顔 FACE (徳間文庫)

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  • 徳間書店
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レビュー : 240
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198922337

感想・レビュー・書評

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  • D県警シリーズが好きだ。
    D県警には警務課調査官人事担当・エース二渡さんがいるから。二渡さん、好きなんです……
    横山さんには二渡さんが活躍する話をもっと書いて欲しいな。
    あ、でも。そうなると、どうしても警察内部や身内同士のドロドロとした部分を暴きだすようなミステリーになるのかな。だって二渡さんの職務って身内が対象となることが多いもんなぁ。
    だから何だか重いミステリーとなる。
    それでもそれを重たいだけで終わらせないのが、横山秀夫さんなのだ。横山作品は人間の真髄を見せてくれる。

    『顔』の連続ドラマ(2003年放送)が大好きだったから、当時原作の『顔 FACE』も読んだはずなんだけど、まだブクログを始めてなかったから今回登録するために再読。
    そうだった、原作にはドラマ版でヒロインとともに重要な役柄であった西島刑事がいないんだ。
    だからなのか、原作のヒロイン・婦人警察官(作品の呼称のまま)平野瑞穂には、たった1人で肩肘を張りながら警察社会で闘っている、そんなイメージがドラマ版よりも強くある。ピリピリとした緊張感が彼女にはつきまとう。

    鑑識課機動鑑識班の一員として、似顔絵作成を担当していた瑞穂は、1年前失踪騒ぎを起こし休職する。その辺りの事情は『陰の季節』に収録されている「黒い線」で描かれている。
    『顔 FACE』は、その彼女が秘書課の広報公聴係員として復職してからのミステリー、短篇5編が収録されている。
    もう一度鑑識課に戻りたいとの希望は叶わずとも、瑞穂はまっすぐと事件の闇を見つめ真相へと辿り着いていく。
    そう、今回は大好きな二渡さんじゃなくて、彼女が活躍するD県警シリーズ作品なのだ。

    とにかく横山作品の描く警察は男社会である。
    それも身内だろうがなんだろうが、隙を見せたら容赦なく蹴落とされるようなヒリヒリする空気を漂わせている。
    当時の警察って、特に所轄署はまだ「24時間戦えますか」が当たり前の職場だったと思う。そんななかで女性が働くには本当に辛い職場だったろう。
    「だから女は使えねぇ!」なんて言葉は、さすがに現在では女性警察官に対して面と向かっていう輩もいないだろうけど、でもやっぱり警察社会のリアルな現状って根本的な部分は男社会ではないだろうか。

    小説内で瑞穂は何度もそういう言葉を吐かれるし、吐かれないまでも、何気ない描写に男たちの舌打ちが聞こえてくる。男性警察官の全員がそうではないけれど、やはりそんな場面が多くある。
    なんだろ。たとえば男性警察官が瑞穂と同じような行為をしたとしても、周囲はその男性警察官自身に対して毒づくだけで「だから男は使えねぇ!」なんて言わないよね。
    そこが憤懣やる方ない。婦人警察官は1人の警察官として認められてるわけじゃなくて、「女」というひとかたまりとしてしか見られていないのではないだろうか。もっと言えば「女」という言葉の裏には「警察官」という身分さえ認められていないのかもしれない。
    つまるところ、1人の婦警の失敗が、そのまま婦警全員の失敗になるのだ。

    おまけに瑞穂は、「黒い線」での問題があるから、D県警、とくに鑑識課・刑事課からは疎まれた存在として尚更だ。
    瑞穂は婦警を続ける以上、重い過去を背負っていかなければならない。
    今、彼女はその過去から逃げ出さないように踏ん張っているところなんだと思う。
    泣かないように歯を食いしばっているのだと思う。
    この社会で生きていくには、これからも辛いことのほうが多いだろう。見たくないものを見ることもあるはずだ。

    次、失敗したら後がない。
    それをわかっていながら戻ってきた瑞穂はなんて強いのだろう。
    彼女は数々の事件に関わるようになって、少しずつ変わりはじめる。いや、彼女の中に眠っていた正義感や婦警としての誇りなどが目を覚ましはじめたのだろう。

    「心の痛みを涙で癒すのはもう嫌だった。」

    ミステリーだけでは終われない。
    これでもかと人間の持つ闇を抉った先に微かな光が射し込む。
    それが横山秀夫作品であり、D県警シリーズなのだ。

    〈D県警シリーズ〉
    ・影の季節
    ・動機
    ・顔 FACE
    ・64(ロクヨン)
    ・刑事の勲章(電子書籍のみ)

    • 地球っこさん
      hiromida2さん、おはようございます。

      横山秀夫さんのミステリーいいですね!
      わたしも久しぶりに読んだらやっぱり面白くて、また...
      hiromida2さん、おはようございます。

      横山秀夫さんのミステリーいいですね!
      わたしも久しぶりに読んだらやっぱり面白くて、また横山秀夫ブームが来そうですo(>∀<*)o

      「顔 FACE」はドラマが好きで、というかこの時のオダギリジョーが大好きでした。
      でも原作にはいないキャラなんですけどね。
      D県警シリーズは二渡さんが大好きで、「顔FACE」にも最後の方に一行だけ出てきたのを、わたしは見逃しませんでした 笑

      この正月休みは、世の中はドラマ「教場2」だと思いますが、わたくしは「陰の季節」「刑事の勲章」のドラマを観て、二渡さんの元へ出頭して参りたいと思います("`д´)ゞ(なんのこっちゃ……)

      hiromida2さん、こんなわたしですが、来年もどうぞよろしくお願いします(*^^*)
      よいお年を~♪
      2020/12/30
    • hiromida2さん
      地球っこさん、ありがとうございます。
      なるほど…です! ドラマの方も結構面白かったですよね。 県警事情に詳しい 横山秀夫さんだからこその作品...
      地球っこさん、ありがとうございます。
      なるほど…です! ドラマの方も結構面白かったですよね。 県警事情に詳しい 横山秀夫さんだからこその作品の数々^ ^
      ますます…ブーム再来の予感!
      こちらこそ、こんな…私ですが、来春も…どうぞ宜しくお願いします。
      2020/12/30
    • hiromida2さん
      PS.二渡さんの元へ、出頭(笑)ε-(´∀`; )
      地球っこさんも、良いお年を〜
      PS.二渡さんの元へ、出頭(笑)ε-(´∀`; )
      地球っこさんも、良いお年を〜
      2020/12/30

  • 大好きなD県警シリーズ。実は1作目から順には読めておらずつまみ食い状態の横山作品。そんな私でも面白かったです。

    警察官も人間である。警察組織はそんな人間たちの集まりに過ぎない。だから差別もあるし嫉妬もある。内部のいざこざだって出てくるし、外にはいい顔をしたいだろう。
    瑞穂もその中の1人だ。特別強いわけでもなく弱いわけでもない、悩みながら、迷いながら、大きな手柄もなければ貢献しないわけでもない。それが妙にリアルで親近感の湧く主人公だった。観察眼には驚くが、ミスも悩みもありバランスが良い。

    何人もの男性が出てきたのに、キーパーソンはいつでも女性だったことも徹底してて面白い。

    • 地球っこさん
      ぴぃさん、はじめまして。

      わたしもD県警シリーズ好きです。
      特にエース二渡さんが大好きです♪
      ぴぃさん、はじめまして。

      わたしもD県警シリーズ好きです。
      特にエース二渡さんが大好きです♪
      2021/02/02
    • ぴぃさん
      地球っこさん

      初めまして。
      コメントありがとうございます。
      二渡さん、ほんの少しでしたが出てきていましたね!
      1作目からちゃんと読んでいこ...
      地球っこさん

      初めまして。
      コメントありがとうございます。
      二渡さん、ほんの少しでしたが出てきていましたね!
      1作目からちゃんと読んでいこうと思います。
      2021/02/03
  • 陰の季節を呼んでいたら、FACEの登録漏れに気付きました。読んだのは1年くらい前か。婦警平野瑞穂巡査の活躍で面白かったです。

  • 陰の季節のスピンオフのような作品。男性社会の中で生きる婦警を描写する。女性の働き辛さ、組織の中で弱い立場を際立たせつつ、主役の芯の強さをうまく描いていて、男性でも十分に楽しめるのではないか。
    現在は、警察組織も多少は変わっているのだろうか、想像するばかりだが、以前は男性優位の職場が当然だったとするならば、本作で描かれる社会がかなり特異に映ること自体、世の中が良い方向に変化している、ということなのだろう。

  • 『陰の季節』に出てきた平野瑞穂巡査が主人公。似顔絵の改ざんを命じられた瑞穂のその後の物語。男社会で生きる女性の生きにくさ、必死さの描写が巧みで、瑞穂の心の痛みがよく分かる。が、その一方で真面目すぎる性格に多少イライラしたのも事実。それだけ仕事に誇りを持っているんだろうけど、ここまでガチガチにいろんなことを受け止めなくてもいいんじゃない?と言いたくなった。

  •  D県警シリーズの連作短編集。
     本作の主人公は似顔絵婦警の平野瑞穂。D県警シリーズ第1作の『陰の季節』収録の「黒い線」で失踪騒ぎを起こした張本人である。「黒い線」では平野瑞穂は脇役で、それを管理する七尾友子という人物が主人公だった。今回はその主役と脇役が入れ替わり、失踪騒ぎで人事異動になった平野の1年間を追うというストーリー仕立てになっている。
     失踪騒ぎについては、第1話の「魔女狩り」で触れられているが、詳細はやはり「黒い線」を読まないと分からない。「黒い線」を読んだ後に本書を読み進めると時系列になって分かりやすいが、本書を読んだ後に「黒い線」を読むのもおススメ。
     本書だが、警察という男社会の中において、周囲に振り回されながらも自分の存在価値を模索する平野の姿が描かれている。似顔絵を描いていたことで培われた観察眼や他人に対する柔らかな物腰が随所に表れ、読み進めていくうちに徐々に人間性が形作られていく印象を持つ。ミステリーなのだが、主人公をついつい応援したくなってしまう構成が印象的な作品。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。

  • 女性警官が事件を解決!というとまるで2時間ドラマのようなスッキリとした後味を想像するかもしれない。だが本書はミステリーというよりも企業小説のような味わいを持つ。

    そこでは男社会である警察で、抱いていた初々しい正義感や夢をすり減らして行く一人の若い女性の日常が描かれている。なかなかに重くてしんどい話で、これを男性作家が書いたというのに驚かされる。

    同じ「D県警シリーズ」の「64」では、男たちがそれぞれの信義を貫く姿に熱い感動を覚えたが、本書を読んだ後では、脇で花を添えていた女性警官美雲が「いいよね、男は」と皮肉たっぷりに呟く姿が見えたような気がした。

  • 「影の季節」で脇役だった似顔絵婦警平山瑞穂を主人公に据えての連作短編集。復帰はしたものの、広報、電話相談室、強行犯係、と転々と。女だから...とあからさまに敵意を向けてくる男たち、マスコット的存在ではなく婦警も男と同様にと奮闘する七尾。新聞記者へのリーク、拳銃強奪犯、銀行強盗...材料が集まってひらめくと、真相にたどり着けるが、それは必ずしも良い結果ばかり産むとは限らず。けれど、着実に自信をつけ、最後には力強く、打たれても負けない予感を感じさせつつの幕。/人物画は、作者とモデルの心の繋がりがないと、ただの人体描写になってしまうんだ/

  • 別の作品で出てきた婦警が奮闘する話。
    面白かった。

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著者プロフィール

国際商科大学商学部卒業。1979年上毛新聞社に入社。1991年、『ルパンの消息』が第9回サントリーミステリー大賞佳作を受賞。1998年、『陰の季節』で第5回松本清張賞を受賞、小説家デビュー。代表作に『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64』などがある。

「2015年 『漫画でよめる! 語り継がれる戦争の記憶 戦火の約束』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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