ぼくの弱虫をなおすには (児童書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198653255

作品紹介・あらすじ

プリンツ賞オナー作家が描く、
心にひびく物語

小学校4年のゲイブリエルには、
こわいものがたくさんある。
クモ、いじめっ子の上級生、大きなトラック…。
でも、何よりこわいのは、5年生に進級すること。
5年になると、
いやな上級生と同じ校舎になるから…。
ぜったいに5年生にはならない、と決めた。
親友の女の子フリータは、これに大反対!
ゲイブリエルの弱虫をなおす作戦を考えて、
夏休みのあいだ、その作戦に、
ふたりでとりくむことになった。
とちゅうまでは、うまくいっていた。
ところが、ゲイブリエルのある思いつきのせいで、
フリータの家族をまきこんでしまい…。

1976年アメリカ・ジョージア州を舞台に、
偏見や人種差別の問題にふれつつ、
苦手を克服する子どもたちの成長を描いた、
心にひびく物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2022年読書感想文コンクール夏の課題図書 高学年の1冊。
    https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

    1976年の夏休み。
    ジョージア州の学校で4年生を終えたゲイブリエルはある決意を抱えていた。「新学期になってもぜったいに5年生にはならない!!」
    体の小さいぼくと、親友で黒人の女の子フリータは、1学年の上のデュークたちに虐められている。牧師の娘でとっても強いフリータはデュークになんか負けないよ。でもぼくは、5年生になってデュークと同じ校舎になるのが怖いんだ。

    アメリカは大統領選の直前で、ジミー・カーターとジェラルド・フォードが競い合っている。
    パパとママはジミー・カーター派。だってジェラルド・フォードはニクソン元大統領のウォーターゲート事件をなかったことにしちゃったし、ジミー・カーターは誠実な人間で差別に反対して戦ってきた人だから。
    ぼくの家はトレーラータウンの中でも一番小さなトレーラーだ。デュークの家はトレーラータウンのなかでも一番オンボロ。そして黒人で牧師のフリータ一家はちゃんとした家に住んでいる。

    フリータはぼくに言った。
    「夏休みの間に弱虫をなおして一緒に5年生になろう。そのために”怖いものリスト”を作って克服したら一つ一つ消していくの」

    ==
    ジミー・カーターがアメリカの第39代大統領になったのは1977年。在任中な批判もあり1期で辞任しましたが、大統領辞任後の平和活動や、元大統領としての外交活躍のほうが高評価かもしれないですね。
    2002年にはノーベル平和賞を受賞しています。

    私は子供の頃テレビのニュースでアメリカ大統領でジミー・カーターを見たの覚えています。大統領候補としてのスピーチでは、真面目そうな見かけなのに市民とは距離が近い感じで、そうかアメリカはこんな選挙をやってるのかと思いました。
    経済対策などで批判もあり1期で退いたので、この本でカーター大統領候補に期待を寄せている人たちがその後の大統領としての政策をどう評価したのか…(^_^;) まあ辞任後の活動を見ても誠実で筋の通った人というのは間違いないでしょう。

    お話としてもとても良かったです。
    児童文学の柔らかな文体ですが、ゲイブリエル(名字は”キング”なのでキング牧師を連想する)が怖いと思う対象の根本にあるのが、アメリカの人種差別や貧富の差から起こるいじめで、それにどう立ち向かうかという内容は、なかなか本格的です。
    黒人のフリータの家族は仲も良いし牧師なので地位も有るのですが、ジョージア州に引っ越してくる前にKKK団による脅迫と暴力を受けました(はっきりとは書かれていない)。それでも負けないという姿勢を見せました。
    ゲイブリエルの両親も町一番の貧乏(いちばん小さなトレーラー住まい)ではあっても、家族の絆や自分たちより良い暮らしの黒人一家と家族ぐるみでの真の付き合いを持っています。
    それに対してデューク一家は、オンボロトレーラーで、家庭も荒れ、両親もまだ小さなフリータに差別用語や脅迫の言葉を投げつけます。しかし彼らは自分がやっていることの反応を気にしたり、自分の仲間のなかでないと強く出られないような弱さも見えます。

    物語としては、暴力的な脅しを受けたフリータやゲイブリエルの家族が、暴力や脅しに対して個人が強くなるだけでなく、よりよい社会にしよう、そのためにメッセージを発信しよう、と決意して、大統領選の演説のスピーチで(フリータのお父さんは牧師なのでスピーチがある)地域の人達にここで差別や暴力がおきてはいけないということに同調してもらい、自分たちは大勢いる、決して負けないというメッセージを敵(差別主義者)に送ろうというところで終わります。


    人は、見られていないと思うと普段はしないようなことをする。だから知っているということを示す。

    好きなことは抑圧と戦うこと。

    抑圧とは誰かを無理やり押さえつけることだ。抑圧とは、他人の自由を制限すること、肌の色や、話す言葉、宗教を理由にね。

    よく考えるんだ。だれかに大切なものを奪われて、二度と取り返せなくなっても良いのか。

    5年生になることを怖いと思わないことは無理。でも親友と離れ離れになるのももっと無理。ぼくにとって大切なのはどっちか。そう考えたら勇気が湧いてきた。

    愛してくれる人がいれば、何も怖くない。

  • 貧乏で身体も小さくて怖いものだらけの白人のゲイブリエルと経済的に裕福で身体も大きく活動的なフリータ。子どもは純粋だから、大きく思えるような差も乗り越えて親友になれる。
    未だ続く人種差別の問題を子どもの視点から捉えてるので、疑問も素直で素朴。少しずつ人種差別の現状を理解してこれから先を考える所も純粋でシンプルなので、明るい未来を期待させてくれた。

    それにしてもジミー・カーターの生い立ちとか大統領時代の仕事ぶりとか、私は呆れるほど無関心だったなと思う。

  • 2022高学年課題図書。…翻訳ものって難しいってか、入ってこないんだよなぁ…私がバカだから?怖いものを克服しようと励ましてくれる黒人の親友。いい話なんだけど、入ってこないの、なんでか。

    • bookhikaruさん
      それは、お考えの通り翻訳ものだからですね。私も昔っから苦戦しております
      それは、お考えの通り翻訳ものだからですね。私も昔っから苦戦しております
      2022/08/12
  • 2022年読書感想文課題図書高学年
    1976年のアメリカ・ジョージア州の小学校高学年に進級するゲイブリエルは怖いものが多い。親友の女の子ウィルソンは怖いものを克服するために、まず、怖いものリストを作ろう、そして、一つずつ克服していこうという。なんと38もの怖いものリストができてしまった。絶対夏休みでこれを克服するのは無理だよ。
    時代も国も違うお話。理解するのは難しいから、面白く感じないかもしれない。ただ、こういう小説で文化の違いを肌で感じて取り込んでおくのは必要だと思うから、読んでおくと良い本ではあると思う。「ビッグTと呼んでくれ」…未読だよ。読まなきゃね。

  • 原題 THE LIBEIATION OF GABRIEL KING
    byK.L.Going 2005

    訳 久保陽子 2021

    実は古い作品
    1976年のアメリカジョージア州が舞台
    ジミー・カーターの大統領選挙に合わせて
    ゲイブリエルとフリータは怖いものを克服しようと決め、リストを作る

    4年生で弱虫のゲイブリエル
    トレーラーハウスで暮らす

    同級生でめちゃくちゃ強い黒人の女の子フリータ
    父親は牧師で裕福な家庭でもある
    テレンスは兄
    P78神様を信じるというのは、見えないものを信じること。見えるようになるまでかたく信じつづけることだってフリータは言ってた

    P81選挙は公正でないといけない。公正でなかったら、この国の素晴らしさが台無しになる。大統領はそれをしっかり理解していないといけないんだ」

    ちょっと素敵な文章がはさまっているのがうれしい
    P124お父さんが言ってたんだ。こわいと思うからこわくなるんだって。こわいって思わなければ、こわくないんだよ。ほら、手をだして」

    P149 でもそんなのきにならない。くつや服はうばえるかもしれないけど、ぼくらの強さまでうばえないんだ。

    P150自信をつけるには、何かに成功するのが一番だ。

    P163 抑圧とは、だれかを無理やりおさえつけることだ。たとえば、だれかの自由をまわりがみとめなかったら、その人は自分がなりたいものになれない。抑圧とは、他人の自由を制限すること。肌の色や、話す言葉、宗教を理由にね。

    P207よく考えるんだ。・・・だれかに大切なものをうばわれて、二度ととりかえせなくなってもいいのかってな

    P234ぼくに必要なのは愛を信じること。そうすれば、自然と勇気がわいてくる。

  • ぼくにはこわいものがたくさんある。何よりこわいのは上級生のデューク。四年生の間はデュークとちがう校舎だったからよかったけれど、五年生になったら、またデュークと同じ校舎に通わなきゃいけない。だからぼくが五年生になりたくないと言ったら、親友のフリータは、ぼくが強くなれるようにこわいものを1つずつ克服していこうと言い出して……。

    物語の舞台は1976年とずいぶん前だが、いじめられている主人公が、強さを身に付けていく話は現代にも通用する。
    この物語の面白さは、その成長の過程に人種差別の問題が絡んでくるところだろう。対象読者は小学校高学年くらいからだろうか。アメリカの人種差別問題について知っている子どもは多くはないだろうから、主人公のゲイブリエルたちが親から当時の政治に関して説明を受けるように、差別がどのように生まれ、アフリカン・アメリカンの人々がどのように戦ってきて、そして現代のBLMへとつながっているかをわかりやすくこの作品で知ることができるだろう。
    ゲイブリエルのお父さんがすごくいいキャラクターだなと思う。特に、どうして白人が黒人を差別するのかというゲイブリエルの問いに対しての答えが秀逸。こんな答え方、なかなかできないと思った。
    最後にゲイブリエルが、あれだけ怖かったデュークに対して「こわくないし、おこる気持ちにもなれない。……(デュークたちが)いつか、愛と勇気を手に入れられますように」と語る部分もよかった。大人たちが、子どもたちに正しいお手本を見せることによって、子どもがこんなにも正しく成長するのだと強く感じた。

  • 4年生のゲイブリエルは5年生になりたくない。進級するといじめっ子の上級生と同じ校舎になるから。親友でいつも強気な女の子フリータは夏休み中にこわいものを克服したほうがいいと、ゲイブリエルにこわいものをリストに書き出すことをすすめる。

    出だしは「あるある」な感じ。bullyの上級生にいじめられて泣き寝入りする場面もあり、ああ、こういう話苦手なんだよな、と思った。でも、そんな第一印象よりはるかに深みのあるいい物語だった。

    設定が効いている。弱虫のゲイブリエルは白人の男の子でトレーラーハウス住まい。いわゆるプアホワイト。
    対する親友のフリータは黒人で、お父さんが牧師。一軒家に住み、余裕のある生活をしている。そして時代は1976年の南部ジョージア。ジミー・カーターが大統領選を繰りひろげている。60年代の公民権運動の嵐は静まり、それでも差別は根強く存在している(今もそうだ)そんな時代。

    「こわいもの」はじめはクモとか、池に飛びこんで泳ぐことなんていう他愛ないものだったけれど、しだいに、強気なフリータにも克服できない恐怖があることがわかってくる。それは人種差別。フリータのお父さんは、前に住んでいたところで、KKKから脅迫を受けたことがあったのだ。

    ふたりは、両親やフリータの兄(ブラックパンサー党に入りたがっている)から社会のことを教えてもらいながら、本物の恐怖に対して立ちあがる人々の力を目の当たりにすることになる。

    「学び」をはっきりと前面に打ち出しているけど、けっして押しつけがましくなく、すっと入ってくるところがいい。リストを作って克服する行動療法的なトレーニングだけでは乗りこえられないもの。短い本ながら、しっかりとした骨格がある。

  • 2022年夏の小学生(高学年)の課題図書。子どもに人種差別をわかりやすく考えさせる良書。トレーラーハウス、選挙戦。アメリカの文化や歴史、時代背景を感じた。


  • 第68回青少年読書感想文 高学年課題図書です。
    タイトルから、自分の中の弱さと向き合う話なのかなと想像しましたが、読んでみて、さらに深い内容だったと感じました。

    ゲイブリエルが怖いものを克服していく展開には私も勇気をもらえました。この夏休みにこの本を読んだ子は同じように、怖いものリストや苦手なものリストを作って、克服できるように日々を過ごせるといいなと思いました。

  • アメリカのジョージア州に住むゲイブリエル.アレン、キングが、親友の女の子フリータ、ウィルソンと、4年生の修了式の当日、テーブルの下で話している。
    ホロウェル校では5年生から校舎が変わる。東校舎から西校舎へ。ゲイブリエルは、その西校舎には行きたくないと言う。なぜならひとつ上のいじめっ子の、デュークとフランキーがいるから。つまり、5、6年生は一緒の校舎ってこと。

    フリータが呼ばれてテーブルの下から出てった後、ゲイブリエルが名前を呼ばれるのを待っていると、その2人のいじめっ子がやってきた。そして難癖つけて袖をせなかで結ばれて、ゲイブリエルは式には出られなかった。フリータが修了書を貰う時「イェーイ」と叫ぶ約束をしていたのに守れなかったのだ。

    式が終わって戻ってきたフリータは、何があったか分かった。再びゲイブリエルは4年生にはならないと言う。フリータにも4年生のままでいてほしいと。
    そして、フリータは、デュークにパンチをするが、デュークの父親にニガーの娘と言われてしまう。

    5年生にならないと言うゲイブリエルに対して、フリータは、ゲイブリエルが怖いもののリストを作ってそれを克服して、強くなって5年に進級しようと提案する。ゲイブリエルの夏休みはこうして始まった。

    2022年読書感想文高学年の課題図書
    2005 年、アメリカ出版、「THE LIBERATION OF GABRIERL KING」舞台はイギリスから独立して200年目にあたる1976年。

    ゲイブリエルとフリータの友情物語でありゲイブリエルの成長物語であり、差別する人される人の話であり理不尽社会を変えようとする物語でもある。貧困についても考えさせられる。

    ドナルドトランプが出てくるずっと前の物語だけれど、登場人物の一人はトランプの支持者を思い出させる。

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