一橋桐子(76)の犯罪日記 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 386
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651886

作品紹介・あらすじ

<著者からのコメント>
テレビや雑誌で、
凄惨な事件や驚愕の出来事などを
見るのが苦手です。
しばらく、そのことばかり考えて
何も手につかなくなったり、
眠れなくなったりします。
そんな時は事件の当事者の、
いったいどこに分岐点があったのか、
どこでどうすれば事件に巻き込まれなかったのか
答えが出るまで考えてしまいます。
残念ながら、
答えが見つからないこともしばしばです。
桐子さんは小さな幸せから放り出されました。
彼女が事件に巻き込まれないように
一緒に考えてはくださいませんでしょうか。
共に、はらはらしてくださったら幸いです。


<担当からのコメント>
私も桐子さんと同じ、
「人に迷惑をかけないで生きていきたい」と
思っていました。でもこの本を読んで、
「迷惑をかけて生きていてもいいのかもしれない」
と考えが変わりました。
人に迷惑をかけてこそ、生きている証なのだと!
人とのつながりが疎遠になっている今この時代
だからこそ、読んでもらいたい作品です! 

<編集長からのコメント>
まだ41歳の私ですが、
76歳の桐子に激しく共感しました。
この老後は決して他人事じゃない――。

万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人
どれが一番長く刑務所に入れるの?


老親の面倒を見てきてた桐子は、
気づけば結婚もせず、76歳になっていた。
両親をおくり、わずかな年金と清掃のパートで
細々と暮らしているが、貯金はない。
同居していた親友のトモは病気で
先に逝ってしまった。
唯一の家族であり親友だったのに……。
このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。

絶望を抱えながら過ごしていたある日、
テレビで驚きの映像が目に入る。
収容された高齢受刑者が、
刑務所で介護され
ている姿を。

これだ! 光明を見出した桐子は、
「長く刑務所に入っていられる犯罪」
を模索し始める。

第一章 万引
第二章 偽札
第三章 闇金
第四章 詐欺
第五章 誘拐
第六章 殺人

感想・レビュー・書評

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  • とても面白かった。
    76歳の一橋桐子が同居人のトモに先立たれ、結婚歴もなく子どももいない自分がこの先どうやって生きていけばいいのかと憂いて、なんとか刑務所に入って老後を送れないかと奮闘する話。
    読む前はおどろおどろしいものを想像していたけれど、刑務所に入るために頭を悩ます桐子の姿がちょっと可愛くて可笑しくて笑ってしまうことが何度もありました。
    でも基本的には老いる哀しみや死への恐怖が描かれていて、他人事ではないと誰もが思いながら読むはず。
    最終的には人との繋がりなんだな、と思わせてくれる着地点でした。
    桐子本人は気づいているか分からないけれど、真面目でチャーミングな桐子がたどり着いた着地点。
    「人の死‥‥特に、老人の死というのは結局、これまでの人生の答え合わせなのかもしれない」
    サラッと読めるけど、読後、胸に残るものがたくさんある、そんな作品でした。

  • 76歳、独身、結婚歴は一度もなし。
    同居していた親友に先立たれ、一人ぼっちになり途方に暮れる桐子。
    僅かな年金と清掃のパートで日々を細々と暮らす中で、刑務所で”快適”に過ごす高齢者達の姿をテレビで見かける。
    他の人に迷惑はかけられない。ちゃんと刑務所に入ってそこで無事死ねるように、と自分の始末を自分一人でつける決心をする。

    刑務所に入れば、住む場所はもちろん、食事ももらえ風呂にも入れ、その上病気になったら介護までしてもらえるなんて…。今まで考えたこともなかった。
    刑務所に入るための犯罪が様々あって、しかも意外と刑務所に長くは居られないものなんだな、とちょっと驚いた。

    「私は失うものは何もない」
    そうきっぱり言い切る桐子。
    けれど残りの人生を生きていく上で、周囲の人の信用を全て失うことになるのはどうかな。自尊心を失うのもね。
    「老人の死というのは結局、これまでの人生の答え合わせ」
    桐子の日々の暮らしを覗いてみて、老いて生きていくことの難しさに胸苦しくなった。
    桐子はちょぅど私の母親と同い年(干支も申)。
    母親の老後もだけれど、自分自身の未来の生活に不安を感じる。
    居場所、収入、健康、役割、話し相手、生きがい…考えるべきことは尽きない。
    自分の人生の答え合わせを出来る限り満足させるためには…正解はなかなか出ないけれど、これから老後を迎えるにあたり、とても参考になった。

  • またしてもタイトルと表紙で選んでしまった本。

    高校時代からの親友と二人、仲良く暮らしていたが、たった3年で友は亡くなり、一人取り残されてしまった桐子。
    寂しさの募る日々、しかもそれだけでなく、住む場所やお金の問題も重くのしかかってくる。

    なんというか、これからの自分の老後のことを思うと身につまされるというか、、、ひどく重苦しい気持ちになりながら読んだ。
    20代の時に読んでいたら、まだ軽やかな気持ちで読めたのだろうか…?

    真面目に誠実に生きている桐子が最後に報われて良かった。
    自分の老後もこんな風に良い人ばかりと巡り合えたらいいのだけれど…。

  • 生涯独身を貫き身寄りのない桐子さんが一緒に暮らしていた親友のトモを亡くし先行きがどんどん不安になっていく...いっそのこと犯罪を犯して刑務所に入った方が楽なのでは?といろいろな犯罪計画をしていきます。でも、なるべく人に迷惑をかけず長く刑務所にいられるような...。そんなところに桐子さんの人の良さを感じました。
    桐子さんが本当に犯罪を犯してしまうんじゃないかとハラハラドキドキしました。誠実に真面目にコツコツと人生を送ってきた桐子さんだからこそ自然とまわりが手助けをしてくれいい方向に導いてくれたのかな!?と、最後はホッコリできたので安心しました。

  • 「バッカス・レディ」を観た後で、日本の作家さん・原田ひ香さんが『一橋桐子(76)の犯罪日記』を上梓していたのを思い出した。新聞の書評欄で知り図書館で検索したが、その頃は未だ購入されていず、そのまま忘れてしまっていた。
    原田さんだったらもっと巧くさばいてくれるに違いない。耳目を驚かすような大袈裟なタイトルに、1章の万引、2章の偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と次々に犯罪が並んでいた。もしかしてハズレと読み始めたが、すぐに桐子の人となりを知り安心する。
    小説は、両親をおくりわずかな年金と清掃のパートで細々と暮らしていた桐子が、同居していた親友のトモが亡くなり一軒家に住めなくなったところから始まる。このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。絶望を抱えながら過ごしていたある日、テレビで驚きの映像が目に入る。収容された高齢受刑者が、刑務所で介護されている。これだ! と光明を見出した桐子は『長く刑務所に入っていられる犯罪』を模索し始める。桐子が目指した犯罪は人を殺めずに迷惑をかけないというもの。
    手始めに桐子は万引をしてみる。次は偽札作りは罪が重いと聞きコンビニのコピー機で一万円札のコピーに挑む。パチンコ屋の清掃中、顔見知りの客から闇金の手伝いを持ちかけられたり。ところが、その度に彼女の人柄もあって友人となる人に出会うのだ。
    桐子に好感を持ったのは、結婚詐欺にあった俳句仲間の三笠氏を案じた個所だ。桐子は三笠氏に「自分が本当に詐欺に遭ったのかどうかを確かめて来てくれ」と頼まれていたが、詐欺にあったと分り彼に言うべきか迷っていた。『桐子は人を不安にしておくのが一番罪なことではないかと思っている。断ったり、否定したりすること以上に、相手を宙ぶらりんのまま捨て置くことは何よりも残酷なこと。「はっきり言うのはかわいそうだから」「断るのは気の毒」でなどと言い訳けで、それは自分が悪者になるのが嫌なだけだろう。でなければ、ひどいサディスト』。と、思って事実を告げる。(その事実にショックを受け三笠は身体を壊すのだが)。
    仲良くなった女子高生、雪菜との交流も心温められた。しかし、桐子と雪菜は互いに申し合わせた誘拐狂言を企て失敗し仲を引き離されてしまう。最終章で、桐子は末期がんを患った老男に、『バッカスレディ』のソヨン宜しく自殺ほう助を頼まれる。優しい彼女らに付けこむ誘惑。桐子がすんでに踏みとどまれたのは、社長の久遠が身元保証人を引き受け、大家などの提案で生活保護申請を申し込んだりした連係プレーがあったからだ。桐子は、「その時が来たら殺してあげる、と約束するのではいけませんか。それまでは生きるということにしませんか」と老男に告げ男と別れた。
    本書は、老人問題を取り上げながらも、人と人との結びつきを促している。2つの作品を同時期に味わえたのは感慨深い。

    追記
    桐子とトモが同居して家に植えられていたライラックの木。私も30年前に建てた新居にライラックを望んだ。理由は本書の彼女らとまったく同じで、オルコット作「ライラックの花の下」を少女期に読み、ライラックという花の名前が記憶に刻まれていた。その小説を探していたのだが、長い間見つけられなかった。「リラの花さく家」に改題されて出版されていると本書にあり、とても嬉しい。旧友にあったようで、すぐにでも読んで会いたくなった。

  • 一橋桐子、76歳、ずっと独身。
    両親の介護で会社を辞め、それ以来清掃のパートをしている。
    両親が亡くなった後、姉と揉め、姉亡き後、その子供たちとの音信も不通である。
    3年間同居した、親友のトモも亡くなった。
    桐子は、ひとり。
    お金が底をついたらどうしよう、認知症になったらどうしよう。
    縁を切った状態の甥や姪に迷惑はかけたくない、思いはそれだけである。

    背中を押すように、桐子を災難が襲う。
    これが無ければ、違ったかもしれない。

    思い詰めるあまりに、桐子の気持ちは間違った方向に走る。
    桐子の、「迷惑をかけずに消えていきたい」という気持ちは分かる。
    刑務所に入って、悠々自適(?)の老後を送りたい、というのは、ある意味甘えかもしれないが。

    しかし桐子の犯罪は、すんでのところで、いつも「誰か」に阻止される。
    「そんな甘いもんやおまへんでー」という、神様の思し召しかもしれない。
    本人は切羽詰まっているのだから、笑ってはいけないが、どこかユーモラス。
    捕まりたい、と、救われたいの間で、桐子は揺れ続け・・・

    ダンディでフェミニストだった老紳士が、詐欺のショックからか、急に病院と施設をたらい回しにされるボケ老人になって、息子にも厄介者扱いされる。
    何人もの人を死に追いやってきた闇金の社長が、いざ自分が癌になってみると、苦しんで死ぬのが怖い。
    人生には往々にして、「こんなはずではなかった」結末が待っている。

    しかし、桐子は本質的に良い人間で、それゆえに、捕まりたいと誰かに相談をするたびに信頼できる人が増えてしまうのだ。

    人生の中でさまざまに蒔いてきた種の、実りを受け取るのが老後なのかもしれない。
    それが甘い実であるか、毒の実であるか。

  • 老後に対する不安な気持ちは他人事ではない年齢になってきているので、桐子さんの立場にも共感できた。
    それぞれの章のタイトルが桐子さんに似つかわしくないものだったので、どんなふうに最後の着地点へ向かうのかと気になり一気読み。
    もしも大きなどんでん返しがあったなら
    それはそれでいかにも小説的すぎて鼻白むところだけど、ああ、良かった!と思えるちょうど良さで安心の結末。
    悲観すればキリがないけど、周りを見渡してみれば、
    自分を見失わす努力していれば、
    何か変わるのかも知れない、と思えた。

  • いかにも不穏で物騒な表題『犯罪日記』。
    原田ひ香さんの作品への期待を裏切らない、ジェットコースターのような展開の1冊でした。面白かった~。

    女性の社会進出や核家族化が進み、超高齢社会化が加速する日本。
    未婚を選択したつもりはないけれど、気づくと介護や雑事で後期高齢者となっていた一人の女性76歳が主人公。

    未婚や離婚、死別等も何も特別な事柄ではなくなり、老後一人をいかに過ごすかは、避けて通れない問題。
    うら寂しさや孤独は人を犯罪に向かわせるのだなあ。

    要領よく物事を選択して、生きていくことができていないと、自分の不甲斐なさを感じている者にとって、突拍子もない様々な事柄が起きても、誰かが救いの手を伸ばしてくれ、報いを受けられる主人公 桐子からカタルシスを得られる痛快さがいい。

    一方で、頑張っていれば報われるとか、夢はかなうといったロマンティックな展開を望む読者にとっては、次々とこれでもかと突きつけられる世の世知辛さ。
    親子関係の不全や不和もしっかり盛り込まれている。

    窃盗、万引き、結婚詐欺、紙幣偽造、闇金、誘拐等々、生々しい題材が盛り込まれるが、原田さんのドライな筆致でナンセンス加減が逆に面白さを掻き立てる。

    巻末の参考文献リストに驚き。
    『老人たちの裏社会』『万引き老人』『熟年売春』と高齢者は温厚で、尊敬すべき対象という従来の幻想を軽く踏みつけてくれる笑。

  • 原田ひ香なのにごはんの話じゃない!と一瞬びっくり。
    でもお年寄りが主人公だし、なんだか一筋縄ではいかない話のようだ、と興味津々で読み始めたところ、おもしろくておもしろくて、一気読み。

    76歳って、もしかするといろんな意味で微妙な年齢なのかも。
    数値てきには完全なお年寄りだけど、多分最近の76歳はめちゃくちゃ元気。普通にお仕事もできるだろうし、スマホやPCやら駆使していろんな情報も持っていて。
    でも、ある意味、それって家族がいて、孫がいる76歳だからなのかも、とふと。
    孫がいればいろんな新しい情報にも触れるだろうし、家族がいるから生活もある程度安定している。
    でも未婚でその年でパート勤務だとしたら…
    家族がいないとアパートを借りるにも保証人がいない。何かあったときに最後を頼める人もいない。
    ひとりきり…って。
    そんな年ごろの桐子さんが、主人公。
    このまま先のことを心配しながら生きていくくらいならいっそ罪を犯して刑務所に入った方がまし。寝るところも食べることも心配しなくていい。だからなにか罪を犯そう。って、どういう思考!?
    けど、それが不自然じゃないくらい、多分いまの日本ってゆがんでいる。
    桐子さんがいろんな犯罪を考える中で知り合う人々。彼らには彼らの問題があり、それになぜか巻き込まれつつ自分の最後の時へと支度を整えていく。
    あぁ、それにしても桐子さんってすごくかわいい。あんな人やこんな人が集まってくるのわかるわかる。
    きちんと生きて、きちんと死んでいくための、無謀な試みだけど、それがとても心地よく、楽しくて、切なくて、泣ける。
    明日も、桐子さんが笑顔でいられますように。それだけが願い。

  • なにやら物騒なタイトルでちょっと引いたが、内容は「さすがは原田さん」と納得できる作品だった。76歳、独身の一橋桐子さんは、同居していた親友が亡くなり、これからの人生を思い途方に暮れる。そんなとき、テレビで高齢受刑者の暮らしぶりを見て妙な考えをもってしまう……。実際に高齢受刑者たちのケアに看守が忙殺されるという本末転倒な事態が起きているし、こうした考えをもつ人も少なくないのかもしれない。桐子さんが“いい人”なのが悲惨でも救いでもあった。

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著者プロフィール

1970年、神奈川県生まれ。
2006年「リトルプリンセス2号」で 第34回NHK創作ラジオドラマ大賞最優秀作受賞。07年「はじまらないティータイム」で 第31回すばる文学賞受賞。著者に『ランチ酒 おかわり日和』(祥伝社刊)『東京ロンダリング』『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』『三人屋』『三千円の使いかた』『まずはこれ食べて』『口福のレシピ』『サンドの女 三人屋』などがある。

「2021年 『ランチ酒 今日もまんぷく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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