銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異

著者 :
  • 朝日出版社
3.93
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本棚登録 : 684
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255011677

作品紹介・あらすじ

大森望さん推薦!
「明晰でわかりやすく、面白くて叙情的。
科学と詩情。
ここにはSF100冊分のネタが詰まっている。」


一日の長さは一年に0.000 017秒ずつ伸びている。
500億年のちは、一日の長さは今の一月ほどになるだろう――

空想よりも現実の世界のほうがずっと不思議だ、と感じるような、
物理学者のとっておきのお話を22、集めました。

・流れ星はどこから来る?
・宇宙の中心にすまうブラックホール
・真空の発見
・じゃんけん必勝法と民主主義の数理
・世論を決めるのは17%の少数者?
・忘れられた夢を見る技術
・反乱を起こす奴隷アリ
・銀河を渡る蝶
・飛び方を忘れた鳥にそれを教える…

真夜中の科学講座のはじまり、はじまり。

ほんのひととき、日常を忘れて、科学世界の詩情に触れてみませんか?
科学や文学が好きな人へのプレゼントにもぜひ。

「夜話と名乗ってはいるが、朝の通勤電車で、昼休みのひとときに、ゆうべの徒然の時間に、順序にこだわらず一編ずつ楽しんでいただければと思う。」――著者

感想・レビュー・書評

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  • 面白く、そしてわかりやすい科学エッセイ。
    科学の理論や研究の解釈というような小難しいものではなく、じんわりと感情に染み込むような繊細で美しい物語を読んだなぁという感覚になった。その一因となるのは、魅力的な挿画や図版が数多く掲載されていることだろう。そのなんともいえない古美術的な灰暗さにうっとりする。
    さらには各編扉には、吉田一穂の詩さえ載っているのだ。

     自我系の暗礁めぐる銀河の魚。
     コペルニカス以前の泥の拡がり……
     睡眠の内側で泥炭層が燃え始める。
           吉田一穂「泥」

    内容は理論物理学者か語る「天空」「原子」「数理社会」「倫理」「生命」の5つの章。どれも筆者の語り口が柔らかく、しっとりとした趣で描かれている。

    科学は人間とか世界とか、そういうものの根源に触れようとするのだろう。不思議で美しい。だからどうしても人は追究したくなるのだけれど、その先に広がる未来が幸せなことだけだとは限らない。
    チェコのヨアヒムスタール銀鉱に産するボヘミア装飾ガラスの緑色の原料、ウラニウム元素。美しい緑色ガラスの奥の極微世界に魔力が宿る。
    アンリ・ベクレルによる1896年のウラニウム放射能の発見が源流となり、放射能と原子核物理学の探求が欧州の各地で始まる。やがてウラニウム核兵器開発となって、広島に原爆が投下された。その凄惨な事実を忘れてはいけない。

    面白かったのは「パラレルワールド」「ディストピア」などのSF世界へと通じていくような話。
    たとえば、プリンストン大学の大学院生ヒュー・エヴェレットが発表した論文。
    「量子力学の多世界解釈」
    二つの可能性の重ね合わせの状態にあった一つの世界が、観測にかけられた途端に二つに分岐して、われわれはどちらかの世界に投げ出される。別のそっくりな世界には別のわれわれがいて、そこではこちらと相反する事象の生起を見届けている。重ね合わせ状態の選択肢は、二つとは限らないし、観測を行うのは特定の一人の観測者とは限らない。そうであれば世界が進行するに際しては、その無数の各瞬間に、いくつもの多世界への分岐があることになる。

    「思い出せない夢の倫理学」では、情報技術の社会への浸透で、本人の気づかぬうちに、個人の内面が容赦なく晒され、データとして、誰かのコンピューターに蓄積されていく。

    他にも、
    地球と月を結ぶ定期航路の天然の中継「ファースト・ラグランジュ・ホテル」
    「多数決による集団決定意思」
    「反乱を起こす奴隷アリ」
    などなど興味深いワードがたくさん登場する。

    “ここにはSF100冊分のネタが詰まっている。”
    帯に書かれた大森望さんの言葉は、全然大袈裟なことではなかった。

    • ハイジさん
      こんにちは!
      こちらとても読みたい本で、私の中で順番待ちしております♪
      地球っこさんのレビュー読んでますます気持ちが盛り上がってしまいました...
      こんにちは!
      こちらとても読みたい本で、私の中で順番待ちしております♪
      地球っこさんのレビュー読んでますます気持ちが盛り上がってしまいました(笑)
      科学と人のハートが融合されて暖かな感じが伝わってきます!
      とても楽しみです‼︎
      2020/05/04
    • 地球っこさん
      ハイジさん、こんばんは!
      ぜひぜひ、お手にとってくださいね。
      まずわたしは表紙に一目惚れでした。
      科学系がお得意な方には、知ってること...
      ハイジさん、こんばんは!
      ぜひぜひ、お手にとってくださいね。
      まずわたしは表紙に一目惚れでした。
      科学系がお得意な方には、知ってることばかりになると思いますが、
      わたしのような科学苦手なのに好きなんたよなぁって感じのものには、
      とても楽しく読めました。

      なんとも、哲学的というか詩情的というか、本当に星空のしたで読んでみたくなる本でした(*^^*)
      2020/05/04
  • 物理学者による科学エッセイ。科学エッセイというジャンルがあることを知らなかった私は、そもそも高校で物理を選択しておらず、理科も数学も苦手であった。そんな私でも現代に生きていることが、まだ解明していない謎が世界にあることがうれしくなってくる、読んでいてわくわくする本だった。著者の科学へのときめきが伝染してくる、とても詩的な文章

    あと装丁が上品ですごくすき

  • 大宇宙から原子世界まで、人間社会からアリの社会まで縦横無尽、馴染み深い話から全く聞いたことのない意外な話まで、どれも親しみやすい、それでいて明晰な文体で懇切に語られる。多数決の数理を扱ったいくつかの章が特に興味深かった。美しい装丁もグッド。

  • 買ってよかった〜 著者の狙い通りに通勤行き帰りの電車内でじっくりじっくり味わいながら読み終えました。が、読み終えた途端に前に戻って再び読む。

  • 科学の楽しさを伝えてくれる良書。ド文系のわたしには難しい点もあって、確率の計算とかは飛ばして読みましたが、文章の美しさで最後まで読み通せました。話題がとても豊富でした。いろいろと友人に知ったかぶりができる

  • まずこの本は装丁が美しい。カバーを外すと歴史書の様なデザインがあしらわれている。
    本文は文系の私でも理解出来る様に易しく書かれており、沢山の驚きと共にわくわく読み進められた。文体は各々の好みによると思うが私は好きだった。

  • 銀河の片隅で科学夜話 全卓樹著 物語通し世界の神秘に迫る
    2020/5/16付
    日本経済新聞 朝刊
    科学の面白さを伝えたいと筆を執った著者は「科学に触れず現代を生きるのは、まるで豊穣(ほうじょう)な海に面した港町を旅して、魚を食べずに帰るようなもの」と言い切る。理数系の学問はあまり……という人は首をかしげるかもしれないが、日常目にしたことがあるものや身近な例に落とし込み、科学にまつわる"物語"に仕上げている。


    流れ星が夜空に光る情景を描いた宇宙がテーマの天空編、放射線や核についての原子編、アリの不思議な生態を取り上げ遺伝子や生物学の謎をひもとく生命編など5編、エピソードごとに全22夜で構成する。
    原子編ではアンリ・ベクレルが放射線を発見した時の話やその後の核爆弾開発の経緯を易しく説明する。「人類が原子核エネルギーを支配するのか、あるいはそれに支配されるのか、大河の流れつく大海原(おおうなばら)はいまだに見えてこない」と、叙情的な語り口に引き込まれる。
    倫理編では、本人も覚えていない寝ている間に見た夢を勝手に他人に解析されたら?という空恐ろしいテーマを示す。「脳内イメージの抽出技術」が進歩する中、脳神経科学と倫理学の密接かつ重要な関係性を説く。
    数字や理論の解説も丁寧で、限りない科学の不思議や世界の神秘に思いをはせながら夜更けにじっくり読んでみたい。(朝日出版社・1600円)

  • これは新しいジャンルの本だな
    とてもよい

  • 『銀河の片隅で科学夜話――物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異』
    著者:全 卓樹
    定価: 1,760円(本体1,600円+税)
    判型:四六判変型
    ページ数:192
    ISBN:9784255011677
    Cコード:C0095
    発売日:2020/02/19
    https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255011677/

    【目次】
    はじめに

    〔天空編〕
    第1夜 海辺の永遠
    第2夜 流星群の夜に
    第3夜 世界の中心にすまう闇
    第4夜 ファースト・ラグランジュ・ホテル

    〔原子編〕
    第5夜 真空の探求
    第6夜 ベクレル博士のはるかな記憶
    第7夜 シラード博士と死の連鎖分裂
    第8夜 エヴェレット博士の無限分岐宇宙

    〔数理社会編〕
    第9夜  確率と錯誤
    第10夜 ペイジランク─多数決と世評
    第11夜 付和雷同の社会学
    第12夜 三人よれば文殊の知恵
    第13夜 多数決の秘められた力

    〔倫理編〕
    第14夜 思い出せない夢の倫理学
    第15夜 言葉と世界の見え方
    第16夜 トロッコ問題の射程
    第17夜 ペルシャとトルコと奴隷貴族

    〔生命編〕
    第18夜 分子生物学者、遺伝的真実に遭遇す
    第19夜 アリたちの晴朗な世界
    第20夜 アリと自由
    第21夜 銀河を渡る蝶
    第22夜 渡り鳥を率いて

    参考文献

  • うーん。
    好意的なレビューが多いので、きっと僕があまのじゃくなだけなのだろう。
    というのも、久しぶりに完読できなかった1冊になってしまったから。
    文章が素晴らしい、というレビューも散見されるけれど、僕は読んでいて、あまり面白い文章だとも思えず、時々すごく自意識過剰な表現があったり、「こう表現すれば面白くなるだろう」的なミエミエの文章があったりで、気持ちよく読むことはできなかった。
    そしてこういう読書体験は初めてなのだけれど、「ああもうダメだ、頭にきた! もう読むのやめた!」といって本書を放り出してしまった。
    本文が全185ページあるのだけれど、その94ページ目、ちょうど半分くらいのところにこんな文章があった。
    「ちなみに読者諸氏の多くもご存じのとおり、ジニ係数というのは、すべての曲が同じ投票数ならば0、一曲だけに全投票が集まる場合に1となる、不平等さの度合いを測る統計量である」。
    え! ジニ係数? 読者諸氏の多くもご存じ? はぁ?
    ってな感じ。
    要するに本書は「ジニ係数」というものをきちんと理解している方が読まれるご本であると。
    僕のように物を知らない、ましてや「読者諸氏の多くが存じ上げている」「ジニ係数」も知らないバカがこのご本を読んではいけないのだ。
    そうか、そうなのだな、いくらバカでもそのくらいのことはわかるよ、うんうん。
    ということで残り半分を残して不愉快なまま終わらせてしまった。
    多分、他の人はこんなことは感じないのだろうけれど、なぜだか僕はそんな風に感じ、激怒してしまった。
    つまり僕みたいなバカで短気でしかもあまのじゃくな人間が手に取ってはいけなかった本だったのだな、ということ。

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著者プロフィール

京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授。著書に『エキゾティックな量子――不可思議だけど意外に近しい量子のお話』(東京大学出版会)などがある。

「2020年 『銀河の片隅で科学夜話 -物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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