天涯行き (キャラ文庫)

著者 :
  • 徳間書店
3.80
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本棚登録 : 417
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199006715

感想・レビュー・書評

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  • ▼あらすじ
    名前しか知らない相手と、夜ごと激しく抱き合って眠る──。
    旅の青年・高知(たかち)をなりゆきで家に住まわせることになった遠召(とおめ)。戻らない恋人を待ち続ける遠召と、人懐こい笑顔と裏腹に、なぜか素性を語らない高知。互いの秘密には触れない、共犯めいた奇妙な共同生活。この平穏で心地良い日々はいつまで続くんだろう…? 
    けれどある日、高知が殺人未遂事件の容疑者として追われていると知って!?

    ***

    重くてシリアスなんだけど、凄く心に残る作品。
    とにかくラストが良かったです。決して派手じゃないし、幸せに満ち溢れてる訳でもない。ただ静かに息衝くようなラストに心を打たれました。
    暗くて長いトンネルを歩き続けて、やっと出口への光が見えた…そんな希望のあるラストだと私は思います。
    幸せになって欲しいと、読み終わってから強く思いました。

  • 【フェア購入】それぞれ事情を抱えた男二人がひょんなきっかけで同居するお話。何の予備知識もなく読み始めたら、そこはとんでもないどシリアスの世界でした・・・(汗)読み進める間、荒波が打ち寄せる崖の上で立ちすくむような、身体も心も哀しさで冷え切ったような感覚に陥り、どう頑張っても分かり合えない相手について、自分の中でどう折り合いをつけるか、涙が出るほど共感しました。いやぁ、こういうBLもあるんですねぇ~。まるで片方が欠けたらハートにならないペアペンダントのような二人が幸せになっていることを心から願います。

  • ロマン、だなあ。
    壊れた自転車を二人乗りして、逃げる。暗い道を逃げていく。ロマン、 というのがこのシーンを読んで浮かんだ言葉でした。からっぽにならなければ生きていけなかった人と、ひびが入ってしまって元通りの幸せを取り戻せない人。二人が終点を決め、刻限を決めて逃げるのはロマンとしか言いようのないシーンだと思います。ここが、この小説で一番印象に残っています。
    へんなたとえですが、この二人はすり鉢になった同じ道を歩いてたんだと思います。それでどん底まできて出会って最終的に斜めになった壁を登る方法を相談し合う。まだ上には帰れないけど、とにかくなんとかして戻ろう、二人で戻ろう、そんな話だったと思います。
    全体的に静かな森の中を歩いているみたいな話で、文体で、境遇はつらいけど安らかな気持ちで読めました。ずっと夜で静まり返った森ではなくて、だんだん明るくなり、朝になり昼になり鳥がさえずっているような。いろんな思惑があって、どうにもならない不器用さを癒してくれる気がしました。
    最後、受けさんは待つことになるけど、これはとても大事で必要な時間だと思います。三年なら、短いでしょう。帰るかもわからない待ち人に怯える日々より、何倍も幸せだったでしょう。待つ、ということの穏やかさをこの人が知れたのはとてもよかった。前向きな約束を守りながら待って、出会いと同じシーンを、まったく違う心境で迎える。やっぱりロマン、です。
    このあと、二人が喧嘩とかができる関係になったらいいです。ぶつかって話し合って幸せになってほしいです。

  • BLとしてではなく、物語としてとても完成されています。
    キャラの設定、情景、背景、とても細かく丁寧で引き込まれました
    きっと性別とか関係なく、高知だからぴったりはまったんだろうなぁと
    受け攻めの感じがとても好みだったので良かったです
    明るくて優しい太陽みたいな高知と、満たされない穴を埋めるように誰とでも寝る遠召
    不器用だけど、痛みを知っている彼らだからこそ、ここまでぴったりなんだと思います
    遠召の過去がとても暗いですが、兄は嫌いではありません
    きっと彼も、ただ愛されたかっただけ

    後半の遠召が高知を待つシーン、飛ばさず1年1年を丁寧に描いたのが良かったと思います
    より遠召にとって高知は必要な存在だとわかったし、遠召が少しづつ未来へ向かって行くのがとても良かった

    別にBLじゃなくても、と言う人もいるかと思いますが、私はここまでしっかり設定が作られているBLが好きです
    逆にただヤってるだけのBLが苦手なので…

  • わたしにとって、凪良さんの作品は、ドツボとそうでもないのがわりとはっきりわかれてくるようです。

    設定やストーリー展開が非常によく考えられていると思う。けど、そこが重要なら、えっちシーンなくして、普通のレーベルから普通の小説として出した方がかえって好感度が高くなるんじゃなかろうかと思うのがこのジャンル。魅力的なキャラと、どんな恋愛劇、心情のうつりかわり、など、そして、どうして同性じゃなければだめだったのか、なによりBLの場合はそこなような気がするんだけど、この話はそこが薄いかな。
    もちろん、気持ちの移り変わりとか、丁寧に書かれていますよ。
    もしかしたら、それ以前にキャラの経歴に少々引きがあったかもしれません。特に主人公の方。
    しかし、一定以上おもしろかったので、☆4つ。

  • BLというより物語でした。お話。シリアスだし内容的に多少好き嫌い分かれるかも。どちらも傷持ちで、どちらかがどちらかを抱擁して癒すというような話ではなく、2人して迷子で途方に暮れて世界から切り離されるような、そんな話でした。最近では珍しく感じました。逃げて来た男と縛られて人形のように生きている男。途中は2人だけの閉じた世界のようで、ノスタルジックな、セピア色の空気感が良かったです。同じ距離の取り方、触れられたくない過去、明日の約束はしない2人。その心地よさが逆に何も語らないのにお互いを近づけていって。だけど答えは見つからなくて途方に暮れたままでも逃亡は終わらせなければならない。それでも、答えは判らないまでも、ようやく少しずつ前に進み出す話でした。決して大団円の、何もかも解決のハッピーエンドではないです。それでもこの2人は絶対に離れないだろうし、きっとゆっくりでも何十年かかっても、進んでいくだろう、一緒に生きていくだろうと思えたので良かったです。
    最後は少し駆け足だったかなと思いました。この後の2人を読んでみたい気もするし、そうなるとシリアスは避けられないだろうから重い気もするし。積木の恋とかぶる気もするし。これはこれで完結でいいのかもなと。最後は良かったです。最初と同じ場面に戻る。けどそこには確かな気持ちがある。良い終わりでした。再会するところが見たいのに!でも良い終わりだな!ていうジレンマ。
    話としては受の方がかなり悲惨な生い立ちなのですが、そこは全部予想がついたので、相当涙脆いんですけど泣かなかったしそんなに読んでて苦しいとかもなかったです。自分にしては珍しく。逆にこてこてすぎたせいかも。そこまで盛られるとっていう。攻の方も全部読めます。判りやすく示されてたので。生い立ちとか過去は泣かなかったけど最後の方はぽろぽろ泣きました。今の2人、これからの2人。お互いを知っているのに、知ってしまったからこそ、置いて、離れなければならない恐怖や不安、もどかしさ。

    姉の夫が痛い目みないのだけがかなり後味悪かったです。攻だけが罰を受けて。カタルシスがない。すっごい腹立つ。感情的には納得いかない。それが現実なんですけどねー。物語なので相応の報いを受けて欲しかったです。なんでだよ!悪いのあいつじゃん!て思って憤ったまま終わってしまった。現実としては手出した方が悪いんだけどさーでもさー酌量あってもいいでしょ?!もやもや。
    高久さんの挿絵がとても良かったです。背景とかお店とかきっちり描いてあって、すごく想像の助けになりました。びっくり。BL挿絵て人物アップで人物とちょろっと小物程度とかが多いし高久さんもそっちのイメージだったので。

  • 「天涯」とは遠い所とか、空の果て地の果てのことです。天涯孤独な二人の男が主人公。黒くて暗いテーマを扱っていますが、なんだろう、絶望的って感じはしないストーリーです。9割どんよりしてますが、あとの1割は罪悪感が希薄で痛くなく読めるかんじ。センセが楽しんで書かれたというのがわかるような、エンターテイメント性を秘めています。なので、重いかな…?と思いつつも途中で止められなくなって、最後までいっきに読ませてしまう面白さがありました。

    自分のせいではないのに理不尽な理由から「罪」を背負うことになった遠召。そして高知も不本意な事件を起こし「罪」を背負っています。そんな二人が出会い、心の安寧を得るためだけに互いの体を繋げる日々を過ごすようになります。
    体の関係だけなのにどんどん二人で居ることが心地よくなっていく経緯が説得力あります。
    自分のせいではないのに、自分が悪いと思い込み、理不尽に孤独な状態に追いやられてしまった二つの魂が出会った時、今までとは違う何かが生まれ変化していきます。遠召も高知も、それぞれに囚われていたものと再び対決し、互いの存在という力を味方に、そこから開放されるのです。

    「罪」を背負ってはいるけれど、高知も遠召も魂は汚れていない。糾弾している人たちの方がよほど汚いのです。許されざる奴らですね。身勝手で、のうのうと生きていて、腹立たしい。
    そんな奴らに置き去りにされ、不本意に一人ぼっちにされた高知と遠召は、むしろ被害者なのではないかと思わせます。
    魂が囚われていたとしか言いようがありませんが、自力でそこから脱出するのはこちらが考えるほど容易ではないのでしょうか?殺したいほど憎む気持ちや残酷な身内をばっさり捨て去る勇気というのは、なかなか困難には違いないと思いますが。

    救いは、やはり二人が巡り逢ったことによって起きた魂の再生ですね。体の関係だけじゃなく、気持ちがちゃんとつながったことによって、いい方向が見えているラストがすごく感動的です。最初は同じ場所で他人だったのにね。「俺のつれだ」の一言にじーんとしました。

    エロ的には、高久センセのイラストがHシーンにぴったりで、鼻血が出そうに…いやらしい、いえエロティックでした。清楚なのにそこはかとなくエロい。

  • マイルドな気もするけど、暗いときの凪良先生だ…。
    いや、これをマイルドと思ってしまうのは文芸出身だからなのか、エグイBLも通過してる腐女子だからなのか……。
    いやしかし、性的虐待ってーか搾取はマジでえげつないからなんてーか…読んでてやっぱしんどいね……。これをゴーサイン出すんだから徳間書店さんはスゲーよ。

  • うーーー重すぎた。しんどかった。

  • お互いのことを全く詮索しない遠召と高知。今だけの関係だからかな。と思ったけれど、段々相手のことを必要だと思うようになっていくのがよく分かる。2人とも、自分だけでは自分の「問題」に向き合えなかったかもしれないから。悲しい過去を持つ2人には、今までの分も穏やかな生活をして欲しいと思った。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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