圏外編集者

著者 :
  • 朝日出版社
4.03
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本棚登録 : 583
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008943

作品紹介・あらすじ

編集に「術」なんてない。

珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。
ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を
追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。
人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。

多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、
周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。

編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 独特の写真集や本を出していて、目にするたび「おおすげえ」と思っていただけに、今回の本には強く好奇心を刺激され、舞台裏が読めるとなるとページを繰る手ももどかしく、一気呵成に読んだ。とても面白かった。本好きの方には誰にでもおすすめしたい内容。

    とはいえ。

    著者は自分のことを「編集者」として位置付けているようだが、正確には「ライター」ではないか。もちろん、その時の仕事によって役割は変化すると思うので、この仕事区分にそれほど意味があると思わないが、しかし立場が変わることで、仕事に臨む態度も変わるのはたしか。
    例えば。
    著者は、営業の意見を聞いて、企画に責任をもとうとしないのなら、本末転倒、意味がないという。
    しかし、腕の立つ編集者であれば、営業の意見を聞いてますよ、とアピールすることで、営業を本気で動かすよう誘導しているのだと思う。
    編集はいい企画を立てて、売るためなら持てる力の全てを投入するものだと思う。
    ゆえに、会議の無駄を減らすのは当然だが、無駄な会議をしないように工夫し、売り上げにつなげることができるのも、編集者の大事な能力なのだ。

    無論、著者はそんなことわかっていると思うが。

  • 大学で就職活動が迫ってきたころ、「なんだかこの先の人生、タイヘンで、めんどくさくて、つまらなそうだなぁ…」と鬱々としていた時に、「TOKYO STYLE」と出会った。「あ、こんなふうにテキトーに生きてもいいんだ?」「こんな人が現実にたくさん存在してるんだ!」と救われる思いがした。自分も「多数決で負ける子」の方の人間だったから。

    出版とはまったく無関係の仕事をしているけれど、この本に書かれている著者の仕事に対するプライドや愛情は、とても素敵で、その姿勢を見習いたいと思った。自分の仕事を全うするためなら、60歳になっても人に頭を下げられる、「毎月の振込よりも、毎日のドキドキの方が大切」とか言い切れるのって、すごくカッコいいなと。二十数年たって、また一つ救われた思いです。

  • 頭の中が、どんな風になっているか判るかな?

    朝日出版社
    http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008943/

  • 編集者の心得として非常に参考になった。そして編集者とはなにかをハウツーで語ることの馬鹿馬鹿しさを知る。

  • 仕事の中心は有料メールマガジン。月4回。1万~2万字。200枚以上の写真。デザインはウェブサービスチームに。

  • 明快で痛快。著者の編集者魂が炸裂している一冊。
    『POPEYE』や『BRUTUS』の編集に携わった著者は、「おもしろいとわかっているから」取材に行くのではなく、「おもしろそう」だから行く、編集会議は集団責任回避にすぎないから一切不要、そんなことしている間にネタの鮮度はどんどん下がる、と一刀両断。雑誌を作るのに読者層は想定しないし、マーケットリサーチなど一切しないと、にべもない。
    読者を見るのではなく、自分を見る、「スキマ」ではなく、「大多数」を見る、その自分の目を信じて取材に突き進む。有名建築家がデザインした豪邸に住んでいるひとより、狭い賃貸マンションに住んでいるひとの方がずっと多い。デートで豪華なホテルに泊まるひとより、国道沿いのラブホテルに泊まるひとの方がずっと多い。メディアはどうして取り上げないか、という強烈な苛立ちと危機感。著者のそうした姿勢には、爽快感すら覚える。

    ところで、紙に載る文章に比べて、ネットに載る文章は起承転結が明確でなく、「起」の部分にすべてを持ってきている、という著者に指摘には思わず唸った。ネット上の文章に感じる軽い違和感の正体はまさにこれだ。

  • 思索

  •  賃スポットやラブホテルなどの写真集(?)で有名な著者のなかば自伝。かなりロックな在りように感動w。



    圏外編集者

     1990年のドイツでフランクフルトブックフェアにいった。ロシアの「サミスダート」を集めた展覧会があって、ロック系(ローリングストーンズ)の本を買おうとしたら、限定五分で売れない、といわれた。
    当時のロシアはコピー機が使えないから、手動でタイプライターに5枚挟んで打つ。力を入れて打てば5枚ぐらいまで写るから、とのこと。

    P13
     自分がどうしても読みたいけれど、その本が世の中には存在しない。かといって、誰かを説得して作ってもらう能力や財力は持っていない。でも、意欲だけは誰よりもある。この強い意志が、タイプを叩く力になって「モスクワ・ローリングストーンズ・ファンクラブ会報」は世に生まれた。

    P28
     その編集長から教わったことはいろいろあるけど、いちばん身についたのは、「読者層を想定するな、マーケットリサーチは絶対にするな」だった。知らない誰かのためでなく、自分のリアルを追求しろ、と。そういう教えが、僕の編集人生のスタートだったかも知れない。

    P30
     若い編集者を夢中で働かせるコツって、給料じゃない。メシ!これはいまだにそう思う。のびのびやらせて、腹いっぱい食べさせて、飲ませる。これにかぎる。

    P32
     けっきょく、編集を学ぶヒントがどこかにあるとしたら、それは好きな本を見つけてじっくり読み込むしかないと思う。

    P46
     余白たっぷりのデザインがぜんぶダメなわけではないし、詰まってりゃいいってもんでもない。一冊の本や雑誌が、なにをどれだけ伝える器であろうとしているのかを見極めること。それがエディトリアル・デザイナーの資質だと思うし、そこには著者や編集者と、デザイナーのコミュニケーション能力もすごく関係してくる。

    P84
     (東京在住の夢を追っている若者の雑然としている住処を特集した「TOKYO STYLE」を編集・出版した後)
     それで地方の子たちは「こんな(東京でのラグジュアリーな)生活、私にはとても無理」ってあきらめていたのが、「実はこうだったんだ!」って。「これなら私の方が勝ってる」から、「もう、すぐ東京に行くことにします!」とか書いてあって、「ちょっと待て」みたいな(笑)。
     (略)当時は東京と地方はまだ情報伝達の時間差が確実にあった。そうして、メディアが取り上げる例外的な「東京」が、いかに美化されたウソなのか、それが地方の子たちにいかに無用な劣等感を植え付けているのかが痛感できた。そういう「大手メディアの欺瞞」にこのへんで気づいたことが、僕にはすごく大きなことだった。

    P96
     (目指すような珍スポットを探すも地元の人も知らずor教えてくれず結局自分の足でひたすら探し回って、締め切りぎりぎりまで見つかるって危機が何度もあった)
     最初のうちは自分がそういうの探すの、けっこううまいかもと思ったりもした。でも、そんな予期せぬ出会いが何度も何度も重なるうちに、ある日悟った-これは自分が探し当てているんじゃない、相手に探し当てられているんだ。自分は見つけてるんじゃなくて、「呼ばれてる」だけなんだって。

    P130
     (ラブホテル特集をして思ったこと)
     ふつうは泊まれない一流ホテルや旅館の本がいくらでもあって、ふつうに泊まれるラブホテルの本が一冊もない。(略)そういうものばかり見せられているうちに、劣等感やフラストレーションを抱きかねない。けっきょく、メディアが描く図式は一緒だった。

    P142
     前に大竹伸朗くんが言っていて、なるほどなと思ったのは「現代」という二文字がつくと、いきなりロクなもんじゃなくなると。「現代美術」「現代音楽」「現代文学」・・・(略)「現代」という文字がついたとたん、やたら小難しくなったりする。難解なのが高級、みたいな。(略)
     わからないから、自分の本を買って勉強しなさい、自分の授業にでなさい(略)。意地悪な言い方をすれば、難解にしておくことが専門家の商売のような気さえしてくる。

    P145
     現代美術の外側にアウトサイダー・アートがあるように、現代史の外側にある何かを探せたら、と思っているところに(略)「ROADSIDE JAPAN」の詩版みたいなのをやらない?と(友達であった新潮の編集長に)提案して始めたのが「夜露死苦現代詩」の連載だった。

    P166
    (彼の本に登場する「田我流」が地方の若者を描いた「サウダーヂ」という映画に主演した)そこでもきっちり描かれていたように、今日本の地方がおかれている状況は、ほんとうにどうしようもない。シャッター商店街と郊外化。若者に仕事は見つからないし、賃金は低安定化だし、文化的なプロジェクトなんてなにもない。
     セックスと車しかなくて、でもどこを運転してもイオンタウンと洋服の青山と東京靴流通センターとパチンコとファミレスがあるだけ。そういう東京とは比べものにならない閉塞感でがんじがらめになっているからこそ、「ひどすぎて笑える」くらいのやりきれなさだからこそ、こころを撃つ何かが生まれてくる。

    (ニャン2倶楽部Z 素人露出投稿のみで構成されている。雑誌のヒエラルキーとしてプロの女優や売れっ子モデルを使っているのが頂点で、読者投稿のみのこの雑誌はほぼ最底辺。)
     ただ、そんな最底辺の露出投稿雑誌でも、写真を投稿できる人たちはやっぱり恵まれた部類でもある。(略)写真に撮らせてくれる相手がいるのだから。そういう相手すらいない、写真を撮ることさえできない人間でも何かを発信できる場所、それが「読者イラスト」コーナーだ。
     (略)
     脳内は妄想でパンパンに膨らんでいるけれど、自分には縛らせたり、調教させてくれる相手がいない。自分には縛らせたり、調教させてくれる相手がいない。カネで買うこともできない、それどころか女性に声をかけることすら苦手。そういう男たちが自分の妄想を絵にしては、送ってくる。なかに毎月何枚も。なかには創刊以来20年以上、欠かさずに。(ぴんから体操さんを紹介)。

    P178
     世の中でいちばんアートを必要としているのは、描くことが生きることと同義語であるようなアウトサイダーであるとか、明日死刑になるかも知れない最後に時間に絵筆を持つ死刑囚とか、露出投稿雑誌に掲載されるのが人生唯一の楽しみであるようなイラスト職人とか、ドールにだけ自分の気持ちをぶつけられるアマチュア写真家とか、そういう「閉じこめられてしまったひとたち」ではないのか。アートは彼らにとっての、最後の命綱ではないのか。

    <美大のワナ>
     もう学校(美術大学)は「いろいろ機材が使えるでかいレンタルアトリエ」と割り切った方がいいし、先生や助手は版画のプレス機の操作とか、技術的にわからないことを教えてくれる人、くらいに思ったほうがいい。

    P220
     自費出版というかたちで地元のカルチャーを、自分たちで発信できるようになったら、もう東京はいらない。

     いい服が好きなのは、なにもおかしなことじゃない。(しかしふだんの生活ではそのしたにユニクロのパンツを合わせるのがふつう)
     でも、いまのファッション雑誌のほとんどは、そういう着こなしを載せない。(略)上から下までぜんぶ、一つのブランドで統一されているのがお約束だ。(略)それはもはやコーディネートではない。カタログや、お店のショーウィンドゥと一緒だ。スタイリストは独自のコーディネートを考える人ではなくて、ブランドと雑誌をつなぐ係り。ファッション雑誌の役割が終わった瞬間だったのかも知れない。

    P254
     かつては情報格差というのものがあった。ふつうのひとには手に入れられない最新情報をパリコレやニューヨークのくラブや、ロンドンの美術館で入手できる専門家がいて、それを「一般人」に広めることで「専門家」という商売が成り立ってきた。
     (略)インターネットがすべてを変えてしまった。

  • 怒りと劣等感からうまれた熱を帯びた取材。身近すぎて見ようとしなかった世界の面白さ。本はまた知らない世界を教えてくれる。都築響一のバイタリティおそるべし。

  • プロとアマチュアの境界とは?、誰でもネットなどを通じて作品を発表でき、多くのことを知ることもできるこの時代に、果たして専門家の果たす役割は何だろうか?
    読書と合わせて著者の都築さんのトークを聴く機会があり、色々お尋ねできて非常に良かった。「最高なモノを作ること=ゴールではない、結果ではなくプロセスでハッピーになりたい」「完成度より持続する思いを重視したい」というまさに、そういった思いから表現し発信していらっしゃるのだと思う。

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。ポパイ、ブルータス誌の編集を経て、全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』(京都書院)を刊行。以来現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆・編集活動を続けている。93年『TOKYO STYLE』刊行(京都書院、のちちくま文庫)。96年刊行の『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(アスペクト、のちちくま文庫)で、第23回木村伊兵衛賞を受賞。その他『賃貸宇宙UNIVERSE forRENT』(ちくま文庫)、『現代美術場外乱闘』(洋泉社)『珍世界紀行ヨーロッパ編』『夜露死苦現代詩』『珍日本超老伝』(ちくま文庫)『ROADSIDE USA 珍世界紀行アメリカ編』(アスペクト)『東京スナック飲みある記』(ミリオン出版)など著書多数。

「2018年 『白い孤影 ヨコハマメリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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