臣女 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 683
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198941499

作品紹介・あらすじ

夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに??。恋愛小説に風穴を空ける作品との評を得、満票にて第22回島清恋愛文学賞を受賞した怪作が待望の文庫化!――解説小池真理子

感想・レビュー・書評

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  • アメトークで光浦靖子が紹介していて、ちょっと面白そうだったので買ってみた!

    アメトークや帯で、妻への壮絶な愛が描かれているようなことが書かれていて、この流れをどう恋愛小説としてラストへ向かっていくのかなと思いながら読んでいたのだけれど、うーん、わたしはこれを、愛とは名付けられない。もちろん、全部を愛と呼べないわけではなくって。
    依存と抑圧と、絶望と。この状況を受け入れることができてしまうという彼の心は、強いのか、あるいは諦観か。

    自分の愛する人が異形化した時、わたしはそれを受け入れられるだろうか。そして、自分以外に愛する人を救ってあげる人はいると思うだろうか。わたしは、前者に対しての答えは、Noで、後者に対しての答えは、Yesだと思う。でも、主人公は、答えがいずれも逆だった。それは確かに、強さであり、愛かもしれない。

    お洒落なカフェでなんちゃらラテを飲みながら読んでいると、排泄のシーンなんかでそのなんちゃらラテがなんだかもうラテには見えなくなってきて、しかもその排泄のシーンはなかなかリアルで長いもんだから、よくカフェで本を読むことはおすすめしますが、この本の場合はすすめしません(笑)

  • めちゃくちゃよかったです。
    妻がでかくなっていく、「おもしろ話」だと思い読んでいたら、めちゃくちゃ深い夫婦愛の話でした。
    ウンコの行が長いですが(笑)、最後は感動してしまいました。
    ぜひぜひ、読んでみてください❣

  • 不思議な話だった…歪みすぎた恋愛小説でした笑
    自分なら申し訳ないけどここまでの介抱は出来ないなあ。。
    うんこやら紫の液体やら汚い描写が多くて笑ってしまいました。
    登場人物が変な人多すぎて(主人公も)全く感情移入できない上に、何がしたいんだって人が多くて全体的に浅いな…って感じでした。

  • 2.5
    旦那の浮気をきっかけに、どんどん巨大化してしまう妻。ひとりで排泄もできなくなり、夫はポリバケツで排泄を片付けたりと、介護中心の話の展開。途中まで面白かった分、衝撃の展開を期待してしまって、、、。いつか親の介護をする機会があれば読み直したい。臣女の世話よりましだ。

  • 自身の不倫を機に、妻の気が振れ、身体が巨大化していく。
    気が振れるところまではありかと思うが、巨大化していく、そしてその妻を介護しつづける・・・。広告文には純文学、純愛とあるが、たしかにそうかもしれない。主人公は逃げ出さず、不倫の償いを超えた献身を捧げる。けど、下の世話が続き、糞尿のにおいが一貫して描かれているのが、生理的には受け付けにくい。(この著者の作品は初めてなので、他作品がどうかは知らない。)
    好き嫌いが分かれる小説だと思う。

  • 「臣女」読了。主人公の奈緒美という巨大化する妻に捧げる一種異様とも感じる献身と執着が「ん?ナオミ?」と思わせ、ググルと「痴人の愛」のナオミと同じ名であった。まぁ深読みだろうが勝手にそう思っておく。面白かった。

    「臣女」。今日を逃すと実家に帰るので二日間が開き、興が削がれると思い、急いて読んだ。ダンナに「5mになっても好いていてくれる?」と訊いたら、「病院に入れる。年に1回会いに行く」との返事。なんとつれない。まぁ私も病院に入れるよ。

  • 夫の浮気を知り、絶望となった妻にもたらされた変化は巨大化だった。

    妻の身長は4メートルを超え、服も着れない、外出もできない。ただ、大量の食料を食べ、大量の排泄をするだけ。そんな妻を眼の前にした夫は苦悩と嫌悪、愛情を投げかけながら、妻に尽くし続ける。

    カフカの「変身」のように理由もなく異形になってしまった人間に対しての周囲の反応を描き、人間の残酷さや身勝手さ、愛しさを浮かび上がらせるフィクション。

    自らの社会的地位を放棄し、排泄物まみれになった妻を愛することができるのか。読んでいるだけで臭ってきそうな汚物の描写は凄まじい。だけど、似たようなことは現実でも「介護」という名で行われている。

  • 風呂上りにテレビつけたらアメトークで読書芸人やってたのでドライヤーかけながらぼんやり見ていたところ光浦さんが紹介していたこの本がとても気になったので早速翌日本屋さんへ行く。ミーハー。

    夫の浮気を知った妻は、その日からどんどん骨をきしませ巨大化していく。夫は償いの気持ちからか妻の世話を献身的にするが、妻の巨大化は進む一方。3か月で3メートルを超え、トイレに入れなくなり、室内の移動もままならず、しかし巨大化した分食事の量は増えそれに伴い当然排便の量も増えて・・・酷い言い方かもしれないけれどほとんど人間ではなく象かなにかの飼育状態。とにかく排泄物関係の表現が多く異臭騒ぎにまで発展するので読んでるうちに本から臭ってきそうな気持に(苦笑)

    妻はひたすら動物的に、食べる→排泄する→巨大化する→もっと食べる→もっと排泄する→もっと巨大化する、を繰り返し、最終的には進撃の巨人か!という大きさに・・・。かといってそれが夫の不倫に対する妻の復讐かというと、巨大化に伴う苦しみは妻自身のほうが大きく割に合わない。

    しかしそうなってはじめて夫は心から妻に献身的になり愛情を再確認する。解説で小池真理子が『死の棘』の話をしていたけれど、なるほど確かに、浮気夫のせいで狂気を発した妻、その狂気を目に見える形に具現化したらこういう物語になるのかもしれない。これは私小説ではもちろんないけれど、夫は兼業作家で、心の一部に「これは小説のネタになるかも」と他人事のように眺めていたりもして、なんだか人間の業の深さを思い知らされる。

    巨大化の過程で一瞬だけ、巨大なことを除けば完全な均衡を取り戻し美しくなった妻とまじわる場面があるのだけれど、ときどき引用されるボードレールの「巨女」の詩と相まって、妻が女神のようだった。おそらく作者が一番書きたかったのはこの場面だったのではなかろうか。本のタイトルが「巨女」ではなく「臣女(おみおんな)」となっているのは夫の誤字ゆえだけれど「おみおんな」と口にしてみるとなにかとても女性を崇める神聖な古語のような響きがある。

    元はといえばゲス不倫などする夫が最低なだけだが、30代息子を「文ちゃん」と呼び干渉し嫁いびりをする毒母、粘着質で嫉妬深い同僚男、虎視眈々と詮索・監視してくるご近所の老人たちなど、巨大化した妻より彼らのほうがよほどグロテスクな化け物じみていて気持ち悪い。醜悪に巨大化していく妻を献身的に支える夫はそれはそれで大変だったろうと思うのだけど、でも結局、何の罪もないのにそのような苦しみを背負わなければならなくなった妻が、ただひたすら痛ましい。結局最後に犠牲になるのは女のほうかーという不満はありつつも、なんだか神話のような余韻があった。

  • 2016.12.27-72
    夫の浮気を知り巨大化する奈緒美を家に閉じ込めて世話に追われるが、挙句トラックで逃避行するも死なれてしまう夫文行。中盤の奈緒美のグロテスクな描写に対し、最後の巨大化した理由が回想されるシーンが切ない。

  • だいぶ読む人を選ぶ本でした……
    割りと終始グロテスクな内容なので食前、食後はおすすめしません……
    夫の浮気をきっかけに巨大化していく妻の話なんですが、大きくなるというのがファンタジーな感じではなく、ちょっと生々しく不快な表現も多々見受けられます(皆さん書いてるけど排泄の表現がやたら多い)
    夫は仕事に妻の介護に明け暮れて日々を過ごし、だんだん巨大化した妻を隠し切れなくなり追い詰められていく……という内容
    あらすじだけ読んで買ったので、根性で読みました
    妻がだんだん妻じゃなくなっていく描写がいやに事細かく、最後の方は怒涛でラストシーンは意外と静かに着地します
    星が2つなのはグロテスクな描写がどうもあまり得意では無かったからで、内容だけでいったら3でした
    読後はちょっとしんどいな~と思ったらこれハリガネムシの人だった!!!そりゃグロテスクなはずだ

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著者プロフィール

1961年愛媛県生まれ、大阪府育ち。1997年、「国営巨大浴場の午後」で京都大学新聞社新人文学賞受賞。2001年、『クチュクチュバーン』で文學界新人賞受賞。2003年、『ハリガネムシ』で芥川賞受賞。2016年、『臣女』で島清恋愛文学賞受賞。 最新作に『出来事』(鳥影社)。

「2020年 『ひび割れた日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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