- Amazon.co.jp ・本 (119ページ)
- / ISBN・EAN: 9784255001951
作品紹介・あらすじ
愛する人との出会い、そして永遠の別れ。味わったことのない孤独、底なしの喪失感に苦しむ主人公は、未来に向かって歩き出す。
感想・レビュー・書評
-
この本が好きだという人と一緒に生きていきたい
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幼い頃に母親が「この本は泣いて泣いてページが見えなくなった」と言っていたので、読んでみたが当時の私はまだ小学生で泣けなかった。
でも時が経って、本当に好きな人ができて、失う悲しみを知ってから読んだこの作品は私の忘れられないものになった。
失うってなんだろう?と考える。こんなに苦しいのに生きなきゃならないってなんでだ?と問う。でも誰かを好きで好きで愛することって、そういう考えや問いを飛び越えていくものだと思う。悲しみの深さが愛情の深さを証明している。
この作品の良いな、と思うのは朝の香りが紙面からとてつもなく伝わってくること。早朝ってしんどい。「また生きなきゃいけないのか」と思わざるを得ないから。この作品の中の早朝も、そういう意味として描かれていてただひたすらに絶望感を携えている。だから、喪失感の傷を抉りかねない。
けれど、それでもなぜか闇に落ちていかないのが、吉本ばななさんの季節感の描き方が秀逸で、読む人の心にそっと寄り添う力を宿してくれるからだと思う。最後に起こる「七夕現象」は本当に苦しくて、嗚咽しそうだけど、きっと、こういう奇跡ってよく起きてるんじゃないかな、と思うし、思わせてくれる。生きるって悪くないなって肯定してくれる。 -
自分の中から大事な誰かを失くす時、本当に心臓とは別に『こころ』が体のどこかにあって、それがちりちりに引き裂かれるような痛みがある。それがあるうちは、どんなに気持ちの良い天気の日であっても、自分だけは幸せになってはいけないような呪いにかけられてる。吉本ばななさんの文章は、そんな辛い苦しい暗い闇の中で一人ぽっちのところから掬い上げてくれる。ひどく優しく、それでいてその救いすらも残酷に描いている。
大切な人ができたとき、何度も読み返したくなる作品でした。 -
悲しいけど、エモいってこういうことなのかなと思った
-
自分の頭の方が この世よりおかしくなったんじゃないかと思った季節に 出会えた本だった。私のこの世の興味関心を、私自身が馬鹿にした。自分のノスタルジー(郷愁)や思い出を 捨てたくなかった。
大事な思い出ばかりだからという理由ではなく、自分を全肯定できないのは 私の過去のせいだと 思ったからだった。私の過去を知りたい人なんて、この世に一人として存在していないと思う理由の方が 知りたかったからだった。あるいは 自分の過去と訣別するのは自分の意思で。自分の意思と過去はどちらが大事だと思うかというと、自分を傷つけない未来なんて私に選択肢などないから、私には自分を傷つける未来しかないと思ったから。
生きていてよかったと 本当に思った。
傷つきを傷つきと言えて、涙が塩からいと感じる意思も思い出も私はなくさずに 置いておいたからだった。
涙を愛おしく思った季節に出会えた本だった。 -
大切な大切な一冊。大学4年生のとき、ふと図書館で手にとって読んだ。読み終わったとき、私の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
それからこの本は、澄んだ気持ちになりたいとき、何度も読み返す一冊になった。 -
まだ学生だった頃、思春期で色々な出来事に感傷的で丁寧だった頃、よしもとばななの作品が大好きだった。自分の気持ちをとても丁寧に代弁してくれているようで、どの本を読んでも全く立場も性格も違う主人公に感情移入してどっぷり世界に浸ってた。今あの頃大好きだった話を読んでも多分あんなには入り込めないし浸れないだろうと思うけど、今でも大好きな話だと言えるのが当時キッチンに入っていたムーンライト・シャドウ。最初に読んだ時は号泣に近かったと思う。キッチンそっちのけで、何度もこの話だけを読み返したのを覚えてます。この話が表題作になってハードカバーで発売されているのを本屋で見つけた時には迷わず買ってました。本を買ったのは今から10年は前の話だと思うけれど、この話だけはいくつになっても読み返そうと思える何かがあるみたい。そういう本は多くないので大事にしたいと思う。
-
最後、亡くなった恋人と会える瞬間、遠くにいながらお互いに何かを確認し合う様子、届きそうで届かない主人公の声。
せつなく、胸が苦しくなる。
死んだ人に対して、生きる側は何を思いその後の人生を歩んでいくのか。もう一緒にはいられないけど、心に故人の思い出を刻んで生きていくこと。それができると、人はつらいつらいことから、前に進むことができるのだと思った。 -
冒頭の数行。あの短い中で主人公と恋人がどのような経緯で出会い、恋に落ちたかを一気に説明する。
パスケースに入っていた鈴が、思いが通いあう前の切なさを表し、やがて二人の日常を示す象徴になる。読者はこの誘導によって非常にスムーズに、この恋人同士の間にあった強い情と絆を理解し、共感するに至る。
こういった強固な土台があるからこそ、後に登場する謎の女性うらら、女装する弟、ふしぎな「奇跡」といった物語的な"遊び"が自然に受け入れられるし、恐らく最も本作で筆者が書きたかった「ありがとう」というラストの一言が凄味を持つ。
著者プロフィール
よしもとばななの作品





