ムーンライト・シャドウ

  • 朝日出版社
3.91
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本棚登録 : 720
感想 : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (119ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255001951

作品紹介・あらすじ

愛する人との出会い、そして永遠の別れ。味わったことのない孤独、底なしの喪失感に苦しむ主人公は、未来に向かって歩き出す。

感想・レビュー・書評

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  • この本が好きだという人と一緒に生きていきたい

  • 幼い頃に母親が「この本は泣いて泣いてページが見えなくなった」と言っていたので、読んでみたが当時の私はまだ小学生で泣けなかった。

    でも時が経って、本当に好きな人ができて、失う悲しみを知ってから読んだこの作品は私の忘れられないものになった。

    失うってなんだろう?と考える。こんなに苦しいのに生きなきゃならないってなんでだ?と問う。でも誰かを好きで好きで愛することって、そういう考えや問いを飛び越えていくものだと思う。悲しみの深さが愛情の深さを証明している。

    この作品の良いな、と思うのは朝の香りが紙面からとてつもなく伝わってくること。早朝ってしんどい。「また生きなきゃいけないのか」と思わざるを得ないから。この作品の中の早朝も、そういう意味として描かれていてただひたすらに絶望感を携えている。だから、喪失感の傷を抉りかねない。

    けれど、それでもなぜか闇に落ちていかないのが、吉本ばななさんの季節感の描き方が秀逸で、読む人の心にそっと寄り添う力を宿してくれるからだと思う。最後に起こる「七夕現象」は本当に苦しくて、嗚咽しそうだけど、きっと、こういう奇跡ってよく起きてるんじゃないかな、と思うし、思わせてくれる。生きるって悪くないなって肯定してくれる。

  • この本はかなり好きだなぁ。
    3回くらい読んでて内容も忘れちゃうんだけど、忘れたら何度でも読めるので、あえて内容は書かない。

    橋が二度と会えない別れの場所となった。水がものすごい音で寒そうに流れて、川風が目を覚ますような冷たさで吹きつけた。鮮やかな川音と満点の星の中で短いキスを交わして、楽しかった冬休みを思いながら二人は笑顔で別れた。夜の中を、ちりちりと鈴の音が遠ざかっていった。私も等もやさしかった。

    「今がいちばんつらいんだよ。死ぬよりつらいかもね。でも、これ以上のつらさは多分ないんだよ。その人の限界は変わらないからよ。またくりかえし風邪ひいて、今と同じことがおそってくることはあるかもしんないけど、本人さえしっかりしてれば生涯ね、ない。そういう、しくみだから。そう思うと、こういうのがまたあるのかっていやんなっちゃうっていう見方もあるけど、こんなもんかっていうのもあってつらくなくなんない?」

    たとえば、今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうんざりさせる。このくりかえしが人生だと思うとぞっとしてしまう。それでも、突然息が楽になる瞬間が確実にあるということのすごさが私をときめかせる。

  • 自分の頭の方が この世よりおかしくなったんじゃないかと思った季節に 出会えた本だった。私のこの世の興味関心を、私自身が馬鹿にした。自分のノスタルジー(郷愁)や思い出を 捨てたくなかった。
    大事な思い出ばかりだからという理由ではなく、自分を全肯定できないのは 私の過去のせいだと 思ったからだった。私の過去を知りたい人なんて、この世に一人として存在していないと思う理由の方が 知りたかったからだった。あるいは 自分の過去と訣別するのは自分の意思で。自分の意思と過去はどちらが大事だと思うかというと、自分を傷つけない未来なんて私に選択肢などないから、私には自分を傷つける未来しかないと思ったから。

    生きていてよかったと 本当に思った。
    傷つきを傷つきと言えて、涙が塩からいと感じる意思も思い出も私はなくさずに 置いておいたからだった。
    涙を愛おしく思った季節に出会えた本だった。

  • 大切な大切な一冊。大学4年生のとき、ふと図書館で手にとって読んだ。読み終わったとき、私の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
    それからこの本は、澄んだ気持ちになりたいとき、何度も読み返す一冊になった。

  • 最後、亡くなった恋人と会える瞬間、遠くにいながらお互いに何かを確認し合う様子、届きそうで届かない主人公の声。
    せつなく、胸が苦しくなる。

    死んだ人に対して、生きる側は何を思いその後の人生を歩んでいくのか。もう一緒にはいられないけど、心に故人の思い出を刻んで生きていくこと。それができると、人はつらいつらいことから、前に進むことができるのだと思った。

  • 冒頭の数行。あの短い中で主人公と恋人がどのような経緯で出会い、恋に落ちたかを一気に説明する。
    パスケースに入っていた鈴が、思いが通いあう前の切なさを表し、やがて二人の日常を示す象徴になる。読者はこの誘導によって非常にスムーズに、この恋人同士の間にあった強い情と絆を理解し、共感するに至る。
    こういった強固な土台があるからこそ、後に登場する謎の女性うらら、女装する弟、ふしぎな「奇跡」といった物語的な"遊び"が自然に受け入れられるし、恐らく最も本作で筆者が書きたかった「ありがとう」というラストの一言が凄味を持つ。

  • 目や鼻の奥がつーんとして、どうしようもなくほっぺたがほてった。

    涙というのは、突然に目から吹き出すものではなくて。普段から全身をめぐっている水が、堰を切ってあふれ出す現象なんだなと思った。涙が海の水みたいになまぐさく匂って、底から押し上げてきて、骨まで溶かしそうな勢いだった。いっぱい読んで、いっぱい泣いた。この物語が収録されている単行本『キッチン』からは、未だに本からしょっぱい匂いが漂ってきそう。
    そんな、骨がくたばって全身が震え出すような恋の話に焦がれた。

    何と言っても、ここが出発点だろう。「キッチン」以前に、ばななさんが初めて読者の存在というものを意識して綴った物語。

    よしもとばななは、ご自身の初期作品について、よく「下手」「恥ずかしい」ということを述べる人。プロ意識が高いのだろう。新作になればなるほど熟成された文章を書かれるのだから、振り返ってみれば昔は「下手」ということになってしまうようだ。
    ということは、今になっても処女作である『ムーンライト・シャドウ』を好きだと言うのは、趣味の悪い読者ということなのか? と、最近まで考えこんでしまったりしていた。

    しかし、こんなにもかっちりとしていて美しい本をつくってくれたのである。吉本ばなながよしもとばななになっても、これは大切な大切な物語と思われているに違いないと、胸をなでおろした。
    若さが書かせた、若さが読ませた、ということはあるのかもしれない。しかし、ここにぎゅっとつめこまれた輝きはなんて眩しいんだろう、なんて美しい若さなんだろう!
    10代の頃は、ただめちゃくちゃにせつないおはなしを読みたいだけだった。そして出会ったのは、本当に、ただただめちゃくちゃにせつないおはなしだったのだ。やっぱり『ムーンライト・シャドウ』の存在は、特別で、切実。

    時間の川に隔てられた恋。もう行かなければならないと確かめ合って、流れの向こうへと消えていく恋人。物語はせつなくはかなくひたすらに優しく、とどめをさすように美しい。今思えば、確かにあまりにも何でもかんでも美しすぎて、うっとりしすぎる気もするが、かまうものか。恋はファンタジーだ。
    骨までしょっぱくなるくらい、好きになりたい。本とか映画とか風景とか人物とか、何でもいいから。
    時々、そういう気持ちをどこかに置き忘れてしまう。よくない。

    そんな時に読み直すといいなと思うのだが、もう単行本は開けなくなってしまって、だいぶ経つ。泣きながら読んだのが悪かったのか、もうページがよれよれになって、本の痛みも激しければ自分の痛みもなまなましく、さわれないのです。目と鼻の奥がつーんで、涙で骨が溶けそうな。と思い出すだけで充分。でも、何せ大好きな小説である、いくら体で覚えているからと言っても、ふれられなくなったのは結構つらかった。

    今度からは、こんなにも気持ちよい真新しい本がある。それも、原画伯のど迫力イラストに力づけられながら読めるのである。同時に英訳版まで楽しみながら。どれだけ嬉しいか分からない。
    ありがたい!


    ★bk1掲載書評
    『好きになりたい。本とか映画とか風景とか人物とか、何でもいいから。』

  • ムーンライト・シャドウは何度読んでも美しくて儚くて切なくてあたたかい。主人公が恋人と別れを告げる、そんな瞬間がどんなに美しいか。人の死は辛く悲しいけれど、主人公のしなやかな強さを感じることができた。

    大学生のよしもとばなながこれを書き、何を思い、なにを残したかったのか。それが読み終わって一番気になったことだ。

  • いつ読んでも、どう読んでも美しい。

    輝く水面や、手渡されるお茶の温かさや、
    目に見えないはずのものが見える本。

    生きることって、とても輝かしいのだ。

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著者プロフィール

一九六四年、東京生まれ。詩人・思想家の吉本隆明の次女。日本大学藝芸術学部文芸学科卒業。八七年「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。八八年「ムーンライト・シャドウ」で泉鏡花文学賞、八九年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、九五年『アムリタ』で紫式部賞、二〇〇〇年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞を受賞。海外での評価も高く、イタリアで九三年スカンノ賞、九六年フェンディッシメ文学賞〈Under35〉、九九年マスケラダルジェント賞、二〇一一年カプリ賞を受賞。著作は三〇か国以上で翻訳出版されている。他の著書に『王国』『サーカスナイト』『ふなふな船橋』『小さな幸せ46こ』『イヤシノウタ』など多数がある。Webサービス note にてメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」を配信中。

「2018年 『小さな幸せ46こ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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