封鎖 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198937133

感想・レビュー・書評

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  • この作品が出版されたのは今から10年ほど前だけれど、まるで数年前からのコロナ禍を予測していたかのような内容で恐ろしかった。

    市街地から離れた人口60人足らずの集落で、インフルエンザにかかった老人がたった一晩で急変し血を吐き死亡、そしてさの葬儀の最中にもう1人同様の死に方をした老女が発見される。集落の住人のかかりつけ医の新島は、その死に方に疑問を持ち、未知の感染症の発生を考え感染症専門家の女医紺野に検査を依頼する...
    感染症の正体が鳥インフルエンザであると判明した時、集落に派遣された感染症の権威松下と政治家や自治体が選んだ道は人間としてありえないような方策だった...。

    感染したら致死率100%の新型インフルエンザも怖かったけれど、集落の人を閉じ込めることで封じ込めを図ったことにも恐ろしさを感じた。
    集落へと繋がる唯一の道を封鎖され、通信手段さえ奪われ、周りから見殺しにされる恐怖はどれだけのものだろうと思った。
    とくに杏子や恵子など幼い子どもを持つ母親は、自分のことだけでなく、子どもを守るためにどんなことでもする気持ちになると、杏子には感情移入してしまった。

    64万人を救うために60人の犠牲は仕方のないことなのか。
    思えば新型コロナが日本に初めて発生した時、横浜に着いた客船の中に感染者も感染していない人も閉じ込められていたなぁと思い出した。あの時は横浜の港という目立つ場所で、政府の対応も逐一報道されていたけれど、それがもし人里離れた少人数集落であったなら、小説の中のようなことが起こっていてもおかしくなかったのかも知れない。

    未知のウイルスによる生命の危機に晒されたとき、人間の本質的な考え方が明らかになるのかもしれない。
    そう思うと、新島や静香、鈴野、杏子や紺野、いざという時に人のために行動できる人はすごいと素直に尊敬した。

    最後、何故紺野は死ななくてはならなかったのか。解決があまりにも呆気なかったのは少し残念ですが、十分面白い作品だったと思います。

  • コロナ禍を経験した今、全くの現実離れしているとは言い切れない話で怖くなった。時々自然災害等でも孤立した集落がある等のニュースで見ることがあるけれど通信でも孤立するという恐怖、またそうするしか手段がないという目に見えないウィルスの恐ろしさを感じることができた。封鎖の中にいるのも怖いけど、都市部だったらどうなることか。

  •  未知のウイルスと対峙したとき、人間はどうなるのか。もし自分が感染の疑いありと思ったとき、守らなければいけない家族がいるとき、医療従事者として対処を迫られたとき、様々な登場人物の視点からある集落で起きたウイルスパニックと、その後の集落の様子を描く作品。人間の行動心理と行政の対応、風評被害、ウイルスの強毒化についてなどなど、非常に勉強になる記述も多い。
     現在、世界では新型コロナパンデミックとなっており、日本でも緊急事態宣言が発令された。コロナが騒がれるようになって1か月半が経つが、いまだ衰えを見せず、むしろ春の人事異動の流れに乗るように第二次流行期を迎えたと言っても過言ではない。旅行などとは違い、本人の意思とは関係なく移動した先で新たな感染が発覚した場合、好奇の目にさらされ、自分が罪を犯したように見られないとも限らない。「事実は小説よりも奇なり」と言われるように、現状のほうが本作よりも大変な事態に陥っているが、恐らく「これが正解」という対処方法は現状ではないように思う。感染経路が分からない以上、恐怖と戦い続けなければならない。

  • 感染症疑いで封鎖される集落の話。

    国はやるであろう。
    完全に間違っているとは思わないけど
    当事者関係者だったらたまらない。

    庶民は自分の身体を強くたくましく健康にしていることが
    ただひとつできることなのか。

著者プロフィール

せんかわ・たまき
1968年東京都生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修士課程修了。大手新聞社在籍中の2002年に書いた小説『感染』が第1回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビュー。その後執筆活動に専念し、医療問題を中心に社会性と娯楽性を兼ね備えた作品を発表する。著書には『転生』『繁殖』『誤飲』『疑医』『鬼嵐』などがある。本作は『幸福の劇薬』に続く「医者探偵・宇賀神晃」シリーズ第二弾!

「2020年 『偽装診療 医者探偵・宇賀神晃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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