本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

  • 徳間書店 (2013年6月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784198937065

感想・レビュー・書評

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  • 言葉で人を幸せにできる、時に勇気を、時に感動を与えることができるスピーチライターという職業に焦点をあてた作品。

    物語に、数々の言葉に、どっぷり、がっつり、惹き込まれた。

    言葉の持つ力が存分に描かれていて、普段のコミュニケーションにも活かせる内容に魅了された。

    まだ本作品に触れてないのであれば、是非とも読んでほしい。久々にそう思える本に出逢えた。

    • akodamさん
      yyさん

      こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      yyさんのレビューは、いつもとても本への愛情が伝わってきて、勝手に好感を持たせてい...
      yyさん

      こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      yyさんのレビューは、いつもとても本への愛情が伝わってきて、勝手に好感を持たせていただいております。

      本棚を拝見すると、原田マハさんの作品も多いことから、きっと本作品もご堪能いただけるのではないかと思います。

      これからもよろしくお願いいたします^ ^
      2021/07/05
    • 和坂林太郎さん
      僕も読んでみたいです。スピーチライターとい職業気になります。
      僕も読んでみたいです。スピーチライターとい職業気になります。
      2021/07/22
    • akodamさん
      和坂林太郎さん

      こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      スピーチライターと言う職種の苦労と魅力がふんだんに描かれているとともに、言...
      和坂林太郎さん

      こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      スピーチライターと言う職種の苦労と魅力がふんだんに描かれているとともに、言葉のチカラを感じずにはいられない作品だと私は受け取りました。

      是非ともご一読ください!
      2021/07/22
  • 通勤電車で読むには涙が次々溢れてくるので危険。六曜に関係なく気にせず毎日が良きお日柄であります様に!

  • そうなんだ。聴きたかったのは、生きている言葉なんだ。心からの言葉はどんな飾りもいらなくて、まっすぐに心地よく全身に着地するもの。どうしようもなく疲れた時はまたこの本を手にしよう。言葉を大切にしたい気持ちを確かめよう。乾いた心を潤すのはやはり言葉の力なのだから。

  • 『えー、ただいまご紹介にあずかりました、さてさて でございます。厚志君、恵里さん。このたびは、ご結婚おめでとうございます』。思い出したくない過去というのは誰にでもあると思います。思い返せば数年前、上役のピンチヒッターとして有無言う間もなく急遽振られた披露宴の挨拶の代役。新郎主賓の素晴らしい挨拶、会場を包みこむ拍手の嵐。その後、名前を呼ばれマイクの前へと進んだ私。直前に『人』と手の平に書いて飲み込もうが、何十という目が自分だけを向いているのを目にした瞬間、頭は真っ白。その後の記憶なく、封印すべき過去として自分の中に残った人生の汚点です。そして今手にしたこの作品冒頭の『スピーチの極意 十箇条』を読んで蘇る苦い記憶。『一、スピーチの目指すところを明確にすること』(例文をつぎはぎしました…汗)。『ニ、エピソード、具体例を盛りこんだ原稿を作り、全文暗記すること』(メモを見ながら棒読みしました…汗)。『三、力を抜き、心静かに平常心で臨むこと』(全身硬直、頭の中は真っ白…涙)。…と、この作品をもっと前に知っていればという悔悟の念しかありません。
    まあ、気を取り直して。

    『製菓会社の総務部勤務のごくフツウのOL』という二ノ宮こと葉。その名前は『中学生の国語の教科書に作品が載ってしまうような著名な俳人』の祖母が付けたもの。作品は、そんな こと葉が披露宴に出席している場面から始まります。『新郎の厚志君は、私の幼なじみだ。生まれてずっと、親戚同様に家族ぐるみでお付き合いを続けている』という二人。『その立派な男の大切なクライアントのスピーチの真っ最中に、寝ぼけてスープ皿に顔突っこんだ私』という大失態をした こと葉。反省する こと葉の前で次は厚志の友人という女性がスピーチに立ちます。眠気など無縁のそのスピーチ。『披露宴の締めに行ったスピーチの、鮮やかなことといったら。電光石火、理路整然、軽妙洒脱、拍手喝采、私は号泣』という鮮烈な忘れ難いインパクトをこと葉に与えます。『こうして、私は出会ったのだ。「言葉のプロフェッショナル」、スピーチライター、久遠久美に』。この運命的な出会いをきっかけに こと葉は言葉の持つ力に、そしてそれを自在に操るスピーチライターという仕事に魅力を覚え、久美の事務所に通うことで、スピーチライターの仕事に深く関わっていくことになります。

    作品は大きく前半、後半に分かれます。前半は、こと葉がスピーチライターという仕事を知り、その世界に魅かれていく段、そして作品の後半では、こと葉が久美とともに『政権交代』を叫ぶ野党・民衆党のスピーチライターとして選挙運動に関わっていく姿が描かれます。もちろん、前半にもそれを匂わす伏線が幾つも見られますが、印象としては連作短編を読んでいるのに近い印象も受けました。思えば今まで、街頭の選挙演説を目にする機会があってもただ行き過ぎるのみで、ニュースでそれを目にしてもあまりピンと来ることがなかったように思います。それが、この作品中の こと葉が携わったスピーチには心動かされるものがありました。もちろん、小説の世界のことなので、だからどうということはもちろんありませんし、特に現実の政党名は思い浮かべない方が作品世界に入っていけると思います。

    そして何よりもこの作品は、スピーチライターという職業に光を当てた作品らしく、全編に渡って言葉へのこだわりがとても強く感じられました。ただ、そこで紡がれる言葉は本来、スピーチとなって耳に届くものです。スピーチであれば、その話し方で抑揚をつけたり、身振り手振りを加えることで元の言葉が持つ意味を聴覚と視覚の総合力で相手に伝えていくことができます。でも、この作品が『本』という形で私たちの目に触れる限りはそれを文字で伝えるしかありません。原田さんは、それを漢字とひらがなの絶妙な使い分けをすることで、その抑揚が読者に伝わるよう工夫されていると感じました。例えば次の二つのスピーチです。まず一つ目、『ふたつの人生をひとつに重ねて、いまからふたりで歩んでいってください。たったひとつの、よきもののために』。二つ目、『日本は、あなたがたおひとりおひとりのものです。あなたがたおひとりおひとりが、この国の主権者であり』、とひらがながとても目立ちます。もちろん、固有名詞など漢字が相応しいものは漢字が使われていますが、ここに挙げた箇所など、文字で読んでも、ゆっくり、やさしく、ていねいに語りかけるような話し方が自然と頭に浮かびます。こういう読み手への配慮、そして各場面の細かい人物と情景の描写もあって、文字を読みながらも実際のスピーチの場面が見事に浮かび上がってきました。

    また、言葉に重きを置いた作品らしく、全編に渡って心に強く響く印象的な言葉が数多く登場します。中でも印象に残った、というより今まで目にしてきた言葉に比しても個人的に心を大きく揺さぶられたのが次の言葉でした。
    『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙が止まっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。だって人間は、そういうふうにできているんだ』、なんの心構えもしていなかったところにこの言葉がいきなり現れたこともあって、熱い思いが一気にこみあげるのを感じました。今、こうしてタイプしていても目頭が熱くなるこの言葉。この言葉に出会えたそのことだけでもこの作品を読んだ意味があったと感じています。

    本のレビューを書くようになって、私自身、言葉というものにとても敏感になっているという認識があります。この作品に出会って、言葉の持つ力、その力強さを改めて感じました。人が人である限り、そのコミュニケーションは言葉が主役です。人が言葉を生み出し、言葉が人を動かしていく。『あのひとが魅力的だから言葉が輝いているのか、それとも、言葉が魅力的だからあのひとが輝いて見えるのか、わからない』そんな風に思われるように、これからも言葉を磨いて生きていきたい。

    「本日は、お日柄もよく」、いろんなヒントをいただきました。ありがとうございました。

    • ☆ベルガモット☆さん
      さてさてさん

      はじめまして、あけましておめでとうございます。
      素敵なご自身のエピソード紹介から、愛情こもったレビューもとても読みごた...
      さてさてさん

      はじめまして、あけましておめでとうございます。
      素敵なご自身のエピソード紹介から、愛情こもったレビューもとても読みごたえがあります。私は友人の披露宴スピーチで「おめでとうございます」を間違えて「ありがとうございます」と言ってしまい、その場がえ?!となった経験があります、、、

      WOWWOWで比嘉愛未さん主演のドラマを観てとても面白かったので、原作があったと知って調べてみました。漢字とひらがなの使い分けとはすごいです。本でもまた違った感動がありそうです。
      今後も本棚参考にさせていただきます。
      2021/01/03
    • さてさてさん
      ベルガモットさん、コメントありがとうございました。
      結婚式のスピーチ、今思い出しても落ち込んでしまいます。やはり、緊張しますよね。何十という...
      ベルガモットさん、コメントありがとうございました。
      結婚式のスピーチ、今思い出しても落ち込んでしまいます。やはり、緊張しますよね。何十という瞳が一斉に自分を見るというのは…。

      原田さんのこの作品はとても参考になりました。また、巡ってくるか分かりませんが、万が一の時はこの作品を読み返そうと手元に大切に置いてあります。

      こちらこそ、ベルガモットさんの本棚参考にさせていただきます。小説しかない私と違って広範にお読みになられていて参考になります。

      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
      2021/01/03
  • 気持ち良い!素晴らしい作品でした。
    久々に先へ先へと止まりませんでした!
    電車の中で泣いちゃったなぁ〜。ネタバレしたく無いので載せませんが、自分の人生のノートに刻んでおきたい素敵な言葉が盛り沢山でした!!
    面接や大切なスピーチを控えている方、是非読んで!

  • 小説家が「言葉のプロフェッショナル」としてスピーチライターを登場させるのは、漫才師が自ら笑いのハードルを上げるような難しさがある。天才探偵ならば構成で誤魔化せるが、天才スピーチライターだと、スピーチの中身そのものが真に素晴らしいものでなければ、登場人物にそれを称賛させても、読者が評価しないと、「本の中の世界」に「本の外の世界」から共感できず、物語に入り込めなくなる。

    で、この小説は、そんなプロのスピーチライターを描くという難しいお題に挑戦した小説。スピーチの勉強にもなるし、ラノベ感覚で面白かった。

    棒読みでは心に響かないように、同じセリフでも、感情を乗せ、吃り、緊張しながらでも伝えるのが大事だと個人的には思う。美辞麗句をお金で買う、政治家のスピーチライターは虚業そのもので、本来は唾棄すべきとも思っていた。だが、見渡せば、世の中の会話はそもそもデコレーションだらけだったと、小説を読んで考えさせられた。

    言葉によって自殺してしまう人がいる。逆に言葉によって、また立ち上がれる人もいる。プロが言葉の装飾をするのだとしても、言葉には、魔力的な力が宿ることは確かだ。興味深い小説だった。

  • 覚えておきたい言葉。
    「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。」

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      素敵な言葉ですね!
      りまのさん
      素敵な言葉ですね!
      2020/10/28
    • りまのさん
      はい、素敵な言葉だと、思いました。昨日、下を向いて、歩いていたら、知り合いの人と、ばったりあって、自分が、下を向いていたことに気付き、顔を上...
      はい、素敵な言葉だと、思いました。昨日、下を向いて、歩いていたら、知り合いの人と、ばったりあって、自分が、下を向いていたことに気付き、顔を上げて歩こう、と、思いました。
      2020/10/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      「顔を上げて歩こう、と」
      うんうん
      りまのさん
      「顔を上げて歩こう、と」
      うんうん
      2020/10/29
  • サクサク読めるお仕事小説 スピーチが題材
    初めての原田マハ先生 ブクログで繋がってる方々の本棚に多い作者 なぜかエッセイストさん?と思い読んだことなく この本は評価も高そう 読んでみよう

    タイトルと最初のスピーチの極意十箇条 スピーチの話かな?
    挿入される代表質問 弔辞
    じっくりと同僚千華結婚式のスピーチを作り上げる話かと思ったらすぐに本番 おもしろい名前の人物
    こと葉のスピーチ 序盤100ページ以内で泣かされるとは
    後半は選挙選挙 ワダカマは今川陣営のサポートしてていいのか?最初と最後の久美さんがカッコ良すぎる!

    電光石火、理路整然、軽妙洒脱、拍手喝采、私は号泣。
    『静』のひと文字

  • 言葉の力、スピーチの力を一身に浴びました。

    物語冒頭の久遠久美の結婚式でのスピーチ。
    冒頭なので、結婚式、結婚する二人に何一つ感情移入できていない状態なのに、そのスピーチに魅せられ、笑い、感動しました。

    主人公はそんなスピーチに私と同じく魅せられた二ノ宮こと葉。スピーチライターの久遠に弟子入りし、友人の結婚式でスピーチを行い、それをきっかけに、日本の政治を動かすことに・・・
    といったあらすじ。

    作中に登場する数々のスピーチに心を動かせられました。言葉をうまく操ることができたら、人の心を動かせるし、世の中も動かせる。
    世の中を動かすなんて私にはできませんが、せめて近しい人の心を動かすことができる人にはなりたいと思いました。

    • アールグレイさん
      こんばんは★ オミさん!
      昨夜はフォローバックを頂き
        ありがとうございました!
      私は図書館派です。・・・・「ババヤガ」は8...
      こんばんは★ オミさん!
      昨夜はフォローバックを頂き
        ありがとうございました!
      私は図書館派です。・・・・「ババヤガ」は80番代になってしまい、早く読みたくて購入しました!この本は、図書館本で読みました。でも、返したくなくなったことを覚えています。本棚拝見しました!私の推しの青山美智子さんが・・・・もっと、下の方にあったのでしょうか?
      レビューですが、99%!!拍手~!
      私はブクログを始めたばかりの頃
      は、☆だけでしたが今はレビューを書いて、読了と考えています!
      しっかりレビューを上げる方、
      好きです!遅読ですが、
           ☆どうぞよろしく(^^)/
      ,゜.:。+゜,゜.:。+゜,゜.:。+゜

                
      2025/09/24
    • オミさん
      アールグレイさん、はじめまして⭐︎
      こちらこそ、フォローありがとうございます!
      私も図書館派ですが、待つのが我慢できない時は、購入します、一...
      アールグレイさん、はじめまして⭐︎
      こちらこそ、フォローありがとうございます!
      私も図書館派ですが、待つのが我慢できない時は、購入します、一緒ですね!
      読んだ本は絶対にレビューすると決めていますので、褒めていただいて嬉しいです♪
      こちらこそ、よろしくお願い致します(^o^)
      2025/09/25
  • 結婚式のつまらないスピーチで、スープに顔を突っ込むシーンで印象付けた主人公のこと葉。伝説のスピーチと同じように、掴みで一気に本に興味を持って行かせる。
    題名の通り、結婚式のスピーチかと思わせて政治に持って行く。『総理の夫』と同じように政治の場面が増えて来ると、政権交代しても元に戻る状況を思い出すと、熱く書かれてもちょっと如何なものかと思ってしまう。(2010年の作品とか)
    スピーチのところは感動的でやはり参考になるが、自分でできるかとなると暗記も含めて絶望してしまう。
    こと葉が成長し、幸せを掴むところは感動し涙が溢れて来る。後味が良く終われて良かった。

  • 原田マハさん初読み。
    ずっと気になって読みたかった本。
    言葉は魔物で刃だ。
    簡単に人を傷つけたり嫌な気持ちにさせる。
    言った方は忘れるけど言われた方は忘れない。

    スピーチでこんなに人を感動させられること、仕事に打ち込める事、いいなぁと思った。

    そしてやっぱり心に残った言葉
    『三時間後の君、涙が止まっている。
    二十四時間後の君、涙は乾いている。
    二日後の君、顔を上げている。
    三日後の君、歩き出している。』

    この本に出会えて良かったと思う。

  • 出だしは良かった。「言葉には力がある」、確かにそうだ。「スピーチライター」?、そんな職業があるのねぇ。と、とても期待が膨らんだものの、途中から、嫌な予感・・・

    この本はもう何年も前に「読みたい本リスト」に入れていたにも関わらず、ずっと手に取る機会もなく、積極的に読もうともしていなかったところ、知人が貸してくれてラッキーとすぐに読み出した。

    幼馴染の結婚式がきっかけでスピーチライターという職業を知り、関わっていくことになる主人公こと葉。こと葉がスピーチライター久遠久美の事務所に通うようになり、話が「政治的」になっていき、思っていた物語の内容と違ってきたので、少し驚いた。この「政治的な」話は、「スピーチ」というものの重要性を説くうえで必要であって、一時的に政治的な話にページを割いているのかな、それにしてはなんだか作者の政治的な考え、政党批判が表に出すぎてないかな、なんて思っていると、ガッツリ政治の話になった。

    正直、苦手分野である。こんな歳で情けなく、恥ずかしいことでもあるが、政治にそんなに興味はない。(興味はないけれど、だからといって政治が先述した「嫌な予感」に直接つながったわけではないけれど)

    それでも、人の心を動かすスピーチ、後世まで残る名スピーチがあることからもスピーチの重要性はすんなり納得できたし、スピーチライターという人がいて、政治や選挙に関わっているということ、それもちょっと関わっているというのではなく、選挙戦ならば状況を左右するほど関わっているということを知ったのは、単純に新鮮でおもしろかった。
    今まで考えたことがなかっただけで、言われてみればスピーチをする方のプロではなく、スピーチ原稿を書き上げるプロやスピーチの仕方を伝授するプロがいたって何の不思議はないのに。

    「政治かぁ、選挙かぁ」とブツクサ思っていた私も、選挙戦を追っているうちに、こと葉と同じように、
    「選挙って、ちょっとおもしろいかもしれない。自分たちが動けば、世の中が変わるかもしれない。」
    と思った。それだけでも、私としては大収穫。

    ただ、こんなに人気で評判の高い作品について、こういってしまうのもなんだけど、私の中ではそこまで評価が高い小説ではなかった。ここが「嫌な予感」の根本原因。たくさんの人が「良かった」「感動した」「大切な一冊になった」と高評価をつけている作品に、自分があまり馴染めない悲しさというか。私ってどこか変なのかな、と一瞬思ってしまったり。

    なんといったらいいのだろう、こと葉にとって全てがうまくいきすぎ、というのか、環境に恵まれすぎ、というのか。初っ端から、友人の結婚式の場だから偶然とはいえ、大企業の社長さんと話す機会があり、典型的な一般庶民の私からしたら「え?主人公もセレブ?」なんて浅い感想を持ってしまい、さらに祖母は高名な俳人で、家族ぐるみで付き合いのある幼馴染のお父さんは議員さん・・・会社では抜擢され、仕事のできるちょっといい男にプロジェクトチームに誘われ、スピーチライターの師匠についていくうちに野党党首にも新人なのに期待されるわ、ついには爽やかイケメンの幼馴染も立候補することになり、スピーチライターとしてサポートすることになるわ・・・ってどんだけトントンやねん!と。ひがみですかね、これは。フィクションだから、と言ってしまえばそれまでなんだけど、まぁ、現実味がなくて。

    だからなのか、それとも私に原田マハ作品が(あまり)刺さらないからなのか、どっちなのかわからないけれど、感情があまり動かされなかった。こう、感情というものに表面があるとしたら、その表面を「感動しそうな場面」や「感動的な言葉たち」がスルスル~と滑っていっちゃう感じだった。私の感情の表面を滑っていっちゃうだけだから、私の感情は不動・・・そんな感じだった。

    なにしろスピーチがそんなに響かなかった。

    とはいえ、思わず涙ぐむ場面は2~3回あったのだけれど、全体的には「う~ん」というか・・・。「惜しい」というのも変なのだが、ちょっとそんな感じ。私がよっぽどひねくれているんだろうな(笑)前にもどこかで書いたけれど、小川糸さんの作品を読んだ後と同じような感覚がある。高評価なのに私には刺さらない。

    あ、でも読んで損した、とかはないです。機会があれば喜んで原田マハさんの作品を読むだろうと思います。

  • OLから一転、スピーチライターを目指す、二ノ宮こと葉の物語。作中には数々の名スピーチが登場します。序盤での結婚式のスピーチ、いきなり心打たれます。ジーンときてしまいました。
    こと葉は伝説のスピーチライター久遠久美から極意を学んでいきます。
    けれど、わたし自身が原田マハさんから直接スピーチの手ほどきを受けていると錯覚してしまうのです。なんて幸運なんだと。
    透明感ある文章、あたたかいエピソード、心に響く言葉、マハさんならではのスピーチです。ストーリー性があってとびっきりのショートショートと言えるかもしれません。
    読みやすくて、ためになって、最後まで楽しめる作品でした。


  • ホント、何度涙腺崩壊させたら気が済むんですか!っていうくらい、何度も感極まる(涙涙)
    心を揺さぶる熱い言葉の数々、物語の展開に何度も鳥肌が立ち、目頭が熱くなった。

    これまで読んだ本は、なんとなく終盤に向けて話が盛り上がっていくものが多い印象だけど、本書は割と序盤に感動する出来事があり、このままトーンダウンしないよな、などと少し不安を抱きながらその後の続きを読み進めたが杞憂であった。終始飽きさせない展開で最後の最後までしっかりと心酔してしまった。

    あらためて言葉の持つ力の偉大さを思い知らされた。言葉は時に人を傷つけもするし、励ましもする。争いのきっかけになったり、勇気をくれたり感動させたりもする。この小説は言葉の力を軸に、主人公の目まぐるしい日常の変化と成長を楽しむことができた。凄く印象深く感動的なお話でした。

    それにしても驟雨おばあちゃん、凛としてカッコ良すぎ。

  • 言霊って言葉がある。
     例えば、よい言葉(ありがとうetc)には、プラスのエネルギーが、 良くない言葉(嫌いetc)マイナスのエネルギーというように、言葉が目に見えない力を持っていると。

    この話のスピーチライターという職業は、その言葉を巧み使って、人を惹きつける。はじめて聞いた職業やけど、何か魅力ある職業やな。
    喋りの達人みたいな…関西圏では、かなり優遇されそうや(^O^)
    こんな人を惹きつけるような言葉を使ってみたいな。口数は多いだけで中身がない私には羨ましい限り。

    政治も絡めて、なかなか面白かった!政権交代したはええけど…
    まっ!現実は…となってるけどね。

  • 泣かせる・・・・・。
    この本は泣かせる。

    昨今ではスピーチの始めに、本日はお日柄も良く、という言葉をあまり使われなくなってきたという。聴取を飽きさせず、エピソードを交えながら楽しく聞いてもらえる話。そして最後に、本日は
    お日柄も良く・・・・、と閉めるのがいいのかも知れない。

    主人公、二ノ宮こと葉は幼なじみの結婚式で、素晴らしいスピーチに出会った。
    スピーチライター久遠久美。
    こと葉は、久遠久美さんの事務所へとアフターファイブに毎日通いつめる。
    ――言葉っていうのは魔物だ。きらきらした魔物。人を傷つけも、励ましも、元気にもする。この魔物をどう操るか。
    全部スピーカー次第だ――
    ―本文より―


    こと葉の幼なじみの新婚さん、厚志くんが、なんと選挙戦に出馬!スピーチライターとしてこと葉は手伝う為に、会社を辞める!……なんと…


    私はこの本に、政治が絡んでくるとは、思ってもみなかった。
    こと葉のスピーチライター奮闘記なのだろうかと思っていた。それが選挙戦、以外だった。奮闘記ではあるが・・・・・
    その選挙戦には退社した元同僚なども手伝うが、敵陣営側には一緒に仕事をしたことがある男性がいた。その男性をこと葉は・・・・・
    和田日間足(カマタリ)なんという名だ。
    通称、ワダカマ。

    私は原田マハさんの本を、今までに読んだことがなかった!
    なんということか・・・・・1冊目は
    やはり読み易そうな本から読みたい。
    フォロワーさん方はこの本と、楽園のカンヴァスを薦めて下さっていた。
    皆さん、ありがとう!

    この本を読んで良かった!
    スピーチライターという仕事。
    今回、この本で知ることができた
    そして、幸せな気持ちにさせてくれた。


    この本の最後の様に・・・・お色直しの為に、色打ち掛けを着た私が
    スポットライトを浴びている姿が、蘇ってきた!
    こと葉、ワダカマおめでとう!


    2022、2、27 読了

    • アールグレイさん
      ポプラさんがスライドの横で、聴取を前に間をとりながら話す姿。
      格好いいのでしょうね!
      FIGHT(:‐。‐:)┛
      ポプラさんがスライドの横で、聴取を前に間をとりながら話す姿。
      格好いいのでしょうね!
      FIGHT(:‐。‐:)┛
      2022/03/07
    • おひげさん
      今更ですが、読まれたんですね(^^)
      よかったです。
      今更ですが、読まれたんですね(^^)
      よかったです。
      2022/09/02
    • アールグレイさん
      おひげさん(^_^)/こんばんは★

      気にかけて頂いて、ありがとうございます!
      この本、もっと早く読めば良かったと思っています。久遠久美さん...
      おひげさん(^_^)/こんばんは★

      気にかけて頂いて、ありがとうございます!
      この本、もっと早く読めば良かったと思っています。久遠久美さんのスピーチは、泣きました。(家族に隠れて見つからないように)
      次の原田マハさんは、いつになるかわかりませんが、レビューは必ずあげますので、その時にはどうぞ読んでやって下さい。
      (^ー^)ノ
      2022/09/02
  • 原田マハ『本日は、お日柄もよく』徳間文庫。

    これまでは原田マハと言うとアートをテーマにした作品しか読んだことがなかったので、読み始めてから余りの作風の違いに戸惑った。しかし、ユーモラスな雰囲気で始まった物語は、いきなりの感動へと誘われた。作中に登場するスピーチを読む度に感涙。一体何度泣かされたのか……原田マハに言葉の力を思い知らされた。

    製菓会社に働く普通のOL、二ノ宮こと葉は、幼馴染みの結婚式で有り得ない程の感動的なスピーチを披露した伝説のスピーチライター久遠久美と出会う。久美のスピーチを会場の空気を一変させるほどの力を持っていた。久美の誘いで弟子入りしたこと葉は普通のOLからスピーチライターの道を目指す……

    最後のスピーチに感涙。この余韻にしばらく浸りたい。

  • このお話は、タイトルと出だしからいって、結婚式のスピーチに終始するOLのお話かと思ったら、全く見事にいい意味で裏切られました。
    作者の原田マハさんは、ユーモアのセンスも程よくて、なんて引き出しの多い作家さんなんだろうと思いました。

    主人公のこと葉は、何もないところから、一人前のスピーチライターになっていくところが凄い!と思いました。
    こと葉の師匠であり上司になる久美との関係。
    厚志、ワダカマ、こと葉の戦いぶりと友情もよかったです。
    スピーチで世界を変えるという久美も、全くもってカッコいい。

    そしてまた、最後のしめには、またしてもマハさんに「やられた!」と思いました。
    脇役のおばあちゃんや厚志の父や恵里ちゃん、千華なども、皆とてもいい味を出していて、読んだ後で、気持ちがあたたかくなる大変素敵なお話でした。
    今まで読んだマハさんの小説の中で面白さでは私はぴかいちだと思いました。

    • まことさん
      ご紹介ありがとうございました(^^♪
      でも、マハさんの本がだんだんなくなっていくのが、ちょっと淋しいです。
      ご紹介ありがとうございました(^^♪
      でも、マハさんの本がだんだんなくなっていくのが、ちょっと淋しいです。
      2019/06/09
    • まことさん
      そうですねっ!私もゆっくり、どんどん読んでいきたいと思います(^^♪
      ありがとうございます!
      そうですねっ!私もゆっくり、どんどん読んでいきたいと思います(^^♪
      ありがとうございます!
      2019/06/09
  • 読みたいリストの中から、縁起がいい装丁の今作を今年の1冊目に手に取った。

    こと葉は密かに思いを寄せていた幼なじみ、厚志の結婚式で感動的なスピーチに出会い、スピーチライターの世界に飛び込んでいく。

    物語はテンポよく、割とコミカルな感じで進んでいくのに、合間に登場するスピーチの一つ一つがずっしりと重みがあり、感動的で涙せずにはいられなかった( ・ ・̥ )
    最初から最後まで、このまま使いたいくらいどのスピーチも素敵。
    特に印象に残ったのは党首討論の場面、由比ガ浜公会堂での集会の場面。
    言葉の力のすごさを改めて感じ、胸が熱くなった。

    スピーチライターという職業は今作を読んで初めて知った。
    政治においてこんなにも重要な役割を果たしていることも。
    政治家の方のスピーチを実際に聞いたことはないけれど、実際に聞くとどんな感じなのか、聞いてみたくなった。

    主人公のこと葉、厚志くん、恵里ちゃん、久美さん、ワダカマ、こと葉の同僚たち…
    登場人物もみんな好きだった。
    特に好きだったのは面白くてかっこいい、こと葉のおばあちゃん。

    『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している(p.322)』
    この言葉はずっと心に留めておきたい。

    ✎︎____________

    「わかってないのねえ。言葉は、メッセージカードのようなものよ」
    一枚一枚に、自分の思いを書きつける。とっておくもよし、日々眺めるのもよし。必要なくなれば、破っても燃やしてもいい。死ぬまでずっと、心にしまっておいてもいい。
    でも、誰かの目に、耳に触れれば、なおいいだろう。誰かに伝えられれば、なおすばらしいだろう。思いを共有できることもあるかもしれない。心と心を、響き合わせることもできるかもしれない。(p.22)

    ときにしょっぱくても苦くても、人生の最後のほうで、一番甘いのが、結婚なんだ。(p.26)

    『愛せよ。人生において、よきものはそれだけである』(p.27)

    平和が戦争を封じこめ、強きが弱きを助ける国。それが私たちの国、日本なのです。(p.35)

    本来、スピーチっていうものは、ひとりでも多くの聴衆の耳に入って初めてスピーチになるのよ。
    もっと言うなら、ひとりでも多くの心をとらえてこそ、スピーチは完結する。(p.69)

    見た目じゃなくて、言葉で目立つのよ。(p.82)

    家族、というものは、ひとりでは始められません。ふたりが最小単位です。その最小単位から、日々、大きく育てていくのです。どんなものに仕上がるのか、それはおふたり次第です。(p.89)

    スピーチの出来不出来は、自分で評価するものじゃない。聴衆が決めるものよ。(p.106)

    言葉っていうのは、魔物だ。人を傷つけも、励ましもする。本やネットを目で追うよりも、話せばなおのこと、生きた力をみなぎらせる。この魔物をどう操るか。それは、話す人次第なのだ。(p.134)

    言葉は書くものでも読むものでもない。操るものだ。(p.144)

    聞くことは、話すことよりもずっとエネルギーがいる。だけどその分、話すための勇気を得られるんだ(p.158)

    初めて挑戦するからには不安なことも多いだろう。けれど、初めてだからこそ、真摯に向かい合えることもある。初心忘るべからず、とはそういうことなんだ(p.203)

    誰かの身の上とその未来を思うすなおな言葉。何の意図もなく口をついて出るその言葉よりも強く美しいものがあるだろうか。(p.234)

    安定した仕事で幸せになるのもいい。けれど、人を感動させ、幸せにする仕事に就けるのはもっといい(p.252)

    困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している(p.322)

  • ドジャース戦を朝からLIVEでみて
    (土日は、何時に起きて野球をみているのだろうか、、、録画よりはLIVEが楽しい)
    公園遊びいって、買い物と、しばらくゆっくり本読む時間なく、久しぶり時間つくれました

    初めての原田マハさん。
    描写がめちゃくちゃ詳しいですね
    広告やコピー(ライター)、CDなどの業界の人なのかしら
    (わかりやすく、難しい言葉使わずに素晴らしいなと思いました、そして、競合コンペとか以外と参加者の名前確かにわかるところとかめちゃくちゃリアルだなと、実際顔馴染みになったり、協業もありますしねw)

    そして、このスピーチライターという
    確かに言われてみれば、ありえるかもなと職にフォーカスされてるところ、今の2025年であれば
    より、ネットの力を強くなり、もはやコントールできるかが勝負やビジネスでも、当たり前のなっているが、ネット関係なく、人の(こと美)の生き様、あり方、成長がみれるところとても良かった。
    あるあるの周辺にいる人達の温かさもリアルな感じがして、ともても親近感がわきました。

    他作品も読んでみようと思います
    ★3.8

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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