触法少女 (徳間文庫 ひ 25-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198939595

作品紹介・あらすじ

小学校四年生のとき、深津九子は母親の瑠美子に捨てられた。九子は施設に保護され、母は幼児虐待容疑で逮捕された。心に闇を抱えながら善寺川学園に通う深津九子は、担任教師・三塚が寄せる後ろ暗い気持ちを利用して彼を支配し、クラスの男子・西野を下僕化、同級生の井村里実からは崇められていた。ある日、瑠美子の消息を知るチャンスが巡ってきた。運命は激しく動き出す。予想外の展開、そして驚愕のラストが!書下し長篇完全犯罪ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年4月25日、読み始め。
    2020年4月29日、読了。

    ヒキタクニオさんの作品を読むのは、初めて。

    幼い頃、母親に棄てられた深津九子が母親と再会し、そこから展開するストーリー。最後に、予想外の出来事があったりして、なかなか楽しめる内容。
    ただ、刺激が強いので、寝る前に読むのは止めたほうが良いかも。

  • ──人を殺しても罰せられない魔法
    それが、刑法第41条──

    少年法が適用される境目の13歳と14歳。
    たった1日で人生は変わる。

    母親による育児放棄と虐待。
    片親でも貧乏でも健全に育つだろう。
    ただ、そこに愛情がなければ方向性は変わる。
    子供は親をただ真っ直ぐに純粋に愛する。
    そして愛されたい。
    愛されていなかったと気づいた時、悲しみが憎しみに変わる。


    【声なし笑い】と、
    【誕生日プレゼントは、何でもうまくいく魔法の薬】が回収されるラストには魅せられた。

    九子が最後に流した大粒の涙。
    単なる気まぐれかもしれない母からの「愛」。
    最初で最後の愛情。

  • 育児放棄や虐待、そして未成年の犯罪といった重いテーマをエンターテイメントとしていっきに読ませてもらえました。
    そして驚きの結末。
    人ってのは厄介な生き物です。

  • 【吐き気を抑えながら掴み取った光、その光が生み出す影】

    救いがないなぁと思う。非情になりきれない。あまりにも人間的で醜くて、中途半端で美しくない。私たちの正しい姿がここにある。

    ルールがわからないままトランプを握らされるような、吹き出したコーラがべとついて気持ち悪いとか、身に覚えのない痣を見つけたような、苦しさがある。

  • 毒作りのあたりは、長くて中だるみしたが、最後のどんでん返しが意外過ぎて、面白かった

  • 少女が罪を犯そうとしている、そして罪を認めるまでの過程が秀逸。本当に13歳の子どもにこれだけ事を実現できるのか、というところが不思議だけれど、丁寧に書かれた犯行準備の様子を読んでいるとできるんだろうな、と思えてしまった。そして警察の捜査が始まると、犯行の❝あまさ❞という部分もでてきて、余計リアルだった。

  • 最後のどんでん返のインパクトがあまりにも強く、なかなか現実に戻ってこられなかった。
    1周目と2週目で内容の受け取り方が違ってきそうでとても楽しみ。

  • 殺していい人は居ないけど、殺したくなる人はいる。
    結末に近づくと、様々な伏線に気づかされる。

  • 完全犯罪で殺人を犯そうとする中学生を描いたミステリー。貴志祐介著「青の炎」を連想させる物語なので、犯行がいかにバレるのかがミステリーとしての根幹かと思っていた。でも、完全に裏をかかれた。
    少年犯罪や児童虐待などの社会問題を背景にしながらも、キチンとしたどんでん返しが用意されたミステリーだ。
    若干読みづらい文もあったが、読み始めたら止まらなくなった。

  • ラストびっくりした。。華蓮の声を全部自分でやってると思うとゾッとした。自分で仕掛けて自分で実行してるの恐ろしすぎる。親から愛情を十分に受けれなかった子は大なり小なりどこか精神に異常をきたしてしまうものだなと思った。弱冠14歳でここまで頭が回るのもすごいな。

  • オレンジ色に染められた髪、ビーズが編み込まれたエクステンションと呼ばれる付け毛が、左右対称になって外に向かって突き立ち触覚のように見えた。 戒めは永遠に続くと思わせないと意味がない 安っぽい少女漫画とかドラマにあるステレオタイプな設定が巷に蔓延しているからだろう 昔は児童養護施設のことを孤児院と呼んでいたそうだけど 厨二病 華蓮はチンポの臭いがしてくるような文章だと吐き捨てた 虐待とネグレクト 川崎市中原区の武蔵小杉駅が瑠美子の新しい住所の最寄り駅となっていた リシンという毒を含むトウゴマの入手方法 ひまし油にはリシンは含まれず搾かすに殆どが含まれる 未成年の場合ってね、主犯と従犯は、単純に年齢で決められるのね。 死刑囚は死刑だけが刑罰だから、拘置所に入ってる被告人と同じような扱いなんだってさ マスコミや世間の悪食をとても刺激するでしょうから 特Aレベルの箝口令を通達したことは正解でしたね 薄倖の少女とか美人薄命などという言葉が似合いそうな物静かな美人だ アロワナの身体が僅かに震えた 君ねえ、完黙なんてのは、職業的犯罪者や思想犯なんかがやることなんだけどね。誰からの示唆なんだい? 寿司飯というのは、砂糖の量から言えば米のケーキなんだね。 現在では映像を四〇〇〇万件近い顔のデータを使用して一秒で特定の人物の顔の検索ができる大規模監視カメラシステムが導入されているんだよ。そして、このシステムは、決して防犯でなく警察が捜査の為に自由自在に使えるんだ。 犯罪を暴く時の尋問テクニックに、被疑者に嘘を吐かせる、というのがある。嘘を認めさせる為に嘘が必要となる。嘘は連鎖して広がる。嘘を言っていることに反証せずに嘘を溜めて、一つの嘘を溜めて、一つの嘘を徹底的に調べて暴く、すると、嘘は一気に雪崩を打って崩れていき、被疑者の作った供述が破綻するのである。 カタカナのネに十二支の申をくっつけて安易に使ってるパターンでしょう 消し屋(殺すだけでなく生きてきた痕跡も消すのだ)を主役に据えてきた

  • あらゆる人を惑わす九子さんのお話。半分読んだあたりからやっと面白くなって最後はあっと驚くような展開に…。もう一回読んだらもっと気づきがあるかもしれないけど読むのにちょっと苦労するかも。

  • 少年法も変わっていくしそれを意識した犯罪もあるのだなと。どんでん返しも良かったかな

  • ずっと読みたいと思っていた、ヒキタクニオさんの小説。
    結局は自分が2役やっていたり、心酔する少女のために殺人を犯す女子がいたり、幼い、ひとりよがりな結論が多いのだが、13歳か14歳か、という境目で、”少女”側に軍配があがったような。

  • 幼い頃、母親に棄てられた過去を持つ深津九子。児童養護施設から通う学校では、担任が寄せる暗い欲望を利用して教師を支配していた。同じクラスの西野も九子の下僕だし、里実からは憧れの対象として崇め建てられていた。ある日、母親の消息を知るチャンスが巡ってきた。運命は激しく動き出す。母親なんていらない。

    13歳とは思えないほどに賢く冷静、冷酷な九子。とはいえ、年齢で人を計ることの馬鹿馬鹿しさも感じる。何かを為すのに大事なのは年齢ではない。印象的だったのは、里実と母親が馬鹿なことをした時に、読者として「なんでそんなことを!バレちゃうじゃん!」と憤り、九子もそういうリアクションかと思いきや、実際は嬉しそうだったこと。そうだった、この子は、小説の中の冷酷な殺人犯なだけではなく、傷ついているひとりの子どもなのだというのがリアルに浮かんで、それが良かった。

  • 「もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」5歳で虐待で亡くなった結愛ちゃんと重なった。あの記事を読んだとき、オイラは泣いた。両親に殺意を覚えた。再婚した相手が自分の連れ子を虐待しているのに助けない母親、血のつながらない連れ子を死に至るまで虐待する父親、彼らをパパママと呼んで許しを請う結愛ちゃん。気持ちが悪くなる。留美子と同じように新しい男に気に入られたいだけのことなのか。男女の恋愛なんてロマンチックでもなんでもなくてただの本能任せみたいに思えてくる。渡辺は九子に「殺してしまいたくなる人間はいるものだ。しかし、殺していい人間なんてこの世にはいない」と言う、そうなのかもしれない。でも死によってしか償うことができないこともあると思う、死刑とは別に。九子と華蓮の虐待からの呪縛は解けたんだろうか。オイラ的には留美子の生命保険、井村里実の告白で物語の体裁は整えられた感があるけど、終わった感がない。むしろ終わらないと思っている。

  •  よくできたミステリーだと思いました。
     母親に捨てられた女の子の話。
     深津九子は、母親に捨てられ、施設で生活をしていた。そんな九子は母親を探したいと思い始める。
     母親の居所を突き止めた九子は、今度は母親を殺したいと思い始める。見た目の美しさと人の心理をうまくつく行動で、周りの人を利用しながら物事を進めていくが……という話でした。
     すべてが九子だけの行動だと思いきや、最後の最後で大きなどんでん返しが入って、すごくびっくりしました。
     実行段階で、「え? それだめじゃない??」というミスを犯すんですが、それさえもその先の伏線になっている。
     まあ、13歳という年齢を考えれば、ミスのない完全犯罪ができることの方が、不思議なんですよね。

     そして、これで解決。あーよかった!
     ってなったところで、最後にもう一度、ひっくり返される。
     最後の一発は本当にびっくりしました。
     確かにちょっとした違和感はあったのだけれど、そこは目をつぶるところかな……と思ってはいけない。
     やっぱりミステリー書きにはなれないなあ……と思います。

     ミステリー好きな人には面白く読めると思います。

  • 完全犯罪を企て、実行する少女。警察の辛い取り調べ。真相とは…

  • 子供が成長して行く過程で親によって歪められる。きっとこの本に出てくる九子のように、ぱっと見は分からなくとも、いざとなればの凄みを持つ者がいるんだと思う。その凄みを武器に、悲しいが仕方のなさを感じる目的に向かって懸命に考え戦う九子をいつしか応援しているような気分になった。
    最後の展開もまた本ならではの仕掛けで面白かった。

  • 終盤に『えっ? ええぇっ!?』って感じで、なかなか面白いです。
    作品中に出てくる毒物は実在するのですね。
    実際の製法と同じ手段なのかは不明ですが、模倣犯が出なければ良いのですが...

  • イヤミスとはまた違った感じの“嫌さ”がある作品。
    ざわざわゾワゾワと不穏な空気が漂っています。
    あんまり人にオススメ!とは言いにくいけど、面白いです。

  • 久しぶりに「がつん」と来た。
    ストーリーも良いし、流れも良い。
    装丁も良い。
    幼い頃、母親に棄てられ、児童養護施設で育っている美少女 九子。
    最後の最後まで、仕掛けがあって良かった。
    終わるのが惜しく、最後の解説まで読んじゃった(笑
    '18.05.03読書完了

  • おもしろかった。
    主人公の美少女は大人びてるかと思いきや
    急に不安定なところもあったり、
    犯罪というよりは心理的な部分に
    すごくひきつけられた作品。

    虐待する非道なクソ親でも
    100%悪い面だけでできてるワケじゃない。
    でもやっぱり
    子どもを虐待するような親は
    殺されてもいいほどの罪人だ、とは思う。

    最終的には衝撃がいっぱいだったけど
    わかってみればたしかになぁ、て感じも。
    とりあえずぐんぐん読めた。

  • 14歳未満は、事件を起こしても刑罰を与えることができない。つまり、逮捕ができない。
    そのグレーゾーンの少女 九子が、虐待されてきた母親を毒殺しようと突き進む。その姿が痛々しく感じた。そして周りに与えた影響の大きさの罪。里実のある意味真っ直ぐな好意としての行動が異様に映り、何ともいえない怖さを与えた。

  • イメージしていた内容とは違ったがなかなか面白い作品だった。
    ミステリーとしてはこんなものかなってカラクリだったけど刑事の渡辺が九子を自供へと導いていく話術がなんか今までの刑事物にはない上手いやり方だなぁと思った。まさに野生の鷹の子を餌付けするっていうのがピッタリで素晴らしかった。

  • 毒を抽出する方法を考えるくだりはちょっと飽きちゃいそうになったけど最後までがんばって読んでよかった!そんなラストだとは!結局子どもは子どもだね。

  • ヒキタクニオの初読み。

    途中で結末の予想はついてしまったものの、物語に引き込まれて一気読み。

    中学生に毒物精製が可能かという点のリアリティーには目を瞑りつつ(笑)。
    少年法の是非、法の不完全部分、家族、虐待、思春期の思い込みや暴走・・・と、感じる部分は多々あり。そこは同時に、筆者がこの題材を通して語りたい(訴えたい)部分でもあったのだろう。

    さて、、、文庫裏表紙のあらすじ文に、不満。
    “教師や同級生男子を支配・・・うんぬん”……は、この物語の本筋から、かな~りズレてるよね(苦笑)。

    ★3つ、7ポイント半。
    2017.03.07.古。

    ※いま(2017年)、これを映像化するなら、適役が一人・・・芦田愛菜なんぞ、いかがだろうか?

  • めちゃくちゃ面白かったのに…最後の最後で萎えた。そういうお涙頂戴はいらない。
    あと男性陣の扱い…もうちょっとちゃんとして欲しかった。

  • 華麗な叙述トリックに、あっと驚くどんでん返しとサービス満点のミステリ小説で、しかも、親による虐待を生き延びて「施設」で暮らす少女たちの心の闇を照らすシーンはどこも素晴らしい。一方、その反動で人物造形がお粗末な刑事二人が子供じみているのは残念。中途半端な大人にせずに、三塚先生と同レベルのダメ大人にしてしまえばよかったのに。 九子が毒物抽出に情熱を傾けるシーンは、グレアム・ヤングに遠く及ばないながらも、それを彷彿とさせる。

  • おもしろかった!最後の結末に声が出そうになるほど驚いた。いや、最後のちょっと前にも驚いた。
    まさか華蓮のセリフを九子ご話していたなんて。
    まさか里実がとどめを刺していたなんて。

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著者プロフィール

ヒキタ クニオ
1961年、福岡県福岡市生まれのイラストレーター、クリエーター、作家。1986年、九州産業大学芸術学部デザイン科卒業。大学在学中に日本グラフィック展で奨励賞受賞。1988年、JACA日本イラストレーション展銀賞。1998年にCD-ROMで、ブラウン管で読む小説「ブラノベ」『ブラノベ人生画報』を発表以降、作家業を営む。作家代表作に、2006年に第8回大藪春彦賞を受賞した『遠くて浅い海』。ほかの作品に映画化された『凶気の桜』『鳶がクルリと』、『触法少女』など。2019年10月に、『「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」―男45歳・不妊治療はじめました』 が実写映画化される。

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