ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 (徳間文庫 い 17-10)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198925079

感想・レビュー・書評

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  • 「ユダヤ教」から「キリスト教」が生まれ、キリスト教から「イスラム教」が生まれる。従って、この3つの宗教は兄弟関係にあり、神は創造神であるという点で同一ということになる。しかし「一神教の原理の中では、お互いの正義が違うために殺し合う。つまり、生命尊重の原理よりも正義が優先し、正義が優先するゆえに殺し合うことすら起こっている」のである。この現実に対して、この著書で紹介される宗教指導者による言い分が興味深い。いずれにも理性的な解釈、非理性的な解釈が併存していると感じる。面白いことに三者に共通しているのは「こちらは仲良くしたい。悪いのは相手側」という発想だ。これでは悲劇が収まるはずがない。

    三者の中で特に印象に残ったのは、イスラム教の言い分である。「イスラム教は、こんなに寛容な宗教だったのか」と。しかし、同時に目から鱗が落ちた。世界の中で起こった悲劇が、ある時には政治の問題として取り上げられ、ある時は宗教の問題として取り上げられているということだ。そこにはひとつの傾向(意図)が読み取れるからである。
    つまり、キリスト教の信仰がかかわっている場合は、宗教より政治の問題として扱われる。例えば、the Holocaust(戦時下でない1933年、民衆の合意によって始められた政策である。教会も助けなかった。背景にはユダヤ人によるイエスの処刑がある)やイスラエル国家の建設(実は、イエスの再臨を望むキリスト教徒の利益が背景にある)が挙げられる。その一方で、イスラム圏の問題である場合は、政治より宗教の問題にすり替えられている。例えば、十字軍(実は、ローマ法王の権力回復と余剰兵隊対策であった)やオサマ・ビン・ラディン(実は、アメリカが作った怪物である。イスラム諸国との連携はほとんどない)が挙げられる。
    つまり、日本のマスコミから得る情報は、特にキリスト教と強く対立するイスラム教、イスラム圏の情報に関しては、必ずしもフェアでない可能性が高いということだ。それは、宗教だけでなくオイルマネー、つまりアメリカの利権が強く絡むからだ。従って、日本にとっての利権も絡む。
    結局のところ、宗教問題は常に政治問題と複雑に絡む。民主化すれば宗教の影響はさらに大きくなるからますます切り離せない。アメリカがいい例だ。

    この書を読んで、どの宗教が優れているかなど判断できないと感じた。ただ言えることは、ひとつの宗教を頑なに信じている人たちが悲劇を生み出していることだ。これは特に一神教に見られる傾向である。逆に言うと「多宗教」の日本人は、様々な宗教にも敬意をもって接することができるということだ。しかし決して誤解してはいけない。多くの日本人は「多宗教」ではあっても「無宗教」ではないことを。宗教に無関心であることは、時には信仰を持つ者に対する侮辱、挑戦と受け止められかねないから注意が必要である。他者の信仰に対してのリスペクトは忘れてはならない。これが、宗教に対する基本姿勢であるべきだと思う。

  • 甲府へ出張になったので、列車の中でしこたま読めるぞと思って、重たい荷物を更に重くして持っていったのだけど、体調優れず、結局、読み差しだったこの本だけ読了。
    昔、洋画が好きでそればっかり見ていた時期があって、その時から、こうした洋物の根にあるところを感じるには、宗教に対する理解が必要と思い、こういうジャンルにも手を染めていました。
    心の問題だし、私は「神を信じて神を頼まぬ(by星飛雄馬)」を標榜しているので、心底理解することは到底出来ないのだけど、知識として吸収するには、こういった本がお手頃かなと。
    しかし、まあ、何と話の噛み合わないこと。
    後半のそれぞれの宗教の代弁者と著者の会話の件りですが、そういうことが分かっただけでも非常に有意義。
    また、ここに出てくるような人たちによって世界が動かされているのだとしたらちょっと恐ろしい。。。

  • 20年近く前の本ですが、以前観た池上彰先生の某番組と併せてなんとなくのイメージができた気がします。世の中に多々存在するの争いごとの根源の一つに宗教が挙げられますが、信仰の違いで争いなんて…ホントは違うのかもしれません。

  • 自分が偏見を持っていたユダヤ教とイスラム教を、もう少し理解したいという興味を持てた。「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」後半のインタビューに怖そうなパットロバートソンが登場していたので読むことをやめようかと思ったが、全部読んでよかった。井沢さんの主張もすべてその通りではない、それぞれに正義がある、宗教問題とみせかけて実は権力者の欲望問題かもしれない、また日本人は行動動機に潔癖さを求めすぎるのでは…いろいろ疑問を持てた。ユダヤ人のタフさ、祖国を求める切実な感情と理由…他国を知ることで日本が少しわかる。

  •  三大宗教による壮大な兄弟喧嘩が、どれほど世界を混乱させてきたことか、慨嘆に堪えない。
     イエスを救世主としては認めないユダヤ教とイスラム教、その点で手を結べそうなものだが、これがそうも行かない。

     ユダヤ人の帰国事業を後援するアメリカの思惑は、聖書の預言を成就させてハルマゲドンを招来することにあり。←これをトンデモ説と一蹴できない。大真面目に「最後の審判」を待望するファンダメンタリストがアメリカの国政を左右しているようだ(映画評論家 町山智浩の主張でもある)。
     三大宗教のスポークスマンの顔ぶれを変え、10年おきに改訂版を出して頂きたい警世の書。

  • 宗教は難しい。情けないが一神論は馴染みがなく、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の歴史もちゃんと理解していなかった。ちゃんと宗教を理解しないとほんとうの世界情勢が見えて来ないと思う。

  • キリストを神と認めないユダヤ教、キリストによって新たな契約がなされ神とキリストと精霊が三位一体であると考えるキリスト教、キリストを預言者の1人と考えるイスラム教。。私の想像には限界があるけど、こういう知識はもっておかないと。

  • ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の成り立ちからそれぞれの意見や立ち位置、なぜお互いに争うのかがとても分かりやすく書かれている良書。これを読むと国際情勢の見方が変わる。

  • 第2部の各宗教の言い分は、(きれい事を言っているためか)それぞれになるほど、と思わせるところがあり、何が問題の本質なのか分からなくなってしまった。ともあれ、本書を読んでなるほどと思ったことは結構ある。
    ・新約聖書(マタイによる福音書)は、ローマ人のピラト総督はイエスを助けたかったがユダヤ人が磔にせよと求めたために十字架にかけられた、としており、これがユダヤ人が差別される要因になっているが、実はローマ帝国にキリスト教を布教したい弟子達によって都合良く書かれたものではないか、という著者の推測。
    ・差別されたユダヤ人には市民権がなく、土地所有ができず役人にもなれないため、当時は卑しい仕事とされていた金融業、芸能、マスコミや、資本も土地も要らない弁護士やジャーナリストなどの職業についた、ということ。
    ・「イエスの再臨」は、すべてのユダヤ人がイスラエルに帰還を果たしたあと、ユダヤ人がみなクリスチャンに改宗したときに起こることから、西欧諸国はユダヤ人のシオニズムを支援している。
    ・コーランなどには、アラーがユダヤ人を罰して猿や豚に変えた、とあることと、豚肉を食べない戒律が関係あること。
    などなど。
     「後書きにかえて」では、「「天国に行くため」表面的のみ他人に優しくするクリスチャン」に違和感を覚える旨の友人の記述があるが、計算ずくであっても他人に優しくできることはいいことだし、キリスト教の効用といえるようにも思う。ただ、親切の押し売りの裏に打算があると気づいてぞっとする気持ちもよく分かるような気がする。

  • イスラムは根本的に民衆の自由を認めません。
    聖書の時代に他の民族はユダヤ人をユダヤ人とは呼ばずに、ヘブライ人と呼んでいた。ヘブライとは向こう岸の人々の意味。
    ユダヤ人はなんで強いのか、それはやっぱり宣伝効果であり、お金です。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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