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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784198648978
作品紹介・あらすじ
寡作ながら、今まで素晴らしい作品を
生み出してきた乙川優三郎が、
まさに“今”世に贈る短編集!
圧倒的な筆致で、数々の賞を総なめにしてきた
乙川優三郎の真骨頂は、心にしみる短編にある。
乙川は、「悲しみ、苦しみのないものを書こうとは
思わない」という意図のもと、
楽しいだけの話ではなく、
「苦しみの末のハッピーエンドを予感させる物語」
を描く。
「そして人生は続く」という言葉が
読後に余韻として漂う8篇の傑作短篇集。
みんなの感想まとめ
心に響く短編が詰まったこの作品は、乙川優三郎の独自の世界観を堪能できる一冊です。特に、舞台となる海辺の町・御宿を背景にした物語が展開され、過去と現在が交錯する美しい情景が描かれています。表題作では、迷...
感想・レビュー・書評
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「地先」その土地から先へつながっている場所
久しぶりの乙川優三郎さん。
タイトルの地先という言葉は知らなかった。
表題作の書き下ろしを含めた短編八つは、久しぶりに味わう静かで美しい世界観でした。
この作家の言葉、文章、流れる空気感、浮かぶ情景のなんと美しいことか…
海辺「御宿」が舞台となる一作目は過去に御宿を愛した作家達が名を連ねる。
月の砂漠の生まれた土地とは初めて知りました。
表題作「地先」は迷いを抱えて御宿に来た画家の話
美しい海とそこに生まれ、留まり、強く生きる若い娘との時間を過ごすことで先につながる場所を見つける話。
大人の愛の話に酔いしれた…そんな気分です。
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この著者の作品を初めて読んだ。時代小説を中心に書いてきた作家さんとのこと。
本作はすべて時代設定は現代だが、時代小説っぽいと言うべきか、人生の黄昏や男女の機微を描いた短編小説が並ぶ。全作ではないが、多くの作品が千葉の御宿を舞台にしている。
端正な文章で綴られてはいるけど、人物造形も文体も、あまりに通俗的。女性の登場人物がいわゆる男目線で描かれていて、みんな演歌に出てくる女みたい…。
特に、表題作のおじさん画家の、民宿の娘さんへの視線と期待がかなり身勝手で正直気味が悪い。芸術家って、画家って、こんなに単純なものなのでしょうか。 -
乙川さんの作品は千葉県夷隅郡御宿町が頻繁に出てくる。
私は3歳くらいから大学を卒業するまで毎年何回も御宿に行っていて、作品に出てくる場所で多くの時間を過ごした。
御宿町岩和田に住む、海の家を営む家族と家族ぐるみで親しくしている。
家族で訪れたり、うちでバイトをしている大学生を連れて行ったり、私一人で行ったりした。
小学生の頃から海の家の手伝いをして、色々な経験をした。
私の人生の思い出の多くは御宿にある。
だから、乙川さんの御宿を舞台にした作品を読むと進まない。御宿の日々を思い出して懐かしんで読めなくなってしまう。
私には乙川さんが描くような美しい海の印象はない。そんなに綺麗だったかなぁと首を傾げてしまう。
… … …
冒頭に収録された「海の緑」は、御宿にゆかりのある人物について書かれている。全然知らなくてびっくりした。月の砂漠の童謡を生んだ画家で詩人の加藤まさを、作家の尾崎士郎、前田河広一郎、三宅やす子と娘の艶子、画家の谷内六郎。知らなかったから興味深く読んだ。
作中の主人公が時を経て同じ景色を見ていることを感慨深く思うシーンがある。私も乙川さんと同じ景色の中にいたことを感慨深く感じる。
どこかで乙川さんに会っていたかも知れないなぁと思う。 -
2021/09/07 20:26
やっぱり、この作家は良いな。何がと言われるとまだ具体的に語れるわけではないのだが、文体も描いている世界も、あまり自分には馴染みがない人たちなんだけど、嫌味がないというか臭みがないというか。装丁も綺麗なのが多くて、今までのものは全部図書館で借りてきたから一冊も手元にないのだけれど、やっぱり買い求めるならKindleじゃダメだな。
この短編集は、御宿と絵がひとつのテーマの様だ。初出を見ると2015年が3作と2019年が4作、そして最後の「地先」が書き下ろし。
すごいなと思うのは、その作家を好きになる作品から時間が経つと、あまり面白くなくなる場合もあるのに、乙川さんのはそれがないんだよな、まぁ旧いのと新しめのと交互に読んでるからかもしれないのだけれど。 -
乙川さんの本は初めてでした。独特の文体は、少し硬質で、冷静で、それでも静かな熱が潜んでいるように感じました。
海辺の話が最初と終わりにあり、読み終わった後は装丁の青がより印象的でした。絵描きが出てくるものも共通していたりして、不思議なまとまりもあり読みやすかったです。
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収録された8編とも、それぞれの人生の日常が確かな人物描写と大胆な省略で切り取られるので、転機に直面した彼らの逡巡や決断が読者の胸に迫ってくる。限られた紙数の中で「言葉さえ知っていたら」の娘が母に発する"おう、ええんでねえか"という短い言葉に、語られない親子の関係が浮かび上がるし、とりわけ感動的な「ジョジョは二十九歳」の印象的な終わり方は最後まで心に残った。ただ後半になるほど男女の会話が類型的になって、テーラーもバーテンも演出家も同じ話し方になっているし、タイトルがどれもパッとせず、読後の余韻を妨げている。
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作者の性格がわかるような本。多分作者は真面目で考え深い人なんだろうな。
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相変わらず、文章が素晴らしい。
バラバラな短編集だけど、絵描きが関係する作品がいくつか収録されていて、今の気分に合っていた。
前作の試しのようなものもあって、一冊としての物語のまとまりは感じられなかった。
「海の縁」と「そうね」が好き。 -
人生の後半に差し掛かった男と女。人生の転機に直面し、来し方と行く末の狭間に揺れながら、それでも続いていく人生のために闘い続ける姿を描く8つの短編。
「地先」とは、その土地から先へつながっている場所。8つの物語の主人公は、人生の「地先」に立っている。これからも人生は続き、今からでも違う道を選べる。生活のためとうそぶき、妥協と諦めのなか選んできた道を外れ、自分らしい道を歩むその一歩を踏み出す場所に・・・・・・。
そのきっかけとなるのが、千葉・外房の御宿であり、安房小湊であり、長野の高原の小村である。その土地の生き生きとした自然と、そこに暮らす人々の地に足の着いた生活が主人公たちの背中を押す。
人が生きていくうえ本当に大切なことは何なのか。乙川さんの作品は常にその問題を投げかける。
物に溢れ、画一的で、憂いも郷愁もない人生の面白みのなさ。生きるために心を殺してまで働き続けるという矛盾。そうではない一歩を踏み出す主人公たちが清々しい。
「トワイライト・シャッフル」「太陽は気を失う」に連なる作品は、今回も乙川さんならではの文体で酔わせてくれました。 -
初出 2015〜19年の小説新潮、群像、読楽の7短編に、書き下ろし1編の短編集。
洗練された文体で淡々と綴る心理描写は、いつもながら作者らしく、移り住んだらしい御宿での話が多い。
冒頭の「海の縁」は過去に御宿に保養や避暑に来ていた作家や画家の話で、画家が他の話にも出てくるのは、このあたりからインスパイアされたか。
「言葉さえ知っていたら」は、昔同棲して失踪した美大の先輩が路上画家になっているのを見かけて絵を買い、その絵を激しい色で塗り替えるというありがちなモチーフだが、結末の心理描写が切ない。
出色は、ふらりと絵を画きに海辺の町に来た画家が、生き生きとした民宿の娘にかつての海女たちの姿を重ね、描きたいという原点に返る実感を得る「地先」。画家の気持ちがストレートに伝わる。
ほかに、早期退職して長野の高原に移り住んだ女が、元の同僚で不振の会社にしがみつく遠距離「恋愛」の相手に冷めていく「まるで砂糖菓子」。
フィリピンからダンサーとして10年稼ぎに来て、肺癌で余命のない男が家族と恋人を思う「ジョジョは29歳」。
店を閉めたテーラーの親を支えて、水商売に替わった娘の不安を描く「そうね」。
ラジオ局で朗読を担当する女と演劇部の先輩で劇作家の観劇後の情事という形の縛られない恋愛に、女が不安を感じ始める「おりこうなお馬鹿さん」。
不倫旅行中の飛行機事故で相手が亡くなり、大けがを負って故郷に戻った女性建築士が、幼なじみから仕事を依頼されて東京を引き払う決心をする「素敵な要素」。 -
乙川さんの本は、初めてでした。心地の良い短編集にほっとしまさした。
著者プロフィール
乙川優三郎の作品
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感想 :

別れが多いかな?
別れが多いかな?