射ちょう英雄伝 1 (徳間文庫 き 12-11 金庸武侠小説集)

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  • / ISBN・EAN: 9784198922719

感想・レビュー・書評

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  • 金庸氏の武侠小説は、大好きな小説家・墨香銅臭さんが影響を受けられたということで読んでみたかったんだよね。
    まずは「射鵰三部作」の第一部『射鵰英雄伝』(全5巻)から。
    雑誌『すばる』(2023.6月号)の佐藤信弥氏の論考〈『陳情令』のルーツ〉によると、墨香銅臭さんの『魔道祖師』は金庸氏の「射鵰三部作」の第二部『射鵰侠侶(神鵰剣俠)』(全5巻)、『笑傲江湖』(全7巻)へのオマージュが見て取れるということなので、これから読み進めていくのが楽しみだ。

    〈あとがき〉によると『射鵰英雄伝』の時代背景は、1127年、漢民族の北宋王朝が北方から攻めてきた女真族の金に滅ぼされ、南方に移り南宋王朝を成立させた時から、1234年、蒙古のチンギスハーンが金朝を滅ぼし、さらに国号を元と証した蒙古が1279年に南宋を征服するまでとのこと。
    本書で語られる大事件、たとえば北宋最後の皇帝、徽宗・欽宗親子の北方への拉致、和平派の姦臣・秦檜による主戦派の名将・岳飛の謀殺、金朝によるテムジン(のちのチンギスハーン)とオンカーンへの官位授与、テムジンと義父オンカーンおよび義弟ジャムハとの抗争などは、すべて歴史事実そのままだ。

    と、この辺りの(とは限らないけど)歴史は不勉強でちんぷんかんぷんなので〈あとがき〉をそのまま記したのだけど、わからないまま小説を読んでも全然問題はなかった。ストーリーに歴史の流れがうまく組み込まれているので自然と頭に入ってくるのだ。
    ただ、本書はフィクションなので、架空の人物がたくさん登場するし、各々の事件の関連や年代などはおおまかであるから、事実とは辻褄が合わない部分が出てくる。
    なので、本書は手に汗握る武侠世界を楽しむエンターテイメント小説としてワクワクしながら読むつもり。

    義兄弟の郭嘯天と楊鉄心は、ある日、全真教の道士・丘処機と出会い意気投合する。だが丘処機が去った後、官兵に襲われた郭嘯天と楊鉄は殺され、彼らの妻はそれぞれ別の人物に連れ去られてしまう。
    二人の妻の行方を追う丘処機は、途中で江南七怪の異名を持つ7人の武芸者と諍いを起こしてしまい、事態の収束を図るため風変わりな勝負を持ちかける。
    行方不明となった郭・楊両人の妻がいずれも身籠っていることから、彼女たちを見つけ出した後、産まれるであろう子たちをそれぞれが弟子にして武芸を授け、2人が成長した18年後に試合をさせて勝敗を決しようというのだ。

    6年後、江南七怪はモンゴルの草原でテムジン(チンギスハーン)の庇護下に置かれていた郭嘯天の息子・郭靖を見つけ出し弟子にする。一方の丘処機も金朝の王子(趙王の子)として育てられている楊鉄心の息子・楊康を捜し出し弟子とした。

    やがて18歳となった郭靖は、約束の試合を果たすべく中原へと旅立つ──


    少年の成長物語は好き。
    郭靖は不器用だけど義に篤くまっすぐな少年。主人公ね。
    もう一人の少年楊康は金朝の王子ですからね。ちょっと横柄で我が儘な感じ。まだ自分の出自に何の疑問も抱いてないよね、たぶん。
    彼らは運命の義兄弟なんだけど、今の時点では二人ともそのことは知らない。
    ただやっぱり運命なのか、試合の前に二人は出会ってしまう。で、その時のお互いの第一印象は最悪! さて、ここからどうやって絆が深まっていくのか楽しみだな。

    それから女の子たちね。郭靖の許嫁チンギスハーンの娘コジン。張家口で郭靖と知り合った黄蓉、それから楊康と郭靖のひと悶着の原因となった穆念慈。
    とくに郭靖とコジンと黄蓉ね。郭靖は自分と正反対の天真爛漫な黄蓉に魅力を感じているようだけど、でもまだまだ恋って感じじゃないね。コジンも黄蓉も男の子に守られるって感じではなくて、ぐいぐい郭靖を引っ張っていくようなタイプ。これからどうなるのでしょう。でも、まあ、武侠小説にときめきは求めるものではないかもね。

    とにかく個性的な大人たちが次から次へと登場するので頭の中はわちゃわちゃ。
    1巻はまだまだ登場人物たちの紹介を兼ねた序章みたいなものかな。それでも物語に勢いがあるので面白かった。
    2巻から少年たちの物語は本格的に広がっていくんじゃないかなとワクワクしてる。

  • 金庸作品で一番最初に出会い、最も好きな作品。
    怒濤の展開とワクワクハラハラドキドキが止まらない。夢中になって徹夜して読んだ。何回読んだかわからない。最高すぎる。
    そして、翻訳の岡崎由美さんが良い。翻訳によって面白さが全然変わる。
    そして副産物?中国人を理解できて腑に落ちた。

  • 中華系の人に人気がある武侠小説。そもそも武侠小説が何か知りたくて、知名度の高さと入手性で金庸先を選択。結果 このジャンルは自分に合わないとわかった1冊

  • モンゴル勃興から南宋滅亡時代を舞台とする冒険小説
    中華版なので武狭小説とよぶ
    武狭小説というかその象徴らしい金庸作品の特徴は
    己を上に向かうという目標とそのための手段があって
    目的のない小池一夫作品のようなつくり
    例えば時代を動かそうという目的はなく
    あくまであるのは己のみ
    そのため登場人物はキャラクターであり筋書きはその場次第
    でありながら物語る手腕が強力に感じられるのがこの構造か

  • 義兄弟にしようと両親に決められた郭靖と楊康。
    しかし不運が重なり楊康は金国で、郭靖は蒙古で育つ。
    さらに二人は本人らの預かり知らぬ理由でそれぞれ全真教・江南七怪の武芸を教え込まれることになり、18歳になったら競い合うことになっていた。

    この巻では郭靖の18歳までを描き、様々な武林の徒が正も邪も入り混じって登場します。
    もはや怪物である武林に対し、蒙古の英雄テムジンとその部下の武勇は爽快です。
    その蒙古人の中で磨き上げられた郭靖の強さと真心は、もつれた運命の先にいる義弟・楊康とどう繋がるのか。
    次巻が楽しみです。

  • 【中国、香港、台湾を始め中華世界に十二億人の読者を持つ超人気
    作家、「西のトールキン、東の金庸」と並び称される】
    …とかなんとかの金庸先生の初期代表作。
    中華系の方と話す機会があれば、知っていて損がありません。
    …多分(笑)

    ジャンルとしては、中国のチャンバラ風時代劇なので
    男性向きだと思います。

    宋の時代という設定をうまく生かし、色々な民族が登場
    したり、歴史的な事件と関連があったりで、楽しく読めました。

    基本的には主人公の成長物語+格闘なので、かつて少年誌
    を読んでいた人にオススメです。

  • もう既に何度読んだかわからないくらい、一番好きな武侠小説。
    テンポがよく、登場人物が魅力的。
    全5巻のうち、第3巻(桃花島の花婿対決する)あたりが一番面白くて好きです。
    主人公の郭靖の鈍臭いながらも実直な人柄、少々勝気がすぎるが才能豊かな黄蓉。
    この二人の未熟さが可愛らしく、それぞれに成長していく姿を通して物語を一気に読ませてくれる。
    何と言っても四人の達人が最も盛り上げてくれる存在で、特に西毒が好きだなあ。
    みんな愛すべきキャラクターとして描かれているので、
    読み終わった後の気持ちが清々しく、英雄伝というタイトルも納得。
    じっくり読むほど細かい部分の面白さが感じられて何度でも読みたくなる、金庸の武侠小説では一番オススメの作品。

  • ドラマは見たことがあったが、小説では初めての金庸。
    武侠小説だがモンゴルに舞台が移るなど、内功がどうのという話がなかなかでてこず焦れったかった。

    読み終えて、ただのアクションバトルではなくて人情やユーモアなど、物語の面白さの詰まった作品だなと感じた。

  • 2002年のドラマを見ていたので、いかにドラマが作品に忠実に作られていたかを知った。

    当然のことながら、小説はさらに深く、細かく描写されている。
    圧倒的な人物描写。
    登場人物は必ず一癖あって、まともな人物がいない。

    とても素晴らしい人物かと思えば、あまりにもまっすぐ過ぎて行く手を阻んでしまう・・・など。

    ちなみにワタクシが好きなのは、老顔童です。

  • この本で金庸作品を知りました。
    一気に読めて、とても好きです。

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著者プロフィール

金庸(きん よう, Jin Yong)
1924年3月10日 - 2018年10月30日
中国の小説家。香港の『明報』とシンガポールの『新明日報』の創刊者。武俠小説を代表する作家で、本名は査 良鏞。1955年の『書剣恩仇録』から1972年『鹿鼎記』まで、15作の武俠小説を書いた。その多くは本国で映像化されており、日本でも紹介されている。徳間書店が版権を全て買い取り、翻訳を刊行している。

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