- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198648640
作品紹介・あらすじ
弔いは、死人のためにするんじゃない。
残されたもののためにするんだ!
「人の死で飯を食う。それがあっしの生業」
江戸の新鳥越町二丁目に「とむらい屋」はあった。
葬儀の段取りをする颯太、
棺桶づくり職人の勝蔵、雑用の寛次郎、
死者に化粧を施すおちえ、
そして渡りの坊主の道俊。
色恋心中、死産、貧困、自死、火事。
さまざまな亡くなり方に対応していく
とむらい屋の仲間。
時に水死体を見るのが苦手な医者、巧先生や
奉行所の韮崎宗十郎の力を借り、
人の死を見つめる。
十一歳の時、弔いを生業にすると心に決めた颯太。
そのきっかけとなった出来事とは?
江戸時代の葬儀と死を生々しく描いた
弔いの時代小説。
<とむらい屋で働く人々と仲間たち>
颯太:新鳥越町二丁目の弔い扱う葬儀屋の店主
十一歳で葬儀屋になると決める
おちえ:母を颯太に弔ってもらって以降
居座るおせっかい
勝蔵:早桶職人。初めての棺桶は妻のものだった
道俊:寺に属さない渡りの坊主
巧重三郎:水死体を見るのが苦手な医者
韮崎宗十郎:南町奉行所の定町廻り同心
【目次】
第一章 赤茶のしごき
第二章 幼なじみ
第三章 へその緒
第四章 儒者ふたり
第五章 三つの殻
第六章 火屋の華
感想・レビュー・書評
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今で言う葬儀屋の話。
タイトルにある颯太がリーダー、化粧や湯灌、お供えの団子作り担当のおちえ、棺桶作り職人の勝蔵とその弟子正平、雑用係の寛次郎、医師の重三郎に僧侶の道俊というチーム。
それぞれが家族や大切な人を失っている。
一見蓮っ葉なように見えて世話を焼く颯太が、同心の韮崎に無理やり引き込まれて死人の謎を解く話あり、それぞれの死人や残された人々の思いを汲み取る話あり、メンバーに関わる人々の話あり。
葬式もそれぞれ。
慎ましくも多くの人々が列を成すほど慕われたことが分かる葬儀。
本人の弔いではなくて店の宣伝のための葬儀。
生まれたばかりで逝ってしまった赤子のためのしめやかな葬儀。
テンポよく読めたが、葬儀の話なので仕方ない部分はあるが暗い。暗い割には印象は薄い。
宮木あや子さんの「セレモニー黒真珠」くらいぶっ飛んで欲しいとは思わないまでも、もう少しキャラクターに深みと魅力が欲しかった。
もしかしてシリーズものとして考えているのだろうか。
好きな作家さんだけに期待値が高かった分、ちょっと残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトル通り“弔い”を生業とする颯太と、彼の仲間たちを中心とした六編の連作ものです。
個人的な事で恐縮ですが、昨年身内を亡くした時、心身共に疲弊しているのに、やらなあかん事は多いという状況で、慣れない(そら、慣れないわ)葬儀をテキパキ仕切って頂いた葬儀社の方には大変お世話になりました。
このように、必要とされている職業ではあるのですが、本書では江戸時代という事もあってか、世間から“不浄”呼ばわりされてしまっている部分があります。
颯太がどこかクールで淡々としているのも、その辺からなのかな、とつい考察してしまいます。
各話、様々な背景の死に様や送り方があり、豪商で故人の遺志関係なく宣伝を兼ねたド派手な葬式もあれば、第四章「儒者ふたり」の手習いの先生のように、貧しさ故きちんとした式はできなくても、皆に慕われて行列のできる“別れの式”があったりと、まさに十人十色です。
そして、ある意味“死体のプロ”ともいえる颯太は、定町廻り同心の韮崎さんにも何気に頼られて、不審死の謎解きを手伝うはめになる場面も・・。
そんな颯太の壮絶な幼少期が描かれている第六章「火屋の華」は胸にせまるものがありました。
颯太だけでなく、“とむらい屋”のメンバーは其々“抱えているもの”があり、本書でも紹介がてら、彼らの事情にさらっと触れています。
続編も出ているようなので、そちらも読んでみたいですね。 -
とむらい屋(葬儀屋)の颯太を巡る短編集。「赤ちゃん返のしごき」、「幼なじみ」、「へその緒」、「儒者ふたり」、「三つの殻」、「火屋の華」の6篇を収録。
登場人物は、とむらい屋主人の颯太に加え、おちえ、僧侶の道俊、棺桶作りの勝蔵とその弟子正平、雑用の寛次郎、そして南町奉行所同心の韮崎。弔いは死者のためでなく残されたもののために行うのだとクールに言い切る颯太は、実は死者の思いを掬いとる人情家。葬儀依頼を受けると、死者の死にまつわる事情を洞察した上で懇ろに弔っていく、という筋立て。
颯太の過去を描いた「火屋の華」は結構よかったけど、それ以外はどれも話が薄くてちょっと物足りなかった。 -
読楽2017年1,3,5,7,9,11,12月号掲載のものに加筆修正し、2019年6月徳間書店から刊行。シリーズ1作目。連作短編形式で、6章で構成される話。仲間達ととむらい仕事をしながら、事件も解決して行くという展開。最初なので、紹介に比重を置いたのか、あっさりめのストーリー。次作に期待。
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江戸時代版「葬儀屋」の物語。
『とむらい屋』の人達が心を込めて死者を送り出す姿が描かれていて、1話1話なんだか心地よく感じました。
『とむらい屋』を営んでいる主人公の颯太は「弔いは残された者のためにある」と話しています。これまで深く考えたことはなかったけれど、亡くなった人との別れの儀式であるので、この颯太のセリフに共感しました。また颯太がとむらい屋になるきっかけとなる出来事が書かれていて、そう思う理由が更にわかります。
人には様々な人生があり、その数だけ死があって、そのさまを江戸時代の葬儀屋として非常に興味深く描かれている作品で、文章も分かりやすく、面白かったです。
続編がでたとのことなので、是非読みたいです! -
連作短編6編
とむらい屋として生きる颯太,周りの医者,坊主,棺桶職人などの関わりと弔いに関わる厄介ごとなどを,さばさばと描いて奥にしみじみといった感情がのぞく.生きる死ぬという事に揺るがない信念を持つ颯太の姿が清々しい. -
初出2017年「読楽」の6章
残された者のために弔いはあるのだと、あの世は信じない若い弔い屋(葬具貸し)の颯太は言う。
最初の若い女の水死体のときは謎解きが中心で、原因を作った男を追い詰める。ミステリーなのかと思いきや、次は別々に続けて死んだ3人が幼なじみだったことがわかっていく話。謎解きには違いないが。
3話目からは弔い屋の雇い人や仲間たちの過去に関わる話で人情話っぽくなる。
棺桶職人の勝蔵が腹違いの妹のお産のために作った産湯のたらいが、死産の子供の棺桶になる。寺に属さない僧の道俊の親代わりだった長屋の儒者角松が死に、世話になったかつての長屋の住人達が長い弔問の列を作るのを見た大名お抱えの儒者が、かつてのライバルに罪を告白する。
寛次郎は紙問屋の父を後妻と番頭に殺され、係累と店を失いぐれていたところを颯太に拾われた。その颯太は隠れ淫売の居酒屋に売られ、3人の女たちと蔵に閉じ込められた時に火事にあい、颯太だけが助かって、助けた鳶の世話で弔い屋になっていた。弔い屋はのそ跡地にあり、地面の下には3人の骨壺がある。
この話は続くのだろうか。 -
L
葬儀屋の話。人の死あっての葬儀のわけでちょいちょい泣かせる。葬儀屋の面々それぞれの成り立ちの話。よくある構図だけど題材に沿ってるから軽くない。のかな?なにげにご都合話も多かったけど、ご都合ないと盛り上がらないもんなぁ。
メモ
颯太
おちえ
重三郎 医者
道俊 僧
勝蔵 正平 桶職人
韮崎 南町同心
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梶よう子さんのファンなれど、さすがに弔い話がこうも並ぶと気が沈む。いずれも死に目があまりに悲しい。江戸期にこうした葬祭業があったものやら分からんが、少なくとも葬儀屋傘下に医者と坊主がいるってのはないだろう。棺桶職人を含めて、それぞれが独自の死生観を秘めて颯太のもとで職分を果たす。一人ひとり好きなんだけれど、やはり弔い続きは辛い。