本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)

著者 :
  • 朝日出版社
4.01
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本棚登録 : 954
レビュー : 105
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255007588

作品紹介・あらすじ

出版業界の未来は暗いかもしれないが、本の未来は明るい。本はインターネットもスマホもSNSもイベントも、すべてのコンテンツとコミュニケーションを飲み込んで、その形を拡張していく。「本と人との出会い」を作る型破りなプロジェクトを次々と立ち上げ、話題の新刊書店、下北沢「B&B」でメディアとしての本屋を実験する若きブック・コーディネーターが、新しい本の可能性を指し示す。形が見えないからこそ、明日の本も本屋も面白い。「これからのアイデア」をコンパクトに提供するブックシリーズ第10弾。画期的なブックデザインはグルーヴィジョンズ。

感想・レビュー・書評

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  • 「出版界の未来」と「本の未来」は別物である。
    「出版界の未来」は暗くとも、「本の未来」はむしろ希望に満ちている、というポジティブな考えのもと、ブック・コーディネーターの肩書きで活躍する著者がご自分のプロジェクトを通して考えたことを綴った1冊です。

    日本の出版流通の仕組みの不自由さに負けず、さまざまなトライを重ねながら人と本の出会いを演出してきた著者の姿に勇気をもらいました。
    本の定義を拡大する、例えばUstreamの放送も本であると考える発想力と、実践してみる行動力に敬服します。

    「本屋」は場所ではなく「人」。
    コンテンツを作る人、そしてそれを誰かに届ける人はみんな「本屋」である、というのも、インターネットを通じて誰もが発信できる時代にしっくりくる考え方でした。
    こうしてブクログに書いている1人1人も「本屋」だと思うと本を読むことが余計に楽しくなってきます。

  • 「本」の未来について、
    きちんとわくわくさせてくれる本でした。

    既得権益に縛られた構造を嘆くだけに終わらず、
    理想のかくあるべし論でもなく、
    懐古趣味的に愛でる対象としてでもなく、
    そもそも「本」とは?という問い直しを行うことで、
    現実的に開かれた可能性を提示することができるのだ、というのはフレッシュでよいと思います。

    アイデアインクシリーズのコンセプトと、
    この本の内容がぴったりはまっていてそこも素晴しいなと思いました。
    この本がこうして出ていること自体が本の未来の可能性の一つだと思います。

  • 2014/1/4読了。
    お洒落で知的で前向きで、感度が高くて行きつけの書店は代官山の蔦屋とかで、意識も高い()系の今風の本好きの人に向けた本なのではないかと思い、買うには買ったが数日放置していたのだが、読み始めたら滅法面白かった。確かにそういう人が喜びそうな内容なのだが、そうではない人にも、そうではないなりの本屋のやり方があるのでは、と夢を見させる幅の広さがある。本とは何か、本を作るとは、売るとは、買うとは、読むとは、それぞれ一体どういう行為なのか、固定観念を捨てるところに商機があるというのが本書で読み取れるエッセンスだ。
    以下余談。
    だが、この固定観念を捨てるというのが一番難しいことだと思う。例えば電子書籍に関して言うと、本とは紙に刷って綴じたものだ、というたった一つの固定観念を日本の出版業界が捨て始めるだけでも、十年を超える年月と、その果ての米国企業による小売市場の支配という事態を要した。同じ人に「次は本をインターネットに溶かせ」と言ったって、何年かかるか分からない。
    だから本書は「これから本の仕事をしようという方々」に向けての入門書という体裁を取っている。「これまで本の仕事をしてきた」という自負を持つ大人たちに強いるにはいささか酷だし、説得を試みるのは既に死屍累々のやり方である。
    かの福澤諭吉はかつて、江戸時代から文明開化を成し遂げて明治時代を生きる同時代人を「一人の人間が二つの人生を生きるようなものだ」と表した。著者の提示する自由で柔軟な本の観念でのビジネスを再び生きることは、福澤の言う「二つの人生」を生き直すに等しい苦行だろう。幕末明治の偉人ならいざ知らず、平成の凡人にはなかなか難しいことだ。だから、これから一つ目の人生を生きればいい人たちに向けて、その道筋のヒントを示すという体裁になっているのは至極自然のことと思う。もちろん体裁に過ぎないから、二つ目の人生を生きるつもりの大人が参考書として読んでもいいわけである。

  • 「本」というメディアの可能性、書店というプラットフォームの可能性を感じさせる一冊。一方で、やっぱり紙の本の出版を主軸に置く出版社は、こうした流れに取り残されていきそうに感じる。本は残るが、それは出版社が残ることとはイコールではない。イチ編集者としては、これから自分がどのような意識を持って働くべきかを改めて考えさせられる書籍だった。

  • 「出版業界の未来は暗いかもしれないが、本の未来は明るい」という紹介文の出だしを読んだ瞬間、これは読まなきゃと感じた。
    筆者がまず挙げている「これからの本について考えるための10個のポイント」を、備忘のために列記。

    1.本の定義を拡張して考える
    2.読者の都合を優先して考える
    3.本をハードウェアとソフトウェアに分けて考える
    4.本の最適なインターフェイスについて考える
    5.本の単位について考える
    6.本とインターネットとの接続について考える
    7.本の国境について考える
    8.プロダクトとしての本とデータとしての本を分けて考える
    9.本のある空間について考える
    10.本の公共性について考える

    印象的だった文章も引用しておきます。
    「紙がいいとかデジタルがいいとか、ネット書店がいいとかリアル書店がいいとか、大きな書店がいいとか小さな書店がいいとかではなく、電子書籍も、ネット書店も、大型書店も、小さな街の書店も全部、気分や目的によって使い分けられることこそ、最も豊かな未来であるということです。全部、なくなってほしくない」

    本の未来について、考えるヒントや今からでも取り組める仕事がちりばめられていた。

  • 本や雑誌、エディトリアル・デザインがダメなんじゃなくて、出版社を中心としたビジネスモデルが崩壊しかかってるだけ、と日頃感じていたことを、再認識させてくれた本。

    いやそれ以上に、出版社が関わらない「本」の可能性が、色んな事例を上げ解説されていて、とてもワクワクさせられた。

    業界に閉塞感を感じている方は一読するといいかと。

  • 自分の好きなものをみんなにも好きになって欲しいって思ってる人の話は面白い。それを広げるために、どうするか考えてあれこれ実行できるかっていう所が大事なのかなと思った。まぎれもないSIDE B精神でした。

  • わかる。わかるんだけれども。本というものは最早概念になってしまうてきな。コンテンツになってしまうてきな。「カレーも本かもしれない」というのは、一種正しいことかもしれない。しかし、私はひとつおもうのだけれども。そこまでした先に本当に本当に人間の幸せみたいなものはあるのだろうか。そこまで便利さを追求して、そこまで利益を出して、果たして人間は本当に幸せになれるのか。読んでいて、果てしなく遠くにおいて行かれる気になり、悲しくて悲しくて、私の生きてきた世界ってやっぱりこういうものなんだって現実を突きつけられて、なんかわたしウェブとかスマホとかやっぱりなんかよくわからないな、、そういうものってほんとうにいるのかな。あるんだからしょうがないんだけどっていう自問自答。アイデアインクシリーズはほんとうにすごいです。アイデアとしては抜群。

  • 本は売れない、出版文化は駄目だ、という前に
    この本に書かれているようにやってみることはたくさんある。

    B&B、とてもよい本屋でした。
    毎日イベントを開く、この発想は中々思いつかないものですね。

    また本書で指摘あるように、フジロックやサマソニでも10~20万人
    の動員。それに対して、コミケは3日間で59万人!!!
    同人誌という要素であっても、本の持つ力はまだまだ
    侮れません。
    あと、アイデアインクの本は新書より読みやすい感覚がして
    良い書籍ですね。

  • ”“本と人が出会う、そのあいだの部分には、まだやれることがたくさんある”

    本書のメッセージは、ずばり、“あなたも「本屋」に”!
    それも、いわゆる紙の本を売る「書店」ではなく、コミュニケーションの媒介者としての「本屋」に!という主張だ。

    2005年に、内沼さんが率いるブックピックオーケストラの企画する encounter. というブックルーム@横浜・馬車道に遊びに行ったことがある。これも「本」を活かしたワクワクするコミュニケーションの場だった。
    http://hiroc.dreamlog.jp/archives/2380607.html
    http://hiroc.dreamlog.jp/archives/2380613.html

    いま内沼さんが手がけている下北沢の新刊書店B&Bは Book&Beer の略。実際には、本屋×イベント×ビール×家具の組み合わせで展開しているのだとか。毎日イベントを実施したり、ビールを飲みながら本を探せたり、売り場にある本棚がアンティークの売り物だったり…。なんとも不思議で楽しそうな空間!
    http://bookandbeer.com

    このほか、書店で扱う雑貨を開発する BIBLIOPHILIC ブランドを立ち上げたり、
    http://diskunion.net/bibliophilic/
    これからの執筆・編集・出版に携わる人をつなぐ「広場」としての DOTPLACE を運営したり、
    http://dotplace.jp/
    本好きには、目がはなせない存在だ。

    ワクワクしながら最後のページで投げかけられたメッセージ(あなたも「本屋」に!)を読んで、ふと考えた。
    顧客目線で見ると、自分の地元にはどんな「本屋」が求められているのだろう?
    本と何を組み合わせれば、面白いコラボができるだろう?

    今後考えていくいいテーマをもらった気がする。
    素敵な出会いに感謝!

    <キーフレーズ>
    ・本と人が出会う、そのあいだの部分には、まだやれることがたくさんある気がする。自分には、出版業界を変える仕事ができるかもしれない。(p.020)
     #大学生の頃、内沼さんが就職活動を前に考えたこと。

    ★この「情報を絞る」と「引用して切り出す」という二つの方法はおすすめです。(p.032)
     #文庫本葉書などのアイデアの根幹。このMMでもつかってみよう。

    ・本による本のための「逆襲」(p.045)
     本はすべてのコンテンツとコミュニケーションを飲み込んで、領域を横断して拡張していく。
     #本はもはや定義できない

    ・本の最適なインターフェイス(p.090-087)
     #検索したい→宣伝したい→販売したい→共有したい
     #辞書・電話帳、映画情報誌、商品カタログ、クックパッドの料理レシピ…

    ・本の最小単位は「論点」(p.097)
     #むかし考えてた、超パーソナル週刊誌って、そんな感じだなぁ。

    ・ぼくの考える「大きな本棚」とは、その前に立って本の物量に圧倒される経験が人を「本好き」にするような、そういう本棚です。(p.130)
     #「公共財」としての本。街の書店から公共図書館へ。

    ★「本屋」はどちらかというと「人」で、本を媒介にした「人」とのコミュニケーションを求める。<中略> 本好きというのは「自分」という存在への関心が高い人ですから、出会った本について人と語り合いたくなる。「本屋」はその媒介者なんです。僕はその「本屋」という生き方が楽しいんですよ。(p.135:鳥取 定有堂書店 奈良敏行さんの発言)
     #「空間」ではなく「人」
     ##このインタビューが載っている BRUTUS「本屋好き。」、自宅本棚にあった!

    ★コンセプトは「これからの街の本屋」(p.139)
     #2012年7月 下北沢にオープンした「B&B」=BOOK&BEER
     #毎日イベントを開催する、ビールをはじめとするドリンクを提供する、本棚を中心とした家具を販売する

    ・本屋が片手間でやっていると思われて、最初は味を期待されていない場合が多い。そこが逆にチャンスなのです。(p.150)
     #B&Bでのコーヒー、ビールへのこだわり。「本屋なのにビールが美味しいんだよ」「妙においしいコーヒーを出すんだよ」
     #期待値が低いというアドバンテージ。家具にも、イベントにも! そして組み合わせの妙

    ★これからの新刊書店が生き残っていくためには、本と相乗効果のあるいくつかのビジネスを組み合わせて、収益源を確保するという「掛け算型」が、最良にしてほとんど唯一の方法ではないか、とぼくは考えています。(p.154)
     #B&Bは、本屋×イベント×ビール×家具!
     ##自分なら、何がかけあわせられるだろう。塾、ギャラリー、研修、教材?文具、家具、寝具、防具…?地元のお店とのコラボ(焼鳥、散髪、土木、空手、花屋、野菜…)。顧客目線だと何かなぁ。

    ・そうやって場としての発信力が高まってくるにつれ、店自体が「メディア」のようになっていきます。(p.156)

    ・必ずしもそれ自体でお金を稼いでいなくても素晴らしい「本屋」はいると、ぼくは考えています。
     たとえば、最近注目を浴びている「いか文庫」というユニットがいます。「いか文庫」は、店も商品も持たない「エア本屋」。それぞれ本業を持つ3名のメンバーが自分たちの本屋をやりたいと考え、まるで本屋であるかのように、おすすめの本をTwitterでつぶやいたり、ロゴの入ったグッズを作って販売したりしています。(p.169)

    ・当面はお金は別の仕事で稼ぎながら、自分なりの小さな「本屋」を試してみる。そういうスタイルのほうに、ぼくは可能性を感じます。(p.174)

    ★本は形を変えながら、これからもぼくたちの人生を豊かなものにしてくれる存在であり続けます。むしろその新しい形が、より豊かな「読み」をもたらしてくれることもあるでしょう。(略)
     あなたも「本屋」に!(p.176)


    <きっかけ>
     前から気になっていた内沼晋太郎さんの本。買ったものの積ん読になりそうだったが、我が家の本棚「本の本」コーナーを整理していてふと手に取り、食い入るように読んだ。”

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著者プロフィール

内沼晋太郎(うちぬま しんたろう)
1980年生まれ。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。NUMABOOKS代表、下北沢「本屋B&B」共同経営者。
海城中学校・高等学校を経て一橋大学商学部商学科入学。大学卒業後に入社した企業をすぐに退職し、往来堂書店でアルバイトとして働く。2003年、ネット古書店ブックピックオーケストラを設立。2006年末まで代表をつと、numabooksを設立。以後、小売・アパレル業でのブックセレクト&コーディネート、イベント運営、企画などを担う。2012年、下北沢にビールの飲める書店、B&Bを開業。
著書に『本の逆襲』『これからの本屋読本』など。

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