- Amazon.co.jp ・マンガ (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784253159494
感想・レビュー・書評
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類稀なる傑作!
この連作短編のタイトルが何故「恋と病熱」なのか。
特異な設定を舞台に描かれるのは、私達が普段理解している恋愛や親子・兄弟愛、自己愛を思わせる、強い好意。
しかしこの作品では上記の様な既存の名前で定義できるものではなく、
ただひたすらに強い好意として描かれている。
この好意にあえて名を付けるとすれば、
それが「恋と病熱」なのだろう。
狂おしい程に心を乱し、制御できず、健全な秩序を無視し、自他を傷つけ、
さらに陶酔する事で穏やかさをも希求する代え難い気持ち。
作品の中では親子の間でも時に「恋と病熱」の原理が働き、
またそれは我々の社会の関係が隠し持った気持ちも写している。
こんな作品を描ける人が居て、それを読めた事に感謝したい。
追記
作中で一度引用されている宮沢賢治の詩のタイトルが
「恋と病熱」である。
正直、賢治のこの詩を理解している訳では無いのだが、
妹が病に伏して死の影が近づいている時期に詠んだというこの詩からは、
不安にさいなまされつつも、求め、打ちのめされる想いが感じられる。
この無力感を痛々しく吐露する様な祈り。
切実なる祈りは、上で私が述べた好意、気持ちと通じるものがあると言うのは強引過ぎるか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作品としてはよいものだと思う。ビニールに包まれていたら分からないが、表紙の質感もすばらしい。
ただ、内容は倒錯的なため、そういうものをたまたま求めていなかった私としては、騙された感が否めない。装丁やコピーからは想像もつかない内容だった。
Extraを含む7つのストーリーすべてが、同じ世界設定。一人っ子が常態と化し、兄弟姉妹が忌み嫌われるようになった未来で、どうしようもなく兄弟姉妹に惹かれていく人々が描かれている。その設定も絵も物語の展開も心をえぐるものがあった。設定自体は深いのだが、どれもこれも突き詰めていえば「タブーに挑戦する」という主題に終始しており、1話めを読み始めた時と全作読み終わった時の感想が同じという結果に。近親相姦などのタブーが好きな方にはおすすめ。そうでない方には、後学のために……ですかね。 -
生殖機能の変化で一人っ子がほとんどで、兄弟姉妹がいることが「異常」と見なされ、2人目が出来たとしても内密に養子に出されたり、兄弟姉妹がいることを隠すような世界。
“誰かを想うこと”を描いたらしいのですが、近親相姦で想いあうからあまりハマれず。
独特な絵柄は良かったです! -
兄弟って不思議な関係⁈ 兄弟を持つことが禁忌とされている世界の話、6編。
夫婦1組に子供1人、寿命も短いとなると急速な人口減で困ると思うけど?それを良しとする社会ならその理由は⁇なんて設定のアラ探しをしてしまうのは物語に感情移入できていないから。兄弟に幻想と妄想を持てる人じゃないとあまり楽しめないのかも…。
いや、物語設定がもう少ししっかりしていれば、面白く思えたのかな? なんか残念です。 -
外装からは全く予期できなかった内容でしたね。
子どもを二人以上産むことが気持ちが悪いものだとされる時代、兄弟姉妹が産まれれば子どもの産まれない家庭へ養子に出され関係を隠される。
けれどひと度接触すれば惹かれあわずにはいられない、近親愛と兄弟愛の違いが曖昧な世界のオムニバスです。
生まれてすぐ離されるためか、近親愛を防ぐ機能が働かないのかと思ったけど、原因は他にもあった。
政府と反対組織のどちらも両極端な思想で争う中、元の形に導く者の役割をしているのがアンたち姉妹の母親なのが皮肉。そんな母親から大切なことだけを掻い摘んで教わり、後世へ繋ぐ。
全六話、四組の兄弟姉妹とその親や知人の対比が全話通して上手くまとまった話だと思いました。語りすぎるとネタバレになる……感想文って難しい。 -
完。兄妹がいることが気持ち悪いこととして認識されている世界の短編集。
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面白かった。
作品の中では一人っ子があたりまえとなってしまった時代に、キョウダイがいる人達の肩身の狭い中で、いろんなキョウダイ間でおこる愛情の形がそれぞれに詰まっていて、なんだか新しい感覚で新鮮だった。 -
少子化が進み、兄弟姉妹を持つことを忌みとし、一人っ子ばかりのコミューンを描いた作品。兄弟姉妹を忌みとするからこそ、兄弟姉妹に出会うと愛情や恋愛、様々な意味で、惹かれあってしまう。
「女性は子供を産むべき」という世間の目もどうかと思うけれど、「一人しか産むべきではない」という世界も変だなと思った。結局女性の自由はないのかな。
忌みしていても惹かれあってしまう兄妹、姉に恋をしてしまう弟、仲良くなる三姉妹、様々な設定があるけれど、兄が死に、養子に出されていた弟が連れ戻され、弟の中に兄を探す親。この設定が一番、とても悲しく辛かった。
磯谷さんが描かれる、痛くて切なくて悲しいけれどどこか甘美な世界は独特なんだけれどものすごく作品として惹かれるものがあります。どちらかというと『屋根裏の魔女』よりの作品だと思う。