臣女 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 300
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198941499

作品紹介・あらすじ

夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに??。恋愛小説に風穴を空ける作品との評を得、満票にて第22回島清恋愛文学賞を受賞した怪作が待望の文庫化!――解説小池真理子

感想・レビュー・書評

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  • 風呂上りにテレビつけたらアメトークで読書芸人やってたのでドライヤーかけながらぼんやり見ていたところ光浦さんが紹介していたこの本がとても気になったので早速翌日本屋さんへ行く。ミーハー。

    夫の浮気を知った妻は、その日からどんどん骨をきしませ巨大化していく。夫は償いの気持ちからか妻の世話を献身的にするが、妻の巨大化は進む一方。3か月で3メートルを超え、トイレに入れなくなり、室内の移動もままならず、しかし巨大化した分食事の量は増えそれに伴い当然排便の量も増えて・・・酷い言い方かもしれないけれどほとんど人間ではなく象かなにかの飼育状態。とにかく排泄物関係の表現が多く異臭騒ぎにまで発展するので読んでるうちに本から臭ってきそうな気持に(苦笑)

    妻はひたすら動物的に、食べる→排泄する→巨大化する→もっと食べる→もっと排泄する→もっと巨大化する、を繰り返し、最終的には進撃の巨人か!という大きさに・・・。かといってそれが夫の不倫に対する妻の復讐かというと、巨大化に伴う苦しみは妻自身のほうが大きく割に合わない。

    しかしそうなってはじめて夫は心から妻に献身的になり愛情を再確認する。解説で小池真理子が『死の棘』の話をしていたけれど、なるほど確かに、浮気夫のせいで狂気を発した妻、その狂気を目に見える形に具現化したらこういう物語になるのかもしれない。これは私小説ではもちろんないけれど、夫は兼業作家で、心の一部に「これは小説のネタになるかも」と他人事のように眺めていたりもして、なんだか人間の業の深さを思い知らされる。

    巨大化の過程で一瞬だけ、巨大なことを除けば完全な均衡を取り戻し美しくなった妻とまじわる場面があるのだけれど、ときどき引用されるボードレールの「巨女」の詩と相まって、妻が女神のようだった。おそらく作者が一番書きたかったのはこの場面だったのではなかろうか。本のタイトルが「巨女」ではなく「臣女(おみおんな)」となっているのは夫の誤字ゆえだけれど「おみおんな」と口にしてみるとなにかとても女性を崇める神聖な古語のような響きがある。

    元はといえばゲス不倫などする夫が最低なだけだが、30代息子を「文ちゃん」と呼び干渉し嫁いびりをする毒母、粘着質で嫉妬深い同僚男、虎視眈々と詮索・監視してくるご近所の老人たちなど、巨大化した妻より彼らのほうがよほどグロテスクな化け物じみていて気持ち悪い。醜悪に巨大化していく妻を献身的に支える夫はそれはそれで大変だったろうと思うのだけど、でも結局、何の罪もないのにそのような苦しみを背負わなければならなくなった妻が、ただひたすら痛ましい。結局最後に犠牲になるのは女のほうかーという不満はありつつも、なんだか神話のような余韻があった。

  • 2016.12.27-72
    夫の浮気を知り巨大化する奈緒美を家に閉じ込めて世話に追われるが、挙句トラックで逃避行するも死なれてしまう夫文行。中盤の奈緒美のグロテスクな描写に対し、最後の巨大化した理由が回想されるシーンが切ない。

  • 夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに。

    すごい内容。衝撃的。
    しかも便とか吐瀉物とかの表現が山ほど出てくる。半分以上それだと言ってもいい。
    けれどなぜか綺麗というか崇高さがあるというか…
    夫は浮気はするし狡猾さもあるしでまっすぐに愛することは到底できないキャラクターなのに、ある種の純粋さを捨てきれないところが嫌いになれない。

    「失ってみて気づくこと」とはよく言うけれど、この物語の主人公は、妻が巨大化した上に意思疎通が図れなくなったのである意味で元の妻を“失って”しまった。
    だけど妻という生き物自体はすぐ側にいる。
    普通の大きさの妻の何十倍も食べ(しかも冷凍の生肉なども貪り食べたりする)そして普通の大きさの妻の何十倍も排泄する。
    近所の人や普段関わりのある人にバレてはいけない。だけどそれも限界が来て…

    妻の奈緒美がどんどん巨大化&野生化していく過程で、ほんの一時元の姿を取り戻し始めたように見えたときがあって、その一瞬のときの夫婦の交わりが、とても美しく切なかった。

    ラストは、どう受け止めたら良いものか。
    独特すぎるラブストーリーだったけれど、本物の愛みたいなものを、垣間見た気がする。

  • 最初から最後までグロテスクなんだけど、その中にも愛が描かれている。
    こんな状況下で配偶者を愛し続けられるか、自分だったらどうだろうと考えながら読んでしまった。
    終わりが見えないのが一番辛いだろうなぁ。

  • 設定からして幸せな結末は迎えないだろうと覚悟して読み進めていったけど、孤立を極める二人が痛々しく読むのが苦しかった。

    嫌味な教師が終盤あたりで、主人公を的確に分析するところや、何となく味方になってくれそうな同僚教師も、もちろんのこと誰の肩を持つこともなく…誰も助けてくれないし、主人公自体助けてもらおうと思ってない。
    金銭的にも社会的にも追い詰められる、というか主人公自ら追い詰めてるような気がして「早く然るべき機関に助けを…」と何度も思った。

  • 切実なる恋愛小説。

    浮気がバレた日を境に巨大化、異形化が止まらない妻。途中目を覆いたくなるような凄まじい描写があるのだけど、それでも夫の心情と同じように、妻のことが愛おしくなってくる。
    妻との生活はどう考えても負担が大きく逃げ出したくなるのだけど、なぜだか決して離れたくはない感覚。たぶんこれは純愛なのだと思う。

  • 私にはかなりキツかった。
    読後感が悪い、って言い方あるけど、この本は読中感がとにかく悪い。
    昔読んだ筒井康隆の『俗物図鑑』を思い出した。
    あれもかなりグロいと言うか想像するのが辛い描写が多かったけど、でもあっちの方が面白く読めたな。
    この作品に出てくる登場人物達がとにかく嫌で、(それは作者の意図するところなんだろうけど)読むのにかなり時間がかかった。
    主人公が全く好きになれないし、この旦那の「愛」は私には理解できない。
    恋愛文学賞とったみたいだけど。
    私はこの人の愛の形は好きになれない。

  • 2019/2/25購入

  • 描写が分かりやすくて、うわぁと思いながら読み進めつつも、途中で飽きてくるところもあったので星3つ。
    結局最後はどうなったのかがはっきり知りたかったなぁ。
    それと釣り人の気持ちとか、行動がどうなったのか知りたかったなぁ。
    気がかりが多くて気になってしょうがない。

  • 私は一体何を読んだのか…不思議な気持ち。
    旦那さん、自分の不倫に対する罪滅ぼしの為に奥さんを介護していくのだ…と思いきや、人間とは呼べない姿になっていっても、それでも献身的に介護をする。
    世間的には、周りの反応の方が普通なんでしょうが、そっとしといてあげて…とイライラした。
    奥さんの気持ちはどうだったんだろう…不倫に対する罰で、介護させることで自分に付きっきりになってくれるので良い気味だと思っていたのか…それとも申し訳ないと思っていたのか…。身体の巨大化の原因が、前者だとしたら恐ろしい…。でも旦那さんの理想になりたかっただけなんだな、と最後に分かるのでまぁまぁスッキリ。

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著者プロフィール

1961年、愛媛県松山市生まれ、大阪府枚方市育ち。京都教育大学卒業後、東京、大阪の高校、支援学校教諭を務めた後、専業作家に。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文學界新人賞を受賞しデビュー。2003年「ハリガネムシ」で第129回芥川賞、2016年『臣女』で第22回島清恋愛文学賞受賞。近年は小説のほか、初のコミック『流しの下のうーちゃん』やエッセイ集『生きていくうえで、かけがえのないこと』、『うつぼのひとりごと』も発表。ほかの著書に『バースト・ゾーン』『ボラード病』『虚ろまんてぃっく』『回遊人』など。

「2018年 『ヤイトスエッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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