断片的なものの社会学

著者 :
  • 朝日出版社
4.06
  • (109)
  • (109)
  • (63)
  • (8)
  • (4)
本棚登録 : 1351
レビュー : 124
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008516

作品紹介・あらすじ

路上のギター弾き、夜の仕事、元ヤクザ……
人の語りを聞くということは、ある人生のなかに入っていくということ。
社会学者が実際に出会った「解釈できない出来事」をめぐるエッセイ。

◆「この本は何も教えてはくれない。
  ただ深く豊かに惑うだけだ。
  そしてずっと、黙ってそばにいてくれる。
  小石や犬のように。
  私はこの本を必要としている。」

一生に一度はこういう本を書いてみたいと感じるような書でした。
ランダムに何度でも読み返す本となりそうです。
――星野智幸さん

どんな人でもいろいろな「語り」をその内側に持っていて、
その平凡さや普通さ、その「何事もなさ」に触れるだけで、
胸をかきむしられるような気持ちになる。梅田の繁華街で
すれちがう厖大な数の人びとが、それぞれに「何事もない、普通の」
物語を生きている。
 * * *
小石も、ブログも、犬の死も、すぐに私の解釈や理解をすり抜けてしまう。
それらはただそこにある。[…]社会学者としては失格かもしれないが、
いつかそうした「分析できないもの」ばかりを集めた本を書きたいと思っていた。(本文より)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 若干ねちっこい。社会学者が聞き取り調査をし、結果とか過程とか関係なく意味もなく、ただそこにあった存在していた断片的な物語の数々をまとめたエッセイ。怖さはないし全然違うんだけど「遠野物語」のような空気を感じた。

    「あとがき」が一番心に響いた。「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」、「土偶と植木鉢」、「笑いと自由」、「普通であることへの意志」が特によかった。本の雰囲気がふわっとあたたかいような気がした。


    堅苦しいようなエッセイで、これはエッセイではなくて一種の語りのような気がしたし、著者の自意識の欠片みたいなものを感じて読みにくいなぁ…とか思いつつも読了。序盤と終盤は濃かった。中盤はくどいよ…と感じた。心にしみる内容もあり読み終えて時間が経ってから、自分は内容がある物語よりもあまり意味がなさそうで「だから何?」と思える欠片のような話が好きなんだと改めて気がついた。

    読むか読まないかは別として、この人の(岸さんの)小説(『ビニール傘』)ってどうなんだろう…と、とても気になった。。。他…作品中でも紹介されていたし巻末にも掲載されていた末井昭さんのエッセイ『自殺』も気になる。

  • かなり面白い。
    時間的な余裕で湯船にお湯をはれる日しか読書は出来ないけど、ないよりはマシだ。まとめて時間を取れないので、こういう断片的なものはとても良いなー。
    色んな人が居る、だけどその全ての話を聞いたり、声に耳を傾けたり、考えたり悩んだりは出来ないけど、こうやって知る事が出来る。色んな人の断片的な会話、地下鉄でヘッドホンをはずしてただ流れてくる会話に意識があるような、そういう本。
    そうなのだ、障害者の対義語として健常者があるのではない。そこには健康を当たり前とし障害について考えた事のない人々、というのがあるだけなのだ。
    1ヶ月くらいかかってよーやく読了。
    凄く楽しく面白い本だった。
    世界の本。社会?それは人の話。面白かったー。
    何度も読み返したくなる。突き刺さるような現実が、こんなにも優しいなんて。素敵な事を知った。

  • 自分にとって正しいこと、普通なこと、当たり前なこと。。それは相手にとってどうなんだろうね。と押し付けがましくもなくいろんな人の視点を想像して問いかけてくれているような感じがした。正義の反対は悪ではなく、また違う正義であるということを意識して話せる人はきっと寛容な人だろうなーという考えが頭の中に浮かんだ。自分が辛い時、相手を否定することで自分を肯定するのではなく、肯定も否定もせず一旦ただの情報として受け入れて自分なりの解釈のもと表明していきたい

  • 社会学かエッセイかカテゴリ迷いましたが、エッセイに。

    素敵な文章も書ける社会学者って、最高だと思います。岸k

  • 幸せの只中にいる花嫁花婿に向かって、婚姻制度が、家父長制度が、戸籍制度が、強制異性愛主義が、ロマンチックラブイデオロギーが!などと議論を吹っかけるのは野暮である。
    マジョリティの幸せを祝福すること、祝福することを強制することは、そうでない者への暴力となる。その一方で、おめでとうの気持ちも本心で、もう、一体どうしたらええか分からん、と正直に言うてるところが素敵。
    淡々と、時に熱っぽく描かれている、とりとめのない情景や心情にぐいぐいと引き込まれた。

    この本は、ミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』が併売されてあった書店であえて購入。お、分かってるなここの書店、と思える自分にいやらしさも感じつつ。でも、そういう良い書店を応援していきたいのは正直な気持ち。

  • 誰も見向きもしないけれど、確実に存在するもの。小石だったり、人だったり、地球だったり。
    認識する事によってしか存在しないもの、物語だったり、歌だったり、想像だったり。
    人間の営みはそういう認識論の中で成立していて、誰か他者が認識していないものは存在しないも同然です。
    誰もいない原生林で音を立てて倒れた巨木も、誰も知らない場所で倒れているので存在しないも同然。
    でもそれは人間の意識だけの都合の話であって、確実に生まれ滅びゆく美しい者たちが存在する。そんな営みを愛おしく見つめる筆者の視線を追う本です。
    素敵で静かな世界観です。

  • 植本一子さんの本に書かれていて読みたいとメモし買っておいた。
    読むまでにしばらくかかってしまったけれど。

    思いもかけない物語の片鱗がとても興味深かった
    いつも目の前にあるのに、目にしながら気づいていないことはたくさんある。

    子ども=しあわせ 概念についても考えさせられる
    子どもは結婚すればできて当然
    子どもがいる人 いない人 で自然と疎遠になっていく
    私たちはそういう、世の中の幸せというものから自然に遠ざけられていく

    私たちは孤独である。
    脳の中では特に。
    どんなに愛し合った恋人同士でもどんなに仲良しの友達でも脳の中までは遊びに来てくれない

    経験則のない話はできないという圧倒的な対象が
    出産、そして育児だ 
    妬みや嫉みがなくても
    産んだ人 産んでいない人
    育てた人 育てていない人
    大きな境界線が敷かれる
    どちらが偉いとか偉くないはない というけれど
    ほんとうにはそう思っていない人は絶対数いるとおもう

    無意味なことはたくさんあるけれど
    その羅列でこの世は出来上がっている という解釈が
    心地よくわかりやすくエピソードがおもしろい
    知らぬ間に読み終えていたような本だった

  • ほとんど完璧な読書だった

  • 本書が示そうとするのは、こうして生きている僕ら一人一人も断片のひとつだ、ということだ。

    著者の岸さんは重度のネット依存症なのだけど、そのうちかなりの部分を普通の人たちの携帯ブログや日記を読むのに費やしている。風俗嬢がホストクラブにはまるさま。ゴミ屋敷に住むシングルマザー。岸さんにとって、「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」ような文章の数々は、徹底的に世俗的で、孤独で、一つ一つが無意味だが、けれども美しい断片として映る。

    しかし、本当は僕たちの人生そのものも、そんな文章となんら変わりないのではないだろうか。ぼくたちは孤独だ。ぼくたちはいきなり生まれて、生まれたときのことすら思い出せず、世界に生まれ落ちてきてしまった。どんなに仲がよく、愛し合っている友達でも、脳の中まで遊びにはきてくれない。ぼくたちは無意味だ。けれども、そんな僕たちが目の前の断片たちとつながり、語り出すとき、そこに意味が生まれる。

    本書のエピソードを笑い、心が温まったりする限り、僕らの人生にはたくさんの意味がある。これは、どうしようもない僕たち全員を、ささやかに肯定する。社会学とは、そんな僕らの紐帯、つまり繋がりを考える学でもあるけれど、その学問の手前まで僕たちを連れて行ってくれる本なのだ。
    できるだけ多くの人に読んでもらい、いろいろな断片を見出し、再発見して欲しいな、と思う。

  • 伊集院光さんの深夜ラジオの「空脳」コーナーを思い出した。
    私はこんな本に出会うために読書をしている。

全124件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

岸政彦(きしまさひこ)
1967年生まれの社会学者。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。研究テーマは沖縄、生活史、社会調査方法論。
『断片的なものの社会学』で紀伊國屋じんぶん大賞2016を受賞。初の小説「ビニール傘」(『新潮』2016年9月号)で第156回芥川龍之介賞候補及び第30回三島由紀夫賞候補。
その他の著作に、博士論文を元にした単著一冊目の『同化と他者化』、『街の人生』、『はじめての沖縄』、雨宮まみとの共著『愛と欲望の雑談』、『質的社会調査の方法—他者の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美との共著)などがある。

断片的なものの社会学のその他の作品

断片的なものの社会学 Kindle版 断片的なものの社会学 岸政彦

岸政彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
國分 功一郎
ミシェル ウエル...
森田 真生
ヴィクトール・E...
ジャレド・ダイア...
中村 文則
村田 沙耶香
三浦 しをん
宮下 奈都
有効な右矢印 無効な右矢印

断片的なものの社会学を本棚に登録しているひと

ツイートする