餓死(うえじに)した英霊たち

著者 :
  • 青木書店
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本棚登録 : 116
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784250201158

作品紹介・あらすじ

大量餓死をもたらした日本軍の責任と特質を明らかにして、そのことを歴史に残す。そして、そのことを死者に代わって告発する。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争時、日本兵の死因の大多数が戦死ではなく餓死および栄養失調による合併症であることを精査考証した一冊。兵站軽視、大和魂重視などの原因の中、陸軍幼年学校出身者による派閥主義もその一翼を担っていたというのが新しい発見でした。

  • 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』より。

  • 如何に日本の軍隊が無能であったかが、わかる本である。大本営の無理な作戦のために、若い命が無駄になってしまった。戦闘での死より餓死の方が多いなんて。作戦を計画した大本営の人達は、反省もせず、戦後ものうのうと生きているのが許せない。

  • 大まかに、前半が具体的な餓死の実態紹介、後半がその餓死を生み出してしまったもの、背景についての紹介だったので、前半読んでいて「なんで?どうしてこんなことになってしまったの?」と思ったものが後半で「なるほど、だからこうなったのか」とわかるのでありがたい。とは言っても、前半の内容は目を覆いたくなるような悲劇の連続なので、後半読みながらも納得できるものではないし、仕方ないね、と言えるものでもなく、しかし何をすべきだったのか、何が正しかったのかは…答えが出ない。3章軍隊の特質についてでも、おかしいと思ことはたくさんあるし、軍医部の地位向上のために目指したものが着地してしまったところなども、読んでいてとても心苦しい。また、人の他にも戦地に赴いた馬の扱いについてもとても興味深かった…こちらも悲劇でしかないのだが。 当時のことを想像しながら辛く耐えがたい気持ちになったが、しかしこの感覚や価値観は現代にも形を変えて根強く残っており、決して過去の話でもないという気がした。読んでよかった。すっごいしんどかったけど!

  •  政府が明らかにしている第二次大戦での軍人戦没者は現時点で230万人だが、その過半数は、勇敢に戦って命を落とす「名誉の戦死」ではなく、餓死だった。餓死でまず思い浮かぶのは「ガ島、飢島」と呼ばれたガダルカナル島だが、実はガダルカナルは特異な例ではなく、餓死こそが日本兵の最も一般的な死に方だったことを、著者は資料を分析しながら証明していく。ニューギニアで、ビルマで、インドで、南洋の島々で、更には中国で、多くの日本兵が飢えて死んだ。歴史学者であるとともに、戦時中は中国戦線に派遣された師団の中隊長だった著者は、自ら経験した軍の様子、様々な資料から、多くの兵士が死んでいったさまを「地獄の中での野垂れ死に」と呼び、明白な人災として断罪し、そのような地獄に兵を突き落とした構造を解明していく。
     詳しくは本書に譲るが、根底にあるのは基本的人権の無視、恐ろしいまでの人命軽視だった。人命を尊重していたらそもそも戦争などできないわけだが、日本では、それがこの国特有の風潮や考え方によって、最悪な形で顕現してしまった。超エリートを輩出する教育システム、そのエリートが現地の地理も知らずに机上で立てる作戦、華々しく見える戦闘作戦のみに固執し、命に直結する栄養、補給、輸送を無視、アメリカ軍の優秀な兵器に白兵戦で立ち向かわせる精神論、そして、捕虜となることを認めず、降伏より死を選ばせる「文化」。日本兵の過半数は、自滅必定で送りこまれ、餓死か玉砕しか選べない状況で、考えうる最も苦痛に満ちた死に方で、死んでいった。その責任の所在、そうした悲劇を生んだ構造が、この本を読むとよくわかる。
     特に悲惨だったのは「孤島の置き去り部隊」だろう。日本軍は中部太平洋の小さな島々にも守備隊を配備したが、制海権、制空権とも掌握したアメリカにとって、これらの島の日本軍は何の脅威でもなく、攻撃する価値もないため無視。日本軍は船や飛行機を送ることができないため、そのまま放置。結局、地味が悪く、農耕に適さないこれらの島々に送られた兵士には、手持ちの食糧が尽きた後は、餓死が待つのみであった。
     戦争の悲劇を訴え平和を求める人を揶揄して、「戦争ってそんなものでしょう」としたり顔で言う人がいる。その通りである。戦争とは、こんなものなのだ。この本を読んで同じ言葉をもう一度言ってもらえればと思う。この言葉の持つ意味や重みが変わっているはずだ。
     「現在の日本があるのは英霊のおかげである」という言葉もよく聞く。これもその通りである。餓死という、想像を絶する苦痛に満ちた死に方を選ばされた兵士は、命の終わる瞬間に何を思ったか。少なくとも「次はうまくやれよ」ではなかったはずだ。二度と戦争の愚を繰り返させない。これが、彼らの野垂れ死にを無駄にしない唯一の道であると、この本は教えてくれる。

  • この本棚に入ってる何かの本に紹介されていたので読むことにした。

    戦没者の半数以上が餓死だったというのは衝撃的だ。栄養失調による体力低下から病気にかかり亡くなった人も含めてのようだが。

    不可抗力だったのではなく、人為的災害だというところあたりも何かに似ている。誰も責任を取らないところも何かに似ている。
    一部のエリート集団が突っ走り、一般人を犠牲にするところも。生命と人権を軽視するところも。
    そして、降伏ができないところも。

    ここまで書いて、この本を紹介していたのは「日本人はなぜ、『基地』と『原発』をやめられないのか」だったのではないかと気づく。

    何も変わっていない。日本人の体質なのか?
    すぐ忘れてしまうことも。失敗を次に生かすことができないことも。敗因の分析ができないことも。

  • 未来への戒めとしての貴重な1冊。
    国の為に戦った英霊に尊崇の念を込めて参拝しました、などという決まり文句が空しい。戦ってもいない、食うものも食えずに死んでいった者が過半数という事実は、国は庶民を消耗品としか見ていなかったことを如実に示す。
    特攻隊と同じく、無謀な作戦のただ犠牲になっただけという兵隊の悔しい思いを後世に生きる者は忘れてはならない。

  •  
    ── 藤原 彰《餓死した英霊たち 200105‥ 青木書店》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4250201155
     
    …… 各地域別に推計した餓死者数は全体の戦没者212万1000人の60%強。
    ── ニュースウオッチ9 20150827 21:00-22:00 NHK》
     
    ── 大岡 昇平《野火/ハムレット日記 19880516 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003112318
     
    (20150827)
     

  • 戦後の防衛庁に皇軍思想が残っていた事実、軍隊の過半数が餓死し、一部の者は人肉を食べていた事実に驚き。軍中央の長期ビジョンのなさ、補給の軽視が、南京の遠因になっていると思う。

  • 太平洋戦争では戦死者にしめる『戦闘による死亡』よりも『栄養失調あるいはそれにくわえて赤痢やマラリア等による病死』のほうが多いと言う。著者は6割強がそれにあたると言うが、これ自体は一部資料とそれに基づく状況証拠による推測のほうが多く、明確な資料は示されていない。とはいえ、6割強が5割になったとて、軍部が兵站を補給線を、ひいては兵卒を軽視していたことはまぎれも無い事実である。たしかにさまざまな手記を読んでも、資料を読んでも、戦闘の記録よりも行軍や敗走の記録のほうが生々しいのは、そう言うことか。。。

    この本では日本の近代化以来の『軍の伝統』にも触れているが、私は日本人には『国家』としての一体感が薄弱であったため、絶対服従や降伏を禁じる軍紀(あるいは私的な制裁)によって、抽象的な『国』のために一命を賭して戦わせる必要があったのではなかろうかと思う。つくづく、「日本」は作られた国なんだなぁと思う。

    そして、死んでいった兵士たちも「日本」という象徴的なものではなく、家族や故郷といった具体的なもののために戦い、死んでいったんだろうな。そこを見失うと、まずいな。我々が守らなきゃいけないのは日本じゃなくてもっと『具体的』なものじゃなきゃいけない。それは人それぞれ違っていいし、それを統一しようとするのがファシズムなんじゃない??

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著者プロフィール

藤原 彰(ふじわら あきら)
 1922年東京生まれ。
 1938年東京府立第六中学校四年中退、陸軍士官学校入学。1941年陸軍士官学校卒業、中国  へ派遣。1945年陸軍大尉で復員。1946年東京大学文学部史学科(国史専攻)入学、1949年卒 業。その後、千葉大学文理学部、東京都立大学、東京大学教養学部、東京教育大学文学部など で講師を歴任。1969年一橋大学社会学部教授・同社会学部長などを経て、1986年一橋大学停 年退職。1989〜93年女子栄養大学教授。
 一橋大学名誉教授。2003年2月26日没。
主な著書
 『日本軍事史(上巻)戦前篇』(社会批評社)、『天皇制と軍隊』(青木書店)、『昭和史』(岩 波新書)、『餓死した英霊たち』(青木書店)、『中国戦線従軍記』(大月書店)、『日本近代 史』(岩波書店)など多数。

「2007年 『日本軍事史(下巻) 戦後篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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