怖い絵

著者 :
  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255003993

作品紹介・あらすじ

一見幸せな家族『グラハム家の子どもたち』…けれど、この絵の完成後?スポットライトを浴びるドガの『踊り子』…じつは、この時代のバレリーナは?キューピッドのキスを受ける豊満な裸体『愛の寓意』…でもほんとは、このふたり?名画に塗り込められた恐怖の物語。心の底からゾッとする名画の見方、教えます。

感想・レビュー・書評

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  • 扉絵となってる横眼の
    女性。

    彼女こそいかさま師で
    隣に立つ給仕の女性も
    グルなのでした。

    カメラを引くとカモに
    されてる坊っちゃんが
    そうとは知らず、己の
    手札に視線を落とし、

    その隣で実行犯の男性
    が今まさに背中の隠し
    カードを取り出そうと
    しています。

    十七世紀仏の王室画家
    ラ・トゥールによる作、
    その名も『いかさま師』

    ラ・トゥールといえば
    『大工の聖ヨセフ』に
    見覚えがある程度しか
    知りませんでしたが、

    この作品を通してその
    卓越した表情の描写に
    魅せられました。

    アルテミジアが描いた
    ホロフェルネスの首を
    斬るユーディットや、

    ジョルジョーネによる
    『老婆の肖像』もまた、

    表情の描写ということ
    でいうと素晴らしいの
    一言。

    時空を超えて人びとの
    心の闇を、

    それが現代の私たちの
    ものと変わらないこと
    を知らしめてくれます。

  • 図書館で予約した時、私の前に28人の予約者。
    メールで連絡が来ても、何のことかすぐに分からないほどの時が経った。

    つまり、待ちに待った一冊なのに、この怖さは何?
    見てすぐにそれと分かる異常なモチーフが数点。
    一度だけチラッと見て、著者の解説を読むときは決して元の絵のページに戻らないよう、それはそれは気を付けながらの読書だった(笑)。

    恐怖小説やホラー映画を好んで観る方というのは、脳内変換スイッチがあって恐怖が娯楽に切り替わるに違いない。でもその変換スイッチを所持しない私のようなタイプも相当多いと思われるので、気の弱い方は気を付けてね。

    ただ、著者の名文・達文に導かれながら、未知の知識の扉を次々に開けていく展開は素晴らしいのひと言。読まないのはもったいない。
    これまで特に恐ろしいとも思わなった作品の中に(また画家もそんなことは目指してないのに)画家の人となりや時代背景、絵の中の小道具の役目などを説明されて慄然とするもの。
    更に、前述したように衝撃的なまでの恐ろしい絵。
    そういった作品が全部で20点載せられている。
    主に16世紀から20世紀の西洋名画。
    私は半数の作品しか寡聞にして知らず。皆さんはいくつご存じだろう。

    一番最初は、有名なドガの「エトワール、または舞台の踊り子」から。
    上演中の舞台に平気で立っている黒服の男、これが踊り子エトワールのパトロンだという。
    働く女性は軽蔑され、バレエなど芸術でもなんでもなかった時代だ。
    1878年のこの作品から、セクハラ問題を国会で論じる現代まで、一体どれだけ進歩したというのか考え込んでしまう。

    とりわけ惹かれたのはクノップスの「見捨てられた街」(1904年、パステル・鉛筆)。
    画面の半分以上は曇った空。整然と並ぶ切妻屋根の家々。足元に打ち寄せる波。いつしか海底に沈む運命の、死の街。
    何故か脳裏から離れず、気が付くとぼんやり思い浮かべている。甘美な幻想だ。危ない。
    後ろにあと10人の予約者が控えている。早く返却しよう。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは。
      私も脳内変換スイッチがないので、この本を開いたら心臓が飛び出るかもしれません。夜、思い出して寝られないか...
      nejidonさん、こんばんは。
      私も脳内変換スイッチがないので、この本を開いたら心臓が飛び出るかもしれません。夜、思い出して寝られないかもしれません。中野京子さんは、テレビでも時々怖い絵の解説されてますよね。それをうわっうわっと思いながらも、怖いもの見たさと言いますか、つい観てしまうのは中野さんのお話が興味深く面白いからです。きっと、この本も読み始めたら止まらなくなりそうです。一度チャレンジしてみますね。本棚に置いておいたら、ちょっと怖いので(;¬_¬)図書館で借りてみます^_^;
      2018/05/24
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!とても嬉しいです!
      まさかまさか、この本のレビューにコメントをいただける...
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!とても嬉しいです!
      まさかまさか、この本のレビューにコメントをいただけるとは・笑
      だって、思い出しても怖いんだもの。。。
      美しくて心を癒してくれるものが絵画だと思っていたら大間違いでした。。

      仰る通り、著者のお話の運びが絶妙で、それでどんどん読んでしまうのですよ。
      ええ、「怖いもの見たさ」って確かにありますよね。
      実はそれがうずうずと頭をもたげていて、続編を読みたくてたまらないのです(^^♪
      でもやはり怖いので、ここは地球っこさんにお任せしてみようかしら・笑
      首尾よく図書館で借りられますように。怖いながらも楽しんでくださいますように。
      2018/05/25
  • 面白かった。
    絵の細かいところ、中野さんの解釈。
    時代や画家の背景、心情。。。。
    知ると、また違った見方が見えてくる。
    読みながらなんども絵にもどって確認しながら読みました。

  • 図書館で予約して二ヶ月以上かかりました。
    とても面白かったです。
    怖い絵2は、二週間で手元にきました。

    さて、前回怖い絵2の時、
    一つだけ作品を見られるとしたら?と考えて、
    ブリューゲルを選びましたが
    今回もブリューゲルですね。

    やっぱり、自然が描かれていて
    コマゴマしているから、実際に見てみたいのかなと思います。

    怖いのは作品11のヘンリー八世
    作品17のイワン雷帝でしょうか。

    現実の物として伝わってきます。

    中野京子さんの本はとても面白いし
    私のレベルで理解できるのが嬉しいです。

    http://nagisa20080402.blog27.fc2.com/blog-entry-259.html

  • 間接的に怖いのと直接的に怖いのがどんどん目に入ってきて「口を開けたまま、彼女は凍ってしまった。」状態だった。
    すごいね。クロノスがゼウス達を食べるシーン、漫画で読むと、パクって感じだけどリアルに怖く描いていて、ゾッとした。
    いろんな怖さで寒くなって布団から出ることができなくなったわ。(*^ω^*))バシッなまけるな!
             ⇧あだっ

  • 一見幸せな家族『グラハム家の子どもたち』
    ……けれど、この絵の完成後?

    スポットライトを浴びるドガの『踊り子』
    ……じつは、この時代のバレリーナは?

    キューピッドのキスを受ける豊満な裸体『愛の寓意』
    ……でもほんとは、このふたり?(帯より)

    作品の描かれた時代背景や作者のひととなり、モチーフに隠された意味などを「知る」ことによって、絵の見え方がガラリと変るという知的体験!
    絵画について「好き」「嫌い」「よくわからん」くらいの単調な見方しか知らなかったので、歴史・文学・宗教などなど様々な知識を駆使して名画を読み解いていく本書に、興奮しっ放しでした。
    イコノロジー(図像解釈学)という言葉を知ったのも初めてだったのですが、面白いなあ……。

    あまりにも夢中になってしまって、読み終わるのが勿体ない~!と思いきや、続編もたくさん出ているのですね。
    やった!まだ読める!

  • 子どもの頃に母に連れられてちょいちょい美術展とか行った記憶を今になって思い起こせば。
    なんとなく薄気味悪いというか不気味というか感覚的に怖いと認識してた気がする。
    とくに宗教画は苦手だったなぁ。
    残酷なシーンも多かったのかもしれないけど、例えばラファエロの天使なんかも愛らしいとは思えなかったし、ボッティチェリもダ・ヴィンチもなんか気味悪いってどこかで感じてた気がする。
    それってバロックや印象派も然り、だったりするかも。
    総じて、寝室やリビングに飾りたいと思えない感覚。

    おもしろかったのでモダンアートのも出してくれないかな。
    ピカソとかダリとかシャガールとかも怖くない?

  • 学生時代、芸術論を選択して、授業で語られる様々な「戦慄の」場面に、そんなことが絵に描かれたのかと驚いたことを今でも思い出します。絵=美しいもの、という認識をあっさりと覆されました。思えば、写真のなかった時代は、こうやって絵によって語り継がれていくこと、教訓とされることが当たり前だったのかもしれません。よく知られた絵画をここまで「読ませて」くれる著者さんの文章にも脱帽です。

  • 初読

    解説と自論のバランスが良くて楽しめる一冊。
    アルテミジア・ジェンティレスキのユーディトと
    ダヴィットのマリーアントワネットの最後の肖像の章が
    ジェンダー論入ってて面白かった!
    解説も熱っぽいような。

    絵としてとても惹かれたのはクノップフの「見捨てられた街」
    ベルギー王立美術館所蔵とのこと、ブルージュの街と共にベルギーに行って観たいなぁ
    死都ブリュージュも読みたいなぁ。

    そうやって、ヘンリー8世の章を読めは「あ、テューダー朝気になってたんだよね!」
    ってテューダーズのDVDレンタルしてみたり(笑)
    さらっと読もうと思ったら読めるんだけど、
    色々寄り道したくなるので読み終えるのに意外と時間がかかりましたw
    なので、2と3は借りるんじゃなくて買おうと思います。

  • NHK教育テレビで夜に「怖い絵」という30分番組をやっていて。
    面白そうなので見たいなと思ったのに。
    全8回番組の内、3回しか見れず、ほぼ見過ごしてしまったので。
    本を借りてみました。
    元々人々を怖がらせる目的で描いたモノは勿論のこと。
    画面上には何も怖いものは無いのにその絵の成り立ちの恐怖・隠された恐怖を感じさせる絵。
    さまざまな絵を解説する。
    絵画については門外漢なんだけど、凄く面白かった!
    紹介されている絵は下記20点。

    01.ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』
    02. ティントレット『受胎告知』
    03.ムンク『思春期』
    04.クノップフ『見捨てられた街』
    05.ブロンツィーノ『愛の寓意』
    06.ブリューゲル『絞首台の上のかささぎ』
    07. ルドン『キュクロプス』
    08.ボッティチェリ『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』
    09.ゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』
    10.アルテミジア・ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』
    11.ホルバイン『ヘンリー八世像』
    12.ベーコン『ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作』
    13.ホガース『グラハム家の子どもたち』
    14.ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』
    15.グリューネヴァルト『イーゼンハイムの祭壇画』
    16.ジョルジョーネ『老婆の肖像』
    17.レーピン『イワン雷帝とその息子』
    18.コレッジョ『ガニュメデスの誘拐』
    19.ジェリコー『メデュース号の筏』
    20.ラ・トゥール『いかさま師』

    内容は凄く面白いんだけど、残念なのは、その主題となっている絵画の写真が小さくって全然細部が見えない。
    テレビ番組で放送されていた時は絵をクリアに見れてよかったんだけど。
    恐怖の迫力がだいぶ半減してしまっているところかなぁ。
    この本だけで絵を鑑賞するのは到底無理ですが。
    この本を起点として「どんな絵なのかもっと知りたい!」っていう気持ちを起こさせることには成功していると思う。

    個人的に怖いなぁと思ったのは
    絵自体の気持ち悪さから『ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作』。
    アドレスクリックして突然この絵がでてきたら、ブラクラ踏まされたと思って慌ててにウィルススキャンすると思う。

    絵のタッチはちょっとした童話みたいなファンタジックな絵柄なのに、言い知れない不安を感じる『キュクロプス』も気味が悪い。
    特にキュクロプスについての著者の解析はとても面白く読めた。
    キュクロプス(一つ目男)の目は、元々二つあった物が潰されたのではなく、もっと見たいという欲望が具現化されたかのように大きく。
    成熟した肉体に幼い子供のような幼稚な頭部が理不尽な振る舞いで一人の女性に執着する野生、妄執、身勝手さを表していているそうで。
    絵の題材を知らなくってもなんだか気味が悪いと感じていた理由が氷解する。

    ただ、一点。
    『ガニュメデスの誘拐』については全く著者とは異なる感覚で。
    絵自体はジュピターが美少年がガニュメデスを大鷲の姿で連れ去る絵。
    「鑑賞する男たちの中には、ガニュメデスのなめらかな肌に魅入られ、まるで誘うかのような視線、無防備な裸体に自分の欲望を肯定されたと安堵し、身近に居る少年たちを実際に”誘拐”したものも居たのではないか。そう思うにつれ、この絵はつくづく怖い」
    とあるんですが。
    そこまでは思わない。アンタそれは言いすぎやろ。と思う。
    個人的にはガニュメデスの主題はとても魅力的で、恐怖よりもエロスを感じるだけなので。
    普段BLに慣れている人間と、そうではない人間の解釈ってここまで違うんだな。
    という違いに恐怖は感じました(´∀`;)

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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