燃えた指 近い昔のミステリー (徳間文庫)

  • 徳間書店 (2008年7月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198928131

みんなの感想まとめ

敬老談話会を舞台に、じいさんやばあさんが中学生に語る思い出話が織りなす、意外性に富んだ短編ミステリー集です。表面上はレトロでほのぼのとした雰囲気を持ちながら、各短編は強烈な刺激を伴うテーマを扱っており...

感想・レビュー・書評

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  • なんともはや……惨憺たる出来映え。読んでいて怒りは湧いてこない。ただただ哀しく、むなしくなる。
    高校教師の占部詩乃は生徒からの発案で老人の昔話を聞く敬老座談会を創設する。それは謎めいた不思議な話ばかりで……。
    徳間文庫のカバーは岩郷重力+WONDER WORKZの写真とデザイン。

    晩年の作品なのだしたいした謎がないのは仕方ないのかもしれないけど、それにしたっていくらなんでもしまりがなさすぎる。盛り上がらず始まり、盛り上がらず続き、盛り上がらず終る。三無主義だ。読後感は、無。暴投ではなくそもそもボールを投げていないような感覚。クリスティーでいえば『ビッグ4』ではなく『運命の裏木戸』の味だ。
    そしてかつてないほど日本語お小言コーナーが多い。「密着と直撃」に至っては36頁中お小言に18頁を費やし肝心の昔話は8頁のみで、一体何を読まされているのだろうという気持ちになってくる。刊行年の近い『事件の年輪』は懐旧談と推理小説を見事に融合させていたというのに……。
    本書には「困った老人」という短編があるけれど、まさに困った老人による困った小説。なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ。読んでいて怒りは湧いてこないとは書いたが、こうして書評を書くために調べものをしていたらやはり怒りが湧いてきてしまった。

    「燃えた指」問題小説2005年11月号
    あらすじを書こうとして、手か止まった。どんな話だったっけ?しぶしぶ読み返してはみたものの、話に起伏がないので何が本筋なのかつかみづらい。戦後すぐ駆け落ちした話と戦時中の勤労動員で指を失くした話、かな。佐野さん、後者は「某液体兵器」(1971)の使い回しでしょ。
    本書は日本語お小言コーナーが多すぎるので全て紹介はしないけれど、ひとつだけ。
    「先生、部活の顧問になってもらっていいでしょうか?」
    「ちょっと待ってよ。あなたの日本語、ちょっとおかしいわ」
    「あ、すみません。ふだん、部活動のことを略して部活と言っているもので、ついそれが出てしまって」
    「そうじゃないの。部活くらい、あたしだって知っているし、それを咎めるほど野暮じゃないわ。あたしが言ったのは、『顧問になってもらっていいでしょうか?』の方なの」
    「ああ、『なっていただいて』というべきでした」
    「まあそうね。いただいての方がベターだけど、あたしは『何々してもらっていいでしょうか』という形に馴染めないのよ。もともとは、英語で『メイアイ』のあとに動詞を持ってくる形から来たんだと思うけれど、そんな持って回った言い方ではなく、『部活の顧問をお願いしたいのですが……』あるいは『部活の顧問になって下さい』でいいのじゃない?」
    「わかりました、部活の顧問になって下さい」
    なんて不自然で持って回った会話なんだろう。特に「ふだん、部活動のことを略して部活と言っているもので」がツボ。2005年の高校生が教師にこんなこと言うか!あまりにもあんまりな会話に笑えてくる。
    この敬老座談会、生徒が性的なことをあけすけに聞きすぎるのも違和感がある。さすがに失礼だろう。生命力のない石坂洋次郎のようだ。

    「幼い友情」問題小説2006年2月号
    幼稚園の園長が語る、子供の頃の友との別れ。話に起伏がない。

    「困った老人」問題小説2006年5月号
    困った老人が語る、少年時代の軍人の妻との交流。盛り上がらない。

    「言葉の研究」問題小説2006年8月号
    女性が性知識から遠ざけられていた時代の話。つまらない。

    「伯父の遺贈本」問題小説2006年11月号
    伯父がくれたのは戦後にベストセラーになる『完全なる結婚』の原書だった。つまらない。

    「誘拐恩人」問題小説2007年2月号
    貧困に苦しんでいた友人の失踪した。良い大人に誘拐されたのではないか。退屈。

    「一輪の友」問題小説2007年5月号
    疎開の頃の竹馬の友の思い出。前置きが長すぎて面白くないなあ。高校教師が竹馬を知らないなんてことあるかしら。

    「密着と直撃」問題小説2007年8月号
    空襲での後悔。延々と続く日本語お小言コーナーに辟易。さすがにひどすきる。

    「鯨の逆立ち」問題小説2007年11月号
    鯨というあだなの教師が生徒につけたあだなは……。退屈。

    解説は郷原宏。覚悟していたがやはり最悪。内容なない文章をだらだら続ける。佐野洋にはご当地ミステリーが一篇もないなどというとんでもないデタラメを書いていて啞然。北海道が舞台の小説いっぱいあるでしょうが!あの苦痛な日本語お小言コーナーも郷原宏にかかれば「読者はメンバーのおしゃべりを楽しみながら、居ながらにして正しい日本語を身につけることができます」となる。なるほどこういうゴマのすり方もあるのね、とある意味感心。

    「燃えた指」E
    「幼い友情」E
    「困った老人」E
    「言葉の研究」E
    「伯父の遺贈本」E
    「誘拐恩人」E
    「一輪の友」E
    「密着と直撃」E-
    「鯨の逆立ち」E
    郷原宏の解説 E
    『燃えた指 近い昔のミステリー』E

  • 舞台は敬老談話会。じいさん、ばあさんが若かりし頃の思い出話を中学生に語るというもの。昭和感漂うレトロでゆったりほのぼのとしたものかと思いきや、9つの短編はどれもこれも強烈な刺激臭を放つ。手淫、自涜、ザーメンに誘われる猫。ミステリーの意想外に驚き、夫婦間や師弟間のヒューマンドラマを楽しんだ。あちらこちらに言葉の解説が施されており、ちょっとした国語教室にもなっている。正しい日本語も学べ、一石三鳥のお買い得感があった。

  • (収録作品)燃えた指/幼い友情/困った老人/言葉の研究/伯父の遺贈本/誘拐恩人/一輪の友/密着と直撃/鯨の逆立ち

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著者プロフィール

佐野洋(さの・よう):1928-2013 推理作家。昭和3年5月22日生まれ。昭和28年読売新聞社入社。33年「銅婚式」が「週刊朝日」と「宝石」共催の懸賞小説に入選。翌年「一本の鉛」を発表し,作家専業となる。40年「華麗なる醜聞」で日本推理作家協会賞。48年-54年日本推理作家協会理事長。「透明受胎」「轢(ひ)き逃げ」など,斬新な着想による本格推理に定評があり,平成10年第1回日本ミステリー文学大賞。21年菊池寛賞。著作はほかに「葬送曲」「推理日記」シリーズなど。平成25年4月27日死去。84歳。東京出身。東大卒。本名は丸山一郎。

「2023年 『見習い天使 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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