本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (96ページ) / ISBN・EAN: 9784251073020
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ヨルダン川西岸…パレスチナとイスラエルの紛争真っ只中の地区。争いが続いていることは知っていたが、その地域で何が起こり、対立するアラブ人やユダヤ人達が何を思っているか…よく知らなかった。
映画を作るためパレスチナにやってきたイギリス人のマックスは、羊飼いの少年サイードと出会い交流を深める。
マックス視点、サイード視点から交互に語られる現在と過去。客観的に、時に主観的に語られるパレスチナとイスラエル、そしてサイードの心の内。ぼやけていた輪郭を少しずつくっきりとさせていく手法が巧い。徐々に、サイードが二年前の事件で受けた深い心の傷が露わになり、その悲しさと酷い現実に言葉も出ない。それでも、健気にカイトを作り、「壁」の向こうへ飛ばすのだ。
長い間続くパレスチナとイスラエルの抗争、簡単に解決することはできないことはわかっているが、それでもその紛争に巻き込まれて悲しく苦しい思いをしている子供がたくさんいるという事実にうなだれてしまう。いつもモーパーゴの作品は、シビアな事実を目の前に突き付けてくる。それでいて、希望を見せてくれることも忘れてはいない。クライマックスのシーンは胸がいっぱいになった。
「サラーム」→「シャローム」。子どもたちが壁を越えて平和のメッセージを送り合う。世の中から争いは簡単には消えないかもしれないけれど…それでも、信じ合い、理解しようと少しずつ歩み寄っていくことができれば…と願ってやまない。 -
「銃弾がどんなことをするのか、みんながわかれば、もう誰も撃たないようにすると思うんだ。」
大好きな兄を兵士に撃たれて亡くした、パレスチナの少年サイードが、亡き兄に語りかける。撃った兵士も、相手が少年だったことに気付き涙していた。
紛争も戦争も多くの人を苦しめるだけなのに、なくならず憎しみを再生産する。カイトを上げるサイードは、壁の向こうに平和を願う想いを送り続ける。
簡単に読めるボリュームだけど、心に残った悲しさも希望も大きい。 -
パレスチナの小さな村でカイトを揚げている少年サイードに出会ったイギリス人の映像記者マックス。口をきけないサイードと友だちになり、二人でカイトを揚げた。サイードはそのカイトを、壁の向こうのイスラエル人の入植地に飛ばしてしまう。すると壁の向こうで車椅子の少女がそのカイトを拾う。
-
この本でガザ地区ではオリーブが栽培されていることやこの地でもカイトをあげることの楽しさを感じる人たちがいることを知った。ブックトークに使いたい
-
美しいお話でした。パレスチナの少年サイードの平和を信じる純粋な優しい心に胸を打たれます。アニメ映画化して欲しい。パレスチナでは今もイスラエルからの無差別攻撃に苦しみ命を奪われた人々がたくさんいます。今すぐ虐殺をやめて!カイトを自由に飛ばせるようになってほしい。
-
物語の舞台はパレスチナ。
主人公サイードの兄は、兵士に撃たれ命を失った。
それからサイードは言葉を失う。
サイードは兄に教わった方法で凧を作り続ける。
彼の凧には『サラーム』と書いてある。
東風が吹いたときにサイードは凧を上げる。
そして、つないでいる糸を解いて、凧を高い壁の向こうへ放つ。
その凧はイスラエル側の子どもの手に渡る。
彼は、平和を願い、パレスチナ側からイスラエル側へ、高い壁を超えて凧をとばしているのだ。
やがて、高い壁の向こうからも凧が飛んでくるようになる。
飛んできた凧には『シャローム』と書かれている。
『サラーム』も『シャローム』も平和を意味する言葉。
サイードの凧が、双方の平和の交流に発展につながっていく、という物語。
僕は、国際協力に興味がある。
パレスチナ、アフガニスタン、ソマリア、リビア、チベット、ハイチ...
色々な国のことがわかってくると、それが つらさを引き受けること
であることがわかってきた。
「日本に生きる者としての責任」が、自分たちにあることも感じられるようになってきた。
僕は「他者の立場を考えることは、その責任を果たす行為の一つ」だと考えている。
著者プロフィール
マイケル・モーパーゴの作品
本棚登録 :
感想 :
