まことに残念ですが…: 不朽の名作への「不採用通知」160選 (徳間文庫 ハ 7-1)
- 徳間書店 (2004年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198920104
感想・レビュー・書評
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やや古い本だが、「読書猿」氏がブログで紹介していたのを見て読んでみた。
欧米の古今の名作(小説、詩集など)が刊行される前、出版社の編集者から作者に送られた「不採用通知」の一節を集めたもの。
もっとも、取り上げられた作品の中にはあまり知られていないものも多い。が、『大地』『白鯨』『アンネの日記』など、名作が数多く含まれているのはたしか。
「あの名作でさえ、最初は編集者に価値を認められなかったのだから……」と、いまだ世に出ぬ作家の卵たちは大いに勇気づけられるに違いない。
また、不採用通知の合間に、名作の不採用をめぐる面白いエピソードも集められている。そのうちのいくつかを紹介してみよう。
バーナード・ショーが初めて書いた作品は、多くの出版社から断られつづけた。活字になったのは書いてから50年後――「出版社がわたしの名前が書いてあればどんなものでも出版するようになってから」だった。
『ギネスブック』によれば、出版社に刊行を拒否された回数が最も多いのはスティーヴ・カントンの『ダスティ・ロード』という作品。その記録は、じつに314回(!)。
ウィリアム・サローヤンが初めて原稿採用の通知をもらったとき、それまでにもらった不採用通知は高さ1メートルもの山になっていた。数にして、おそらく7000通以上。
ジェイムズ・ジョイスの『ダブリン市民』は、刊行までに22の出版社に断られた。ジョイスが22歳のときに書いた同作が刊行されたのは10年後のことだった。
世界で4000万部の大ベストセラーになった『かもめのジョナサン』は、刊行までに20数社に断られた。
ジェイムズ・M・ケインの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のユニークなタイトルは、この小説が出版社から蹴られるたび、不採用通知を届けにきた郵便配達が決まって2度ベルを鳴らしたことからつけられた。
詩人のリー・ペニントンは、出版社から送られてくるたくさんの不採用通知を笑いに変えるべく、さまざまな楽しみ方を考案した。
不採用通知をスクラップ・ブックに貼る。コースター代わりに使う。不採用通知の裏面を招待状にした「没」記念パーティを開く。食欲がなくなってダイエット効果が上がるように冷蔵庫に貼るetc.
断りの文句自体がユーモアとウイットに富んでいて、面白いケースも多い。
ナボコフの『ロリータ』に対する不採用通知には、次のような一節がある。
《わたしがもっとも当惑するのは、作者がこれを発表したがっているという事実である。この本を出版するいかなる根拠も思い浮かばない。わたしはこれを千年間、石の下に埋めておくことを勧告する。》詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あの作家さんも文豪も、出版社に手酷くお断りのお手紙と一緒に作品を突き返されていた。
出版社から作家さんへの慇懃無礼なお断りのお手紙。
☆現在のお断りのお手紙はどんなんなんでしょうね。
☆掲載されているのはだいたい80年代まで。理由は時代的に公共良俗的なのが多い。
☆結構、読者も出版社に馬鹿にされてる気がする。←自分も、気をつけよう。馬鹿にはしてないけど、幼く思いすぎてるかも。利用者。
☆すげなくされた作家さまの顔ぶれを見てると、どんな作品がヒットするかは分からないんだな~と。
☆作品自身の素晴らしさ前提なんだけど、作家が自分の作品を信じることが大切なのだなあと。
☆どの作家さんも後日大作家へと成長していることが分かっているので、面白おかしく読めた。自分がもし貰ってたら、もう立ち直れないかも。 -
落選続き、応答なし続きの作家の卵にとって、この上なく元気が出る本。ポパイのほうれん草(ちと古いかな)。頑張って卵を割ろう、世に出よう、飛翔しよう!
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2012/03/02
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色んな所で紹介されているのは知っていましたが、(本書への言及がある)興味深い文章ふたつが決定打になり本書を購入。(※下記リンクは抗議があれば削除します。)
読書猿 2013年11月28日
「あの不朽の名作たちが不採用になった理由を知れば物書きのあなたを励ますことができるかもしれない」
<http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-721.html>
ひつじ書房の房主の日誌 2014年7月1日
「書籍4割返品が、本当に問題なのか」
<http://www.hituzi.co.jp/kotoba/20140701ns.html> -
名作や、ベストセラーでも、出版されるまでに、何十回何百回も 不採用の憂き目にあったかと知ると、文学や芸術が認められるのは、タイミングと運だなとも思う。
批評や編集者が、まったく当てになんないという事実は、生きる力になる!かも。 -
評価するものもまた、評価される。
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不朽の名作への不採用通知を紹介した本。名小説家と言われる人も、駆け出しの頃は投稿した小説がボツになった経験はいくらでもあるようです。そのようなボツ作品に対する出版社や編集者からの手紙を集めています。
例えば、「ジャングル・ブック」で有名やノーベル賞作家ラディヤード・キプリングの作品に対して、「申し訳ありません。キプリングさん。あなたは英語の使い方がまったくわかっていらっしゃらない」と返信した編集者がいたそうです。そこまで書ける編集者はどんな人だったのか、本人の文章が見てみたい気もします。
この本は、丁寧なお断りの文もいろいろありますので、「お断り文」事例文集としても使えそうです。 -
なじ■
「まことに残念ですが、
アメリカの読者は中国のことなど一切興味がありません。」
「書き出しの行に“r”が多すぎる。」
「親愛なる閣下、原稿を拝読させていただきました。
いやはや、なんたることでありましょう、閣下。」
不採用通知の文面がどれも面白すぎました。 -
高名な小説・また小説家の作品に対する編集部からの「ボツ」の言葉。
海外だからか、ひねくれた言い方が多くて楽しめる。
でもなー日本で和訳されていない作品も多いし、「アンネの日記」とか「大地」、
「チャタレイ夫人の恋人」なんて大物があるかと思えば、誰も知らないような
作品や作家もてんこもり。
アイデアの勝負で、表紙も非常にかわいいが、好きな人しか読まないだろうなあ。 -
名作にも不採用の時代があった。一度ならず、二度、三度と落とされたのもあり。
名作=一度で通ると思っていたので、そこに至るまでの苦労が実に興味深い。