秋萩の散る (徳間文庫)

  • 徳間書店 (2019年10月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784198945084

作品紹介・あらすじ

『若冲』『落花』等で注目の歴史小説家、
澤田瞳子の原点

デビュー作にして
中山義秀文学賞受賞作
『孤鷹の天』で描かれた
奈良の世に生きる人々の姿を
活写した傑作集!

【三省堂書店有楽町店 内田 剛氏絶賛!】
本作から澤田文学に触れた読者は極めてラッキーだ。
この著者のエッセンスと最大長所を余すところなく
知ることができるからだ。
歴史ものを書かせたらいま最も信頼のおける
書き手と言っても差し支えないだろう。
(解説より)

阿倍女帝こと孝謙天皇に寵愛され、
太政大臣禅師や法王などの高職に
就いていた頃の面影は、もはやない。
女帝の死後すぐに下野国薬師寺別当に
任ぜられた道鏡は空ばかり見て過ごしていた。

そこに行信と名乗る老僧が道鏡に近づき
「憎い相手はおらぬか――」と囁く。
そのとき、道鏡の心に浮かんだ顔は……。

奈良時代、治世の安寧を願いつつ生きる
人々の姿を描いた珠玉の短篇集。

【収録作品】
「凱風の島」命懸けで荒波を乗り越えた遣唐使たち
「南海の桃李」西海道整備に尽力する吉備真備
「夏芒の庭」大学寮の若者たちと橘奈良麻呂の乱
「梅一枝」石上朝臣宅嗣と門人の賀陽豊年との絆
「秋萩の散る」左遷された道鏡と行信の苦悩

みんなの感想まとめ

奈良時代を舞台に、実在の人物たちの複雑な心情や葛藤を描いた短篇集は、歴史の裏側に潜む人間ドラマを鮮やかに活写しています。遣唐使を題材にした作品では、権力の波に翻弄される人々の姿がリアルに表現され、特に...

感想・レビュー・書評

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  •  奈良時代に生きた実在の人物たちを、群像劇風に取り上げた歴史小説短編集。
     特に、遣唐使を題材に採った作品が多い。
     鑑真の渡航に居合わせ、帰国を望む阿倍仲麻呂と語らう、藤原刷雄の板挟みの心情を描く「凱風の島」。
     その父・藤原仲麻呂の権勢と凋落を重ねれば、感慨も深まる。
     同じく、遣唐使より帰国した吉備真備が、南海の島々に道標となる嶋牌(しまふだ)を立てるべく奔走する「南海の桃李」。
     途方もなき未来への祈りと、同志の高橋連牛養との友情が篤い。
     『孤鷹の天』のスピンオフとも言うべき「夏芒の庭」は、同じく大学寮を舞台に、政変に翻弄された若者たちの友情と悲劇を描いている。
     上記作で主人公の先輩格だった、佐伯上信と桑原雄依の出逢い編。
     「梅一枝」は、日本初の公開図書館である芸亭の創始者・石上宅嗣の許に、突如現れた聖武天皇の御落胤を巡る騒動話。
     最後を締めるのは、寵愛を受けた称徳天皇の崩御後に失脚し、下野国薬師寺への転任を命ぜられた弓削道鏡が、かの地で過ごす空虚な日々と、女帝への愛憎を描いた表題作。
     全体的に、政治の表舞台よりも、そこから派生した末端の環境や、左遷ないし排斥等、不遇の憂き目に遭った者たちを取り上げることで、歴史の奔流に飲み込まれる人々の悲哀や無常観が色濃く反映した作品となっている。

  • 幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎の娘・河鍋とよ(暁翠)を主人公にした小説で直木賞を受賞した、澤田瞳子。

    『星落ちて、なお』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B094HZY84B

    明治から大正にかけての、日本画および絵師たちに降りかかった大きな変化と、そのうねりの中で自らに向き合い絵師であることを貫いた暁翠の内面を表現した、重厚な作品でした。
    この作家さんの作品にはまだ未読のものがあることを思い出し、デビュー以来の中心テーマである古代を題材にしたこの作品を、読んでみることにしました。

    本作品は、5つの短編で構成されています。

    最初の『凱風の島』は、現在の沖縄本島を舞台にした、遣唐使のお話。
    日本国内でなかなか進まない、仏教の戒律の普及のために招聘された、鑑真。
    6回も繰り返すことになったその渡航が大変だったとは聞いていましたが、彼を引きとどめたい唐側の動きなど、船の運航以外にも要因があったのだということを、教えてもらいました。
    そして航海技術が未発達だったこの時代、それぞれの船が無事にたどり着くかどうか、まさに紙一重だったということを、具体的なイメージを持って理解することができました。

    表題作の『秋萩の散る』は、怪僧と呼ばれた道鏡が主人公。
    孝謙天皇に重用され、天皇の血筋以外としては異例の出世をした彼ですが、女帝が崩御するとすぐに、東国の寺へと流罪同然の左遷をさせられてしまいます。
    その地で出会ったのが、「呪い殺しが出来る」と言う老僧。
    老僧から誘いを受けた道鏡が、孝謙天皇という女性が自分にとってどういう存在だったのか、その存在に自分はどう向き合うべきか、思い悩む姿が描かれています。
    人の評判、歴史上の評価というものはどれだけ、人為的に曲げられるものなのか?歴史上の人物について、自分が知っていることはどれだけ正しいのか?と、考えさせられる内容でした。

    5作品に共通するのが、奈良時代、それも女帝・孝謙天皇の時代が題材となっていること。
    この時代に起こった大きな出来事の、サイドストーリー的な話を、時代順に読むような構成になっています。
    一冊を読み通すことによって、この時代に、日本という国の形成に大きな影響を与えた出来事が起こっていたということを、学ばせてもらいました。
    その変動の時代に、夫も子供もいない女性として描かれる孝謙天皇の姿が、(本人は登場しないのでよけいに)印象に残りました。

    この作家さんがさまざまな題材を扱っていることは知っていますが、やはり、日本の古代を扱った作品は興味深いですね。
    歴史を学ぶという意味でも、作品を探して読んでいきたいと思います。
    .

  • 下野国薬師寺別当として流されてからの道鏡の心境がよかった。坂口安吾の道鏡も好きだが、澤田瞳子さんの道鏡もとても印象的。

  • 奈良時代の話。
    弱くも強くもある人の葛藤や心底が伺える。
    澤田瞳子さんは素晴らしい!
    この本を読んでからの「弧鷹の天」お薦めです!

  • 遣唐使。学生。役人。そして道鏡。

    奈良の時代に生きた人たちの
    国を思う人生を描いた作品。

    争い、裏切り、裏切られ
    それでも治世の安寧を願った男達。

  • 奈良時代を舞台に、官吏や学生といったそれぞれの立場から国を憂う人々を描いた短編集。
    鑑真を伴って帰国した遣唐使団の、その後の明暗。
    純真な学生たちに降りかかった政争の黒い渦。
    女帝をたぶらかして権勢をほしいままにしたと考えられている道鏡の真実。
    宮廷を舞台に、華やかに華麗に、ダイナミックに描かれやすい奈良時代の、違った一面を切り取った作品だ。

  • 初めての澤田作品。これが澤田瞳子かという衝撃。一気にファンになってしまった。当時の地名や呼び名を使いながらも、会話や地の文の説明は分かりやすく、何より当時の風景を想起させる巧みな情景描写が物語を唯一無二のものにしている。

    本作は聖武・孝謙天皇の時代を描いた5編の短編集。特に2作目の「南海の桃李」がお気に入り。吉備真備と高橋牛養の友情、そして当然だけどあまり意識していない未だ日本の領土でなかった島々をどう統治していったのかの端緒とその難しさが出ている。

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著者プロフィール

澤田 瞳子(さわだ・とうこ):一九七七年京都府生まれ。二〇一〇年に『孤鷹の天』でデビュー、同作で中山義秀文学賞、一三年『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞、一六年『若冲』で親鸞賞、二〇年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、二一年『星落ちて、なお』で直木三十五賞を受賞。『火定』『名残の花』『輝山』『月ぞ流るる』など著書多数。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

澤田瞳子の作品

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