先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学

制作 : 山本貴光  吉川浩満 
  • 朝日出版社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255010496

作品紹介・あらすじ

細分化された考古学に「測定できないもの」を取り戻す野心的な試み。
大胆な議論をぜひ楽しんでもらいたい。
――國分功一郎さん

戦争も、信仰も、アートも、先史時代に始まった――
考古学の成果に依拠した、神話の大胆な読み換えによって、「文明以前」の人類世界を再構築する刺激的試論。

●「旧石器時代後期」のイメージを塗り替える
人間が人間らしくなったのは、「四大文明」や「ギリシャ・ローマ」からだと思っていませんか?

本書が紹介する考古学上の発見によると、旧石器時代後期(前2万年~1.3万年)から新石器時代(前8500年頃~)にかけて、すでに人類は動植物の飼育・栽培をおこない、ギリシャ・ローマに匹敵するような高いレベルの芸術を生み出し、記号を用い、航海し、交易していました。また、彼らの残した数々の宗教的シンボルは、どうやらメソポタミアからパレスチナ、ギリシャ・ローマまで、五千年以上の時をまたいで、遠く接続しているようなのです。

●「アトランティス」は単なるフィクションなのか?
プラトンは『ティマイオス』および『クリティアス』において、前九千年紀、アトランティスとアテナイとのあいだに地中海世界全体を巻き込む大戦争があったことを記しています。その時代にそんな文明がありえたはずがないので、フィクションだろうと考えられてきました。

しかし、先史時代の人びとがすでに我々につながる高い文化を持っていたならば、プラトンの物語を現実の人類史の足跡を保存したものとして真正面から受けとり、古代世界の理解に役立ててもよいのではないか?――これが本書の著者の提案です。
現にラスコーの洞窟画から「最古の都市」チャタル・ヒュユクまで、神話と考古学とのあいだには、さまざまな照応が見つかる、と著者は言います。

事実、「大戦争」の時期に次のことが見つかるのです――
・それまで平和な暮らしを営んできたヨーロッパ、アナトリア、中東、北アフリカの各遺跡で、突如として武器が増えはじめる。
・同時に、人類史上初の暴力による死者の集団埋葬が見つかる。
・さらにエリコ(パレスチナ)に、突如として壁をめぐらせた町と巨大な塔が出現する。
・ラスコー等の動物を描いた壁画に代わって、戦士を記念した壁画が生まれる。

●考古学の常識を覆すチャタル・ヒュユク遺跡(アナトリア地方南部、現在のトルコ共和国)
「大戦争」のあとの前七千年紀、考古学者が「途方もなく豊かで豪華な都市」と呼ぶほどの、驚くべき遺跡が現れました。その遺跡、チャタル・ヒュユクは、たくさんの祠堂(神殿)が、奇妙な壁画、雄牛の骨と漆喰でつくられた造形物、謎めいた古い彫像で飾られていました。それらは退廃と呼べるほどの繁栄をきわめたあと、突如として大火災に遭い、その後は規模が大きく縮小され、シンプルで明解なものに変わりました。
彼らはいったい誰で、彼らに何があったのでしょうか?

感想・レビュー・書評

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  • プラトンが記したアトランティスと先史時代ギリシアとの「戦争」、ザラスシュトラの信仰による改革、これが基本的になんらかの事実を述べていると仮定してその証拠を考古学的成果の中から抜き出し、再構成してみる試み。「信古」なアプローチで、どこまで信じて良いのやらという疑問が多かった。ややこじつけ的な強引な解釈が多いような。この時代の本はあまりないし、図表が綺麗でその点は面白いのだけど。

    30年前の本を今なぜ訳出出版したのだろうか。

  • 最近の知見からより古い時代の文明の姿が

  • Amazonでの紹介が分かりやすいので、それで内容が分かるかと思いますが、簡単に言えば、人類史、特に石器時代の人類を再評価する試み。

    プラトンといえば、その著書に「アトランティス」を登場させたことで知られていますが、これについて絵空事とはとらえずに、何らかの歴史的な出来事の反映だととらえて、人類史を見直しています。とはいえ、アトランティスは本書ではあくまで、既成概念を見直すきっかけにしているにすぎず、これについてだらだらと論じているわけではない。考古学的な証拠から石器時代を再評価している点に本書のテーマがある。

    いまや石器人=野蛮人というイメージはなくなってきてはいるものの、まだ現代人よりも文化的、精神的に劣っているというイメージはついてまわる。これらが発達したのはもっと後の歴史時代であると思われがちであるが、実は石器時代にはすでにその礎が築かれていたとは考えられないか。そのような視点で石器時代を見たときに、評価ががらりと変わる・・・著者のこのような新しい切り口は面白く、また、挿絵も豊富でビジュアル的にも楽しめました。

    初期人類が遊牧生活から定住生活に切り替えたきっかけについて語られる後半は、一人の改革者が登場しますが、これについては個人的に彼一人の影響力に帰するのは少し疑問。もう少し議論が必要かと。というわけで前半は考古学的な証拠が豊富に出てくるものの、後半は方向性が定まらない印象を受けました。しかし全体的には石器時代を新しい目線でみるという試みは興味深かったです。石器時代には文字というものにはいたらないものの、記号的なものを使って、ある程度のコミュニケーションはとっていたのではないか、という研究も別で進められているなど、今後はさらに石器時代の見方が変わってくるかも知れません。

  • アフリカやヨーロッパの先史についての基礎知識がないのが悔やまれる。
    残された出土品から女神信仰やミトラ信仰などの痕跡を追い、マギやザラシュトラの思想を先史にまで遡るというのは刺激的な仮説で、イラン啓示宗教の発生や、ユーラシア一帯の女神信仰の混合(サラスヴァティーイシュタルーイナンナーアフロディテ)に興味を持っていたものとしてはとても面白かった。

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著者プロフィール

カルフォルニア大学バークレー校とコロンビア大学で学位を得る。独立研究者としての主要な関心は旧石器時代から現代までの宗教と文化、特に宗教と農耕の並行性にある。著者に『先史学者プラトン――紀元前一万年―五千年の神話と考古学』(1986年/2000年)、『モナリザの髭』(2001年)、『ザラスシュトラが語るとき――新石器時代の文化と宗教の再構築』(2005年)がある。

「2018年 『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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