北天に楽土あり: 最上義光伝 (徳間文庫 あ 64-1 徳間時代小説文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198942731

作品紹介・あらすじ

伊達政宗の伯父にして山形の礎を築いた戦国大名・最上義光。父との確執、妹への思い、娘に対する後悔、甥との戦。故郷を愛するがゆえ、戦場を駆ける北国の領主には数々の困難が待ち受けていた。調略で戦国乱世を生き抜いた荒武者の願いとは……。策謀に長けた人物とのイメージとは裏腹に、詩歌に親しむ一面を持ち合わせ、幼少期は凡庸の評さえもあったという最上義光の苛烈な一生!

感想・レビュー・書評

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  •  まず、日本は広いなぁと読みながらしみじみ。

     戦国時代と言えば、信長、秀吉、家康しかいないような錯覚を覚えてしまうけれども、戦国の沼に嵌っていろんな作品に出合ったことに感謝。

     この小説の主人公は伊達政宗の伯父である最上義光。
     自分の父、甥、上杉と戦い続ける人生を送った戦国武将らしい人なのでしょう。

     ですが、信長が死に、秀吉が台頭に立ったことで今まで自分が得たものを失い(この辺りは高校の日本史もでもやってるんですが、検地や刀狩りってものすごく意味のある政策だったんだと再認識!)、最愛の娘・駒と駒が死罪にされたために妻の康子も自害。

     そして、豊臣から徳川へ派閥替えをしたところが、長男の廃嫡命令の末の暗殺。

     本当に駒姫のシーンにボロボロ泣いてしまいましたよ。本当に彼女は戦国で一二を争うほどかわいそう(´;ω;`)ウゥゥ

     だって秀吉の甥の関白秀次の側室になる予定で、彼に会ったこともないのに京都三条河原で死罪。彼女の生涯は他の本でも読んでますが、本当に駒姫や細川ガラシャの事を思うと石田光成が大〇〇〇になります。(〇に部分は自分で埋めてくださいね♪)

     彼の生涯の最後、戦国が終わり、子供たちが紅花を摘むのを彼が見て、紅花を育てることを決めるところがあるのですが、ここに行きつくために戦を乗り越えてきた最上義光という人物が大好きになっていました。

     戦国とは日本中で内乱が起っていたことで、それが終わっても、海外へ挙兵する秀吉の傲慢さや現地で戦う武将たちの苦労。後方支援をしなければならない残った者たち。

     そんなことを考えるとやはり豊臣ではだめだったんだなと思いを新たにしたりもしました。(この時、すでに秀吉は認知症を患っていたという説もありますしね)

     胸の奥に深く刻まれるような作品でした。

  • ☆4.4

    出羽にて単なる小さな勢力のひとつでしかなかった最上家を、東北でも有数の大名へと栄えさせたとして有名な最上義光。
    彼の波瀾に満ちた一生を書き上げた作品。

    若い頃は妹の義にも小言を言われてしまうような、ちょっと頼りなさもあった人。
    でも、大切な妹を守るためなら身を投げだしてでも守ろうとするような、優しい優しい人。

    そんな人が戦の世を生き抜き、大切な領民や領土を守るために、時には調略を用いて非道な決断も下しながら戦う。
    その覚悟を、決して軽く見るなどできないよな、と今の平和な世に生きるのんきな人として思う。
    何が起きてもおかしくないほどに乱れた世で裏切り裏切られ、家族であっても争ったり、情勢によっては手にかけねばならないのは、どんなに胸引き裂かれる思いだったろうか。
    戦にて自らを慕いついてくる部下たちに、死んでこいと言わねばならないその声は、どんなに力を込めて作った声だったろうか。

    決して特別な人間ではなかったその男は、それでも自らを奮い起たせ前に進んだ。
    あまりにもいとしくなる、そんな最上義光を書き上げている。
    家臣たちなど脇役にも、活躍の差はあれど気に入ってしまう人たちがたくさんいて、その人たちの人生も時に涙しながら見守った。

    588ページとボリュームいっぱいの作品ですが読むのが止まらない。
    この人から見たらこんな風になるのか、と読むときの"敵味方"って本当に視点次第よな、と感心しながらのあっという間の読書時間だった。
    初読みだったの天野純希さん、これからめっちゃ推してく。


  • やっと時間が出来たので久しぶりに読書。
    天野さんはお初の作家さんです。

    政宗の叔父で極悪非道の大名と悪名高い、最上義光。

    題名が明るいので手に取ってみましたが
    さらりと一気に読めました。

    陰湿な印象の武将のわりに
    彼が治世の出羽では一揆がおきなかったそうです。

    他の武将の本も読みたいな、と思いました。
    いい作家さんですね。

  • 最上義光の一代記。父、娘、息子を亡くしても、家を、そして、領土とその民たちを守る。戦国末期と令和、時代は違えどしていることはそう変わらない。前を向いて生きていくことは、なかなかに大変なことだ。

  • 頁数の割にはサクサクと読めた印象。
    本作の義光は当初予想してた謀略家のイメージとは異なり、家族思いで悩みながらもお家と山形の民の為に時には手段を問わず戦い続ける人物で描かれており、感情移入しやすい設定だった。勢力的に最上家が山形で一番の大名ではなかったとは知らなかったので改めて義光の功績の偉大さを知り、それ故最後は切なかった。

  • 最上義光の小説は初めて読んだが、よく描かれがちな謀の多い梟雄としての姿ではなく、自分の周りの人々を護ろうとする慈悲深い人物として描かれており、とても新鮮な印象を持った。

  • 大河ドラマの配役が浮かんでしまいました。最上義光、義姫、輝宗、政宗、小次郎とか。傑物だったんだとも。配下の武将達がいきいきしている。

  • 「北天に楽土あり〔最上義光伝〕」(天野純希)を読んだ。
    読み終わって暫し言葉を失うくらいに素晴らしい作品でした。
    関ヶ原合戦の陰にこんな戦もあったのか!
    読む前に妻と息子に「もがみよしあき」って知ってる?と話を振ったら蘊蓄を散々聞かされて、『知らないのは私だけかよ!』状態でした。

  • 先輩から拝借して読了。かつてNHK大河「独眼竜正宗」でみた最上義光はかなりの悪役だったと思うが、別の視点で描かれている。歴史上、100%善とかその逆とかというものはない、と思っているが、イメージは無意識に影響しているなぁと改めて感じた。作品としては淡々としたトーンで、読みやすかった。

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著者プロフィール

天野純希
1979年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知大学文学部史学科卒業後、2007年に「桃山ビート・トライブ」で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞。近著に『雑賀のいくさ姫』『有楽斎の戦』『信長嫌い』『燕雀の夢』など。

「2023年 『猛き朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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