雨夜の星たち (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 404
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198653026

作品紹介・あらすじ

できないことは、できません。
やりたくないことも、やりません。

三葉雨音は他人に感情移入できない26歳。
同僚星崎くんの退職を機に、仕事を辞める。
他人に興味を持たない長所を見込まれ三葉は
「お見舞い代行業」にスカウトされ、
移動手段のないお年寄りの病院送迎や
雑用をする「しごと」をはじめる。

文芸界の注目著者が
「めんどうな人」の機微を描く!

【主な登場人物】
◆三葉雨音 26歳。職業はお見舞い代行。
他人に興味がない。
◆霧島開 三葉の雇い主。
喫茶店の店主で、ホットケーキが苦手。
◆リルカ スナックで働く、
感情豊かで共感能力が高い霧島の彼女。
◆星崎聡司 三葉の元同僚。
湯気の立つ食べものが苦手。失踪中。

【依頼人たち】
◆田島セツ子 病院への送迎。聞き上手な80代。
◆権藤 肝臓の病気で入院中の70代。
因縁の相手。
◆清川好美 手術の付き添い。
配偶者なしの42歳。

感想・レビュー・書評

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  • 「寺地はるなは裏切らない」という言葉に今回も深くうなずく。
    単に「不器用」というにはあまりにもこの世で生きにくい三葉。他人との共感こそが最重要事項、という感じの当世。三葉の共感性のなさ、他人への無関心、は持って生まれたものなのかと思って読んでいたのだけど、それは自分を守るための鎧だったのか。
    どんどん土足で家族という他人の中に入り込んで自分の思うままに動かそうとする母親から自分の心を守るための鎧。あまりにもつらい鎧。

    「家族」という呪いにとらわれた人々の心に刺さるトゲ。簡単には抜けないし、放っておいても溶けないけれど、そのトゲとうまく折り合いをつけていく術ならいつか身に着けることができるかもしれない。

    読んでいてとても胸が苦しくなる。三葉の、星崎くんの、霧島の心のトゲが読んでいる私の心も刺してくる。
    寺地はるなはそのトゲを勝手に抜いたりはしない。トゲはトゲとして、それごとまるごと包み込む。
    そのままで生きていく。そのままで生きていけばいい、と私の背中も撫ぜてくれる。

    ほたるいしマジカルランドのメリーゴーラウンド。いや、メリーゴーラウンドの傘、素敵すぎて泣いた。

  • 保険会社の経理事務をしていたが、退職し、今は1階が喫茶店、2階が貸家のところに住んでいる。その喫茶店のオーナーから、病院のお見舞い代行をしないかとスカウトされる。
    ドライな性格ながらも、きっちりとこなしていく主人公・天音の物語。


    寺地さんの作品ということで、登場人物の心理描写が丁寧に書かれていました。
    天音は、「相手がやってくれと言ったことだけをこなす」「相手がしてほしそうなことを察して行動はしない」というスタンスで「しごと」をしています。

    どこかドラマで見たような外科医の雰囲気がチラついて浮かびましたが、どことなく似ているなと思いました。

    ドライな性格で、側から見たら冷酷な感じがしました。
    そんな天音に次々と降りかかる冷酷な言葉の数々。言葉の棘のように刺さってきて、主人公を通り越して、自分にも降りかかった感覚があり、心が痛い思いでした。

    言った本人にしてみれば、それが常識の範囲内であり、当たり前という感覚なのですが、人にはそれぞれ色んな考えがあり、相手にとってみれば不愉快な思いかもしれません。
    そう考えると、安易に口走らないことが大切だなと思いました。

    そんな言葉に対応する天音の心の強さが、まぁ強く、見習いたいくらいでした。冷静すぎて嫌われるかもしれませんが、こうした精神的な強さを持ちたいなと感じました。

    次々とこなしていく「しごと」。その現場は、きちっとしていますが、そこで繰り広げる会話は、第三者から見たらクスッと笑ってしまいました。天音vs〇〇といった具合に言葉のバトルが、凄まじく、精神的に堪えましたが、読み応えがありました。

    ちなみに、ある会話の途中には、「ほたるいしマジカルランド」という施設が登場します。この施設は、別の作品でも登場しているらしく、その作品は読んだことがないのですが、読んでいる方には、より楽しめるかと思います。

    最初はドライだった性格が、最後には、ちょっとした潤いのある口調で終わりを迎えるので、ちょっと安心した気持ちになりました。
    色んな考えがあっていいんだと感心させられました。

  • お見舞い代行業が実際にあってもおかしくない読んでいて思ってしまいました。
    三葉雨音の行動に思い入れがあり共感するところがありました。
    星崎くんとの関係がもっと進展すれば良いなぁと感じました。
    最後読んでいてこれからの雨音のことが気になってしまいぜひ続編を書いてほしいです。
    読み終わりとても考えさせる良い作品でした。

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著者プロフィール

一九七七年佐賀県生まれ。大阪府在住。『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。二〇二〇年度咲くやこの花賞文芸その他部門受賞。著書に『みちづれはいても、ひとり』『大人は泣かないと思っていた』『夜が暗いとはかぎらない』『わたしの良い子』『希望のゆくえ』『水を縫う』『やわらかい砂のうえ』『彼女が天使でなくなる日』『どうしてわたしはあの子じゃないの』『ほたるいしマジカルランド』などがある。

「2021年 『雨夜の星たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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