史伝 伊藤博文 (上) (徳間文庫)

  • 徳間書店 (2000年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198913786

感想・レビュー・書評

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  • ここ1、2年ほどで読んだ、明治を舞台にした作品で目に留まって気になりつつもそのままにしていた伊藤博文。
    重い腰をあげ、ようやくこの作品を再読しました。
    なにしろ文庫の上下1000ページを越す大作なのですもの。
    結果、読んでよかったです。
    以前読んでから今回までの間に明治関係の他の作品を何冊か読んでいた分、明治の流れがより頭に入りました。

    史伝と銘打ってあるように、伊藤を主人公とした「小説」ではなくなるべく起きたことを忠実に並べるように書かれています。
    ひとつの事柄でも伊藤の書き残したものだけではなく、同時代の人物の残した史料も多数並べて引用されており、より詳しく知ることができました。
    この時代の人たちはけっこう自身の伝記や日記、側近が思い出を綴ったものなどが残されているので、その関係資料をあたるのはかなり大変だったことと思われます。
    でもやっぱり伊藤贔屓かな、と思われる解釈が多いのはまあ仕方ないですかね。伊藤博文の本ですから。
    あまりいいイメージを持っているわけではないですが、逆に山縣有朋があんまりにもあんまりな描き方だったような・・・。
    おかげで興味が湧いてきましたよ。

    『蒼穹の昴』の感想でも書きましたが、私はどうも志士のころの俊輔とお札の肖像の伊藤博文のイメージが重ならなかったのです。
    その原因に今回気がつきました。
    ただ単純に「高杉晋作の死後」、とくに明治にはいってからはそれほど興味がなく、そのためあまり関係書籍を読んでいなかったんだわ。

    私が知っていた俊輔重大事件は
    長州ファイブとしてイギリスへ留学するも、長州藩が四国艦隊から攘夷戦争の報復をうけたと知り、飛んで帰ってきた
    高杉晋作の功山寺挙兵にいち早く力士隊を率いて参加
    以上。でしたから。
    どちらも正に命がけの行為で、どっちで命をおとしていても不思議ではなかったのです。
    だから志士としての印象が強烈だったわけです。
    その上、その後の大政奉還、鳥羽伏見などには関与させられず、そのあたりの行動が不明なためイメージが繋がらないのだ、ということも今回判明しました。
    しかし戦に参加しなかったおかげで生き延び、新政府では外国事務掛に任命され政治に関わっていくこととなります。

    そして転機は米欧使節団に加えられたこと。
    ここで大久保利通と近づけたことで国政の中枢へと入っていったのです。
    大久保にはかなり影響を受けたのではないでしょうか。そのおかげで大政治家になれたといっても過言ではないくらい。
    おかげでここで大久保への興味がまた湧いてきました。

    以後、征韓論争、西南戦争、三傑の死、憲法制定、日清戦争、三国干渉、日露戦争、ポーツマス条約、韓国併合、そしてハルピンでの死。
    中学で習った駆け足の近代史で出てきたこれらすべてに直接、間接的に関与していたなんて。
    そりゃ明治が舞台の作品には名前が出てくるはずだわ。納得。

    今回読み終えて、完璧イメージが重なった、というわけでは実はないのですが。
    それでも見直しました。いままですみませんでした。
    でもやっぱり気になるのは病床の死の間際にいた高杉の見舞いに行かなかったこと。
    あんなに縁のあった高杉なのに。
    それなのに東行顕彰碑にあんな名文を残しているという。
    この矛盾がやっぱりひっかかるのですが。

    物足りない点をひとつあげれば、伊藤の公の政治的な部分ばかりが並べられていたこと。
    いや、そのための作品だということは重々承知なのですけど。
    かなり女好きであったということですので、そのあたりのゴシップもあれば面白かったのになぁ、と。
    まあ、史料を基に書かれているので、そういうみっともない話は書き残されたりはしてないのでしょうか。
    大政治家伊藤博文を知るにはぴったりな作品でした。

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著者プロフィール

一九三一年東京生まれ。横浜国立大学経済学部を卒業後、読売新聞社を経て作家生活に。六七年『風塵地帯』で日本推理作家協会賞を、六八年「聖少女」で直木賞を受賞する。推理・サスペンス小説、スパイ小説、歴史小説、伝記小説など広範囲なジャンルで硬筆な筆をふるう。

「2019年 『ガラスの階段 特捜検事 新編集版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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