顔 FACE (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • / ISBN・EAN: 9784198922337

感想・レビュー・書評

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  • 先日読み終えた「第三の時効」から横山秀夫作品を続け読み。

    続けて手にさせられたのは「第三の時効」が素晴らしかったから。
    それ故にどうしても比較してしまう...
    比較すると☆3.5、本書だけで評価するなら☆4つといったところです。

    本書もいわゆる警察物で、「第三の時効」同様に6作からなる短編物です。

    ちょっとマニアックなのが、本作の主人公・平野瑞穂(23歳)、階級は巡査でD県警の機動鑑識班に所属する「似顔絵婦警」という設定。

    見たことありますよね?交番の前とかに貼ってある似顔絵、それを専門で描く婦警が主人公です。

    と言っても、署内の移動で犯罪被害者支援対策室(電話相談室)や強行捜査係での活躍も描かれています。

    様々な設定の中で瑞穂は警官として、女性としての悩みを抱えながら彼女独自の視点から犯人逮捕へ奔走します。

    正義感が強く、謎があれば追及しないといられない瑞穂、時には自分の職務を超えてでも真実を解き明かそうとする瑞穂の姿にグイグイ引き込まれていきましま。

    それぞれの短編自体もミステリー作品としても楽しめますし、「第三の時効」同様に各ストーリーの最後で語る一言が一層の深みを与えてくれています。

    本書の最後で機動鑑識班に戻った瑞穂、きっとそのうち再登場してくるための布石なんだろうな。


    「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、 犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。

    内容(「BOOK」データベースより)

    「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    横山/秀夫
    1957年東京生まれ。1998年『陰の季節』で第5回松本清張賞を受賞。2000年『動機』で第53回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2002年『半落ち』が各ミステリーランキングのベスト1に輝き、一躍、人気作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • ヒボさん
      そうなんです、初レンタルしてみました♪
      そこそこスピード出るのと、サスペンションが無いので道路の凸凹がまともに振動となって(((゚Д゚)))...
      そうなんです、初レンタルしてみました♪
      そこそこスピード出るのと、サスペンションが無いので道路の凸凹がまともに振動となって(((゚Д゚)))ガタガタ

      みなとみらいの大渋滞は車の横をすり抜けるのが怖かったです:(´◦ω◦`):プルプル
      2023/12/18
    • なおなおさん
      怖いですよ〜( ;꒪⌓꒪;)
      もっと楽な移動手段が欲しいものです。
      怖いですよ〜( ;꒪⌓꒪;)
      もっと楽な移動手段が欲しいものです。
      2023/12/18
    • ヒボさん
      どこでもドア~
      どこでもドア~
      2023/12/18
  • D県警シリーズが好きだ。
    D県警には警務課調査官人事担当・エース二渡さんがいるから。二渡さん、好きなんです……
    横山さんには二渡さんが活躍する話をもっと書いて欲しいな。
    あ、でも。そうなると、どうしても警察内部や身内同士のドロドロとした部分を暴きだすようなミステリーになるのかな。だって二渡さんの職務って身内が対象となることが多いもんなぁ。
    だから何だか重いミステリーとなる。
    それでもそれを重たいだけで終わらせないのが、横山秀夫さんなのだ。横山作品は人間の真髄を見せてくれる。

    『顔』の連続ドラマ(2003年放送)が大好きだったから、当時原作の『顔 FACE』も読んだはずなんだけど、まだブクログを始めてなかったから今回登録するために再読。
    そうだった、原作にはドラマ版でヒロインとともに重要な役柄であった西島刑事がいないんだ。
    だからなのか、原作のヒロイン・婦人警察官(作品の呼称のまま)平野瑞穂には、たった1人で肩肘を張りながら警察社会で闘っている、そんなイメージがドラマ版よりも強くある。ピリピリとした緊張感が彼女にはつきまとう。

    鑑識課機動鑑識班の一員として、似顔絵作成を担当していた瑞穂は、1年前失踪騒ぎを起こし休職する。その辺りの事情は『陰の季節』に収録されている「黒い線」で描かれている。
    『顔 FACE』は、その彼女が秘書課の広報公聴係員として復職してからのミステリー、短篇5編が収録されている。
    もう一度鑑識課に戻りたいとの希望は叶わずとも、瑞穂はまっすぐと事件の闇を見つめ真相へと辿り着いていく。
    そう、今回は大好きな二渡さんじゃなくて、彼女が活躍するD県警シリーズ作品なのだ。

    とにかく横山作品の描く警察は男社会である。
    それも身内だろうがなんだろうが、隙を見せたら容赦なく蹴落とされるようなヒリヒリする空気を漂わせている。
    当時の警察って、特に所轄署はまだ「24時間戦えますか」が当たり前の職場だったと思う。そんななかで女性が働くには本当に辛い職場だったろう。
    「だから女は使えねぇ!」なんて言葉は、さすがに現在では女性警察官に対して面と向かっていう輩もいないだろうけど、でもやっぱり警察社会のリアルな現状って根本的な部分は男社会ではないだろうか。

    小説内で瑞穂は何度もそういう言葉を吐かれるし、吐かれないまでも、何気ない描写に男たちの舌打ちが聞こえてくる。男性警察官の全員がそうではないけれど、やはりそんな場面が多くある。
    なんだろ。たとえば男性警察官が瑞穂と同じような行為をしたとしても、周囲はその男性警察官自身に対して毒づくだけで「だから男は使えねぇ!」なんて言わないよね。
    そこが憤懣やる方ない。婦人警察官は1人の警察官として認められてるわけじゃなくて、「女」というひとかたまりとしてしか見られていないのではないだろうか。もっと言えば「女」という言葉の裏には「警察官」という身分さえ認められていないのかもしれない。
    つまるところ、1人の婦警の失敗が、そのまま婦警全員の失敗になるのだ。

    おまけに瑞穂は、「黒い線」での問題があるから、D県警、とくに鑑識課・刑事課からは疎まれた存在として尚更だ。
    瑞穂は婦警を続ける以上、重い過去を背負っていかなければならない。
    今、彼女はその過去から逃げ出さないように踏ん張っているところなんだと思う。
    泣かないように歯を食いしばっているのだと思う。
    この社会で生きていくには、これからも辛いことのほうが多いだろう。見たくないものを見ることもあるはずだ。

    次、失敗したら後がない。
    それをわかっていながら戻ってきた瑞穂はなんて強いのだろう。
    彼女は数々の事件に関わるようになって、少しずつ変わりはじめる。いや、彼女の中に眠っていた正義感や婦警としての誇りなどが目を覚ましはじめたのだろう。

    「心の痛みを涙で癒すのはもう嫌だった。」

    ミステリーだけでは終われない。
    これでもかと人間の持つ闇を抉った先に微かな光が射し込む。
    それが横山秀夫作品であり、D県警シリーズなのだ。

    〈D県警シリーズ〉
    ・影の季節
    ・動機
    ・顔 FACE
    ・64(ロクヨン)
    ・刑事の勲章(電子書籍のみ)

    • 地球っこさん
      hiromida2さん、おはようございます。

      横山秀夫さんのミステリーいいですね!
      わたしも久しぶりに読んだらやっぱり面白くて、また...
      hiromida2さん、おはようございます。

      横山秀夫さんのミステリーいいですね!
      わたしも久しぶりに読んだらやっぱり面白くて、また横山秀夫ブームが来そうですo(>∀<*)o

      「顔 FACE」はドラマが好きで、というかこの時のオダギリジョーが大好きでした。
      でも原作にはいないキャラなんですけどね。
      D県警シリーズは二渡さんが大好きで、「顔FACE」にも最後の方に一行だけ出てきたのを、わたしは見逃しませんでした 笑

      この正月休みは、世の中はドラマ「教場2」だと思いますが、わたくしは「陰の季節」「刑事の勲章」のドラマを観て、二渡さんの元へ出頭して参りたいと思います("`д´)ゞ(なんのこっちゃ……)

      hiromida2さん、こんなわたしですが、来年もどうぞよろしくお願いします(*^^*)
      よいお年を~♪
      2020/12/30
    • hiromida2さん
      地球っこさん、ありがとうございます。
      なるほど…です! ドラマの方も結構面白かったですよね。 県警事情に詳しい 横山秀夫さんだからこその作品...
      地球っこさん、ありがとうございます。
      なるほど…です! ドラマの方も結構面白かったですよね。 県警事情に詳しい 横山秀夫さんだからこその作品の数々^ ^
      ますます…ブーム再来の予感!
      こちらこそ、こんな…私ですが、来春も…どうぞ宜しくお願いします。
      2020/12/30
    • hiromida2さん
      PS.二渡さんの元へ、出頭(笑)ε-(´∀`; )
      地球っこさんも、良いお年を〜
      PS.二渡さんの元へ、出頭(笑)ε-(´∀`; )
      地球っこさんも、良いお年を〜
      2020/12/30
  • D県警シリーズ第3弾!
    今度の主役は婦警さん。
    それも犯人などの似顔絵を描くという仕事。
    この話では、実際は、失敗というより、言う事きかんかったから、追い出されてからの話になる。
    今までのD県警シリーズよりも、事件現場に近い感じがする。今までのは、人事とかそんなのの権力闘争みたいなのばっかりやから…
    男社会の警察組織をまざまざと見せつける。「女は使えん!」みたいな事を言われながら、事件を追うって感じ。
    何で、こんなに男社会なんか知らんけど…
    やっぱり、刃傷沙汰が多いというイメージから、男という感じになるんかな?
    まぁ、適材適所ですわ〜
    いくらでも活躍出来る場はあるし、頑張って下さい〜
    古い作品なんで、今の現状を表しているかは不明…

  • 私が読む横山秀夫氏作品の12冊目だが、最近、氏の作品を遡って、読んでいなかった初期の頃の作品を読んでいる。

    本書は婦警の平野瑞穂が主人公である。
    彼女は『陰の季節』に出てきていたらしいし、その時の事件も本書の中で触れられているので、なんとなくは思い出せたが、どちらかといえば彼女の上司の「七尾」という苗字に既視感があったくらいだ。

    なにしろ『陰の季節』を読んだのは半年前で、この半年間に横山秀夫氏作品2冊も含め、大量に挟んでしまっているので覚えていない。

    本書は20年強前に書かれたものなので、「婦警」という言葉で語られているし、この20年間でどれだけ警察の色々なことが変化しているのか、はたまた変化していないのかは私にはわからない。
    とりあえず、20年前に書かれた本書では、平野瑞穂は、朝一に県下各署に夜間の事件や事故について電話で聞き取りを行い、手書きでメモっている。
    こんな非効率なことが現在も本物の警察で行われていないことを願う。
    (県警に詰めているマスコミも似たようなことをしている)

    著者が2ヶ所で書いて伝えたかったこと。
    「(犯罪とは)直接の被害者だけでなく、思いも寄らないところにまで不幸の波紋を広げ、多くの大切なものを踏みにじる。人を泣かせ、人を傷つけ、人の一生を狂わせる。犯人は知らない。おのれが撒き散らした毒も棘も生涯知ることなく、のうのうと日々過ごすのだ。」(212ページ)
    「犯罪は思わぬところまで波紋を広げて人を傷つける。だが、(ネタバレになるので省略)」(239ページ)
    私は幸い全くこのような被害に遭っていないが、日々の事件や事故のニュースを見るに、直接的被害者だけでなく間接的にでも何かしら影響や被害を受けてしまっている人がいるのだろうと、考えることがよくある。

    239ページの案件、これは間違いなくPTSD案件だ。(本書にはPTSDという単語は出てこないが)
    実社会で、児童への予告無しの不審者訓練とかもやめてほしいと常々思っている。
    本書から20年も経っているのだから、現在の実社会は少しはまともになっているかと思い調べてみたら、「2019年時点でもある小学校で1年生にだけ事前に知らせ、それ以外の学年には知らせずに訓練をやっているという記事」がみつかった。
    事前に知らされていても小1には恐怖だろうし、小2以上だってPTSD案件だと思う。
    大人だって怖いよ。

    本書の事件は小学校ではないのだが、横山秀夫氏がこういうところに着目して問題提起をされている点が流石だし、鋭いと思う。


  • 大好きなD県警シリーズ。実は1作目から順には読めておらずつまみ食い状態の横山作品。そんな私でも面白かった。

    警察官も人間である。警察組織はそんな人間たちの集まりに過ぎない。だから差別もあるし嫉妬もある。内部のいざこざだって出てくるし、外にはいい顔をしたいだろう。
    瑞穂もその中の1人だ。特別強いわけでもなく弱いわけでもない、悩みながら、迷いながら、大きな手柄もなければ貢献しないわけでもない。それが妙にリアルで親近感の湧く主人公だった。観察眼には驚くが、ミスも悩みもありバランスが良い。

    何人もの男性が出てきたのに、キーパーソンはいつでも女性だったことも徹底してて面白い。

    • 地球っこさん
      ぴぃさん、はじめまして。

      わたしもD県警シリーズ好きです。
      特にエース二渡さんが大好きです♪
      ぴぃさん、はじめまして。

      わたしもD県警シリーズ好きです。
      特にエース二渡さんが大好きです♪
      2021/02/02
    • hinaさん
      地球っこさん

      初めまして。
      コメントありがとうございます。
      二渡さん、ほんの少しでしたが出てきていましたね!
      1作目からちゃんと読んでいこ...
      地球っこさん

      初めまして。
      コメントありがとうございます。
      二渡さん、ほんの少しでしたが出てきていましたね!
      1作目からちゃんと読んでいこうと思います。
      2021/02/03
  • D県警シリーズ第三弾。今回の主人公は婦警・平野瑞穂。連作短編だが、最後の話は少し長い。この話は意外なラストだった。

  • 陰の季節を呼んでいたら、FACEの登録漏れに気付きました。読んだのは1年くらい前か。婦警平野瑞穂巡査の活躍で面白かったです。

  • 男性社会での女性警察官の奮闘物語。ミステリーとしても要素も結構あったし面白かったかなー。

  • 再読。旅のお共として。第三の時効に続き、一気読み。面白かった。『共犯者』は多分何かのアンソロジーで読んだんだと思うけど、記憶にあった。もう20年も前に書かれた本だから、婦警への扱いも良くなっているとは思うけど、やっぱ厳しいんだろうな。姫川シリーズにせよ、女性刑事ものが流行ったとはいえ。ほんと、仕事って何なのかと思う。よく続けられると思う。早々に降りる私には信じられないというか、やっぱ罪悪感のようなものは感じるよなぁ。

  • 男性警官がのたまう女性蔑視の言動に言い返したいもやもやにさいなまれつつも、面白く読めた。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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