短篇ベストコレクション 現代の小説2020 (徳間文庫)

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本棚登録 : 50
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198945664

作品紹介・あらすじ

2019年~2020年に発表されたすべての短篇から日本文芸家協会編纂委員が選びに選び抜いた珠玉の15篇。ここに、この時代の世相がすべて詰まっている。

阿川佐和子「カモメの子」井上荒野「緑の象のような山々」奥田英朗「ファイトクラブ」柿村将彦「みみずロケット」片瀬二郎「ミサイルマン」北原真理「くもなまえ」今野敏「密行」桜木紫乃「春雷」佐々木愛「夜の子」佐々木譲「遭難者」瀧羽麻子「本部長の馬鈴薯」田中兆子「若女将になりたい!」馳星周「娼婦と犬」村田沙耶香「変容」柚木麻子「エルゴと不倫鮨」

感想・レビュー・書評

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  • 奥田英朗さんが大好きで、作品が載っている本は全部手元に置いておこうと、手に取ったこの本
    予想外の大当たりだった 

    2019に諸雑誌等に掲載された数多くの短篇小説の中から選び出された年間最優秀作のアンソロジー
    15人の作家のうち読んだことがあるのは8人、7人の作家さんとは初めての出会いである

    解説も含めると741p、文庫本とはいえ圧巻である
    そして、何よりも15作品どれもがおもしろい!
    原稿用紙何百枚もの長編を書き上げる筆力はもちろんすごいことに違いないが、こんな短編で読者の心を掴む技も長編に勝るとも劣らない力なのではないだろうか

    15編それぞれが異なる作風で楽しませてくれる

    とりわけ気に入ったのは、
    柚木麻子の「エルゴと不倫鮨」
    下心見え見えのちょいエロおやじをぶった斬る痛快さ
    やはり柚木さんは女性を書かせたらピカ一ではないか

    毎年、この短編ベストコレクションは、前年の優秀作から選び抜いて出版されているとのこと、以前のも読んでみようかなと思った その年の動きが感じられるかもしれない

  • 日本文藝家協会・編『短篇ベストコレクション 現代の小説2020』徳間文庫。

    2019年から2020年に発表された全ての短編から日本文芸家協会編纂委員が選びに選び抜いた15編を収録。

    たまにはこうした短編アンソロジーを読み、新たな作家や余り読んだことのない作家との出会いを楽しむのも善し。750ページ余りの読み応えのあるアンソロジー。15編の短編の中でも特に井上荒野、今野敏、馳星周、柚木麻子の短編が良かった。

    以下は、個々の概要と感想など。

    阿川佐和子『カモメの子』。千葉県の海辺の町で祖母と暮らす中三の紗季の元に5歳の時に家を出て母親が戻って来たことで狂い出す紗季と祖母の平穏な日常の歯車……

    井上荒野『緑の象のような山々』。一也とさくらのメールだけで構成された物語。妻子を持つ一也は仙台から東京に単身赴任してもなお仙台の職場の元同僚のさくらと不倫を重ねる。しかし、さくらが妊娠したことを知るや一也は……メールの頻度と内容が少しずつ変わり、二人の気持ちの変化が手に取るように解る。男の身勝手な愛は愛とは呼ばず。ラストの車窓から見る緑の象のような山々の描写が光る。

    奥田英朗『ファイトクラブ』。家電メーカーの社員で46歳になる三宅邦彦は会社の早期退職勧告に逆らい続けた挙げ句、郊外にある工場の警備を命ぜられる……今の世の中、退職勧告は良く耳にする話。数年前まで自分が働いていた会社では4年に一度、計7度もリストラがあった。親会社の業績が悪くなれば国内外問わず主幹事業を切り売りして、子会社のリストラや閉鎖を平気で行い、それを経営改革と呼ぶ蜥蜴みたいな会社だった。次第に仲間が少なくなる状況に嫌気がした自分は蜥蜴みたいな会社と訣別した。

    柿村将彦『みみずロケット』。初読み作家。安穏な日々の中の刺激的な事件。バケツの中の腐葉土で安穏と暮らしていたことに気付いた自称ロケットのミミズがライギョと対決する……何のこっちゃ。読めば解る。

    片瀬二郎『ミサイルマン』。初読み作家。セヤナ人民共和国の選ばれし兵士ミサイルマン。まるで初期の筒井康隆作品の世界。

    北原真理『くもなまえ』。初読み作家。祖母との二人きりの暮らし。主人公の僕は奇妙な出来事の中で、後悔を味わうだけ……

    今野敏『密行』。機捜235シリーズの読み切り短編。機動捜査隊の高丸は渋谷署の刑事と恐喝の被疑者のガサ入れを行うが空振りに終わる。被疑者に捜査情報を漏らした警察関係者なのか……小気味良いテンポで物語は進み、着地も見事。

    桜木紫乃『春雷』。北海道の港町に暮らすマツには上方舞いの名取となった1つ下の忍という弟が居た。マツに縁談の話が舞い込み、忍にも養子縁組縁談の話が持ち上がる。しかし……ノーマルな自分には全く理解できない心情だ。

    佐々木愛『夜の子』。初読み作家。出産予定日まで2ヶ月という夜子。毎日ひとつ小説を書いて欲しいと頼まれる夜子の夫は不安と期待と小説を書けぬ苦しみを味わう。ほのぼののとした物語のはずが、読み進むと嫌な不安だけを感じるのが不思議。

    佐々木譲『遭難者』。昭和12年の夏、奇妙な明るい光が照らした後、隅田川に浮いていた謎の男が病院に運び込まれる。男は一切の記憶を失っていた……珍しいタイムトラベルSF短編。

    瀧羽麻子『本部長の馬鈴薯』。初読み作家。北海道で農場を経営する淳子の元に東京の商社を定年退職した斉藤という男が手伝いに来る。最初は口ばかりで手が動かず、本部長とあだ名される斉藤だったが、次第に農業に馴染んでいく。

    田中兆子『若女将になりたい!』。初読み作家。自分が性同一障害であることに気付き女装を続ける範之は、実家の旅館で若女将になりたいと帰省したが……こういうことが小説のテーマになるとは時代が変わったな。正常と異常の境目が解らん。

    馳星周『娼婦と犬』。デートクラブで働く女が夜に瀕死の重傷を負った雑種犬を拾う。レオと名付けた犬と暮らすうちに明らかになる女の犯した罪。犬が女の汚れた心を清らかにしたのだろう。なかなか読ませてくれる秀作。

    村田沙耶香『変容』。怒りの感情を失った世の中に付いていけなくなった主人公。しかし、いつの間にか主人公もなもんでいく……確かに今の世の中、訳の解らない言葉や変なものが流行ったりする。

    柚木麻子『エルゴと不倫鮨』。初読み作家。非常に面白い。訳ありカップルが集う都内の会員制イタリアン創作鮨店に、乳児をエルゴ紐でくくりつけた体格の良い中年女性が入って来る。女性は店のコースなど無視して、メニューにも無い鮨を調理方法まで指定して赤ワインと共に次々と平らげていく。下心丸出しの男どもの連れの女性は中年女性に魅了され……

    本体価格1,160円
    ★★★★★

  • 短篇小説アンソロジー。読んだことのない作家さんが半分以上でしたが、楽しめました。
    お気に入りは柚木麻子「エルゴと不倫鮨」。ここに登場するお料理がいろいろとおいしそうなのも魅力だし。なんといってもあまりに爽快な読み心地に快哉を叫びます。不倫男ども、ざまあみろ、という感じですよね。逆に頑張る男たちが主役の奥田英朗「ファイトクラブ」も爽快で楽しい作品。
    あとは北原真理「くもなまえ」が少し不思議な読み心地もあって惹きつけられました。さらに桜木柴乃「春雷」もとても好きな雰囲気の一作です。

  • 2021/06/27 読了

     協会が毎年選んだ、その年のベスト小説が一挙に味わえるという贅沢なシリーズ。年々分厚くなっている。
     とはいえ、ジャンルも様々なので、自分にあったものとそうでないものが毎年ある。

     印象に残ったもの

    ・片瀬次郎「ミサイルマン」
     笑った。2020年度の作品で一番好きだったかもしれない。とある人民共和国から来たンナホナ。彼は、体に兵器が埋め込まれた「ミサイルマン」だった。その国の強権的な大統領の命令により、世界各地に散った「ミサイルマン」は一斉に破壊・侵略活動を開始する。
     主人公が車の中からンナホナを探す。街が破壊されるシリアスな展開ながらも、なぜかそこにコミカルさ、また、ブラックなジョークを感じてしまう。

    ・ファイトクラブ
     会社で工場に左遷された主人公らオジサン世代の従業員。そこに突如、コーチが現れボクシングを教えてくれる。だんたんと強くなるオジサンたち。強権的な会社と、それに抵抗するおじさん達の奮闘が痛快。
     最後、コーチはいなくなってしまう。明記されていないが、このコーチは昔、同社のボクシング部を率いていたコーチで既に亡くなっている。要するに幽霊だったと解釈した。

    ・娼婦と犬
     主人公(24歳女性)はある夜怪我をした犬と出会い、引き取って「レオ」と名付ける。
     主人公は借金取りに負われているが、それは同棲した彼氏の借金。しかし、徐々に主人公が娼婦であること、その彼氏を殺害した過去、様々なことが少しずつ明らかにされるという描写の仕方が秀逸。
     結局、客と行為に及んでいる最中、その彼氏を殺害した事実を思い出してしまい、勢いでその客に暴行を加えて気絶させてしまった主人公。車でレオをつれて逃げる。苦しく目を背けたくなる生活の中、レオだけが彼女をいやしてくれる存在であった。最後まで救われない主人公の物語。

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著者プロフィール

阿川佐和子 井上荒野 奥田英朗 柿村将彦 片瀬二郎 北原真理 今野敏 桜木紫乃 佐々木愛 佐々木譲 瀧羽麻子 田中兆子 馳星周 村田沙耶香 柚木麻子

「2020年 『短篇ベストコレクション 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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