風の港 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.55
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651404

作品紹介・あらすじ

そんな時は待とう、
静かに。諦めず。
いい風があなたに吹く日まで。

そこに降り立ち、飛び立つまでのひととき。
旅人たちの人生が交差し、奇跡が起こる。

『桜風堂ものがたり』シリーズの著者が贈る
珠玉の空港物語。

【著者からのコメント】
コロナ以前は、たまに空を飛ぶことが
わたしの日常で、空港で過ごす時間も
また日常でした。
滞在の時間を長めにとって、カフェで
版元さんと打ち合わせしたり、
大きな窓から空や飛行機を見ながら
ラウンジでのんびり仕事をしたり、
本を読んだりしたものです。
ある日、羽田空港のレストランで、
ひとり昼食をとりながら、
ふと、行き交うひとびとの足音や声に、
耳を澄ませたことがありました。
みんな旅の途中なんだな。
それぞれの旅の。そして人生の。
ひとときここで翼を休めて、
またそれぞれに飛び立つんだな――。
そう思うと、みなが同じ大きな船に
乗り合わせた旅人のように思えて、
愛しくなりました。
その時の気持ちが核になり、
『風の港』は生まれました。

第一話 旅立ちの白い翼
夢破れて、故郷の長崎へ戻る亮二は荷物を
まとめて空港へ。似顔絵画家の老紳士と出会い
思わぬ言葉をかけられる。

第二話 それぞれの空
「本は魔法でできているの」小さな書店を
営んでいた祖母の言葉。いま空港の書店で
働く夢芽子が出会う、ちょっと不思議な物語。

第三話 夜間飛行
恵と眞優梨は33年ぶりに空港で再会する。
少女の日のすれ違いと切ない思い出を
名香の香りに乗せて。

第四話 花を撒く魔女
老いた奇術師幸子は、長い旅の果て、
故国の空港に降り立つ。
自分の人生が終わりに近いことに気づき、
来し方を振り返る。

感想・レビュー・書評

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  • 羽田空港を舞台にしたリレー形式の連作短編集。

    第一話旅立ちの白い翼
    かけだしの漫画家だった35歳の亮二が恋に破れ一番大事な友だちも失い、夢をあきらめ長崎の実家に帰る空港で出逢った似顔絵描きの老人によって運命が変わります。

    よい風に恵まれなくて、にっちもさっちもいかなくなるときもある。そんなときは風を待っていてもいいんですよ。きっと静かに諦めずに、よい風が吹くその日まで。

    第二話それぞれの空
    空港の書店の店員、佐藤夢芽子。姉はパイロットになった優等生。自分をみにくいアヒルの子かよだかの星のよだかだと思っていますが…。ちょっと不思議なお話。

    第三話夜間飛行
    50歳にして文学の新人賞を受賞して式に出る新人作家の恵と子供の頃から可愛くて女優として活躍中の眞優梨。幼なじみだった二人が30年ぶりに空港の書店で再会して…。

    第四話花を撒く魔女
    80代のフェリシア幸子の魔女としての旅。

    エピローグ
    (いつかまた、この世界のどこかで)
    どこかでまた、すれ違えたらいいよね。



    私は空港に最後に行ったのは中学生の時、北海道の千歳空港でした。
    よく空港にはたくさんのドラマがあるといわれるのがわかりました。
    どのお話もよかったけれど、第三話の夜間飛行が一番好きでした。30年前、眞優梨が恵を裏切った誤解が解けて本当によかったです。

    追記 レビューに最初に北海道の空港と書いてしまいましたが、羽田空港が舞台だったそうです。読み間違えてしまいました。すいません。レビュー少し直しました。

  • 空港を舞台にした心温まる短編集。

    別れと出会い、始まりと終わり、日々それぞれの人生の物語が紡がれる空港。
    ゆるく繋がりのある短編は、ほんのり心に火を灯してくれる。

    私は魔女の物語が一番好きだった。
    netgalley8.6

  • 空港が舞台のとても優しい物語(おそらく羽田空港の国内線ターミナルがモデルと思われる)。連作短編で、登場人物を通じ話がつながっている。あとがきを読んで、著者の村山さんの子供の頃からの体験や空港への思いがふんだんに盛り込まれていることを感じた。「空港」は本当に特別な場所。旅に仕事に移住先への移動や故郷への帰省に、それぞれの目的で遠くへ移動する人が束の間寄る場所。自分の人生などに思いを馳せる非日常の空間ではないだろうか。本書に登場する人たちも、過去のわだかまりを解消したり、来し方を振り返ったり、これからに思いを巡らせたり、とても人間味にあふれていた。許すことは執着を手放すことでもあるのだなと実感。ここに登場したそれぞれが幸せで充実した人生を歩んでいけると良いとつくづく思った。

  • 空港のラウンジでフライト待ちの時間にさらっと読むのにはいいかも。
    空港でいろんな人生が交差していく様子が温かいエピソードで綴られていく。

    いい話なんだけど、ちょっと文章がくどくて…
    私には読みにくいように思えたので評価低めです。

  • 空港にフォーカスを当てた作品をはじめて読みました。
    旅に出る高揚感や目的地に向かう安堵感で、非日常なのにわくわくと安らぎが感じられる、形容し難い空港の魅力が優しく言語化されていました。
    とにかく人が優しく、少しファンタジックな村山さんの世界観が、空港の特別感ととても合っていました。
    夜の空港や空港内の書店など、立ち寄ることがあまりない場面もあったので、じっくり空港を散策するのも楽しそうだなと思いました。

  • 羽田空港を舞台としたリレー形式の連作短編集。
    自分の夢を見失って、故郷の長崎に帰ろうとする漫画家の男性の話から、空港内の書店員、その書店で再会する作家と女優とそれぞれの優しい物語が描かれる。
    「コンビニたそがれ堂」シリーズの感想で何度も書かせていただいているが、作者の作品はただ優しいだけでなく、きちんと傷つく理由も現実的に描かれる。
    しかし、その傷を乗り越えて、描かれる絆にいつも泣かされる。
    今回もそれぞれの話がそうだった。
    そんな温かい物語もさておき、空港内の描写が絶妙。
    旅立つ人、帰ってくる人、仕事で利用する人、別れを悲しむ人・・・
    本当に様々な人たちが行き交う空港。
    その分、いろいろな思いが渦巻いていると個人でも思っていた。
    何となく浮足立つ雰囲気の出発ロビー。
    どこか落ち着いた雰囲気の到着ロビー。
    無機質な雰囲気の乗り換え階。
    階が変わるだけで、全然違う場所に来たような感じを受けていた。
    そんな私の個人的な想いが、この物語には反映されているようで、最初から最後まで感情移入して読んでしまった。
    そんな中で一番共感したのが、空港内の本屋さんの規模の小ささ。
    しかも、すごく目立たないところにある。
    長距離を移動する時に本を必ず持って行く人間からすれば、もう少し大きな本屋さんがあればいいのに、って思ってしまう。
    コロナ後、なかなか観光客が戻らない空港は本当に寂しい。
    いろんな人が行き交い、去っていく、ちょっとだけ羽を休める場所「空港」が早く本来の姿を取り戻しますように・・・

    そんな時は待とう、
    静かに。諦めず。
    いい風があなたに吹く日まで。

    そして、このキャッチコピーに今とても励まされている。

  • 海の向こうにいる人たちの考え方を知るためにその国の言葉を学びその国の本を読むっていう考えを戦時中に持てることが驚いた。
    今こそ私たちが出来ることってなんだろう。空港で行き交う温かい人間模様に癒されながら世界情勢に目を向けて考えさせられもした。

  • 空港を舞台にした連作短編。
    どの話も何か力をもらえる良い話でした。
    登場人物がオーバーラップしているのも私好み。

    最初の似顔絵屋さんの話と次の本屋さんの話が特に良かったです。
    似顔絵屋さん、たまに見かけますが、このような使い方もあるのかと思いました。

  • 空港は風の港…空港を舞台にした短編連作。書店員さんの話も、作家と女優さんの話もどれも良かった!幸せとは捉え方次第で、大切にしてる人ほど会話して大事にしなきゃいけないと思った。

  • 空港を舞台にした、出会いと旅立ちの連作短編集。

     空港って、のんびりするところじゃなくて、旅立つ人、帰ってくる人、通過する人が行き交うところ。最近、空港で飛行機見てないなーということで旅の仲間と展望デッキにお茶を飲みに行った。そんな感じの、どこにも行かなそうな人が案外たくさんいて、こういう楽しみ方もあるのかと思った。飛行機の離発着を見てるだけで、なんかワクワクした。

     夜明けとともに旅立つLCCに乗ったり、そんな時間に空港で知り合いとすれ違ったり、めったに会わない幼馴染みのご両親とばったり会ったり。私にも空港の物語があったことを思い出した。

     まだのびのびと旅には行けないけど、空港にいる旅の始まりの気分を存分に味わえました。

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著者プロフィール

1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。著書に『シェーラ姫の冒険』(童心社)、『コンビニたそがれ堂』『百貨の魔法』(以上、ポプラ社)、『アカネヒメ物語』『花咲家の人々』『竜宮ホテル』(以上、徳間書店)、『桜風堂ものがたり』『星をつなぐ手』『かなりや荘浪漫』(以上、PHP研究所)、げみ氏との共著に『春の旅人』『トロイメライ』(以上、立東舎)、エッセイ『心にいつも猫をかかえて』(エクスナレッジ)などがある。

「2022年 『魔女たちは眠りを守る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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