日本の神話 第4巻

著者 :
  • あかね書房
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感想 : 25
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  • / ISBN・EAN: 9784251008244

感想・レビュー・書評

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  • 今年の干支のウサギの本


    挿絵赤羽末吉、文章舟崎克彦による「日本の神話」全六巻の中の第四巻です。
    このシリーズは大変素晴らしい。神々の名前や国の名前も漢字を使い、言葉は重々しさもあるが丁寧な言い回しであり文章はわかりやすく、挿絵は力強くも美しい。日本の神話の大胆さ、おおらかさがそのまま感じられます。ぜひ大人も子供も読んでいただきたいです。

    三巻が「やまたのおろち」で須佐之男命の活躍で、この四巻は「荒くれ者の須佐之男命の子孫で気立ての良い大国主の命」のお話。
    出雲の国に住む大国主の命(正確には、大国主の名前になったのは根の国から帰ってきてからで、この時は別の名前のはずだけど)は、兄たちが因幡の国の美しい八上姫に求婚する旅の荷物持ちとしてこき使われていた。
    一行が出会ったのは皮を剥がれたかわいそうなウサギさん。もともとおきの島に住んでいたうさぎは、海の向こうの因幡国に渡るのに、サメを騙したために怒らせて皮を剥かれててしまった。…きくだけでも痛い!(><;)

    先にうさぎに出会った兄たちは「海水で体を洗って風に吹かれてれば治るよ」と嘘を教える。生身に塩水…、考えるのは辞めよう(><;;)
    ますます泣くうさぎに出会った大国主の命は「真水で体を洗い、蒲の花粉をまぶすと治るよ」と教えてあげます。そのとおりにしたうさぎの怪我はすっかり治りました。うさぎはお礼に「八上姫はあなたと結婚しますよ」と告げます。

    さてこの「しろうさぎ」、イメージでは「白兎」ですが、正しくは「素兎」であり裸兎を意味します。そのためこの絵本の挿絵でもうさぎさんの毛の色は茶色に描かれています。
    なお私は、蒲の穂を見る度に「うさぎさんうさぎさん」と連想しています。蒲の穂って見た目が愛嬌ありますよね。蒲の穂(の花粉)とうさぎさんを連想した昔の人の想像力っていいなあと思う。

    …さて、うさぎの予言通り八上姫は兄たちではなく大国主の妻になるといいます。大国主は、怒った兄たちに燃え盛る岩で焼き殺されてしまいます。嘆いた母神が神々に力を借りて大国主は蘇りますが、今度は兄たちに大木に挟み殺されてしまいます。
    今度も神々の力で蘇った大国主ですが、母神に「ご先祖の須佐之男命のおられる黄泉の国(根の国)にお逃げなさい」と言われて、黄泉の国に向かいます。

    このまま第五巻の「すさのおとおおくにぬし」に続きます。
    (五巻も須佐之男命の最後の言葉がとても良い)

    • ハイジさん
      淳水堂さん こんにちは

      こちらのシリーズ楽しくレビュー読ませていただいてます。

      白兎は素兎さんなのですね!
      知りませんでした^^;
      この...
      淳水堂さん こんにちは

      こちらのシリーズ楽しくレビュー読ませていただいてます。

      白兎は素兎さんなのですね!
      知りませんでした^^;
      この場面は痛々しくて涙がちょちょ切れます…

      続きも楽しみです♪
      2023/01/12
    • 淳水堂さん
      ハイジさん
      コメントありがとうございます!

      私にとって古事記痛そうトップ2が、冒頭で伊邪那岐命が火の神を産んだため下半身が焼けただれ...
      ハイジさん
      コメントありがとうございます!

      私にとって古事記痛そうトップ2が、冒頭で伊邪那岐命が火の神を産んだため下半身が焼けただれて死にましたという場面と(内蔵から焼けてますよね…)、このうさぎさんです。
      「大国主の命が焼け岩に焼かれ潰され死んだ」とかは物語として捉えられるのですが、伊邪那岐命とうさぎさんはなんか生々しい〜(T_T)


      「いなばのしろうさぎ」って検索すると「白うさぎ」って出てくるし、本の挿絵も白いうさぎなので私もそうだと思いこんでました。
      素兎で「しろうさぎ」って「素人」の「しろ」だったのか!って思いました。
      このシリーズは「数度の現地取材と資料調査を踏まえ、考証を尽した」ということですので、このことの他にも勉強になります。
      2023/01/13
  • 仕事上知りえた他の国の方たちに、よくこんな質問をされたのを思い出す。
    日本の誕生日はいつですか?日本は何歳ですか?
    ちゃんと答えられて良かったと、そのたびに胸を撫で下ろしていたものだ。

    2千年以上も前の日本の神話だがこれがなんとも面白い。
    全6巻あるうちの、第4巻が「いなばのしろうさぎ」。
    何故この卷を選んだかと言うと、今ちょうど河川敷に蒲の葉が盛んに出始めているから。
    知らずに見ていると、まるでアヤメか菖蒲の葉かと思ってしまう。
    日本古来からあるこの植物も、秋に穂状になったフランクフルトソーセージそっくりの姿を見ないと誰も分からないほどに、地味な存在だ。
    花から出る黄色い花粉の上に寝て、うさぎさんがその傷を治したと言われているが、これが日本の医薬の始まりとして着目されているらしい。

    何しろ神話なので、突っ込みどころは多い。
    しろうさぎなのに、何故挿絵では白くないのか。
    (うさぎも、物語の始めにしか登場しない。)
    うさぎが沖ノ島から数えながら渡ったのは、ワニなのかサメなのか。
    その「沖ノ島」の表記は、「隠岐の島」ではないのか。
    雄大で美しい赤羽末吉さんの絵を見て満足してしまいそうだが、後書きまで読むとそれらの謎が解ける。
    丹念に調べぬいてこの一冊を書かれたことが分かると、絵本の域を超えた貴重な資料であることに気づく。

    日本初のいじめられっ子だった大国主命は、5巻でどんな運命になっていくのか。
    お話し会ではそのあらすじだけ触れてみるつもり。
    だって、子供たちには希望をもってもらいたいものね。
    約12分。学童以上。
    後世に語り継ぎたい、想像力を刺激される素晴らしい一冊。

  • 日本の神話って面白いんだな…!と思い出す。第四作目はいなばのしろうさぎと、須佐之男の命の子孫、大国主の命のお話。

    あとがきより
    「いなばのしろうさぎ」は正しくは白いうさぎのことではなく、素(しろ)ー素裸、あかはだかのうさぎという意味なのです。

    というわけで、本書ではうさぎは夏仕様の褐色で描かれている。

    あらくれものだった須佐之男の子孫はろくでもなく、嫉妬心にかられた骨肉の争いが繰り広げられる。民を導く徳の高い神や預言者がいる宗教と異なり、日本の神はとても人間らしい。

  • 「あれ?白うさぎじゃなくて、“しろ”うさき??」と、タイトルを見て思った方は、すごく鋭いです。

    ちなみにわたしは、全然疑問に感じませんでした(苦笑)。
    なぜかというと、この絵本・日本の神話シリーズは、タイトルが全部ひらがなだったので、それに合わせて「いなばのしろうさぎ」というひらがなタイトルなんだな、と思ったからです。

    もちろん、そうした側面もあるのかもしれませんが、“しろうさぎ”とした裏には、文を担当された舟崎克彦氏による、しっかりとした考証が基になっています。
    あとがきと折り込み付録の考証を読むと、“しろうさぎ”の謎が解けるだけでなく、うさぎを騙したのがワニではなく鮫(サメ)であることも、「そうだったのかーーー」と大納得するはずです。

    また、この絵本をつくることに対する舟崎克彦氏と、画を担当された赤羽末吉氏の誠実な姿勢に、ただただ胸を打たれます。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    1984年にトモ企画から刊行された本書は、1995年にあかね書房から復刊されました。

    小2の娘に読み聞かせをしましたが、神々の名前や、地名が聞き慣れない様子だったため、すこし解説を加えつつ読みました。
    読み終わったあと、「よくわからなかった…」と言っていた娘でしたが、大筋についてのなぞなぞを娘に出したところ、ちゃんと答えられていて、お話を理解していました。

    古い言葉の響きをそのまま味わうことも、この絵本の醍醐味だと思います。
    子どもは意外と、親が思うよりもちゃんと、その言葉を受けてとめています。

    横長の大画面は、巻物を広げた絵のようにも見え、古い神話を読んでいる気分がより高まります。
    後半のお話はわたしも馴染みがなかったため、どうなるんたろう?という気持ちで読み聞かせをしました。
    第四巻「いなばのしろうさぎ」の最後は、第五巻の「すさのおとおおくにぬし」の始まりにつながるそうなので、そちらもぜひ読んでみようと思います。

    はじめから1人で読むにはハードルが高いですが、本物の「いなばのしろうさぎ」を知りたいならば、この絵本しかない、そう思いました。

  • 2022.11.17 4-4

  • 県:建国記念の日にあわせて

  • 「しろうさぎ」の「しろ」は「白い」ではなくて、すっぱだかの「素」だと解説に書いてあって、びっくりした。
    大国主命が黄泉の国ににげてしまうと、けっこんしようとしていた八上ひめははどうなるのかなと思う。貝の神様たちが大国主命を生き返らせてあげるところがすごい。大国主命はりっぱな感じだし、お母さんもやさしい。
    絵が昔っぽくってきれいだった。赤大国主命の兄弟が、赤いいいのししだとだましたところの絵がすごかった。岩がすごい燃えてて、おどろいた。(小4)

  • 白くないうさぎ。

  • 「いなばのしろうさぎ」っていう単語しか知らなかったが、この絵本でなんのことかよくわかった。神話っておもしろい。絵も素晴らしくぴったり。

  • UniLeaf では、この絵本に透明点字シートを挟み込んで製本した、ユニバーサル絵本を貸し出ししています。
    状況が「読みたい」になっている本はお貸しできます。
    「いま読んでいる」になっている本は貸出中ですが、ご予約いただけます。
    コメント欄に「貸出希望」と書いてください。
    (送り先の住所などはここに書かないでください。)

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著者プロフィール

舟崎克彦  東京都生まれ。学習院大学卒業。白百合女子大学教授。「ぽっぺん先生」物語シリーズ(岩波書店)で路傍の石文学賞、『雨の動物園』(岩波書店)で国際アンデルセン賞を受賞。作品に「日本の神話」シリーズ(あかね書房)他多数。

「2013年 『クレヨンマジック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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