銀の匙

著者 :
  • 朝日出版社
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本棚登録 : 45
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255011271

作品紹介・あらすじ

安野光雅が描く、自らの幼少期の思い出と、少年の目でとらえた美しい世界。
漱石が絶賛した日本文学の不朽の名作が、心に残る情景とともによみがえる。

「本だけは子どものころの続きだった。はるかむかしのことになった今でも、
おもいだすのはきのうのことではなく、少年時代のことである。」−安野光雅

古い茶箪笥の抽匣から銀の匙を見つけたことから始まる、伯母の愛情に包まれて過ごした幼少期の日々を綴った自伝的作品。安野光雅によって情感豊かに描きだされた子どもの内面世界は、誰しもの心にある郷愁、幼き日のさまざまな感情を思い起こさせる。

感想・レビュー・書評

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  • 銀の匙は中勘助が書いた小説。中勘助の自伝的小説だそうだ。
    明治43年に前編が執筆され後編は大正2年1913年に執筆された。
    文章が美しく、当時をしらない自分にも郷愁を抱かせる描写がすばらしい。

    東京の神田で生まれた主人公は、やがて緑豊かな小石川に引っ越す。
    その土地でであった子どもたちとの交流や、自然描写、淡い恋心などが綴られていく。
    病弱だった主人公が、世界を見る視点は、生き生きとしていて驚きや恐怖に満ちている。

    小学校に上がってしばらくすると、主人公は勉強に追いつかず、苦労して遅れを取り戻す。
    体が大きくなり、ガキ大将となる。
    やがて近所に越してきたおけいちゃんという女の子と親しくなり、一緒に日々を過ごす。同級生からのやっかみや、ライバルの出現などもあるが、おけいちゃんは最後は主人公のもとに戻ってくる。
    しかしおけいちゃんは父親が亡くなり、母親の郷里に戻ることになる。
    おけいちゃんが暇乞いをしにきたとき、主人公は部屋にこもって挨拶をしない。このひねくれた気持ちは自分にもよくわかった。

    後半は、男らしさを求める兄とのやりとりや、戦争で盛り上がる同級生や学校の先生への反発、ひとり休暇をすごしにいった静養地での美しい女性との出会いなどが語られる。
    この女性とは少ない交流の中で主人公に強烈な印象を与えたらしく、これ以上ない美しさをもって描写される。そして、彼女が京都に戻る暇乞いをしにきたとき、主人公はまたも天の邪鬼になり、聞こえなかったふりをする。

    彼は恋をした女性の暇乞いには応えないのだ。
    それは、おそらくは暇乞いを受けてしまうとその別れを認めることになるからではないだろうか。

    美しいものを丁寧な言葉で表現する。それを書き連ねたことで美しい小説が完成した。

  • 伯母さんの主人公への深い愛情がしみじみと伝わってくる作品。挿絵も味があり、良かった。

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著者プロフィール

1885年、東京に生まれる。小説家、詩人。東京大学国文学科卒業。夏目漱石に師事。漱石の推薦で『銀の匙』を『東京朝日新聞』に連載。主な著作に小説『提婆達多』『犬』、詩集に『琅玕』『飛鳥』などがある。

「2019年 『銀の匙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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