水脈

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198657659

感想・レビュー・書評

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  • 都会に存在する暗渠から流れついた死体… 外れもの刑事たちが組織の軋轢と難事件に挑む警察小説 #水脈

    ■あらすじ
    東京は杉並区の神田川で男性の水死体が見つかった。どうやら地下水脈である暗渠から流れついた遺体だった。
    管轄の警察署で捜査が始まるも、真壁と宮下刑事は社会行動学を研究している女学生の捜査取材に付き合わされることに。警察官僚の姪である彼女のため、彼らは渋々ながら捜査協力をしていく。さらに第二の事件が発生してしまい…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    都会にひっそりと存在する暗渠、水位管理のために作られた水のネットワーク。街中を散歩していると、コンクリで蓋がされている空間だったり、水もないのに古い橋があったりして、街づくりを想像できて興味深いものです。本作はそんな暗渠がテーマになっている、人込みで密かに行われている犯罪を切り取った警察小説です。

    渋い警察小説ですね。警察内部に身を置く刑事たちのリアルさったらない。端から見ると仲良くやれよと思うのですが、それぞれな立場があるようで距離感の取り方が絶妙。現実の警察でも大なり小なりありそうで、ちょっと嫌だ。

    そんなやりにくい状況ながらも、主人公二人の刑事がやってくれます。
    ・真壁
    まさにベテラン刑事で、人を見るプロ、人から情報を引き出すプロ。この人には隠し事や嘘は通じない。でも独断でチームプレイを乱すことからはみ出し者、刑事ドラマに必ずいそう。
    ・宮下
    正義感を心に秘めた、ちゃんとした公務員。頼りなさそうな感じもするけど、実は勇気と行動力がある切れ者で、こんな人が日本の治安を守ってくれると思うと安心ですね。

    この二人が大胆不敵ながらも芯を突いた推理、考察に感心するんですよね~ 事件捜査っていうより、特に警察内部の情報収集や駆け引き、立ち回りには唸らされてしまいました。なんか一般企業で仕事を進めるための動きとも似ていて、どこの人間もやることは同じだなぁ。結果を出す人はコミュニケーション力が長けてますよね。

    中盤以降は徐々に事件の背景や関係者が見えてくる。捜査とは別に挟まれていた、老婆と恵まれない母娘のショートストーリー展開がなんとも… 悲しくも読み手を熱くさせるシーンが強烈で、こんな社会に誰がしたんだと叫ばずにはいられない。

    そして今回の事件のバックストーリーがまさに暗渠のよう。人から見えないように隠し、陰では水が流れるようにしておく。しかし何かのきっかけで水詰まりのトラブルが起きた時、どうなってしまうのか。そりゃ必要性も分かるんだけど、プライドと保身が招いた結果がコレかよって感じで許せない。

    社会派映画をまるまる一本見たような、厚みのある骨太作品でした。面白かった!

    ■ぜっさん推しポイント
    上級国民という格差社会を揶揄した言葉があります。こんな言葉が生まれること自体がやるせない。完全な平等なんて存在しないのは分かりますが、昨今あまりに社会的立場や経済格差の激しさを痛感しますね。

    こういった小説を読むと、ひとりひとりの人間性の問題よりも、社会の問題なんだと学ぶことができます。隠れたところでひっそりと流れるしかない人たちを救うには、まずは居場所をつくってあげることだと思うのですが、やっぱり自分が可愛いのも理解できるし…なんとも途方に暮れてしまう気持ちが押し寄せてきました。

  • 不穏な一冊。

    久々に真壁&宮下刑事ががっつり主役の警察ミステリ。

    事件の発端は神田川護岸の排水口から発見された遺体。

    その捜査コンビを組んだ二人に、謎の女性が"お客様"として加わることになり…という展開。

    地下に眠る暗渠がジメジメ感、不穏な空気がずっとまとわりつくような感覚だった。

    そしてあまりにも怒りがわく身勝手な行いに嫌悪感がいっぱい、吐き出したくなるほど。

    いわゆるこれが社会の"暗渠"ということなのか。

    鬱屈した不満は時に押さえつけながらも日々脈々と確かに流れているのか。

    最後は深く深く、心沈むほど読ませてくれた。

  • 同時進行してるかに見えた2つの舞台が実は時間差で、というギミックは良かった。なかなか真相がわからず、最後に犯人の独演会パターンなのは残念だった。動機も無理があった

  • Amazonの紹介より
    神田川の護岸に設けられた排水口から、遺体が発見された。
    台風の雨で増水した影響で、遺体は地下水路の「暗渠」を通って流れ着いたようだ。死後数日経過しており、猛暑で一部は腐敗も始まっていた。和泉署に合同捜査本部が立てられ、
    宮下は久しぶりに真壁と組むが、そこには“お客様”も加わることになった。暗渠に妙に詳しいその客は謎に包まれていた――。
    (登場人物)
    宮下真人 警視庁高円寺北署、刑事課所属。
    奥多摩分署時代、真壁と組んでいた。
    ・真壁修  奥多摩分署から警視庁捜査一課へ
    引き抜かれる。現在は特務班所属。



    シリーズ本ですが、この作品から入っても全然楽しめると思います。クセある真壁に振り回される宮下の2人のコンビが面白く、今後も活躍を読んでみたいなと思いました。

    物語は、刑事と、ある主婦の物語の2つが、交互に進行していきます。最初は独立しているのすが、次第に2つの物語は一つへと集約していきます。
    普通だと集約した瞬間、「繋がった!」という爽快感があるのですが、今回は繋がってほしくなかったなというのが第一に思いました。たしかにミステリーとしては、繋がったことによる爽快感はあるのですが、内容を知るにつれて、最悪の真実に繋がります。暗い言葉しか見つかりませんでしたし、善意って何だろう?と疑問や悲しみが込み上げてきました。

    もう被害者が不憫で仕方がありませんでした。事件の背景にあるのは、詐欺などによる魅力ある悪事があります。一度経験したら最後。狂っていく人物描写は読んでいてムカっとするばかりでした。そのあたりは、伊岡さんの文章力による真骨頂であり、今回もムカっとさせられて、上手いなと思いました。

    表の顔は愛想良くても、もしかしたら裏の顔は別の顔を持っているかもしれません。その人達に巻き込まれる被害者が襲われる描写は読んでいて辛かったです。

    色んな欲望を欲しすぎた人達の末路は、あっけなく感じました。人を信じすぎないことも大切なのかなと思ってしまう一方で、そういった悲しい現実を知るのも嫌な世の中だなと思ってしまいました。

    この作品の題名「水脈」ということで、「暗渠」に関する知識も紹介されていて、ブラタモリを読んでいる感覚もあって面白かったです。

  • 真壁・宮下 刑事にまた会えたー!!
    今回は女子大院生というお荷物を抱えての捜査で新鮮だった。

    暗渠を通って流れ着いた水死体。
    夫に先立たれ一人で暮らしている老婦人。
    家庭内暴力に苦しむ母娘。

    三つの事がどう繋がるのか、また女子大院生の謎が知りたくて一気読み。

    読んでいてルフィ事件を思い出した。
    連載中にちょうどルフィ事件が取り上げられたとのことでびっくり。特殊詐欺、犯罪についてやり切れない思いを感じた。

    人間の不満や鬱屈が最初は小さな雫から、小川となり地下に流れやがて大きな川となる…

    大きな川となってからでは流れに逆らえない。

  • 『痣』の続編という位置付けのよぅですが、本作だけでも十分楽しめた。警察ミステリーでもあり、社会派ミステリーでもある今作
    (伊岡作品では)名物コンビ 真壁-宮下の元に「都市構造における犯罪心理」をテーマに論文を書きたいっと取材しに来た 小牧未歩(大学院生)が訪れる。

    『暗渠』から出できた水死体。
    認知症の症状が出始めた 独居老人。
    DVを受けている母子。

    全ての要因が絡みあった時 最悪の事件が起き 新たな事件の真実にたどり着く。


    ルフィ事件を思い起こさせる ストーリー に心苦しくなる。

    現代社会の抱える【病】もあぶり出す問題作でした。

  • 宮下刑事&真壁刑事再び。

    神田川護岸の排水口で若い男性の遺体が発見された。
    地下水路の暗渠を通って流れ着いた遺体には殴打の痕跡があり殺人事件と認定される。
    両刑事は謎多き女性・小牧未歩と共に事件を追う。

    捜査状況と交互に描かれるのは認知症を患う老女の日常。

    川が合流していく様に点と点が線で繋がり事件の背景が見えて来ると、これは復讐劇だと理解する。
    だが真相は更にその先をいく。

    警視庁公安部に所属していながら、使い捨ての駒として利用された男の暴走。
    特殊詐欺を絡めながら社会の闇を暴き出す。

    まさに外からは見えない暗渠の世界。

  • 悪くはないけど目新しさもない。宮下巡査部長が出て来た所でお馴染みの真壁氏も登場するだろうな的な漠然としたデジャブ感が全体を覆っていた。やたらに上層部が出てくるが隠蔽体質ばかりで残念。内容は?だが伊岡氏の誠実な文章で☆3

  • ん?ん?現代と過去?
    入り乱れてるの?朝乃さん、生きてたん?別人?過去?なんだかわからんよーになってきた^_^

  • 朝乃おばあちゃん、、、。最後まで全く犯人が想像つかず。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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