醜い感情を浄化させ、一歩を踏み出させる彩瀬さんのさり気ない優しさが今作でも心にしみる。この、そっと寄り添ってくれる距離感がいつも丁度よいのだ。その程よさに救われる。
    5つの短編に共通して登場する、ネットの掲示板。「手が大好きなので、いま起きている人の手の画像を下さい!」というスレッドが、それぞれの登場人物達の心をざわつかせる。肯定されたり、否定されたりのスレ主の少女は一体何者?とこちらまでざわざわする。
    最終話での見事な伏線の回収には驚いた。全体的に漂うしっとりした空気感は好みが分かれるかもしれないけど、私はいつも、彩瀬さんの作品を読むと少し呼吸するのが楽になる。読む前はタイトルにピンとこなかったのだが、読了後、「体を脱いで」の意味するところがよくわかる。深いです。

  • 彩瀬マジックにすっかりやられた。
    彩瀬さんの静かに流れるような文章に心をぎゅっと掴まれた。

    真夜中のネット掲示板上で繋がる連作短編集。
    世の中はなんて儘ならないことが多いのだろう。
    顔や性別、年齢等、思い通りにいかずジタバタする主人公達の短編一つ一つに共感して切なくなる。
    誰しも人には言えないジレンマを心の奥に潜めながら吐き出すことも出来ずにいる。
    けれどそんな自分を受け止めてくれる味方はきっといる。
    人を信じる…底知れぬパワーを貰えた。
    人知れず思い悩んで眠れない夜は、重たい鎧を脱いで素の自分をさらけ出していけたらいいな…。

    彩瀬さんの短編の繋げ方が見事で最後に唸ってしまう。
    読み終えた後の爽快感がとてもいい。

  • 自分という生き物とうまく付き合えなくて、自分でいることに窮屈さを覚える。
    どうして自分はこんな風にしか生きられないのだろう。という自己嫌悪に陥った経験を持つ人は、持たない人よりも多く存在すると思う。
    別の誰かになることは叶わない。それならばこの自分という厄介な生き物と、どう付き合っていけばいいのか。
    そういった想いを抱えた登場人物たちが織り成す、5つの短編集。

    美しい容姿に生まれたことを窮屈に感じている男子高校生や、女性という性に少なからず違和感を抱えながら生きてきた中年女性など、自分のコンプレックスが何であるかをはっきり認識している主人公もいれば、真面目すぎて物事をまっすぐに決め付けてしまうことを周りに疎まれながらも、自覚は出来ていない老年の男性が主人公の物語もある。
    いずれにしてもどこか“上手く生きられない”人たちが主役であるところが、身近に感じてとても愛おしくなる。
    5つの物語の共通点はインターネット上にある1つの掲示板のスレッドで、若い女性が立てたらしい「手が好きなので、いま起きている人の手の画像をください!」という内容のもの。
    5人のうち4人の主人公はそのスレッドを偶然見つけ、ほんの一時軽く関わる。そして残りの1人は…という少しの謎も楽しめるつくり。
    みんなスレッドとの関わり方はほんの浅いものなのに、不思議とその存在が心に残る。偶然見つけてふと立ち寄って書き込みをするのだけど、その内容が主人公たちの悩みやコンプレックスにとても沿っているところが興味深い。
    普段悩んでいることや考えていることが無意識に現れる瞬間の小さな恐ろしさのようなものを感じた。

    私はとくに「小鳥の爪先」と「マリアを愛する」が好きだった。主人公たちのコンプレックスを理解出来るせいかもしれない。

    ネット上に居場所を求める人間が数多いる今の世の中。不健全だと責める人もいるかも知れないけれど、それによってどうにかバランスを保てている人も確かに存在する。
    そこに血の通ったような温かさを感じることも、きっと不可能ではないのだと思う。

  • ヤバい!めちゃめちゃよかった!!

    手が好きなので、あなたの手を見せてください!
    ――不思議なノリで盛り上がる、深夜の掲示板。
    そこに集うのは、日々積み重なっていく小さな違和感に、
    窮屈さを覚える人々。

    深夜の掲示板上で交差する、連作短篇集。

  • さまざまな年齢の男女がそれぞれ主人公の短編が5話入っている連作短篇集です。

    全編を貫くのは、「手が好きなので、いま起きている人の手の画像をください!」と書かれたインターネットの掲示板。

    自分でいることに窮屈さを覚えた人々が、悩みながらも、それぞれの心の形に沿った生き方を探す話、かな。

    読後感は不思議と爽やかです

  • どんどん読み進めたくなる物語でした。

    手から始まるストーリーでここまで引き込まれるとは。。

  • なんて優しい小説なんでしょう。
    5つの物語。
    どれも読み終わったあと、自然と
    心がほっこりしました。

    「あなたの✋を見せてください」

    というネット掲示板のスレッドが
    5つの物語で共通して出てきます。

    そして、最後の章でその投稿の主が
    登場。意外な展開やったけど、爽やかな
    読後感でした。

    また好きな作家さんが出来ました 笑

  • この方の連作短編集ほんと好き。

  • 様々な人の視点が読めて、深く共感するもの、全く交わらない他人の感じるものの両方を得た一冊。「マリアを愛する」が一番好きでした。とある元アイドルの非公式MVを思い出した。ずっと余韻に浸っていたい大好きな一冊です。

  • 彩瀬まるさんは初めてだったけど作家さんによって世界観っていうか伝わるものってほんとに違うんだなって感じさせられた。
    鮮やかな熱病は考えさせられる話だった。
    人間は知らないものを認識できないって...
    後輩にイライラしてたけど自分の考えを変えようと思った。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で第9回女による女のためのR‐18文学賞読者賞を受賞し、デビュー。16年『やがて海へと届く』(講談社)で、第38回野間文芸新人賞候補。17年『くちなし』(文藝春秋)で第158回直木賞候補、18年同作で第5回高校生直木賞受賞。

「2020年 『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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