絵でよむ漢文

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  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255005393

感想・レビュー・書評

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  • 漢文に触れるのは大学受験以来です。本文の字体が美しかったので書き写したくなり、久しぶりに書写しました。「春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少」「春宵一刻値千金」なんかは、今の気候にぴったりの表現だと思います。夏目漱石や木戸孝允の作品もあり、漢文を作ったのは中国人だけじゃないということを初めて知りました。

    p17
    王維
    唐詩がもっとも盛んに作られた盛唐(七一二〜七六五)の高級官僚で、時代を代表する詩人。画家、書家、音楽家としても活躍した。晩年の官職が尚書右じょう(内閣官房長官のような職)であったことから王右じょうとも呼ばれる。同時代の詩人李白が詩仙、杜甫が詩聖と呼ばれるのに対し、その作風から詩仏と呼ばれる自然詩人。山水画にすぐれ「南画(文人画)の祖」と言われる。

    p25
    杜甫
    李白と並んで唐を代表する大詩人。若い時から政治と社会に深い関心を持ち、現実をリアルに描写して、千五百首あまりの名作を残した。天才肌の李白に対して杜甫は努力型といわれ、作風は対照的である。沈痛・憂愁を基調とした叙事詩が特徴で、とくに対句を重んずる律詩には定評がある。「李白は絶句、杜甫は律詩にすぐれている」と称される。

    p45
    人間は現実を脳で知覚する。現実は脳外現象だが、現実の知覚は、夢と同じ純粋な脳内現象だ。自分がいま味わっているリアルな感覚が、夢か現実か、区別は意外に曖昧なのだ。

    p55
    『礼記』
    儒教の経典である五経の一つ。周から漢にかけて儒学者がまとめた礼に関する書物を、漢の学者・戴聖が編纂したもの。四十九編。五経には他に「易経」「書経」「詩経」「春秋」がある。

    p59
    孟子
    戦国時代の思想家。孔子の孫の子思の門人に学び、のちに諸国を周遊して王道・仁義を説き、儒教の伝道を果たした。人間の本性を善とする「性善説」を説いたことで有名。その言葉をまとめた『孟子』は、『大学』『中庸』『論語』と合わせて「四書」として、儒教の経典として尊ばれた。

    p63
    韓非
    『韓非子』の著者。旧称は「韓子」であったが、宋以後、韓愈(尊称は韓子)と区別して韓非子と呼ばれる。戦国時代の韓の王族で法家の代表的学者。秦の李斯とともに荀子に学んだ。のちに始皇帝に認められて秦に仕えたが、李斯の陰謀で自殺を強要された。『韓非子』は君主の政治の方法を論じた書。悪の帝王学、東洋のマキャベリズムの書として有名。

    p65
    水のように無形で柔軟、謙譲の態度で立ち回れば、堅固で強大な相手にも最終的に勝てる、というのが「老師の兵法」の神髄である。

    p67
    『淮南子』
    前漢の淮南王劉安(前一七九〜前一二二)が学者を集めて編纂させた思想書。二十一巻。日本には奈良時代頃とかなり古くに伝来したため、漢音の「わいなんし」ではなく、呉音で「えなんじ」と読むのが一般的。無為自然を尊ぶ道家思想を中心に、儒家・法家・陰陽家の思想が収められている。

    p71
    荘子
    荘周の尊称。戦国時代の思想家。孟子と同時代に、老子の思想である「無為自然」を継承。『荘子』ら荘周の著書。一般に人名と区別して「そうじ」と読むこともある。『老子』とともに中国古代の学説、道家を代表する。日本の思想、文学にも影響を与えた。

    p77
    老子
    周代の思想家。中国古代の諸子百家の一つ、道家の祖で後に荘子がその学を継いだ。自然のままを尊ぶ無為自然の「道」を唱えた。生没年は不詳。非実在説もある。

    p80
    『呂氏春秋』
    戦国時代末期、秦の呂不韋の編による思想百科的な書。二十六巻。儒家や道家を中心に、名家・法家・墨家・農家・陰陽家家など諸学派の思想を幅広く採用。天文暦学や音楽理論、農学理論など自然科学的な内容も充実している。呂不韋がこれを一字でも添削できた者には千金を与えようと言ったこたが「一字千金」の由来とされている。

    p95
    李白
    盛唐の大詩人。若いころは諸国を旅していたが、四十二歳のときに才能を認められて宮中に入った。杜甫と並んで中国を代表する詩人であったが、その作風は相反していた。杜甫の「詩聖」に対して「詩仙」と称され、長編の古詩を得意とし、また絶句に秀でていた。豪放かつ奔放な性格で筆の運ぶのにまかせて、作品が生まれるという天才肌の詩人だった。奔放な性格で、酒好きだったため「酒仙」とも言われる。

    白居易(七七二〜八四六)
    中唐の詩人。階層の低い家系の出身であったが、二十九歳で官吏登用試験である科挙の進士に合格。現存する文集は七十一巻、詩と文の総数は約三千八百首と多作な詩人であった。詩の内容は多彩で、中国国内のみならず、日本や朝鮮など周辺国でも愛好された。仏教徒としても著名であり、晩年は龍門と香山寺に住み、「香山居士」と号した。

    p123
    『十八史略』
    元の曾先之により次の十八の歴史書をダイジェストの形で簡略にまとめられた歴史の入門書。中国よりむしろ日本で普及した。
    1『史記』2『漢書』3『後漢書』4『三国志』5『晋書』6『宋書』7『南斉書』8『梁書』9『陳書』10『魏書』11『北斉書』12『後周書』13『隋書』14『南史』15『北史』16『新唐書』17『新五代書』18『続宋編年資治通鑑』『続宋中興編年資治通鑑』

    p127
    孫子
    孫武の尊称。春秋時代の斉の人で、兵法をもって呉王闔廬に仕え、諸国を攻略して大成を立てた。後世、呉子(呉起)とともに、兵法家の祖とされる。『孫子』は書名。世界各国の言葉に訳され、欧米でもThe Art of Warというタイトルで広く読まれている。

    p131
    『戦国策』
    周の安王(在位、前四〇一〜前三七六)から、秦の始皇帝までの約二四〇年間に説かれた策略を、国別に集めた書物。全三十三巻。前漢の劉向(前七七〜前六)編とされる。この書名から「戦国時代」という時代呼称が生まれた。日本史の戦国時代という呼称は、中国史の用語の借用である。

    p141
    項羽(前二三二〜前二〇二)
    戦国時代の乱世に楚の将軍の家に生まれ、劉邦とともに秦を滅ぼし、西楚の覇王と号した。のちに劉邦と天下を争ったが、包囲されて烏江に逃れわみずから首をはねた。司馬遷は項羽の伝記を『史記』の本紀(帝王の記録)に置き、高く評価している。

    虞美人草の伝説
    虞美人は中国四大美女の一人とされる。が、彼女についての記録は『史記』のこのくだりがすべてで、生没年もわからない。『史記』では、項羽はこのあと血路を開いて漢軍の包囲を脱出するが、虞美人についての記述はない。後世の民間説話では、虞美人は項羽の足手まといにならぬため刀で首を切って自殺したとされる。大地に流れた血のあとから、翌年、赤いヒナゲシの花が咲いた。以来、ヒナゲシは別名「虞美人草」と呼ばれるようになった。

    p149
    『後漢書』
    後漢時代について書かれた歴史書。中国の正史として清の時代に選定された二十四史の一つ。帝王について記した本紀十巻、列伝八十巻、志三十巻より成る。編者は南北朝時代の宋の范曄(三九八〜四四五)とされている。

    p153
    諸葛孔明(一八一〜二三四)
    三国時代の蜀漢の名宰相。政治家・武将・軍略家・発明家。蜀漢の初代皇帝の劉備に仕え、呉軍とともに魏の曹操を破り、蜀漢の建国に尽力した。劉備の死後、子の劉禅に仕えて魏を攻め、魏と対戦中に病死した。

    p157
    『日本外史』
    江戸時代後期の漢学者、頼山陽(一七八〇〜一八三二)の著した歴史書。二十二巻。源平から徳川に至る約七百年の武家の興亡を『史記』に倣って漢文で記したもの。その朱子学的な尊王精神は、明治維新の思想に大きな影響を与えた。

    p163
    孔子
    世界的な大思想家で儒家の始祖。西洋ではConfuciusという名で知られる。幼くして両親を失い、孤児として育ちながら苦学したとされる。身長は二メートルを越す長身で、世に「長人」と呼ばれたと『史記』にある。若くして魯国の役人となり政治改革を試みるも、国政に失望して弟子とともに諸国を遊歴。どこにも受け容れられず、晩年は弟子の育成と『詩経』『書経』などの古典の整理に専念した。

    p167
    孔門の十哲
    孔子の門人三千人と言われる中で、とくに優れた十人の弟子。徳行、言語(弁舌の才)、政事、文学(学問の才)における「四科十傑」ともよばれる。「徳行」の顔淵、閔子騫、全伯牛、仲弓。「言論」の宰我、子貢。「政事」の冉有、子路。「文学」の子遊、子夏。

    p169
    『論語』
    孔子の言行を彼の死後、弟子達が記録した書物。全二十編で構成。編の名称は各編の最初の二、三文字を採ったもので、内容上の意味はない。
    学而第一
    為政第二
    八佾第三
    里仁第四
    公冶長第五
    雍也第六
    述而第七
    泰伯第八
    子罕第九
    郷党第十
    先進第十一
    顔淵第十二
    子路第十三
    憲問第十四
    衛霊公第十五
    季氏第十六
    陽貨第十七
    微子第十八
    子長第十九
    尭曰第二十

  • 絵でよむ、というのは昔の絵画を引用して…という意味で図解などがあふわけではない。最高だった。巻末に地図(舞台の場所を図示)と年表付き。

    もっとこのスタイルの本が増えればいいのにと読んでる間興奮していた。

    乃木希典の金州城下の作を読んでいるときに、漢詩はラップと俗に言われるのをなんとなく理解した。この間漢詩の朗読聞いた時にはよくわからなかったけど。

    中国語の古文は文言文でなくて古文(グーニャン)なんだ…?孔子も普段は出身地の魯の方言喋っていただろうとか、口語の古代中国語は書き文字として残ってる漢文よりもっと長いだろうとか色々面白い話をしていた。

  • 初学者用向きで時にちょけているのが残念だが、総じて丁寧な編集がなされている。想定やレイアウトがとても感じ良し。

  • 大人の漢文入門には最適。中学生にもいいかも。高校生にはちと物足らないか。

  • タイトルの「絵で読む」とは、何か違うような。(挿絵は多いけど、内容を理解するに足るかといえば違うので)。訳文、紹介文が分かりやすく、とても親しみ易い漢文案内的な一冊でした。耳や目で馴染んでいた言葉なども多く含み、これか!と思うのもしばしば。構成として孔子の論語が多いけど、近代だけど日本人の作った漢文も一部紹介されていて興味深かったです。

  • 加藤徹著『絵で読む漢文』(朝日出版社)。広告を見て発注した。

    タイトルからして、漢文の読み方を図解して解説する本かと思いこんで購入した、が。

    開いてみると、引用した漢文の名句、名言に、その情景とむすびつく中国の風景・風土・人物が図として挿入されているだけのツクリ。

    基本は、なんといっても多くのフレーズを暗唱していることに、つきるの感。おまけに原文の上に「読み」が記載されてあり、白文でないため文を読み解く前に、読みが目に飛び込んでくる。

    入門の本としては最低限必要な名辞がえらばれているのであろうが、読み解く術を身に付けた人が、その読み解き方を図解しているものではない。

    むしろ「読み解くのに王道なし」と、言いたいのかもしれないが。それではそれで、タイトルを工夫してほしまったの感。

  • 絵とそんなに合っていなかった。

  • 現代語訳はもちろん、その漢文の由来や作者のプロフィールも載っていて、読み応えがありました。
    漢文って素敵だなぁ。改めて魅力が分かった気がします。

  • 読み物としてまた絵のチョイスも良く楽しめた。
    こういう本が増えると良いなと思う。

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著者プロフィール

1963年生まれ。明治大学法学部教授。専攻は中国文学。主な著書に『京劇――「政治の国」の俳優群像』(中央公論新社)、『西太后――大清帝国最後の光芒』(中公新書)、『貝と羊の中国人』(新潮新書)、『漢文力』(中公文庫)など。

「2023年 『西太后に侍して 紫禁城の二年間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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