やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識

著者 :
  • 朝日出版社
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本棚登録 : 237
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255006765

作品紹介・あらすじ

安全か危険かではなく、何がわかっていて何がわかっていないかを、じっくりと、ていねいに。中学生以上のすべての人へ。

感想・レビュー・書評

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  • 「知識」を共有し、ともに考えていくということ

    原発事故後を生きるものとして、放射線から目をそらさずに考えるため、持っておくべき基礎知識を説く本である。
    「中学生以上」を対象としており、かなり噛み砕かれて書かれている。
    著者は原子力専門ではないが、統計物理学者。公平に論じる、絶妙な立場にいる人といってよいだろう。

    放射線の話はとかく「わかりにくい」印象を与える。
    本書を読んで、なぜ「わかりにくい」か、いくぶんか整理された。
    ・核反応は、人に馴染みの深い化学反応とはまったく違う反応であること
    ・利用の歴史がまだ浅く、したがってその害についての蓄積データが少ないこと(特に長期のもの)
    ・長期に渡る微量の放射線の影響は、白か黒かではなく、「確率」が絡むこと

    商店街の「ガラポン」を例にしたたとえは、感覚的に非常にわかりやすい。
    その上で、子どもについてはまた別に考えるべきであるとしている点や、生産者に対する目配りもある点が温かい。

    標題に「ともに考えていく」としたが、著者は自分の見方(「原発は徐々に廃止していくべきだ」)を押しつけることをしない。読者が基礎的な知識を身につけ、自身で判断できる基盤を持つことを目指している。
    そこに放射線障害のやっかいさ(白黒をつけにくい)を感じる一方で、科学者の誠実さとはこのようなものだろうと胸の熱くなる思いも抱く。

    *同タイトルのウェブページ「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/で本書の全内容が公開されている。

    *噛み砕かれて書かれているがゆえに、理系読者にはやや物足りない部分があるかもしれない。
    「放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説」http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/index.htmlを辿っていくとさらに詳しい解説がある。
    これらのページは必要に応じて更新されていくとのことだ。

    *それにしても、実効線量とか等価線量とか、単位の用語もわかりにくいよなぁ・・・。もう少し何とかならないものなんだろうか・・・。

    • 薔薇★魑魅魍魎さん
      核廃棄物の輸出の問題も含めて、「原発は徐々に廃止していくべきだ」という言説を信じられません。
      ことに思想性のない科学者のトリビアリズムには要...
      核廃棄物の輸出の問題も含めて、「原発は徐々に廃止していくべきだ」という言説を信じられません。
      ことに思想性のない科学者のトリビアリズムには要注意が必要です。
      でも、未知の情報を知り得て感謝します。いつもながらサイエンス関連のぽんきちさんのレビューからは目が離せません。膨大なネットの解説を全部読んじゃって疲労困憊・・
      2013/01/26
    • ぽんきちさん
      薔薇★魑魅魍魎さん

      放射線については、まだまだ勉強不足だなぁと感じています。情報収集はしていかなくては、と思っているのですが。
      薔薇★魑魅魍魎さん

      放射線については、まだまだ勉強不足だなぁと感じています。情報収集はしていかなくては、と思っているのですが。
      2013/01/26
  • 放射線について、難しいことはよくわからない。
    だが現実にこの問題に直面している今、「よくわからない」と逃げているわけにはいかないと思い、手にしてみた。

    著者も物理学者ではあるが、放射線については専門外なのだそうだ。
    そんな著者が、放射線についてあれこれ言われている現状の中、正しく知るための基礎知識を、中学生にもわかるようにと心を砕いて書いてくれたのが本書だ。だからこんな私でも、わからないなりに必要なことは理解できるくらいには、噛み砕いて説明されている。極端に「大丈夫、安全だ」と言い張っているのでも「絶対危険、何が何でも避けるべき」と言い張っているのでもなく、非常に中立。
    すべてを正しく知ったうえで、自分で考え行動しよう、というのが著者のスタンスだ。

    そしてそんな本書を読み私がたどり着いたのは、やっぱり人間に制御できない原子力は使うべきではない、ということ。著者の思いと一緒だ。
    ただ今すでに、もう放射線の脅威にはさらされてしまっている。
    よしんば全原発を今すぐ廃止したとしても、そのすべてを廃炉にするのにはまだ長い長い年月がかかるはずなのだ。
    ならば私たちにできることは、常に正しい情報を手に入れること、そして冷静に判断し行動すること、それしかない。

    どんな先進技術であれ、最後は誰かの手に委ねられるのだ。誰かがやらねばならないなら、そのことに無責任でいるべきでない。

  • 著者は学習院大学理学部教授の田崎晴明氏。放射線は専門外の著者が、放射線についてイチから勉強してまとめたもの。

    むやみに「安全だから心配するな」と主張するのではなく、逆に「危険だ。心配しなくてはいけない」と主張するわけでもなく、客観的に述べられている。ここまではわかっている、これ以上はわからないということをはっきりさせている。また「わからない」という言葉の解釈についても説明されている点は、かねがねこの言葉が混乱の原因になっていると思っていたので良かった。確率的な考えについてもわかりやすい言葉で説明されている。

    放射線について「気にする自由」と「気にしない自由」があり、お互いの考えを尊重し、社会で一緒に過ごしていくためには我慢や譲り合いが必要。

    専門外の人がイチから勉強して、疑問点を一つずつ解消していったからこそこのような本ができたのだと思う。予備知識や立場があったら、これだけわかりやすく、偏ることなく書くことは難しいのでは。

    本書の内容はwebでも公開しているらしいし、この本も1000円とかなりお値打ち。

    本気で被曝を心配している市民の方や、いまはひとりの人みたいに、安易(少なくとも私にはそう映る)に極端な言動をとる方には、まずは落ち着いて本書を繰り返し読むことをおすすめしたい。
    放射線に関わる人間であれば、本書に書かれている内容くらいは理解しておきたい。

  •  学習院大学田崎先生による、放射線影響に関する至極生真面目な「基礎知識」についての解説本。
     おそらく多くの読者は、何度か読み返さないと十分な理解が得られないと思う。
     しかし、東京電力福島第一発電所の事故による放射線影響はそんなに簡単なものではない。
     凡百の危険を言い募る著作や安易に安全を謳う著作とは全く異なる。
     普通の人間が読んでも理解しにくいICRPの報告書を一から読み解き、それを元に書かれたのが本作である。二度、あるいは三度読めば理解できる。
     田崎先生の誠実さに感謝してもし足りない。
     新聞書評にあったが、この先十年後二十年後、この本があったことをどのように思い返すのか。
     何度でも読み返したいし、読み返している。

  • 著者は「物理学者だけど放射線とは縁のない分野の方」という、絶妙なスタンスの方。安全とか危険とかって観点ではなく、もう少し冷静。現状で「分かっていること/いないこと」を比較的平易な言葉で説明している。「そもそも放射線とは何か」の化学的な説明から始まって、現実的なダメージ、汚染度合いの計算方法なんかが紹介されている。「中学生でもわかるように書いた」とあるけど、うーん、ちょっと難しいんじゃないかなあ。

    タイトルに「放射線」とある通り、放射線による汚染や被曝に重点を置いている。
    個人的には、原子力発電そのものの現状への方が関心あるかな。

  • ふむ

  • 安全か危険かではなく、何がわかっていて何がわかっていないかを、じっくりと、ていねいに。

  • サイエンス

  • 何が分かっていて何が分かっていないかを知ると、安心できる。2012年11月11日付け読売新聞書評欄。

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