あるキング (徳間文庫 い 63-1)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198935870

作品紹介・あらすじ

弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求。“王が求め、王に求められる”ようにと名づけられた一人の少年は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常ともいえる情熱を彼にそそぐ。すべては「王」になるために――。

感想・レビュー・書評

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  • 貫き通すと妬まれもするし、賞賛もされるし、自分がどうしたいか。

  • 久々?伊坂幸太郎作品。
    著者あとがきに『いつも以上に、自分の好きなように書く』とありましたが私にとっては読みやすく楽しめる作品で、内容に何かを求めるでもなく、野球好きだからかすんなり入って来た感じでした。准えが上手いなあと感心し、全てフィクションの中ではあるものの天才野球選手のストーリーって胸熱なんですよ。野球好きだから笑

  • 解説にもある通り、いつもの伊坂幸太郎作品とはテイストが異なる作品でした。マクベスを読んでみたくなったな〜。
    王求に降りかかる不幸が切なかった、、、。

  • 文庫版の裏表紙に記載された、“この作品は、いままでの伊坂幸太郎作品とは違います”との文言が気になる本書。
    とある天才バッターの数奇な運命が描かれております。

    “常敗球団”・「仙醍キングス」の熱烈なファンである両親の元に生まれた、山田王求(おうく)。
    類い稀な才能を持つ王求に、両親は情熱を注ぎこみますが・・。

    “出る杭は打たれる”と言いますが、王求の場合は突出しすぎて、周りがドン引きしているような状況です。
    故に、孤立しがちではあるのですが、王求自身はすべてを野球に“全振り”しているので、常に淡々としてブレずに自分軸を貫いている様が、ある意味凄みを感じますね。
    このように、とんでもない才能を持った彼であるのに、王求の運命は何とも皮肉な方へ展開していきます。
    その話の進め方が巧みで、読みやすさもあり、サクサク進みます。ラストは切なかったですが、独特の余韻が残るものでした。
    因みに、『マクベス』の〈フェアはファウル。ファウルはフェア(良いは悪い。悪いは良い)〉という台詞が全体的なキーワードとなっているのですが、この物語は悲劇でもあり、喜劇でもあるのかな、と思った次第です。

  • 2021(R3)5.4-5.11

    前作『モダンタイムス』と打って変わって、サラッと読み終えた。
    この「サラッと」感が、いつもの伊坂作品らしからく、そしてあまり深さを感じない理由であると思った。
    それはなぜか?
    『マクベス』なるシェイクスピアの作品を全く知らないから。
    自分の読書力の無さゆえの感想でした…。

    野球の天才の伝記みたいな物語。全体的に不思議な感じがした。
    それはなぜか?
    『マクベス』なるシェイクスピアの作品を全く知らないから。

    でも知らなくても十分楽しめる。それは間違いない。知っていたらもっと楽しめるのだろう。

  • 天才野球少年と3人の魔女。誰の心にも魔女がいるかも。フェアはファル、ファルはフェア。綺麗は汚い、汚いは綺麗。光と闇、闇と光。見方によって物事の良し悪しは変わる。人に良くても魔女には悪い。魔女に良くても人には悪い。マクベスを題材にした、天才野球少年の数奇な運命でした。ありそうでなさそうなお話。

  • 完全版が出ていたことは、たった今、登録するために検索して初めて知りました。少々勿体無いことをしたのかもしれませんが、古本市で偶然出会ったのだから仕方ありません。それに装丁も素敵なので満足です。そんなわけで古本市で一冊、と思ったときに目に入って。野球の話であること、フェアとファールの境界線という言葉がキーワードになっていること、などわくわくさせられる要素が満載とみたので、これだ、と。
    伊坂さんといえば、ゴールデンスランバーでこてんぱんにやられた(=物語とはそういうもの、オチは色々、と分かっているものの、私に言わせると救いの無い最悪なオチにへ心底凹まされた)のですが、どうもこの作品は一味違うとのことで、武装しなくても大丈夫かな、と思いながら読み進めていました。割と早い段階で感付きはしましたが、やっぱり武装は必要でした。誤解のないように、私は伊坂さんの作品が嫌いなわけでも苦手なわけでもなく、だからこそ読むわけですが、この手のオチは毎回新聞とか障子とかを衝動的に破りたくなる位ムカムカするほど腹立たしくなってしまうし、そんな破壊行動を犯したところで満たされるわけでもないに決まっているし、要するにやりきれないので、それだけが辛いのです。不都合な現実を見なくてもいいのに見てしまった、と。でもやっぱり見ないといけない、みたいな。
    来ないで欲しいと願ったオチの苦味が今は口に広がっていますが、それ以外にもご両親のライン際の愛情であったり王求に対する世間の目線、殺人者の子供の活躍が社会の秩序を保つのに「なんとなく」不都合だと感じてしまう人間の性など、心臓を直に掴まれたような気分になる話が沢山あります。罪だとか罰だとか、ということについては日本社会独特のものが絶対あるのだろうな、とふと思います。そういう概念は日本においてはふわふわとしていたものであったり、元は無くて外から制度としてやってきたものであったりするがゆえに、一点に留まらず周囲に滲んでいったりするのでしょう。ケガレの概念寄り、みたいな。哀しいな、と思う一方で、自分はどうなんだ、と。割り切ることは出来るのでしょうか。ここからはフェア、ここからはファール。むしろ、何なら、誰が何の権利があって線を引いたのか。最終的には哲学的な次元で考えざるをえないし、そういう次元の問題を問うてきているのがこの作品の強烈なところだと思っています。そもそも、そういうキーワードだったからこそ惹かれたのです。
    最後に、解説が柴田元幸さんなのも忘れてはいけません。解説を読むだけでもお腹いっぱいになってしまう書き手は他にそう沢山はいないものです。

  • 伊坂作品を出版順に読んでいる僕は、書いてある通り、初めての感覚でした。

    特に伏線もオチもない、野球の物語でした。

  • 英雄及び覇者はいつも後に残る大きな出来事を残すが、短命である場合が圧倒的に多いと思う。
    突出した才能を妬み、妨害する社会と戦うだけで疲れてしまうのに、それを乗り越えたあとも、批評、批判、嫉妬による陥落を願うものと戦う必要がある。
    王は一人ゆえ孤独。世渡りの上手い理解者と運をつかむラックも必要とする。
    ただ、王求は相手を必要とするスポーツの中で、研究者のようにひたむきに野球と向き合っている。これを読むと英雄になることは決してちやほやされるだけではなく、生き抜くために覚悟はあるか?と聞かれている気がする。

  • プロ野球が始まりますね。

    伊坂幸太郎って、野球派かサッカー派と言えば、間違いなく野球派だよね。それは、この作品が野球をテーマにしているからだけではなく、今まで「ポテチ」とか、「逆ソクラテス」とか言う中篇を読んで来て思うことである。

    此処に出てくる「仙醍キングス」は明らかに楽天イーグルスをイメージして描いている。万年最下位チーム、それをもはや恐れることすらなくなったオーナーや選手たち。そんな中、いずれチームの救世主となるべく生まれた山田王求の半生がこの作品の内容である。単行本の発行が2009年、文庫本は2012年。まさか伊坂幸太郎も1人の優秀な監督と天才投手を迎えて、楽天がリーグ優勝までいくとまでは、想像していなかったのだろう。

    同時に、伊坂版「マクベス」ではなく、「マクベス読本」になっている。木下順二の「マクベス」を愛読して来た私にはとても嬉しい内容だった。

    伊坂幸太郎は、マクベスを持って来てもなお、主人公の手を血で汚しはしなかった。そこに、私はこの作家を読み続ける動機を確認するのである。
    2014年3月15日読了

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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