巨大地震・巨大津波 ─東日本大震災の検証─

  • 朝倉書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784254102529

感想・レビュー・書評

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  • あの時わかっていたこと。

    大学院の「自然災害にどう向き合うか」の参考書として使用。東日本大震災を中心に、過去に起きた歴史的な地震災害も取り上げ、授業内容と合う。インフラ構造物の防災だけでなく、人々の避難についても詳しいところが良い。
    3.11東日本大震災の被災状況の写真や観測データが多数あり、実態をつかめる。こんなに大規模な地殻変動が起きていたのかと改めて驚くばかりである。初歩的な地震の仕組みも解説される。
    2011年内に出版され当時の状況がわかるという意味でも価値があり、10年以上経て振返ってみると興味深い。今わかっていることを早くまとめて出そうという企画意図は評価できる。発生から短い期間ながら資料は揃っている。とは言えしかた無い面もあるものの特に第4章は「ではなかろうか」「であろう」が多用され、あやふやな論じ方にうさん臭さを感じるのも否めない。この人が原発の事故調査委員長なのかと思ってしまう。

    目次
    〇メカニズム
    1.巨大地震
    2.巨大津波
    〇東日本大震災
    3.人的被害の特徴と津波による犠牲者について
    4.東日本大震災に思う
    〇付録
    5.主な地震(津波)一覧

  • ふむ

  • 2011年の地震の科学的な側面がわかる。
    失敗学の面の報告もある。人を救えなかった事例もあるのだが、人を救えた事例にも涙を禁じられなかった。

  • (2011.12.31読了)(2011.12.20借入)
    【東日本大震災関連・その45】
    この本を企画した趣意は、「私達は今回の経験から可能な限りの反省と知見を得るように努めなくてはならない。それは近い将来発生が予想されている東海・南海・東南海地震への抜本的対策に生かされるだろう。」ということです。
    第一章では、平田直氏に地震学(観測地震学、地殻の変形過程などを研究)の立場から巨大地震の仕組みを解説していただく。
    第二章では、佐竹健治氏にこの巨大津波がなぜ発生したのか、そしてその災害の詳細を浮き彫りにしていただく。
    第三章では、目黒公郎氏(都市震災軽減工学)に今回の津波に関して災害発生時の避難方法・避難手段だけでなく、その後の生活あるいはと市町村の再建という観点からも注目すべきいくつかの事例をご紹介いただく。
    第四章では、畑村洋太郎氏(失敗学、危険学)に今回の大惨事で我々が見落としていること、あるいは今後の10年、50年、100年を展望したときに留意すべき問題点・考え方をご提起いただいた。

    章立ては以下の通りです。
    1.巨大地震のメカニズム
     地震はなぜ起きるのか
     2011年東北地方太平洋沖地震の大きさと発生の仕組み
     兵庫県南部地震との比較
     世界の大地震との比較
     南海トラフで起きる地震
     地震活動のモニターと予測・予知
     今回何を学んだか
    2.巨大津波のメカニズム
     津波の発生メカニズム
     東北地方太平洋沖地震の予測と過去の津波
     2011年東北地方太平洋沖地震津波
     日本・世界で発生したM9級の地震
     おわりに
    3.東日本大震災の人的被害の特徴と津波による犠牲者について
     はじめに
     東日本大震災の概要
     津波による犠牲者が多く発生したことに関して
     注目すべきいくつかの事例
     おわりに
    4.東日本大震災に思う
     3現で知ったこと
     実見の後で考えたこと
     災害と人間

    ●地震の震度(7頁)
    日本では気象庁によって定められた震度階級が0から7まであり、6と5にはそれぞれ強と弱があることで、全体としては、10段階となっている。震度は、かつては揺れの大きさを体感や被害状況によって判断してきたが、日本では196年4月からは地震計の一種(計測震度計)を用いている。
    ●地震の規模(11頁)
    この地震全体の大きさはモーメントマグニチュード9.0であり、わが国の観測史上最大であった。数mのすべりの領域は、南北400㎞、東西200㎞の広大な領域に及ぶ。この大きさのプレート境界を破壊するに要した時間(破壊継続時間)は約160秒間であった。この長さも通常の地震が数十秒で終わってしまうことに比べ非常に長い。
    ●東日本の移動(23頁)
    この地震によって東北地方の太平洋沿岸は数m東に動いてしまった。最大の動きが国土地理院のGPS観測によって記録されたのは、宮城県の牡鹿半島で、東南東に5.3m移動し、1.2m沈降した。この地震によって、東北日本全体が西日本に対して数m東に動いたが、東北地方の日本海沿岸では1m程度しか東に移動していない。つまり、東北日本は全体として大きく東に移動したばかりでなく、4m程度東西に延びてしまったのである。
    ●津波警報システム(65頁)
    日本に津波警報システムができたのは1952年であるが、当時は地震発生から20分以内に警報を出すのが目標であった。1983年日本海中部地震の際には14分で津波警報が発表されたが、実際の津波は地震発生後最短7分で到達し、100名を超える死者が出た。気象庁では時間を短縮するためにシステムを改良し、1993年北海道南西沖地震の際には、地震後5分で津波警報を発表した。しかしこの時は震源域内にある奥尻島へ5分以内に津波が到達し、230名を超える死者が発生した。気象庁ではさらにシステムを改善し、緊急地震速報システムも活用して、現在では地震発生後3分程度で津波警報を発表している。
    ●災害情報の出し方(95頁)
    当初テレビでは、死者数を100人、200人という規模で報道していた。不確定な情報ではなく、確定情報として扱っていたのだと思うが、これは危機管理上は問題だ、街や集落を襲う津波の映像を見れば、「誠に残念だが、少なくとも数千人、場合によっては万を優に超える犠牲者が出る大災害である」と伝えないと視聴者や災害対応者をミスリードしてしまう。
    ●犠牲者の数(103頁)
    市町村単位としては、5市1町で1000名を超える犠牲者が発生している。最大は2011年10月28日現在で、石巻市で3868名、以下、陸前高田市1858名、気仙沼市1399名、大槌町1328名、東松島市1138名、釜石市1073名となっている。
    ●津波情報(139頁)
    マグニチュードの速報値M8を前提として、地震発生から3分後の14時49分に最初の推定値として、「宮城県に6m、岩手県と福島県の海岸に3m」の津波情報を出す。地震から28分後の15時14分には、14時49分に配信した津波情報を更新し、「宮城県に10m以上、岩手県と福島県に6m以上」の情報を配信するが、被災地内では停電でこの情報を受けることができなかったエリアが多く存在した。地震から44分後の15時30分には、15時14分の津波情報をさらに更新し、「宮城県・岩手県・福島県・茨城県・千葉県に10m以上」の津波の情報を出すが、この時点では岩手県では既に10m以上の津波に襲われていた。
    ●3現主義(149頁)
    3現:現地・現物・現人
    ●津波のエネルギー(167頁)
    防波堤にかかる運動エネルギーを計算すると、運動量の変化と力積の関係から、1m²当たり約90tというとんでもない大きな力になることがわかる。

    ☆地震に関する本(既読)
    「地震・プレート・陸と海」深尾良夫著、岩波ジュニア新書、1985.04.19
    「超巨大地震に迫る」大木聖子・纐纈一起著、NHK出版新書、2011.06.10
    「日本列島の巨大地震」尾池和夫著、岩波書店、2011.10.26
    ☆畑村洋太郎の本(既読)
    「だから失敗は起こる」畑村洋太郎著、NHK知るを楽しむ、2006.08.01
    「数に強くなる」畑村洋太郎著、岩波新書、2007.02.20
    「未曾有と想定外」畑村洋太郎著、講談社現代新書、2011.07.20
    (2011年1月8日・記)

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