心脳問題: 「脳の世紀」を生き抜く

  • 朝日出版社
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本棚登録 : 161
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255002774

作品紹介・あらすじ

脳科学の急速な発展のなかで、正気を保つための常識と作法を示す誰も教えてくれなかった「脳情報とのつきあいかた」。

感想・レビュー・書評

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  • いやあ最初の導入のところは正直のれなかったんだけど、後半にかけてとっても良い感じでした。

    科学は同一性の話である。再現可能なことをピックアップする
    それには、ある程度違うものを同一のカテゴリに入れて言語によってラベリングするという作業が必須。CDにおけるデジタル化みたいなもの
    当然デジタル化で乱暴にまとめられたところにも情報は存在する
    で、科学が有効に作用する部分ではとても有効に作用する。ので科学万能みたいな話になっているのが現在
    ここにきて、一回性のものをどうするのか?という話になる
    これは、ベイズ推定とか深層学習とかの流行の前の本なのでそこら辺の話は触れられていない。
    ということで、科学から統計、理論から経験という流れになっているわけですねえ。
    面白いなと思った点は、核技術なら原爆に結びつくのでそれは高度に政治的なのだと気づくのだけれど、脳科学は社会倫理をメカニズムに寄せていく可能性を残すのだけれどそれが高度に政治的だと思わないのが危険、という表現。新しい考え方だと思いました。ただ、実際は例えばサブリミナル広告の話とかで非常に政治的に取り扱われている気がしないでもない。
    デジタルなものでも、物量が増えていけばそのネットワークの中で自己言及が必ず発生して、一回性なものが生まれてくる。理論ではなく経験が優先される地平が開ける。それが現在のディープラーニングであり、ビッグデータ。そもそも生命というのも、繰り返される仕組みが最初にある。恒常な状態を作り出す、イオン勾配を作り出すというのが生命の始まり。量子から分子に行くところの構造と同じといえば同じ

  • 哲学の劇場ペアの著作。心脳問題とは一体なんなのか、ということを概観する書。この手の著作にしては非常に読みやすく、日本人の書いたものなので論理が難解なところも読み崩しやすくなっている。ただし在野の研究者であることもあり、カバー出来ていない範囲もあるため、あくまで入門書の類に留まるものに感じる。
    ただ、末尾の文献リストが秀逸で、ここまで合わせてこの本の魅力。著者の立場としては性質二元論に近いところに立っているように感じた。

  • 読んだのは随分前だったんだけど、読み直してみて、改めて良書だと実感。

  • ■科学の隙間を哲学が埋める。

  • 脳と心、どっちが本体?って問題は、学者の間でも説がわかれてるのね。「じつは」「だから」でなく「すなわち」って説明はよかった。 そして、アキレスと亀のパラドックスが理解出来た! カテゴリー・ミステイクなのか。運動は音楽と同じで、分割出来ないから誤比較なんだ!

  • 2013.2.8-2013.2.11
    「まえがき」に「「脳の世紀」を生き抜くために必要な基礎知力を養うことを目的としています。」とあるとほりの本。巻末にはこの分野の主な著作が紹介されてをり、読書案内としても便利。

    第一章 脳情報のトリック--カテゴリー・ミステイクとパラドックス
    第二章 心脳問題の見取図--ジレンマと四つの立場
    第三章 心脳問題の核心--アンチノミーと回帰する擬似問題
    第四章 心脳問題と社会--社会と科学、そして生
    終章 持続と生--生成する世界へ

    脳科学の視野の狭さについて漠然と考へてゐたことが、分かりやすい文章で整理されてゐるのに感心した。第四章で社会的な部分まで考慮の対象としてゐるのも素晴らしい。
    どんな人達が書いたのかと巻末を見ると、二人とも慶應の湘南藤沢キャンパス出身で、フリーランス。共通の師であるといふ赤木昭夫氏は、NHKの出身らしい。この本も、立派なジャーナリズムの本だと言へるだらう。
    他方で、似非脳科学者に騙されたり、知らず識らずにコントロール社会に飲み込まれたりすることは防げるとしても、積極的な貢献がないといふ批判もあり得る。
    無い物ねだりを承知で言へば、脳科学の研究者にも示唆を与へる何かがあれば、なほ良かつた。何度か引用されてゐるベルクソンには、さうした部分がたくさんあると思ふ。

  • たくさんの本を読んでうまくまとめた本です。結局、何でも脳のせいにする「あたまのよくなる本」にだまされるな。心の問題(「ハード・プロブレム」)はいろいろ議論があるけど未解決だし、解消するかもしれんが、これからも解決しない。しっかり自分で物を考えろ、そうしないと科学をかさにきる得体のしれない権力で行動をコントロールされて家畜化されちゃうよ(もうそうなっているけど)ということ。哲学史の記述や脳科学の記述はテーマ別にうまくまとめてあるが、第三章の二律背反と心脳問題の部分だけでいいような気がする。あまり物を考えない読者を想定して、語りかけるような文体だが、もっと注釈に追い込んで、きびきび書いて薄くした方が「脳の世紀を生き抜く」ことが必要な多くの人に分かってもらえると思う。

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  • 2005, 12/17 読了。


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著者プロフィール

山本貴光(やまもと・たかみつ) 文筆家、ゲーム作家、ユーチューバー。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『マルジナリアでつかまえて』(全2巻、本の雑誌社、2020/2022年)、『記憶のデザイン』(筑摩書房、2020年)、吉川浩満との共著に『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。――古代ローマの大賢人の教え』(筑摩書房、2020年)など。

「2022年 『自由に生きるための知性とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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