ロビンソンの家 Memories of the never happend 1 (徳間文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198947323

作品紹介・あらすじ

夭折の天才打海文三が描く「壊れた家族のその明日
の物語」
幻の雑誌連載版第1回を特別収録

打海さんの作品がこうして復刊され、残っていくこ
とはとても嬉しい 伊坂幸太郎

野心的で、緻密で、清潔で、かつ適度にちゃらんぽ
らんなところもある、いい小説―― 宮内悠介

「人と人の関係で歪んでいない関係は一つもない。
それを修復しようと心を砕く。人生はその繰り返し
だ。馬鹿げてると思わないか?」17の夏、高校休学
中のぼくは母が自殺した田舎町へ。従姉と伯父、変
わり者二人の暮らす〈Rの家〉で語られる母の孤独
の軌跡。すれ違う人々の胸に点滅する〝それぞれの
切実〟をシニカルにそしてビターに描きだす、救わ
れざる魂を持つ漂流者たちの物語。

〈トクマの特選!〉
イラスト ともわか


〈目次〉
第一章 絶妙に、甘美
第二章 シ、シティボーイだ
第三章 ロビンソンの家
第四章 彼女は馬を抱きしめて激しく泣いた
第五章 愚行はつづく
【特別収録】 ロビンソンの家 雑誌連載第一回 

解説 宮内悠介

感想・レビュー・書評

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  • 塔が燐光を発しているように眼に映る アイボリー(象牙色) 大谷石の塀があった 浅黒い肌には艶があり 肥大した自己愛と鬱積した憎悪について 一種のマッチポンプ(自作自演行為)ね。詐欺同然よ。 我々は生身の人間に投影した自分の性幻想に欲情するんだ 「論理構成はわかります。タブーを侵犯すると自我が動揺するんです。自我の消滅。絶対的帰依。宗教のオーガズムと似てる」 制服で拘禁して すじょう素性の不明な 俺が窃視したというスタイルで 吃って あおは青灰色の海に着水した ぜんてい前庭 赤蜻蛉の群舞ぐんぶ 施主せしゅ しょうか商家あきんど 「僕達の欲望も挫折も、本に書いてある通りの道を辿る。残念ながらね」「本当にそうなら、生きてるのが、馬鹿馬鹿しくならない?」「だからこの世界を切断する」僕は言った。「意味の切断、時間の切断」李花が言った。 あのリベラル(自由主義)な男でも優生思想が一瞬頭を過ぎる 「濃淡の差はあるが、全ての人間関係は呪縛である、と言えなくもない」 そうがい窓外に視線をめぐらして言う 偉大な変態は現実の愚行を表現によって回避するんだ くつ沓脱ぎ 「アメリカの癒しが唯一の目的だからだ。傷つけられたベトナムは、製作所の関心の外にある」 「男と女は来賓各位を前に永遠の愛を誓う。新郎は自己のペニスを新婦のヴァギナに、新婦は自己のヴァギナを新郎のペニスに、永遠に、限定的に使用するものでありますと、男と女は厳かに宣言する」 むざむざ罠に嵌り、媚態を示して俺を籠絡することに熱中した過去を、順子は酷く悔やみはじめた 「禁欲的なやつって、自分をよくコントロールして最後まで徹底的に戦うだろ?そういうやつは『マイウェイ』を歌わない。人生に悔いなし、なんて甘っちょろいことは言わない」 「誰かのアフォリズム(箴言)にある。更年期は女性が美しく陰っていく人生の秋だ」 そして見かけ上はジェンダーバイアス満載のハードボイルドとする 滅茶苦茶周到且つ八方破れな代物なのだ つまるところ母によって家父長制を破壊された少年が、器のみを残した家を経て、漂流者=ロビンソンとしてあてどなく彷徨う、その流浪の物語なのである。

  • 伊坂幸太郎の帯紹介と装丁を見て衝動的に購入。

    ミステリー?青春もの?

    よくわからないまま読み進めましたがふわ〜とした雰囲気の中、会話ベースで物語は進んで行きます。

    違うな。


    進まずに同じようなところをぐるぐるしています。

    最後は衝撃を受けました。

    結論、青春ものかな。




  • めんどくさい人たちによる、同じところをグルグル回っているようなディスカッション・ドラマ。この手はいつの時代も一定量が供給されているし、安い邦画なんかは特にそうだから、必要としている人たちは常にいるんだろう。登場人物は誰もクールに振る舞うのだけれど、すごい熱意で懸命にクールぶってる印象で、平熱の登場人物が多い、今時のドラマに慣れていると、暑苦しくて仕方がない。このくらいの古さが、いちばん古びて感じられるものなのかも知れない。

  • 胸に残る切なさが染み渡って薄まらない。
    そんな物語だった。

    印象深いシーンを付箋で留めながら読んでいたのだけど、序盤でリョウと李華が口喧嘩をしつつも次第に仲良くなっていったことを言及しているところを留めていた。そんなふうになんでも言い合える関係を築いたことがない自分にはとても眩しくみえた。

    2人で東北へ出かけていた時間は端的に書かれていたけど、2人にはきっと忘れられない時間でその思い出を抱えて生きていくんだと思っていたけど、こんな寂しい結末だとは。

    母の喪失からRの家を訪ねたが、母が生きておりもうすぐ会えるという真相と、Rの家で親しくなり、お互いを思い合っていた李花が亡くなったという事実。

    ラストシーンの客室乗務員から差し出されたオレンジジュースに、私は初めて小説で涙が出た。

    他にも会話の途中で挟まれる情景描写がすごくて、会話から一気に物語の世界に飛ばされる感覚があり、どんどんのめり込んでいった物語だった。


    この本をおすすめしてくれた顔も名前もしらない誰かと、この本について語る機会があればと思う。

  • 伊坂幸太郎さんがエッセイに書かれていた作家さんだったので読んでみました。

  • なかなか猥談も多かったので、あまりうまく書く術を持ち合わせていないけれど、出てくる女性たちが徹頭徹尾の姿勢を貫いていてそれがどんな形であれ、強いなと思うし、重かった。色んなテーマが織り込まれていて、とても好きな小説だった。冗長ではない短めの章に、モチーフにどんな意味があるのか考えるのはとても楽しい。解説にもあったけど、小説っぽいと思う。ラストシーンも含めて闘っているようで、もっと打海さんの作品、読んでみたくなった。

  •  表紙からの、まったくの衝動買い。
     各章は比較的短くて、読みやすい本。主人公の少年17歳が、飲酒喫煙セックスを普通にしていてそれを誰も咎めない、とういところは個人的には眉を顰める部分ではあるけれど、描写だとか醸し出す雰囲気とか難癖のある登場人物から目が離せなくなる。
     登場人物たちにトクに思い入れがあったわけではないけど、ラストの衝撃的なシーンに思わずポロリとしてしまった。

     読了してから気づいたんだけど、裏表紙に本の内容についてレーダーチャートが描いてあった。すごく的確に示してある。泣けるの項目が5段評価のうち2なんだけど。

    追伸
    わりと読みやすい本だったので、たったか足早に読んでしまったが、もっとじっくり読むべきだった。そのうち再読したい。

  • すっと読めてすごく面白いんだけど、
    9割シモの話してたから苦手な人はよく考えてから買った方がいいかも

  • 帯の「伊坂幸太郎歓喜」に目がとまり手にとって見た。同じ日に偶然マイク・ミルズの「20センチュリーウーマン」という映画を見た。何だかうまく言葉にできないがこの2作品が纏う不思議な空気感に絡め捕られた一日だった。
    読了してから伊坂幸太郎の「3652」をひろい読みしたら打海文三について「この作家の得体の知れなさに驚く」と評していた。同感である。

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著者プロフィール

1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。92年『灰姫鏡の国のスパイ』が第13回横溝正史賞優秀作を受賞し作家デビュー。2003年『ハルビン・カフェ』で第5回大藪春彦賞を受賞。07年10月逝去。

「2022年 『Memories of the never happened1 ロビンソンの家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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