連合赤軍物語 紅炎 (プロミネンス) (徳間文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198933135

作品紹介・あらすじ

「革命」という言葉が日本で現実感があった1960年代後半、全国各地で革命運動に燃えた多くの若者たちがいた。やがてキューバ革命にシンパシーを感じていた「赤軍派」と毛沢東に強く影響を受けた「革命左派」が接近、「連合赤軍」を結成。波瀾の運命へと突き進んでいく。アウトローノンフィクションに定評のある著者が描く渾身の青春群像巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • 昔、公園を歩いていたら、宗教に勧誘された事がある。輸血が禁止されている事で有名な宗教だ。公園のベンチに腰掛け勧誘が始まる。勧誘するおっさんは、「今、この世界は、どんどんキナ臭くなってきています」(当時はアメリカがイラクを攻めようとしてた時期だった)という言葉を皮切りに、「平和」について説いてくる。おっさんをひとしきり喋らせ、適当に頷き、気持ち良くしてやった所で、俺は、「ごーまんかましてよかですか?」と言わんばかりに小林よしのりの「戦争論」の受け売りの知識で応戦。やがておっさんのイエズス会的な布教仲間も加わり(その仲間がジュースを差し入れてくれた)、更に「平和」「命」とかの美しい言葉 VS 「八興一宇」「大東亜共栄圏」「神風特攻隊」といったウヨッキーな言葉の攻防戦、当然話は平行線で噛み合わず。その後、度々その公園でおっさんやその布教仲間と出くわし、挨拶などは交わしたが、二度と布教される事はなかった。俺のウヨッキーな考えに、おっさんとイエズス会はひいてしまったのだと思う。

    そんな時代もあったのに、ここ数年は、サヨッキーな本ばかり読んでいる。本屋でサヨッキーな本を見つけ、それを購入し、家に向かう時のときめき、それは、原っぱでエロ本を見つけ、鞄や上着の中に隠しチャリをぶっ飛ばして家路へと急いだ少年時代と同じときめきなのだ。
    どうでもいいや。で今回は、「連合赤軍物語紅炎」。正直、辟易した。インテリ学生らしくなんだかんだの小難しい言葉や理屈を並べてる割には、連合赤軍って、馬鹿な奴らだなぁ、というのが正直な感想だ。あまり連合赤軍等を知らなかった頃は、昔の学生運動に対して、「今の若者の政治への無関心さから比べたら、政治に対する熱意だけでも評価すべきでは」と思っていたが、これを読み終えた今は、そんな気持ちは全くなくなってしまった。

    そんな気持ちになったいくつかのエピソードをざっと挙げていく。

    ・赤軍派がよど号ハイジャック後、打ち出した作戦、ペガサス作戦は、要人を誘拐して人質にとり、逮捕された赤軍元リーダーの塩見孝也を奪還、人質と交換時に政府に用意させた飛行機で、塩見は中国に渡り、毛沢東をオルグし、世界赤軍党の党首となる。他にブロンコ作戦という、アメリカに渡ってペンタゴン突入、日本で霞ヶ関占拠、彼らは、そんな事を大真面目に考えていた。

    ・民間の銃砲店を襲撃し銃を奪取する計画の際、メンバー間で問題になったのが正当性、毛沢東の、「人民のものは針一本、糸一筋も盗らない」という言葉に背くのではというのが問題に対して出した彼らの意見、「銃は、革命戦争後に、銃砲店に返す」、「鉄砲店は警察権力と一体化しているので、その末端機関とみなすべきだ」

    ・仲間への総括という名のリンチの理屈は、「殴ることは指導である。殴って気絶させる。気絶から目覚めたときには別の人間に生まれ変わって共産主義化を受け入れるはずである」

    ・総括で絶命直前に「もうダメだ!」と叫んだメンバーの死に対して、「『もうダメだ!』という最後の言葉は、もう革命戦士になる気力すらないという絶望が彼の心を支配した表れである」

    ・ある文学好きのメンバーが高橋和己など敗北の文学を好んでいたことが「女学生的」と、総括の対象となった

    等々、馬鹿らしくて、陰湿でおぞましい話のオンパレードなのだ。

    大体、当時の日本政府が、革命で転覆しなければならない程の独裁的な圧政を行っていたとは、思えないのだ。また彼らの日本語にすらなっていない難しい言葉を並べた屁理屈やずさんな作戦は、革命を起こす必要性を彼ら自身が実感として感じていない事に起因しているのではないだろうか?

    世界を変える前に、てめぇらの頭の中を変えろっつーの、とツッコミたい。
    連合赤軍、今回のでもう懲りた。まあ、山本直樹の「レッド」は、今後も集めるけど。と、なんだかんだで、共産趣味(あくまで「趣味」である事は、強調しときます)は、変わらないのである。

  • やっぱいつも通り人物がしっかり書けていて入り込めた。けど俺は彼らを含めた当時の学生運動は全く賛同できないす。

  • 赤軍派初期のころは目をつけた学生の夜警のバイト先に夜毎現れてオルグするなどという少し牧歌的で笑える話もあるが、徐々に陰湿になり最終的には山岳ベースでの大量リンチ殺人を犯すまでになる.集団が暴走しだすとリーダーがまちがっているとみんな思っていても何故誰も声をあげられないんだろう.こういう実話を読むといつも疑問に思う.

  • 自分が生まれる前の出来事で実感がわきません.なんでこんな事件が起こったのか...

    閉じた世界での人間の発想ってとても怖いと思います.
    今,いじめのニュースが大きなニュースとして取り上げられていますが,閉じた世界を作らせずに,に周りが絶えず意見を言える環境を作ることが大事なのかなと思いました.

  • 連合赤軍の本。
    視点がフラットなのがいいです。森や永田を悪者としたり、想像で彼はこう思ったのに違いないと性格を決めつけたりしないで、調査した事実を書いていく感じ。事件のメインじゃない、ひとりひとりの人間の生き方や考え方にも焦点をあてていて、なるほどと思います。
    前半は(例によって)退屈だけど、連合赤軍を読み解くには、その前の、日本赤軍やよど号ハイジャック、革命左派の話から知らないとダメなんですね。
    一見、大きいことを言うけど行動がともなわなくて細部の甘い赤軍、真面目すぎて極端に走る革命左派。リンチ事件は派閥争いの結果でもあったわけなんですね。
    それに、森と永田の性格が合わさり、自己犠牲の覚悟があるほかの党員たちが準じてしまった……という経緯が、ささいな会話や事例からわかります。
    とらえられたあとの森と獄内ですれ違った人が、森との思い出を語るくだりが切なかった。
    文章がややこなれてないところと、末端の兵士の思考をもうちょっと掘り下げて書いてもらいたかったという思いがあって、☆一つ減。

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著者プロフィール

1953年山形県生まれ。法政大学卒業後、フリーライターとして活躍。『ヤクザに学ぶ』シリーズなど著書多数。近著に『伝説のヤクザ18人』(イースト・プレス)、『爆弾と呼ばれた極道 ボンノ外伝 破天荒一代・天野洋志穂』『サムライ 六代目山口組直参 落合勇治の半生』(徳間書店)、『実録 赤坂「ニューラテンクオーター」物語』(双葉社)、『高倉健からアホーと呼ばれた男 付き人西村泰治(ヤッさん)が明かす――健さんとの40年』『最強武闘派と呼ばれた極道 元五代目山口組若頭補佐 中野会会長 中野太郎』『力道山を刺した男 村田勝志』(かや書房)がある。

「2023年 『東映任俠映画とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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