フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために

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  • 徳間書店 (2024年9月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784198658458

作品紹介・あらすじ

情報技術の発達とともに、だれもが手軽に
「つながり」を得られる時代になった。

スマートフォンの画面を覗いてみれば、
一人ひとりがいまなにをしていて、
なにを考えているのかが、
いままで以上に見えるようになった。
遠く離れていても、
時間をともにしていなくても、
言葉を伝えることもできるようになった。

だが、いつでもどこでも
他者との「つながり」を
感じられるはずの時代に、
私たちは他者とつながれなくなった。

つながりすぎるせいで、
相容れない部分ばかりが見え、
つながりながら訣別し切断する。

「もっとお互いをよく知るべきだ」──
だれかが訳知り顔で言う。
そうではない。
お互いの理解が足りないせいではなく、
お互いのことをよく理解したから、
私たちは分断されたのである。

「分断」された私たちの間に、
橋を架けることはできるのだろうか。
現代社会の歪みを象徴する出来事から紐解く
御田寺圭、最新論考。


(目次)
私たちは、つながりながら分断する
          世界に生きている。

第1章 行き場なき者たち
◎ある受け子のメモ
◎助けたい姿をしていない弱者
◎絶望のろ過装置
◎揺るぎない民主主義のジレンマ
◎オルタナティブな暴力
◎いじめ問題にまつわる不都合な真実

第2章 世代間対立の時代
◎この世はでっかい老人ホーム
◎快適で、そして冷たい社会
◎奪い合いの時代がはじまる
◎ジェネレーション・ロスト

第3章 若者と倫理
◎かつてチャリで来た少年
◎恋愛を恐れる若者たち
◎かぶき者が消えていく
◎知性の行き詰まり
◎体験格差の時代

第4章 未来という名の侵入者
◎ある町の悲鳴
◎資本主義の終わりの姿が
◎昭和99年の東京

感想・レビュー・書評

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  • p31 保護司はまさにそうした「助けたい姿をしていない弱者」とあえて向き合う仕事だ

    p34 けれども、人々のそういう「小さな拒絶」が積もり積もって大きな歪みになり、あえて拒絶せず向き合うことを得選んだ人に大きなリスクやデメリットを背負わせていることも事実だ。私たちは、そのことをわすれてはならないだろう

    p45 「無敵の人」すなわち「完全な絶望に至り、逸脱と破壊の衝動を抑えられなくなった人」を、その前段階で文字通り網にかけてしまう機構がこの社会には幾重にも設定されている。それはこの社会にとって治安の向上と維持に多大な貢献をはたしているといえる。わたしたちが日々享受している、平和で安全で快適で衛生的で自由な暮らしを実現した最大の立役者といっても過言ではない

    牛丼、FANZA、エンタメ、推し活

    p48 逆にいえばこうした「福祉的機能を持つ民間企業のサービス」が消滅してしまえば、人々の「無敵化」は加速する

    p58 欧米人は間違いなく民主主義を擁護するが、それ以上に自由主義を愛している自由民主主義の民なのである

    だがわたしたちは違う。日本社会は欧米社会のような自由主義と民主主義の緊張的な同居関係をもっていない。その代わりに私たちは民主主義と権威主義が二人三脚で同居する社会を構築している。これが日本型民主主義である

    p62 多数派に指示された意思決定がいつだって正解である保証はない。というより、多数派の意思決定は頻繁に誤っている。多数決で決まったことがいつだって最善で最良の道なら、だれも苦労しない

    p67 「知力による暴力」とは、つまるところそれは、「コンテクストを制限/生成できる能力」のことである

    p92 2040年には4人に一人が認知症
    認知症の初期症状 易怒性

    p122 かれらは2020年のコロナ禍からは、この国の社会生活のインフラを守る役割を担う「エッセンシャルワーカー」の一つと呼ばれるようになったが、しかし皮肉なことに彼らのような「エッセンシャルワーク」の担い手を大量に供給したのは、この国の「失われた30年」と呼ばれた長引くデフレ不況だったのである

    p127 これもまた世代間対立。障碍児や障碍児の親は若年層であるが、自分たちのための福祉リソースをはろくに用意されず、そのほとんどを高齢者によって消費されてしまっている

    p186 「そこそこの秀才」が役割を得られなくなった社会

    いま世の中で大きな注目を集めている社会保障費の天文学的増大、離婚ビジネスと化している一部の弁護士業界、政治や行政に食い込んで公金を掠め取るような非営利団体などはまさに、人間社会の技術の爆発的進歩が落ち着き、行き場を失ってしまったそこそこに知性たちの生み出した徒花である

    p189 世の中に実体的なリソースを生み出す人の数と、lそのリソースをこっそり頂戴する人の数(知的エリート)とのバランスが合わなくなっている

    成熟しきった資本主義社会と技術革新においては、知的エリートはむしろ資本主義や技術競争とは逆行するような態度をしばしば示すようになっている

    p190 理系のイノベーションが飛行機や宇宙ロケットなら、共産主義や社会主義は人文系のイノベーションに相当する

    いずれにしろ人文系のイノベーションすら起きなくなった今では、かつての時代なら革命戦士になっていたかもしれないかれらも、現代社会ではせいぜい行政をはじめとするさまざまな機関に入り込んで巧妙に自分の取り分を確保することに注力している。その方がコスパがよいからだ。


    平和で安全で快適で自由な先進社会においては、頭の悪い人がたとえば強盗や恐喝などの悪行をすることより、頭の良い人間がその知能によりー既存の社会構造に寄生したり、排他的利権構造をつくったり、後進を潰して改革や変化を阻害する方向に行動するような形でー悪さをすることの方が、全体にとっての弊害は大きくなっていく。強盗や恐喝は法で裁くことはできるが、そこそこの秀才たちの行き詰まった知性によってなされる様々な行為は、それが明確な詐欺や横領ではないかぎりまったく合法であり正当化されるからだ。

    p202 急激なAI技術の進歩が人間の純粋な「学力」の価値を急速に陳腐化させている

    p203 いま世の中で盛り上がっている体験投資とはつまり「AI時代に取り残されない人間になるための投資」なのである

    p217 都会に若者が吸い上げられ、吸い上げられた若者の代わりに地方交付金が還付される。還付された地方交付金を元手に地元の自治体や町おこしグループが移住促進事業を展開して移住者を毎年安定的に供給する このサイクルがうまく循環している限り人口的には滅亡をどうにか避けられるかもしれない

    p219 一昔前のように、お年寄りがほどなくして世を去っていくいわゆる多産多死の社会モデルであれば、幸運にも長生きすることができた数少ない長老たちへの「敬老」の精神にも、後進の若井衆はそれなりに意味合いを感じることができたかもしれない

    高齢者がいつまでも元気で長生き、それは喜ばしいことである反面、かつてと同じように敬老の心をもとうにも、若者たちにとって慈しみ助けあわなければならない高齢者の絶対数が増えすぎてしまう側面もあった

    p220 上の世代がすぐ退場してくれる時代に成立した規範だったからこそ、人々は「個である前に群」として生きることがdけいrた、しかし上の世代がいつまでも退場しせず、いつまでも元気で現役生活を送り、先細る若年層がかれらを支え続ける構造の中では、この規範は毒になってしまった。小さなコミュミティはその性質は顕著になった。

    p222 高齢者が死なない時代において小規模な村落共同体に暮らす若者たちの閉塞感はすさまじいもので、個である群である、敬老の精神といった、いまよりずっと高齢者が死にやすくこどもの数もおおかった、つまり世代交代が活発だった時代につくられた規範がうらがえって搾取の論理として重くのしかかるようになってしまった。

    p228 資本主義と個人最適化のパラドックス
    夫婦が産まずに二馬力で働き続ければ、保育園やシッターに高額なカネを取られることもないし、企業から給料を減らされたりクビのされてりすることもないし、少なくとも資本主義のルールでくらす人間としてはメリットがあまりに大きい。

    自分だけは資本主義ルールに最適化する形で得したい。自分の稼ぎやキャリアは最大化しながら、将来の社会福祉や税収といったマクロで生じる不整合性の問題は他人のこどもにその責任を丸投げしたいという利己主義のポジションに、周囲からの倫理的避難を回避しながらスムーズに移行する口実として産まない自由、産まない権利といった道徳的タームを援用するのは理にかなっていたということだ

    p238 かれらは自分たちの共同体や子々孫々の存在可能性を代償にして、自分たちの生きている間だけの華やかな繁栄を享受して、滅び去る、種籾食いの愚か者になる

    資本主義は短期的にはもっとも賢明であるが、長期的にはもっとも愚劣である

    このパラドックスを克服した国はいまのところ存在しないし、パラドックスを克服する論理自体がそもそも未発見だ。しかしこれは私たちが生きている間にむきあわなければならない宿題である

    p242 東京は日本のどこよりも遅れた街だ

    東京という街は、他の地域から猛烈な息王で若者を吸い取り、地方の未来化を急激に加速させる代わりに、自分たちは未来に向かう速度を遅らせ、ゆっくりと昭和の名残を楽しんでいる

    p252 東京に昭和をつなぎとめるためのリソースを提供してくれていた地方が次々に未来に突入していけば、東京だっていつまでも安泰ではない。未来から逃げ続けることはできなくなっていく。結局それは、遅いか早いかの違いしかない

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著者プロフィール

御田寺圭(みたてら・けい)
会社員として働くかたわら、テラケイ、白饅頭名義でインターネットを中心に、家族・労働・人間関係などをはじめとする広範な社会問題についての言論活動を行う。「SYNODOS(シノドス)」などに寄稿。「note」での連載をまとめた本書が初の著作となる。

「2018年 『矛盾社会序説 その「自由」が世界を縛る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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