単純な脳、複雑な「私」

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  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255004327

作品紹介・あらすじ

20年前に卒業した母校で、著者が後輩の高校生たちに語る、脳科学の「最前線」。切れば血の吹き出る新鮮な情報を手に、脳のダイナミズムに挑む。かつてないほどの知的興奮が沸きあがる、4つの講義を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 池谷さんの脳の本は、ほとんど読んでいます。
    これはその中でも一番新しい本(のハズ)。
    池谷さんは、最先端の内容を
    できるだけ噛み砕いて説明してくれる数少ない研究者の一人。

    今回は、脳科学の最先端を池谷さんの出身高校の生徒に対して、
    特別授業を行ったときの講義録。

    高校生向けの授業なはずが、かなり高度な内容で
    じっくり理解しながら先に進むことを求められる。
    その分、高い知的好奇心が満たされ、
    安易な「脳科学」本に飽きてしまった人には、
    ハマるんじゃないかと思います。
    科学だけでなく、哲学的な分野も入っていて、
    とにかく色んな分野を幅広く知ってないと、
    脳については理解できないんだなぁ。。というのが、正直な感想。

    決して「易しい」本ではないけれど、
    読み応えや達成感や知的好奇心は満たされる本です。

    過去の池谷さんの書評はこちら↓
    (どれも最高に面白いです。)

    ※記憶力を強くする
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4062573156#comment

    ※海馬 脳は疲れない
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4101183147#comment

    ※のうだま やる気の秘密
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4344015959#comment

    ※脳はなにかと言い訳する
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4101329214#comment

    ※パパは脳研究者
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4594085369#comment

  • 池谷裕二さんの代表著作の一つではないでしょうか。
    母校での特別講義を書籍化したもので、2009年と脳科学をテーマにするには少し陳腐化してしまうのではと心配してしまう年月ですが、人間の「心」とは何かをテーマに本質を突く内容ですので、今読んでも新しい気付きを与えてくれました。

    自分の意識や自由意志(本書では自由拒否)というものを崇高で難解なものとして捉えてしまいがちですが、結局は身体や環境からの情報によって後天的に脳で作話してるもんなんだよ。自分の意志で決断するようなことも、アプローチとしてはまず脳で準備した後に動かそうという意思が生まれる。そこに自由はあるのか?

    人間の意志や行動は複雑怪奇に思われるが、その根源はニューロンのシナプスの信号+脳のゆらぎという単純なものから創発されているものなのだ。

    人間の自分で自分を知ろうとすることはリカージョン(入れ子構造)になっており、ラッセルの矛盾にもあるようにそこには辿り着けない、答えなき探求がが待ち受けている。

    ばらばらっとまとめてみましたが、脳、ひいては心とはつかみどころのない曖昧な拠り所のない、なんとも不思議な感覚に誘われる素敵な読書体験でした。

  • 出身高校で行われた講演を元にした本なので、分かりやすく面白い。色々驚く事が多い。
    脳科学や遺伝学は今後人文科学の他の分野にも新たな展開をもたらすと思う。
    ただ、動物実験や、被験者を使うので、倫理観も問題になるかも。
    赤ちゃんが、白いぬいぐるみを抱くと大きい音がする実験。何度も繰り返すと、ぬいぐるみはもちろん、白いモノも避けるようになる。成長した後も影響するかもしれませんねと、さらっと語られていたが、その責任はどうなるんだろう。
    自分の子供を被験者にはしたくないと思った。

  • 『感想』
    〇自分の意志が自分を支配しているのか、それとも機械的な反応が後追いで自分がやったと思い込むために自分が支配されているのかわからなくなる。少なくとも脳機能=意志ではない。

    〇意識をすることが全てとなってしまうと、高度な脳や体を動かすために莫大なエネルギーや処理能力が必要になり、現実には動けなくなってしまう。無意識に行えること(例えば息をすることや危険に対してとっさに反応すること)が人間の素晴らしさで、自分の意志で行っていると勘違いできるぐらいの機能があることがすごいことなのだろう。

    〇ゆらぎ、ノイズによって新しいものが生まれていくのは、社会を考えると理解できる。会社でも同じ考えの人ばかりになると新たなことに対応できなくなり潰れてしまうかもしれない。ちょっと違う考えの人がいることで、その対応ができる。新しいことを生み出す力にもなる。

    『フレーズ』
    ・私たちが見たものを判断するのは「左側」の視野が中心。(p.46)

    ・視線を動かすことによって感情が引き出されるらしい。(p.57)

    ・睡眠は脳や体をクールダウンするための休息時間では決してなくて、もっと積極的に情報の整理や保管を行うための活動的な「行為」である、ということです。(p.75)

    ・僕らにいま見えている世界の「正しさ」って、いったい何なんだろう?何が正しいのか、何が間違っているのかなんて、結局、脳にはもともとそんな基準なんてないんだよね。(略)僕らにとって「正しい」という感覚を生み出すのは、単に「どれだけその世界に長くいたか」というだけのことなんだ。(p.110)

    ・自分が「心地よく」感じて「好感」を覚えるものを、僕らは「正しい」と判断しやすい。(p.120)

    ・構造や形態こそが、生命活動の要なんだ。逆に言えば、構造が保たれている限りは、だいたい共通の「認識」が生まれうることになる。(p.230)

    ・自由意志って、「行動する内容を自由に決められる」という感じで、あくまでも「行動の前に感じるもの」だと思いがちだけど、本当は逆で、自分の取った行動を見て、その行動が思い通りだったら、遡って自由意志を感じるんだね。結果が伴わない限り自由はない。(p.258)

    ・遺伝子で決まる「基礎力」に差がある場合でも、学習や訓練によって、その差を克服できる。つまり、「可塑性」が高い個体が生存上有利になる。【進化のステージ1】可塑性による淘汰が進むと、すべての個体の可塑性が高くなるので、優れた基礎力を持つ個体が生存上有利になる。つまり、100点満点を取るための労力が少ない個体が有利。【進化のステージ2】そうすると集団は遺伝的に均一になってしまう。進化の最終段階に至って多様性を持たなくなった種は滅びるだろう。(p.304)

  • 脳科学者池谷裕二さんが、母校の高校生に向けた「脳」についての授業をまとめたもの。
    自薦するだけあって、とてもよくまとめられていました。
    (奇妙なのは、生徒側がものすごくハイレベルな学生である点…笑)

    ・「選択盲」…選んだ本当の理由に気づかず、事後的に理由をこじつける脳の性質。

    ・ある人は気付くけど、ある人は気付かない。気付かないひとにとっては「それが存在しない」世界に生きているから、自分が「どれほど気付かないか」ということすら気付かない。

    ・お金をもらいすぎると、仕事自体の魅力が落ちる可能性がある…感情を行動に整合する

    ・「作話」…行動が先にあり、その起源を常に探している。

    (「ラングトンの蟻」…http://www.asahipress.com/brain/langton_regular/langton.html

  • 私たちの意識は何か、脳科学の視点を交えて講義形式で考えを広げている。そんな感じの本。

    自分はAIに少し興味があって知能とは何かという問いを考えるために本書を手に取りました。

    人間について、意識について、認識について疑問を抱いてるひとにおすすめの一冊です。

    人間の意識というのは自分の中に他人(自己を含む)を生成することで生じてるものなのかもね。
    五感の中で受容体の種類が一番多いのはどれか、自由意志は発生か抑制どちらの分類になるか、などのお話が面白かったです。

    人生で一度は読みたい良書だと個人的には感じました。

  • 脳は身体からのフィードバックを必要とし、身体がなければ外界を知ることができない。心も同様に身体によるフィードバックに依るところが大きい。

    いい意味で脳に対する謎に包まれた神秘性を崩してくれる本だと思う。
    脳は意外と単純で、意外と複雑で、脳自体がとても人間らしいと感じた。

  • リベットの実験
    脳回路の冪分布→1/fゆらぎ
    リカージョンによる自己言及パラドクス

    ▶︎『進化しすぎた脳」に比べて哲学的な話題多め。
    ぶっちゃけ心の哲学の必要性を感じない(厳密に言うと哲学し続けることの必要性)立場の私にとって読む必要性はなかった…。とはいえ、池谷先生の本は高校生や完全初学者にはお薦めできる

  • この本読んでると無意識領域がどんだけ大きく人の判断に影響を与えているかを知れ、非常に驚かされる。

  • 面白そうなところだけ。
    脳にもノイズが必要という部分が印象に残る。

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著者プロフィール

監修:池谷裕二
脳研究者。東京大学大学院薬学系研究科薬学専攻医療薬学講座教授。薬学博士。一般向け書籍の累計発売部数100万部超え。

「2023年 『3ステップ ジグソー知育パズル どうぶつ だいずかん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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