一億円のさようなら

  • 徳間書店 (2018年7月21日発売)
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  • 本 ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198646554

作品紹介・あらすじ

加能鉄平は妻・夏代の驚きの秘密を知る。今から30年前、夏代は伯母の巨額の遺産を相続、そしてそれは今日まで手つかずのまま無利息口座に預けられているというのだ。結婚して20年。なぜ妻はひた隠しにしていたのか。
そこから日常が静かに狂いはじめていく。もう誰も信じられない――。鉄平はひとつの決断をする。人生を取り戻すための大きな決断を。
夫婦とは?お金とは?仕事とは? 今を生き抜く大人達に贈る、極上の娯楽小説

感想・レビュー・書評

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  • 父親の白石一郎の海洋シリーズ、十時半睡シリーズ等多数読んだが、息子の一文は初読み。

    謎の多い家族の話しと左遷されてヤル気の無い主人公の言動に気が重くなり、読み進めるペースが遅くなる。
    貧乏な親の元に生まれ、自分もリストラや親の介護、息子の進学と金の掛かる事で色々と諦めた生活を送る主人公。体調不良で会社を休んでいる時に掛かってきた弁護士からの電話。妻が48億円の財産がある事を知る。妻以外にも息子、娘と次々と出てくる家族の秘密。また、自分がリストラされた理由も。不審を持って妻との話し合い。妻から1億貰って、その上に会社で大事件。ついでに妻への更なる不審な事実の判明。話し合いもせずに家を出て福岡から金沢に。持っていた1億円のお金で新しい事業を始めると成功する。それでも連絡のない妻。もう二人はどうしようも無いのか?
    バラバラになっている家族、その上に周辺でも同様の家族が次々と出てくる。登場人物達が主人公含めて身勝手過ぎて呆れてしまうほど。
    とうとう、最後の1ページでドンデン返しが起きる。小説とは言え、色々な事を詰めすぎた感じがする。

  • 装丁がかっこよく、長年連れ添った妻が実は巨額の隠し資産を有していた、というテーマにかなり期待してしまったけれど、やたら長く、不要だったのではと思える登場人物やエピソードや食べ物や街や車の長ったらしい説明などもあり、思っていたより面白くなかった。

    鉄平がどれだけ優秀かというか経営者に相応しいのかも実は具体的には明示されていなかったし、何度も鉄平を邪悪な人間、邪悪な人間と書いているがそれらしいと思えるシーンもあのシーンがそうなのかもしれないけれど、実際なかった。実際そうでないならそれを殊更に繰り返す必要もないのでは。

    具体的に説明は出来ないがなんとなく女性の立場で読んでいて終始不快だったし、よくある昔のオッサンがいやはや女には敵わないですな、という例の実は女性をやはり男性より下に見ているいつものあの感じにしか思えなかった。なによりなんだか気持ち悪い。ある一定の年齢以上の女性に対し「女の子、女の子」という表現も好きではない。
    これが50代以上の男性の理想とか夢とか言うならほんとやめて欲しい。

    ラストはそれなりに面白くはあったけど、女の人の描写やストーリー展開についてはご都合主義、色々な人や内容が出てきては描きっぱなし、個人的には散らかりすぎていて、もっとコンパクトにスピード感を持って仕上げたストーリーなら良かった気がする。

  • ふとしたきっかけで妻が巨額の財産を持っていたことを知る鉄平。
    20年の間には経済的な危機もあったのに、その財産について妻は何も言わなかった。
    それだけでなく、元不倫相手が会社を立ち上げる際に億単位の株を購入していたのは許せなかった。
    鉄平は会社を辞め、家を出て縁の無い土地に住み始める。
    その後起こした事業の成功、元の会社の争いへと話は展開していく。

    あれ?これは夫婦の物語ではなかったのか。
    結局、夫婦の話としても事業の話としても纏まりが無いまま最終章へ進む。
    ラストは、妻が元の会社の株を取得していて鉄平に会社へ戻ってほしいと頼む。
    これが鉄平のわだかまりを溶かすのではないかと思われるラスト。
    なんだ、これ?

  • 本のカバーが独特。帯の様なカバーに期待し過ぎたのかもしれない。
    自分にはちょっと長かったのと、爆発事故の青島、高松への仕返し、穣一の不倫など、個人的には受け付けられない内容がさらーっと書かれていたので入り込めなかった。特に高松の件は、車椅子状態にさせても自分の非は認めず彼を冷酷な人間だと言うところ。怖い。仕事もできて周りからも信頼されている鉄平なのだが、私は何か好きになれなかったです。それは本人の思う『琢磨の邪悪さが手に取るようにわかる。その理由は鉄平自身の中にも同じ資質がしっかりと根付いているから。』からなのか。でもその邪悪さを自覚している様な部分も無かったのが気になる。

    最後のどんでん返しは面白かったのだが、小説の印象を変えるラストでもあった。壮大な別れの話かなと思っていたので、個人的には『別れてしまうのではなくきっちりと別れる。』と離婚で終わっても良かったかな。

    あとは、夏代のお金に対する考え方や、夫婦や親子の考え方には発見があった。『お金があるから辞めようと思えばいつでも辞められる。お金があると簡単に嫌なことから逃げてしまう。大金があっても何をしても本気になれないし誰のことも信用できなくなる。お金って怖いなあと心底感じたのよ。たとえ寄付でも一度財産を使って仕舞えば自分のものになってしまう。だから初めから無かったことにしたの。』確かにお金で楽はできるが、それで有意義な人生になるかと言えばそうとも限らない。

    そして出てくる食べ物が美味しそう。鉄平はとにかく美味しいものを食べまくっていて、読んでいてお腹が空いてくる。

    次々とトラブルやらが起こって、でもそれなりに収まったりして、ドラマを見ている様な感じの小説だった。

  • リストラされてたのを機に、親類の経営する会社へ転職し、一家四人で東京から福岡へ移住した加納鉄平。失意の日々を送っていたが、ある日弁護士から妻あてににかかってきた電話をたまたま受け、驚愕の内容を告げられる。そこから鉄平の人生が大きく変わり始めるのだった・・・。

    先の読めない展開と、無駄に細かい(笑)風景や食の描写の緩急にワクワクしっぱなしで、ページをめくる手が止まらなかった。500ページを超える長編だが、あっという間に読み終わってしまった。

    あと、内容以外にユニークなのが本書の装丁。通常であれば帯にかかれるような、あらすじ、編集者や著者のコメント等が表紙に直接書かれているところ。なので、本書の表紙はタイトルも含め文字だらけでイラストは一切なし。

    とにかく小説を読むのに抵抗が無い人はぜひ、読んでいただきたいエンターテインメントな一冊。

    そう言えば、本作は昨年(2020年)NHKでドラマ化されていたが、本書を読んだ後今となっては、それを見逃したことをものすごく残念に思う。再放送を気長に待つことにしよっと。

  • 続きが気になる、というよりも、とにかく『これだけ言ってるから、自分の気持ちを貫くのか』が気になって仕方なく読んだという本。
    ホント、仕方なく、が一番当てはまる。
    大風呂敷を広げすぎて、結局あれどうなった?って感じの事柄もいくつかあるし。
    急に話が飛んだり、その描写そこまで事細かに必要?と思う部分も多々アリ。
    絶賛してる人もたくさんいらっしゃるけど、私としては、『無理』なラスト。
    初志貫徹しろよな。
    多分この先も、妻は信用ならんと思うんだけどな。
    あんなに偉そうに言ってきてて、結局そうなるのか・・・と。
    これを読むのに充てた私の時間を返してくれ・・・。

  • 物語としては楽しめるが、無駄な描写が多い。主人公の家族観に共感する部分もあり入り込める。ラストがびっくり感もないし、主人公の心変わりする様の描き方が弱い。

  • 途中のストーリーはそこそこ面白いのだが、結末は意味無い。今までの苦悩はなんだったのか。その後が書かれていないので断言できないが、1億程度には負けなかった鉄平といえども、結局40億に抗うことは出来なかった、という人間の悲しさを書いたものなのだろうか?
    色々闇の心を持った幼馴染の代議士や美しい女将(この人も唐突に本性が明らかに・・・)、そして何より鉄平が、その闇を発露すること無く完結してしまったのも残念。
    鉄平の美貌の妻も良くわからない。長い話の中に出てくる、金沢の町や料理やベンツやらのくどい説明も必要性がわからない。様々に広がった末節の話も?
    だれることなく一気に読みきったのだから、つまらなくは無いのだが、この読みきった感の無さは何なのだろうか。
    やはり著者は、所詮人間なんぞ数十億円の前には、ひれ伏すだけの存在なのだと言いたかったのだろうか。

  • 結婚して20年の夫婦、鉄平と夏代。鉄平は夏代が叔母より巨額の遺産を結婚前より相続していたことを知る。さらに、息子と娘の交際についても夏代のみが知るのみ。会社内では抗争あり。鉄平は家族、会社誰も信じられなくなり、妻より渡された1億円で新たな人生を進むことに決めた。家族のことだけではなく、悪人が出てきたり、会社内抗争の話が出てきたり、新規事業の立ち上げ、盛りだくさんの内容。妻をはじめ裏切られたっていうのはわかりますけど、みんな好き勝手なことやってるなあって(結局夏代の手の内でしたって感じだし)。誰にも共感を得なかった。一億円を手にした男がどうするって気になったんだけれど、なんか現実離れしているというか、そんなうまくいくもんですかねえ〜、と。金沢の街については魅力的でした。

  • けっきょくそうなるんだ、という結末。
    主人公の目線で、ただただ主人公の日常をたらたらと。小さな波はあるけれど、大きな山場みたいなのも感じられず『承』と『転』が欠けていた。

    夏代さんの行動のあれこれにも全く共感できなかった。母親として、妻としての振る舞いとか。
    自分のものではないと言い切っていた遺産を最後あのような形で使い、筆頭株主になるということはその財産を公開することだし。まぁ最後の切り札なんだろうけど。

    でも。はちまき寿司はとても美味しそうだし、
    チャーハンも無性に食べたくなって近所の中華屋さんに行ったけどね。金沢の回転寿司も行ってみたい。

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著者プロフィール

白石 一文(しらいし・かずふみ):1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で第一四二回直木賞を受賞。著書に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『草にすわる』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』『松雪先生は空を飛んだ』『投身』『かさなりあう人へ』『Timer 世界の秘密と光の見つけ方』等多数。

「2024年 『代替伴侶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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