足の裏に影はあるか? ないか? 哲学随想

著者 :
  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255004716

作品紹介・あらすじ

地平線は越えられるか?「私たち」に外はあるか?足の裏に影はあるか?ないか?「無関係」とはどういう関係か?…ほか、目の前に立ち上がる問いを、夢中になって、追跡する。-目もくらむような、24の言葉の結晶。付論「『ほんとうの本物』の問題としてのプロレス」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • かなり充実したエッセイであった。 
    『私たち』に外はない
    足の裏に影はあるか?ないか?
    無関係という関係
    あらかじめ失われた
    一回性と反復

    メタについて考えるかなりたくさんの題材が眠っていた。
    ないよりもっとない。ある人にとってない人はないことが分かる。1番目はすでに2番目…本当に面白かった。

  •  哲学者入不二基義氏による初のエッセイ集である。既刊の序文を中心に構成された第ⅰ部、時間論的な哲学エッセイを集めた第ⅱ部、時事ネタを含む日常的エッセイの第ⅲ部、そして付録のプロレス論、どこから読んでも入不二哲学の魅力に触れることができる。
     同氏の既刊書はよくもあしくも本格的な哲学書がほとんどだったため、その分かりやすさとは裏腹に一般読者にとっては不当に馴染みの薄い哲学者であったが、本人をして「こういう本をずっと書きたいと思ってきた」と言わしめた本書は、読者を選ばぬ読みやすさと哲学ファンをも納得させる深さを兼ね備えた好著となった。
     個人的には第ⅱ部の書き下ろし三篇が最も刺激的であり眩暈すら覚えた。普段何気なく見過ごしている常識が入不二製の哲学メスによって解剖されてゆくさまは芸術的ですらあり、少なくとも表現力においては3N(中島義道・永井均・野矢茂樹)を凌いでいるのではないかと思われる。付録のプロレス論は再録であるが、独創性はもちろんのこと後に開花する入不二哲学の萌芽が見られ興味深い。
     松田行正氏の手による装丁も地味でありながら挑発的であり、「無さ」にこだわる入不二哲学を具現しているかのようである。入不二哲学のみならず哲学そのものの入口へと誘ってくれる本書は、一人でも多くの人に読んでもらいたい一冊である。

  • 哲学

  • 日常のモチーフを徹底的に考察し、自然に哲学の世界にいざなってくれる本。平易にして難解、穏やかながら問題提起もある。全編豊かな情緒に満ちている。

    かつてぼんやりと空想にふけっていた自分。今でも歳のわりに何事も上手く流せずいちいち引っかかりあまり生き方上手でない人間なもので、こういう本は知のストレス解消になる。

    (蔵書につき引用省略)

  • 哲学書とはいえ、内容はエッセイなので取り付きやすい。
    ただ入り口はそうであっても、さすがは哲学家、そこから施策の迷宮に彷徨うことになる。
    書いてある文章は読めるし分かるが、内容は複雑で理解できないところもある。しかし一方で、今まで自分が感じていながら表現(説明)出来ないことが見事に論理的に説明されてスッキリするところもある。
    このレベルであれば、もう少し楽しんでみたい。

  • 地元の図書館で読む。プロレス論の部分を読む。哲学者が書くものとしては、読みやすいです。ただし、もっと簡単に書けるのではと思ってしまいます。注目したい哲学者です。

  • 哲学での旅
    足の裏に影はあるのか?
    平等な競争とは何か?
    未来はやってくるのか?

    日常ではあまり考えることのないことを考える。
    先の一問目は、あるというのもないというのも正解だがないということにも二つの言葉があって......。
    と終わりを見ない。
    二問目は、平等というものを押し進めていくと、そもそも競争など必要ないではないか、という答えに繋がり、競争を競争として成り立たせるためには、些末な不平等はないものとして扱う、ということになる。
    しかしそのどこまでが些末な不平等なのか、ということにまで考えを及ぼすと、やはりこれも万人がな得する終着点は見えない。
    三問目も大変興味深い。
    未来はやってくるでしょ、と私たちが信じていることが正しくないとしたら?
    詳しくは本書に任せるとして、「やって来ないということに、未来としての未来の核心がある」というのは目から鱗の思考だ。

    この他にも、プロレスであったりラブレターであったり、決して珍しくはないものから哲学の世界が広がっていく。
    面白いのがゲームの話で、公務員試験ではおなじみの「数的推理」に登場する問題だ。
    ABCの三人が赤と白の帽子をそれぞれかぶって階段にたっており、それぞれ正面を向いている。
    一人ずつ聞いていくとわかったと答えるものがいた。
    一体誰が何色の帽子をかぶっているか?
    というもの。
    これがまさか哲学に繋がるとは!

    思考実験ではあるが、脳内で起きる不思議な旅が味わえる。
    刺激的な一冊だ。

  • 「ぼくと宇宙では、どっちが大きいか」や「ぼくは人間ではない」という話を書いていた頃と同じように、幽霊話を書きつけていた頃と同じように、考えていることや思いついたことを、書き連ねてみたい。

  •  随想ということで寸止め感いっぱいw その昔デリダが全然理解できなくて,全然関係ない入不二さんの本を読んだときに,「これって分析系の言語で書かれたデリダじゃん!」って思わず叫びそうになったのが懐かしい。そのときは何か理解が深まった気がしたものだ。まぁ,今思えば多分僕の誤読なんですけど。。。

  • エッセイ集。付録のプロレス論が面白かった。なぜこれを「負の業績」と言ったのか、入不二先生の指導教官や先輩方にお伺いしたい。

    「八百長」「ほんとうの強さ」という言葉は安易に使われる。スポーツライターは全員読め。

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著者プロフィール

入不二基義(いりふじ・もとよし):1958年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業、同大学院博士課程単位取得。専攻は哲学。山口大学助教授をへて、現在、青山学院大学教育人間科学部教授。主な著書に『現実性の問題』(筑摩書房)、『哲学の誤読――入試現代文で哲学する!』(ちくま新書)、『相対主義の極北』(ちくま学芸文庫)、『時間は実在するか』(講談社現代新書)、『時間と絶対と相対と――運命論から何を読み取るべきか』(勁草書房)、『足の裏に影はあるか? ないか?――哲学随想』(朝日出版社)、『あるようにあり、なるようになる――運命論の運命』(講談社)など。共著に『運命論を哲学する』(明石書店)、『〈私〉の哲学 を哲学する』『〈私〉の哲学 をアップデートする』(春秋社)などがある。

「2023年 『問いを問う 哲学入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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