海がきこえる (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 816
レビュー : 111
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198911300

作品紹介・あらすじ

高知の高校を卒業した杜崎拓は、東京の大学に進学し、一人暮らしを始めた。その矢先、同郷の友人から武藤里伽子が東京の大学に通っていると聞く。里伽子は高知の大学に行っていたのではなかったのか?拓の思いは、自然と2年前のあの夏の日へと戻っていった。高校2年の夏の日、訳あって東京から転校してきた里伽子。里伽子は、親友が片思いする相手だけだったはずなのに…。その年のハワイへの修学旅行までは…。

感想・レビュー・書評

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  • 【概要・粗筋】
    森崎拓は大学進学のために地元高知から上京してきた。同級生から高校時代にすったもんだあった里伽子も東京の大学に進学していることを知らされる。里伽子当人からは全くそのことを知らされていなかった拓は寂しさを感じると共に、自分の里伽子への想いに気づいた・・・。高知と東京を舞台にした不器用で素直でない拓と里伽子の青春小説。

    【感想】
    もう四、五回は読み返しているぐらい好きな小説。アニメ化された「海がきこえる」を見てすごく気に入ってから原作も読んでみたのがきっかけ。また時間があるときにでも読み返すだろう。

    何度も読み返すに値する作品というのは、読み返すことで以前には気づかなかったことを発見したり、以前とは異なった読み方でまた違った楽しみ方ができたりする。しかし、この小説はそういう深みというようなものは感じられず、10年前に読んだときも今現在読んでも感じ方はほとんど変わらない。懐かしさと憧憬、羨望、ただそれだけ。

  • 地方都市出身の男の子の高校時代後半から大学生活の始まり頃を描いた青春小説。

    もはや主人公の母親の年齢に近い私が、いまさらこれを読もうと思ったのは、「金曜日の本屋さん―夏とサイダー」で取り上げられていたのと氷室冴子さんの作だったから。この物語が世に出た頃、私は、青春の終わりかけってとこでしょう。

    それにしても、氷室冴子さんは、この年頃の女の子を描くのがうまい。「冬のディーン 夏のナタリー」をリアルタイムで読んだ時にも、そんなことを感じたかな。

    ヒロインは、人になつかない猫みたいで、呼びかけても知らんぷりで、近寄るとふぅーと威嚇され、それでも近寄るとひっかかれるって感じ。でも、それは傷ついた心ゆえ。

    そういうのが、包み隠されず、そのまま表に出てくるというのが、この年頃ならでは。いろんなことに、いらいら、もやもやしたりもするけど、大人になるにつれ、そういうのは、鞘に入っていくもの。ただし、これは、美少女限定ですよね。美少女でないのに、これをするわけにいきません。

    その彼女といっしょに主人公やその友人は、少しずつ大人になっていく。あの時代の高校生から大学生へ脱皮していく時期は、この小説ほどでないにしても、鮮やかだったかな。

    宮台真司さんの解説も読み応えあり。

    「小さい頃『なかよし』『りぼん』を読み、小学3年頃から『別冊マーガレット』が加わり、中学になったら自分も素敵な恋が・・・と憧れる。でも中学になると、恋愛に向いた子と向かない子がいる現実に直面する。恋愛に向く子は漫画を卒業して現実に乗り出し、向かない子は「花とゆめ」派になり、『別マ』を読み続けるのは体育会系・・・。」

    私、今でも、「花とゆめ」発の漫画、好きですね。

  • 高知を舞台にした地方系(?)青春ノベル。ジブリでアニメ化されたので、知っている人は多いと思います。というか、青春小説の金字塔的扱いになっているので、むしろ本読みで知らない人の方が少ないでしょう。高知弁が読んでいて心地よく、テンポよく読み進められる作品です。

    あらすじは、東京の大学に進学した高知出身の拓が、武藤里伽子という同級生が東京の大学に通っていることを知り、高校時代に思いが戻ってゆく……という内容。過ぎ去った時が確信させる、拓の里伽子への想いがキモ。

    爽やかか……、と言われると確かに爽やかな青春物語ではありますが、それは今自分が青春というものとかけ離れた年齢になったからこそ感じることであって、高校生なり大学生なりからの目線から見ると、悩んだり、傷ついたり、振り回されたり、微妙な心の動きが等身大に感じられて、青春の爽やかさよりも、淡さが目立ってしまうかもしれません。

    どちらかというと、青春を終え、社会の酸いや甘いを感じ始めた年齢にこそ、心に響くもののある物語だと思います。もうね、ぶっ叩かれて、ぶっ叩き返すところか、サイコー。青臭いというか、うらやましいというか。

    ……ああ、そう、あれよ。「耳をすませば」みたいなものよ。話の内容はまったく違うけど、心に湧き上がるこの感じはあの映画を今見る感覚と似ている。

    なお、続編「~II アイがあるから」もありますが、個人的には本書のみで完結して良い物語だと思っています。

  • ヒロインがエヴァンゲリオンのアスカみたいだなーと思いながら読んだ。
    実は辛いのに強気に振る舞えるのすごい。
    男女の関係がすごい青春で眩しい

  • ――ぼくは里伽子が好きだった。

    何度か出てくる、主人公・杜崎拓のモノローグが好き。
    好きで好きでたまらない、情熱的な恋心ではなくて、後から振り返ってみて、“そうか、僕は里伽子が好きだったんだ”と気づく、喪失感を漂わせるそういう表現が、郷愁にも似たその想いの引き出し方が、非常に上手いと思う。
    この本は、現在(大学生)と過去(高校時代)の回想とが行き来して仕上がっている作品なわけだけど、取り返しのつかないことをしたようで、実は失っていなかったのよね。あの頃から今まで続く淡い恋心も、里伽子も。
    いつか、海になれたら。

    (2012/01/25)

  • ジブリのアニメ版より人間関係についての記述や心理描写が詳しいこちらの原作の方が好きです。
    青春を思い出して(たとえ実際にそんな思い出がなかったとしても笑)懐かしく甘酸っぱい気持ちになれる、読後感の良いお話です。

    リカコは自分の弱さを隠すために周囲にキツく、わがままに振舞ってしまうタイプの良いツンデレ。ツンデレ萌の方は是非。

  • 松野のかっこよさが、いまになってわかる。




    今月、原作者の氷室冴子さんが亡くなった。

    しばらく封印していた、「海がきこえる」をまた観てみようと思った。

    そして、また読んでみようとも思った。



    高知、夏、17才。



    杜崎拓は、東京からの転校生、武藤里伽子に振り回されたり、

    松野との友情を大切にしながら、17才の夏を過ごしていく。



    里伽子は女性からみたら、小悪魔的な、嫌な女だと思う。

    で、それに惹かれる、松野と拓を、バカだと思う女性は多いんじゃないかとも思う。



    いやー、でも、それはこの際、関係ないんだ。



    男のぼくから見た、拓の心情はよくわかるし、むしろ憧れたものだ。



    拓は、なんというか、ぼーっとしながらも、目の前のひとつひとつの問題に、

    向かっていく感じの男。



    松野は、先のことまで考えたり、思慮深かったり、人に優しくしようとする、

    クールな感じの男。



    このふたりの友情があるからこそ、

    里伽子の小悪魔的な雰囲気にのまれることなく、

    きれいすぎるほどの青春を感じたりする。



    それは、28才のぼくが青春を振り返って、きれいだと感じるのではなく、

    15才くらいだったぼくが見ても、きれいだし、かっこいいし、青春だと思ったのだ。



    里伽子がベッドで寝てしまって、

    仕方なく、拓はお湯の入ってないお風呂に横になり、寝たりする。

    「ぼくだって十分、かわいそうじゃんか」

    と、つぶやきながら。



    いまもそんな拓が、かっこいい。



    そして、ぼくがいまになって、思うのは、松野のかっこよさだ。



    松野は、もともとクールで落ち着いていて、

    青春当時のぼくからみると、あまりに大人に見えてしまっていたせいか、

    そこまで、かっこいいと思えなかったのだ。



    でも、松野の拓に対する思いやり、

    里伽子に「土佐弁しゃべる男なんてきらい」と言われながらも、

    里伽子を気遣う、その想い。



    それが、なんてかっこいいんだと今は思う。



    そして、大人な雰囲気の松野が、

    一度だけ拓を殴ってしまうシーン。



    卒業後、再会した松野は、拓に、

    「あのとき殴ったのは、おまえがおれに遠慮しゆうのがわかったきぞ。

    あのときまで、気づかんかった、おまえが武藤のこと好きやったこと」

    と、松野は、拓に謝る。



    クールな松野も、いち高校生だったんだなぁと、

    いまになって思って、実は思ってたより、大人でもなかったのかなぁと、

    なんだかちょっと安心したりした。



    それでも、高校生としては、十分大人に見えるけど。



    そう、それと同時に、拓も普通の高校生でありながら、

    松野との会話は、そこだけ「高校生」という枠がなくなったように、

    親友同士の密な雰囲気が流れる。



    たぶん、ぼくが憧れるのは、それなのだ。

    それがめちゃめちゃ、かっちょいーのだ。



    青春時代のど真ん中を描きながら、

    十年以上たったいまもセピア色を感じることながないのは、

    このふたりの友情が、今も続いてるような気がするからなのかもしれない。



    里伽子との恋愛的雰囲気の受け止め方は、ちょっと変わったけれど、

    松野との友情を思うとき、あのころと何も変わってないと思うことが、

    ちょっとうれしいと、ぼくは思っている。

  • 100円だったので買っちゃいました。氷室冴子は、小学生のときからジャパネスクでかなりよんでいたので大好きな作家の一人だ。というか、村山由佳とかは氷室さんからきている気がするなぁ。書き方とか。海が聞こえるはアニメやドラマで知ってはいたけどきちんとしらなかったので、読んでみました。青春・・・なのかな。ちょっと甘酸っぱいような切ないような。若さゆえの熱さや勢いやら・・・。里佳子は嫌いじゃないし、やっぱり男子だったら気になっちゃうんだろうなー。はっ!気がつけば、これってツンデレ??(笑)・・ちがうよね。はい。すいませんでしたー。ちなみにこの本に集中しすぎて、自分の降りるべき駅を通り過ぎて終点までいっちゃいました。あほか。

  • 中1の時に出会って以来、大好きな作品。久しぶりに通しで読んだ。
    この本の影響で、大学は東京に行きたい、と思ったところもちょっとあった気がする。
    東京在住になった今、石神井公園駅を使うたび、拓の街だ、と思うのも楽しい。

    ストーリーの瑞々しさに憧れる人も多いかもしれないけれど、
    私は割とリアルに感じる部分が多いかなぁ。
    里伽子の痛々しい(イタいという意味ではない)ツッパってる姿も、
    なんだかんだで里伽子を放っておけない気持ちになる拓も、
    どっちも自分と重ね合わせられる。

    こういう小説って、なかなか他にない。
    この作品みたいに爽やかでいて、登場人物の気持ちがすうっと入ってくる青春小説に、出会ったことがないんだよなあ。

    なお、文庫版で一つだけ不満があるのは、表紙……
    ハードカバー版の水彩の方がよかったし、何より高校時代の里伽子は、こんな表情しない。

  • 天才じゃないかと思う/ とにかく爽やかで、とにかく懐かしい/ こんなの大人になって読んだらダメだ、泣きそうになる/ 宮台の解説もまあ面白かった/ アニメリメイクすればいいのに

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著者プロフィール

氷室冴子(ひむろ さえこ)
1957年1月11日 - 2008年6月6日
北海道岩見沢市出身の作家。本名、碓井小恵子(うすい さえこ)。1980年代から1990年代にかけて集英社コバルト文庫を代表する看板作家だった。藤女子大学文学部国文学科在学中、第10回「小説ジュニア青春小説新人賞」へ「さようならアルルカン」を応募、佳作を受賞してデビュー。宝塚歌劇をモデルにしたコミック『ライジング!』原作者を経て、作家に専心。
以降多くの作品を手がけ、『なんて素敵にジャパネスク』シリーズ、『銀の海 金の大地』シリーズなどが代表作となる。『海がきこえる』は1993年にスタジオ・ジブリでアニメ化された。2008年6月6日、肺癌で逝去。

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